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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<280>ログリッチェ、クライスヴァイクがグランツール総合表彰台に挑戦 ユンボ・ヴィスマ 2019年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 2018年のグランツールでロットNL・ユンボは大きな成功を収めた。ツール・ド・フランスでプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア)とステフェン・クライスヴァイク(オランダ)が個人総合4位と5位。クライスヴァイクに至っては、続くブエルタ・ア・エスパーニャでも個人総合4位と、疲れ知らずの走りを見せた。サイクリング大国・オランダの雄は2019年シーズン、グランツールの総合表彰台を本気で目指すことを宣言した。そんなチームは、エーススプリンターのディラン・フルーネウェーヘン(オランダ)の存在やビッグネームの加入も相次ぎ、大きく進化を遂げている段階にある。新たなタイトルスポンサーの獲得でユンボ・ヴィスマと名が変わるチームの来季をうらなってみよう。

12月21日にチームプレゼンテーションを行ったユンボ・ヴィスマ。27選手が2019年の活躍を誓った Photo: Team Jumbo-Visma

シクロクロス世界王者・ヴァンアールトがついに加入

 波に乗っているチームには、よい知らせが舞い込んでくるものだ。12月18日、チームは24歳のベルギー人ライダー、ワウト・ヴァンアールトとの契約を発表した。

ユンボ・ヴィスマとの契約に合意したワウト・ヴァンアールト。2019年3月1日からのチーム合流となる Photo: Team Jumbo-Visma

 ヴァンアールトといえば、その世界では知らないものはいないというほどのスーパースター。主戦場であるシクロクロスで2016年から世界選手権を3連覇中。冬にかけて各地を転戦するUCIシクロクロスワールドカップでも過去2回総合優勝を果たしている。

 かねてから「将来的にはロード」と公言しており、ここ数年はUCIワールドチーム入りが時間の問題と見られていた。今シーズン途中まで、UCIプロコンチネンタルチームのヴェランダスウィレムス・クレランに所属していたが、このチームを運営するスナイパーサイクリングが、同じプロコンチネンタルチームであるルームポット・ネーデルランセローテライ(来季からロームポット・シャルルス)との2019年からの合併を決めたことをきっかけに退団を決意。ヴァンアールト、スナイパーサイクリングのオーナーである元選手のニック・ナイエンス双方が契約違反を主張する事態に発展した。

 シクロクロスシーズンに入ってからは、特例で無所属の選手としてレース参戦を行っていたヴァンアールトだが、このほど自身の主張が実質認められる形でUCI(国際自転車競技連合)からの移籍許可が下りた。元々ユンボ・ヴィスマとは2020年シーズンから加入することで合意に達していたが、1年前倒しで移籍が実現。シクロクロス活動を終えた段階の2019年3月1日付で正式にチームの一員となることでまとまった。

2018年シーズンから本格的にロード進出しているワウト・ヴァンアールト。来たるシーズンはミラノ〜サンレモと北のクラシックをターゲットにする =ツール・デ・フランドル2018、2018年4月1日 Photo: Yuzuru SUNADA

 もっとも、今年から本格的にロード進出しており、3月のストラーデ・ビアンケで3位とセンセーショナルな走りを見せると、ヘント~ウェヴェルヘム10位、ツール・デ・フランドル9位と北のクラシックで好走を連発。パリ~ルーベも13位でまとめた。8月にはヨーロッパ選手権でも3位に入るなど、すでに高いロード適性をアピール。ビッグレースになればなるほど強さを発揮するあたりは、シクロクロスとなんら変わらない。

 ひとまずはシクロクロスに集中するが、3月からのロード参戦では最初のターゲットにミラノ~サンレモを据えると表明。そこで勢いに乗って、北のクラシックへと向かう。強烈なアタックや小集団でのスプリントに自信を見せており、タフなレースになること必至の春のクラシックで、大仕事をやってのける可能性も十分にある。

ログリッチェはジロ、クライスヴァイクはツールへ

 今年のグランツールでの活躍が光った総合エースたちも、2019年の役割が決まって意欲に満ちている。

プリモシュ・ログリッチェは2019年、ジロ・デ・イタリアの頂点を目指す =ツール・ド・フランス2018第20ステージ、2018年7月28日 Photo: Yuzuru SUNADA

 目下売り出し中のログリッチェは来季、ジロ・デ・イタリアの個人総合優勝を目指すことを表明。2019年のジロは、合計3ステージある個人タイムトライアルのうち2つがフィニッシュにかけて上るレイアウト。総合系ライダーでは指折りのタイムトライアルスペシャリストであるログリッチェにとっては、ピッタリのコース設定といえそうだ。

 また、山岳ステージについても獲得標高4000mから5000m台の難関ステージが多数待ち受け、山岳とTTのバランスに長けるログリッチェは間違いなくマリアローザ候補の1人に挙げられる。

