title banner

福光俊介の「週刊サイクルワールド」<281>トーマス、フルームのツール共闘再び、チーム存続へ勝負の1年 チーム スカイ 2019年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
  • 一覧

 ロードのトップシーンをメインにお届けする「週刊サイクルワールド」。2019年もどうぞよろしくお願いします。昨年末から引き続いて、各チームの2019年シーズンを展望していきたいと思います。今年最初のピックアップは、チーム スカイ。昨年12月に、今シーズン限りのスカイ社によるスポンサード終了との衝撃的なニュースが飛び込んできたが、選手たちはチームの、そして自身の将来をかけた勝負の1年を送ることに。年が明けてすぐに、ゲラント・トーマスやクリストファー・フルーム(ともにイギリス)らのグランツール棲み分けが明らかとなり、いよいよ“チーム スカイ”として最後になるシーズンへ動きを見せ始めている。

「チーム スカイ」として最後のシーズンとなる2019年。グランツールをメインにタイトル量産を目指す Photo: Team Sky

トーマスはツールへ集中 マイヨジョーヌ防衛に意欲

 昨今のプロトンにおいて、絶対的な力と存在感を示してきたチームは、グランツールの戦いぶりにより多くの注目が集まっている。それもそのはず、ツール・ド・フランスでは2012年以降、6度の個人総合優勝を達成。逃したのはフルームが途中リタイアした2014年のみと、狙ったレースに確実に合わせてくるチーム力と組織力を見せつけてきた。

ツール・ド・フランス2018を制したゲラント・トーマス。持ち前のルーラー的能力に登坂力が加わって3週間の戦いを勝つまでに至った =ツール・ド・フランス2018第12ステージ、2018年7月19日 Photo: Yuzuru SUNADA

 2018年は、トーマスが新たな歴史を作ったシーズンだった。早くからフルームとのツール共闘が決まっており、実績では上をゆくフルームと、グランツール適性が認められながらもアクシデントも多く結果を残し切れていなかったトーマス、両者の関係性が大会前から焦点になっていた。そんな中、トーマスはついに力を発揮したのだった。

 これまでは北のクラシックや個人タイムトライアルで好走を見せてきたトーマスだが、これらの経験から培ってきたルーラー的能力に、急峻な山々を越えられるだけの登坂力が加わった。3週間の戦いが終わってみると、上りと下り両面の要素を加味した山岳のコースレイアウトと、31kmと「TTスペシャリスト」の彼にとってはおあつらえ向きの個人TTのバランスが、今のトーマスにはうまくはまったといえるだろう。もちろん、チームTTでのタイム稼ぎ出しや、アシストたちの働きといった要因もあるが、勝負すべきところではしっかりと動いたトーマスの走りには、ツールを制するだけの要素がそろっていた。

 そして、迎える2019年もツールをメインターゲットにすることを表明。例年以上に個人TTの比重が高まるジロ・デ・イタリアへの出場も検討するとしていたが、やはりここは王者として臨む権利を有するツールに集中することを選んだ。ツールをチョイスするにあたり、「ボディーナンバー“1”(前回覇者または主催者判断で与えられる)を背中につけることができるうえ、(ツールに)戻らないこと、そして100%の状態で戻らないことほどもったいないことはない」と語る。狙うはマイヨジョーヌの防衛だ。

スペイン・マヨルカ島でトレーニングを行うゲラント・トーマス。2019年もツールにピークを持っていく Photo: Team Sky

 グランツール路線が定まったことで、2019年大筋のスケジュールも決定。昨年の成功を引き続くべく、アメリカ・ロサンゼルスを拠点にウインタートレーニングを行った後、2月6~10日のブエルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナ(スペイン、UCIヨーロッパツアー2.1)でシーズンイン。3月13~19日のティレーノ~アドリアティコ(イタリア)を経て、春のクラシックは4月20日のリエージュ~バストーニュ~リエージュ(ベルギー)を目指す。その後はツールに向けた調整に入り、ツール後は自国であるイギリス・ヨークシャーで開催されるUCIロード世界選手権での個人タイムトライアル優勝を視野に入れるとしている。

 シーズンオフには、2018年の活躍からイギリスのテレビ局BBCのスポーツ・パーソナリティ・オブ・ザ・イヤー、さらには大英帝国勲章四等「OBE(オフィサー)」を受章。充実の日々を過ごし、レース活動へのモチベーションを高めている。

フルームもツールへ トーマスとの共闘が確実に

 トーマスのツール集中宣言とときを同じくして、フルームもツールをターゲットに据えることを明らかにした。何よりも目指すは、5度目のツール制覇だと述べている。

ジロ・デ・イタリア2018で個人総合優勝を果たしたクリストファー・フルーム。その後のツール・ド・フランスは個人総合3位で終えた =2018年5月27日 Photo: Yuzuru SUNADA

 昨年はジロ、ツールの2冠を目指してシーズンを送ったフルームは、まずジロは大会終盤での逆転劇で制覇。ツールへも盤石の態勢で臨みたいところだったが、波に乗り切れないまま大会中盤のアルプス区間へと入り、チームメートであるトーマスとの差が広がっていった。山岳ではアシストを務めたエガン・ベルナル(コロンビア)からも遅れかけるなど、“らしさ”を失う場面が見られたが、第20ステージの31km個人TTでは2位と意地の走り。ツールのタイトルこそ失ったが、個人総合3位とまとめてみせた。

 長年の友人であり、ツールの新王者に輝いたトーマスを祝福したフルームだが、ただただ勝者を見守るだけで終わる気は毛頭ない。今年のテーマはもちろん、マイヨジョーヌ返り咲きである。

 そのために、連覇がかかるジロは回避を決断。山岳への比重が高まるツールに向け、レーススケジュールも見直す。ここ数年はオーストラリアでシーズン初戦を送ったが、今年は2月12~17日のツール・ド・コロンビア(UCIアメリカツアー2.1)に初参戦。その後、高地トレーニングを実施し、2月24日~3月2日のUAEツアーに出場。5月には自国で開催のツール・ド・ヨークシャー(UCIヨーロッパツアー2.HC)にも臨むことを表明している。

スペイン・マヨルカ島でトレーニング中のクリストファー・フルーム。2019年はツール一本にターゲットを絞る Photo: Team Sky

 いくつかあった可能性の中で、実質ツール一本に絞った理由に、「自分自身が何を残したいのか」があったという。5度目のツール制覇となれば、「キャリアのポイントに到達する」とも語っており、今年のツールがフルームにとって何らかのターニングポイントになることも考えられる。だからこそ、本番までのアプローチに変化を与えようとの試みのよう。

 ライバルの動きに対応しつつ、ここぞという場面で見せる山岳での驚異的なアタックが再びツールで見ることができるか。そこに、絶対的な自信を持つタイムトライアルが加わると、敵なしの状態になることもあり得る。昨年同様、トーマスとの共闘が確実だが、両者の関係性はステージを終えるごとに固まっていくことだろう。

22歳ベルナルがジロの総合エースに

 トーマス、フルームがともに回避することになったジロへは、若き総合エースのベルナルがマリアローザを目指して戦うことが決まった。

ジロ・デ・イタリア2019の総合エースに任命されたエガン・ベルナル。チーム スカイの看板を背負って戦う Photo: Team Sky

 1月13日に22歳になるベルナルは昨シーズン、トップシーンへセンセーショナルなデビューを果たした。ツール・ド・ロマンディで個人総合2位に入ると、続くツアー・オブ・カリフォルニアでは個人総合優勝。グランツール初挑戦となったツールでは、第1ステージやパヴェを走った第9ステージで落車し大きく遅れたものの、山岳でトーマスやフルームを強力アシスト。結果的に個人総合でも15位で終え、能力の高さを証明した。

 ツール閉幕直後のクラシカ・サン・セバスティアンで落車負傷したが、シーズン終盤には戦線復帰。イル・ロンバルディアを12位でまとめており、けがの心配を払拭している。

 満を持して総合エースの役割を担う今シーズン。ジロに配置されることについては、「3年間イタリアに住んでいたので、友人やファン、そして道路についても把握できている」と自信を見せる。学びを重視した昨シーズンの成果を「予想以上」といい、ツール期間中のフルームの振る舞いなどから得られたものも大きいと話す。