ジュニア時代はノルディックスキー・ジャンプ競技で活躍したプリモシュ・ログリッチェ。抜群のバランス感覚をロードレースに生かす =ツール・ド・フランス2018第19ステージ、2018年7月27日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ログリッチェといえば、今年のツールでも見せた山岳での積極的姿勢と、他を圧倒するダウンヒル能力の高さが魅力。ジュニア時代に世界を制したノルディックスキー・ジャンプ競技で養われたバランスとスピードの感覚は、ロードレースにおいても生かされている。

 ジロでは、ロベルト・ヘーシンク、アントワン・トルホーク(ともにオランダ)に加え、新加入のローレンス・デプルス(ベルギー)が山岳アシストを務めることが内定。ベテランのパウル・マルテンス(ドイツ)もチームのまとめ役としてメンバー入りする予定だ。実績・経験に富んだ選手たちをログリッチェの脇を固めるあたりに、チームの本気度がうかがえる。

2019年もツール・ド・フランスを目指すステフェン・クライスヴァイク =ツール・ド・フランス2018第19ステージ、2018年7月27日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ログリッチェとならぶ総合エースのクライスヴァイクは、来季もツールがメインターゲットになる。今年はステージ順位こそ第17ステージの6位が最高だったが、山岳で抜群の安定感を見せた。また、自らのアタックでライバルの消耗を誘うなど、ログリッチェとの共闘で幅のある戦術が生まれた。ログリッチェもジロを終えた段階でツール出場判断をするとしており、今年の再現、いやさらに上をゆく活躍が見られる可能性も高まっている。クライスヴァイク自身は、現実的な目標として総合表彰台を掲げており、パリ・シャンゼリゼのポディウムに立つ自らの姿をイメージしているようだ。

総合エースの1人、ジョージ・ベネットの走りも注目が集まる =ジロ・デ・イタリア2018第14ステージ、2018年5月19日 Photo: Yuzuru SUNADA

 この2人に負けず劣らず、ジョージ・ベネット(ニュージーランド)も頼りになる存在。今年はジロで個人総合8位としたほか、1週間程度のステージレースでも確実にトップ10入りを果たしている。こちらは例年通り、年明けすぐの国内選手権でシーズンインし、サントス・ツアー・ダウンアンダーでの上位進出を狙う公算。グランツールに関しては明言していないが、ログリッチェやクライスヴァイクと同様に、重要な役割が与えられることになるだろう。

 そのほか、今年8月のツアー・オブ・ユタを制し、その後のブエルタでは山岳で好アシストを見せたセップ・クス(アメリカ)や、10月のジャパンカップで来日したクーン・ボウマン(オランダ)などもステージレースで活躍が期待される選手。来年は総合エースを任されるレースが出てきそうだ。

フルーネウェーヘンら軸となる選手たちがそろう

 主軸選手は、グランツールやステージレースのエースクラスにとどまらない。

ツール・ド・フランス2018でステージ2勝を挙げたディラン・フルーネウェーヘン。2019年は第1ステージ勝利でマイヨジョーヌ着用を目指す =2018年7月14日 Photo: Yuzuru SUNADA

 プロトンきってのスーパースプリンターに成長したフルーネウェーヘン。今年のツールは、第12ステージのアルプ・デュエズ登頂を果たせず大会を去ったが、それまでにステージ2勝と及第点の走りを見せた。シーズンを通しても、勝利数ランク2位タイとなる14勝と活躍。ティモ・ローセン(オランダ)らとの連携も構築できており、トラブルさえなければ、その勢いはまだまだ続くことだろう。ベルギー・ブリュッセルが舞台となるツール2019第1ステージを制し、マイヨジョーヌに袖を通すことを目標とする。

スプリンターとして存在感を示しているダニー・ファンポッペル =ブエルタ・ア・エスパーニャ2018第1ステージ、2018年8月25日 Photo: Yuzuru SUNADA

 スプリント路線では、ダニー・ファンポッペル(オランダ)も頼もしい。19歳でツール出場を果たし話題になったのが2013年のこと。以来、トップチームを渡り歩き、相応の結果を残してきたが、念願の自国チームで飛躍しようと意気込んでいる。今シーズンは3勝にとどまったが、本来のスピードと勝負強さがあればそれを上回る勝利数を稼ぎ出すことは大いに可能。同い年のフルーネウェーヘンをライバル視しているあたりもおもしろい。

トニー・マルティンがユンボ・ヴィスマに加入。タイムトライアルでの復権をもくろむ =ジロ・デ・イタリア2018第10ステージ、2018年5月15日 Photo: Yuzuru SUNADA

 新加入組では、やはりトニー・マルティン(ドイツ)が大きなトピック。2シーズン過ごしたカチューシャ・アルペシンからの移籍希望を出していたことが欧米のサイクルメディアを中心に報じられていたが、“本職”であるタイムトライアルでもうひと花咲かせようと、新たな環境に身を置くことを決意した。来年で34歳となるが、豊富な経験とプロ意識を若い選手の多いチームに浸透させる役割も担う。グランツールやステージレースでのアシストとしても首脳陣から高く計算されている。

パヴェスペシャリストのマイク・テウニッセンが加入。チームのクラシック路線を強化する =パリ〜ルーベ2018、2018年4月8日 Photo: Yuzuru SUNADA