アンドローニ・シデルメクで走った2017年のエガン・ベルナル(左)。ジュニア時代から共に走ってきた同い年のイバン・ソーサ(右)がチームに加わり、山岳アシストを務める =ツール・ド・ランカウイ2017第4ステージ、2017年2月25日 Photo: Yuzuru SUNADA

 いよいよチームリーダーとして戦っていくことになるが、まずはツール・ド・コロンビアでフルームとともに走った後、ジロへの準備に着手。山岳アシストは、同い年でチームに新加入のイバン・ソーサ(コロンビア)が務める予定だ。両者はジュニア時代から共に走ってきた間柄で、「プロで一緒に走ることが夢だった」と言うほど、強い信頼関係で結ばれている。

 獲得標高が4000~5000mと、ハードな山岳ステージが連続することに加え、第1ステージに8.2km、第9ステージに34.7kmと設定される個人タイムトライアルは、どちらも上りの要素が強い。登坂力はもとより、TTも国内王者になるなど力はあるベルナルにとっては、大歓迎のステージ設定と見てもよいだろう。

 マリアローザ獲得の有力候補に名が挙がるのは必至。ビッグチームのエースとして、プレッシャーのかかる局面で実力を発揮できるか。その真価はジロで明確になる。

モズコン、クウィアトコウスキーはワンデー重視に

 グランツールの総合エースに限らず、チームの主軸選手の動向も徐々に明らかになっている。

ジロ2019のプレゼンテーションに出席したジャンニ・モズコン。キャリア初のジロ参戦が決まっている =2018年10月31日 Photo: Yuzuru SUNADA

 オールラウンダーとして期待が高まるジャンニ・モズコン(イタリア)は、プロ4年目にしてジロデビューが内定。そして、ジロ以上のミッションとして、北のクラシックとイギリス・ヨークシャーでのUCIロード世界選手権での上位進出を掲げる。

 2017年のパリ~ルーベで5位に入っているが、今年はそれを上回る順位を狙いたいとしている。冬場のトレーニングが順調に進んでおり、「好調で春を迎えられるだろう」と自信を見せる。また、昨年5位のロード世界選手権についても、距離が長く、細かなアップダウンの連続となるヨークシャーのコースは、難度問わず対応力を示すモズコンに合っているといえそう。今シーズンの走り次第で、イタリア代表のエースとなる可能性も高まる。

 レース中に熱くなるあまり、プロトン内での暴言や暴力行為がクローズアップされがちな24歳だが、今年は高い潜在能力を発揮して走りでアピールしたいところ。

2018年は獅子奮迅の働きを見せたミカル・クウィアトコウスキー。2019年はクラシックと世界選手権にフォーカスする =ツール・ド・ポローニュ2018第5ステージ。2018年8月8日 Photo: Yuzuru SUNADA

 アルデンヌクラシックは、ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド)が中心になりそう。同時期3連戦の最後を飾るリエージュでの勝利を目標に、シーズン前半を送る。さらに、シーズンの後半はこちらも世界選手権とイル・ロンバルディアにスポットを充てたいとしている。

 昨年は6月のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネから、ツール、ツール・ド・ポローニュ、ブエルタ・ア・エスパーニャ、そして世界選手権と連戦になったが、今年は余裕を持ったレーススケジュールにしたいとも。ツール出場はマストとしながらも、5月のツール・ド・ヨークシャーで世界選手権を意識した“試走”を行い、そこからシーズン後半のスケジューリングをしていくことを示唆している。

 スカイ社の今年限りでのスポンサー撤退により、現状を維持するには同社並みの大規模なスポンサードが求められるが、果たして実現なるか。選手たちの走りにもかかってくる部分は大きくなりそうだ。

 なお、1月13日のクリテリウムで幕を開ける、UCIワールドツアー初戦のサントス・ツアー・ダウンアンダーには、オウェイン・ドゥール(イギリス)、ケニー・エリッソンド(フランス)、クリストファー・ハルヴォルセン(ノルウェー)、クリスティアン・クネース(ドイツ)、ワウト・プールス(オランダ)、ルーク・ロウ(イギリス)、ディラン・ファンバーレ(オランダ)が臨む。

チーム スカイ 2018-2019 選手動向

【残留】
レオナルド・バッソ(イタリア)
エガン・ベルナル(コロンビア)
ヨナタン・カストロビエホ(スペイン)
ダビ・デラクルス(スペイン)
オウェイン・ドゥール(イギリス)
エディ・ダンバー(アイルランド)
ケニー・エリッソンド(フランス)
クリストファー・フルーム(イギリス)
タオ・ゲオゲガンハート(イギリス)
ミカル・ゴワシュ(ポーランド)
クリストファー・ハルヴォルセン(ノルウェー)
セバスティアン・エナオ(コロンビア)
ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ)
クリスティアン・クネース(ドイツ)
ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド)
クリストファー・ローレス(イギリス)
ジャンニ・モズコン(イタリア)
ワウト・プールス(オランダ)
サルバトーレ・プッチョ(イタリア)
ディエゴ・ローザ(イタリア)
ルーク・ロウ(イギリス)
パヴェル・シヴァコフ(ロシア)
イアン・スタナード(イギリス)
ゲラント・トーマス(イギリス)
ディラン・ファンバーレ(オランダ)

【加入】
フィリッポ・ガンナ(イタリア) ←UAEチーム・エミレーツ
ジョナタン・ナルバエス(エクアドル) ←クイックステップフロアーズ
イヴァン・ソーサ(コロンビア) ←アンドローニジョカットリ・シデルメク
ベン・スウィフト(イギリス) ←UAEチーム・エミレーツ

【退団】
フィリップ・ダイグナン(アイルランド) →引退
セルジオ・エナオ(コロンビア) →UAEチーム・エミレーツ
ベニャト・インチャウスティ(スペイン) →エウスカディ・ムリアス
ダビ・ロペス(スペイン) →引退
ルカシュ・ヴィシニオウスキー(ポーランド) →CCCチーム

今週の爆走ライダー−サルバトーレ・プッチョ(イタリア、チーム スカイ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 今年でプロ8年目を迎える29歳。デビュー以来、スカイ一筋。「7年間チーム スカイで走ってきて、まだまだこのチームで過ごしたい」とチーム愛を強調する。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2018第3ステージでアシストとして働くサルバドーレ・プッチョ。リーダージャージを着用するミカル・クウィアトコウスキーを牽引する =2018年8月27日 Photo: Yuzuru SUNADA

 デビュー当時はクラシックハンターとして将来を嘱望されていた。経験を積んでいくうち、クラシックで頂点を狙うところまではいかなかったが、堅実なアシストとしてチーム内での立場を確立。高い評価は、平坦、パヴェ、上り問わずチームの戦いを構築する安定感の賜物でもある。

 個人での勝利はいまだないが、チームTTでの勝利でめぐってきた2013年ジロでのマリアローザ着用はいまも誇らしいという。そして、これまでジロやブエルタでエースを頂点に押し上げた働きこそ、自らの価値を高めているものだと信じている。

 自国開催のジロでのメンバー入りが今年も濃厚。ポリシーは「エースがどんなコースレイアウトでも対応する以上、アシストはさらに安定して役割を果たすこと」。派手さはなくとも、プロトンで、そしてビッグチームで生き残る術を身につけた者だからこその言葉だ。

 昨年10月にチームと3年間の契約延長に合意。その後、チーム動向が不透明になったが、ひとまずはレース活動に集中する。また今年も、謙虚なイタリアンの職人芸が見られそうだ。

プロ8年目、チーム スカイ一筋のサルバドーレ・プッチョ。2019年も職人的なアシストぶりを見せるはずだ =ブエルタ・ア・エスパーニャ2018第10ステージ、2018年9月4日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

チーム展望2018-2019 週刊サイクルワールド

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載