 チーム サンウェブから移籍のマイク・テウニッセン(オランダ)も、クラシックシーズンの走りに注目が集まる1人。今年はドワーズ・ドアー・フラーンデレンで2位、パリ~ルーベでも11位と健闘。今年の北のクラシックは、ヴァンアールトとの共闘が実現しそう。またスプリント力も高く、平坦貴重のコースでは勝負を任されることも考えられる。

 チームは12月21日、オランダ中部・ウェフテルにあるユンボ本社でチームプレゼンテーションを開催。これまで同様、サイクリングチームとスピードスケートチームを設置し活動を行っていく。このプレゼンテーションに合わせて、サイクリングチームに所属する27選手を正式に発表している。なお、タイトルスポンサーであるユンボ社は、オランダの大手スーパーマーケットチェーン。ヴィスマ社はノルウェー・オスロに本部を置き、オランダを含むヨーロッパ16カ国、さらには南アメリカにも法人を設けるビジネスソフトウェア企業。チームカラーはこれまで通りイエローとブラックで、選手たちが着用するキットにあしらわれる。

ユンボ・ヴィスマ 2018-2019 選手動向

【残留】
ジョージ・ベネット(ニュージーランド)
クーン・ボウマン(オランダ)
フローリス・デティエ(ベルギー)
パスカル・エーンクホーン(オランダ)
ロベルト・ヘーシンク(オランダ)
ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ)
アムントグレンダール・ヤンセン(ノルウェー)
ステフェン・クライスヴァイク(オランダ)
セップ・クス(アメリカ)
トム・レーゼル(オランダ)
ベアトヤン・リンデマン(オランダ)
パウル・マルテンス(ドイツ)
ダーン・オリヴィエ(オランダ)
ニールソン・ポーレス(アメリカ)
プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア)
ティモ・ローセン(オランダ)
アントワン・トルホーク(オランダ)
ヨス・ファンエムデン(オランダ)
ダニー・ファンポッペル(オランダ)
マールテン・ワイナンツ(ベルギー)

【加入】
ローレンス・デプルス(ベルギー) ←クイックステップフロアーズ
レナード・ホフステッド(オランダ) ←チーム サンウェブ
トニー・マルティン(ドイツ) ←カチューシャ・アルペシン
マイク・テウニッセン(オランダ) ←チーム サンウェブ
タコ・ファンデルホールン(オランダ) ←ロームポット・ネーデルランセローテライ
ヨナス・ヴィンデゴール(デンマーク) ←チーム コロクイック

【退団】
エンリーコ・バッタリーン(イタリア) →カチューシャ・アルペシン
ラルス・ボーム(オランダ) →ロームポット・シャルルス
スタフ・クレメント(オランダ) →引退
ブラム・タンキンク(オランダ) →引退
ハイス・ヴァンフック(ベルギー) →CCCチーム
ロバート・ワーグナー(ドイツ) →チーム アルケア・サムシック

※12月25日時点

今週の爆走ライダー−アムントグレンダール・ヤンセン(ノルウェー、ユンボ・ヴィスマ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 ノルウェー企業としては初めてとなるUCIワールドチームへのスポンサード。それを実現したヴィスマ社のバイタリティーは、同国のスポーツ関係者に大きな驚きと希望を与えているのだという。そんなチームで唯一のノルウェー人ライダーであるヤンセンには、アンバサダー的な存在となることが期待されている。

ユンボ・ヴィスマ唯一のノルウェー人ライダー、アムントグレンダール・ヤンセン =ツール・ド・フランス2018第1ステージ、2018年7月7日 Photo: Yuzuru SUNADA

 もちろん、自らの活動範囲をマーケティング面だけにとどめるつもりはまったくない。チームも彼を主力と見ており、今年と同様に北のクラシックとツール・ド・フランスをメインとした2019年のレースプログラムを与えた。

 ヤンセンにとってパーフェクトな1年だったという今シーズン。パリ~ルーベでの16位フィニッシュに続き、大抜擢となったツールではフルーネウェーヘンのためにリードアウトで貢献。自身の勝利こそ挙げられなかったが、チームメートや首脳陣からの信頼は完全につかんだ。

 自信を胸に、来シーズンも「夢のようなレースプログラム」を戦うことになる。目の前にあるターゲットは、ルーベでのトップ10フィニッシュ。そして、ツールでは再びフルーネウェーヘンを支える。マイヨジョーヌを着用を目指すエースのために最大限尽くすつもりだ。

 プロ3年目を迎えようという24歳がチームに順応した背景には、オランダ語の早期習得があったのだとか。レース内外で高い評価を獲得し、居心地がよいという現チームでさらなる飛躍を誓う。

 元世界王者のトル・フスホフトや、現在もプロトンの中心として活躍するエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ディメンションデータ)など、強いインパクトを残すノルウェー人ライダー。それに続くであろう北欧の猛者がまた1人、トップシーンに躍り出た。

すでに2019年シーズンは北のクラシックとツール・ド・フランスがメインにすることが内定。チームからの高い期待を受ける =ツール・デ・フランドル2018、2018年4月1日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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