サイクルロードレース年末年始コラム<4>2018年の10大ニュースを紹介! スポンサー問題続出、五輪コース決定、フルーム無罪など

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 サイクルロードレースは幸か不幸かポジティブなニュースからネガティブなニュースまで、何かとお騒がせなスポーツである。今年も様々なニュースが巻き起こった。そこで、レース結果以外に関するサイクルロードレース界の10大ニュースを時系列順に振り返っていきたいと思う。

スポンサー問題が巻き起こったBMCレーシングチーム、チーム スカイ、クイックステップフロアーズ Photo: Yuzuru SUNADA

アスタナ動画が話題に

 SNSが発達した近年では、各チームによるソーシャルプロモーションが盛んだ。ミッチェルトン・スコットはYouTubeチャンネルにてチームの舞台裏を撮影した動画を、チーム スカイはTwitterやYouTubeにて、選手のインタビュー動画やレクリエーション動画を公開している。

 そのなかで、アスタナプロチームが2月14日に公開した動画が話題を呼んだ。

 ダリオ・カタルド(イタリア)が主人公となり、バレンタインデーにちなんでロードバイクを女性に見立てた1分44秒のショートムービーだ。ストーリー性の高さとカタルドの名演技が反響を招いた。

レース中に落車したホーラールツが逝去

 4月8日に行われたパリ〜ルーベに出場していたマイケル・ホーラールツ(ベルギー、ヴェランダスヴィレムス・クレラン)が落車し、意識不明の心肺停止状態となり、同日夜に搬送先の病院で息を引き取った。後の病理解析によると、ホーラールツはレース中に心臓発作が起こり落車したとのこと。将来有望な23歳の訃報にサイクルロードレース界は悲しみに包まれた。

2017年ツール・デ・フランドルを走るマイケル・ホーラールツ Photo: Yuzuru SUNADA

 近年は自転車に限らず、試合中に心臓発作が原因で亡くなることが多く見受けられる。そのため、10月にはプロ1年目のタンギー・テュルジス(フランス、コフィディス ソルシオンクレディ)が心臓に問題があることが発覚し、志半ばで引退を余儀なくされるというケースも散見される。

 現状のルールでは、選手たちは心臓検診を受ける義務はない。先駆けてイギリス自転車連盟は、イギリス人ライダー全員に定期的に心臓検診を行うことを発表。しかし、ホーラールツをはじめ、実際に心臓発作が起きた選手たちの多くは、事前の検査で異常が見つかっていなかった。

BMCがスポンサー撤退

 昨シーズンまでも何度もスポンサー撤退の噂はあった。しかし、BMC社のオーナーであるアンディ・リース氏の強い情熱が、BMCレーシングチームを存続させていたといっても過言ではない。それもいよいよ厳しく、2018年限りでBMCはスポンサーを撤退することが濃厚に。さらに追い打ちをかけるように、リース氏が2018年4月18日に白血病のため死去。後ろ盾をも失ったことでチームは解散の危機に陥っていた。

 BMCレーシングGMのジム・オショヴィッツは後継スポンサー探しに奔走するも、見つからないままツール・ド・フランスが開幕。すると、大会期間中の7月16日に新スポンサーにポーランド企業のCCC社が就くことを発表した。

CCCチームでもGMを務めるジム・オショヴィッツ Photo: Yuzuru SUNADA

 CCC社は1996年にポーランドで創業。靴の小売業を営み、1999年には「価格は奇跡を生み出す」という意味のポーランド語「Cena Czyni Cuda」を縮めて「CCC」という社名になった。日本でいうABCマートやのような会社である。現在では靴だけでなくバッグなども取り扱い、ポーランド国内でのシェア率は25%とされる。国外展開も推進しており、チェコ、スロバキア、ハンガリーなどの中欧諸国やロシア、セルビア、エストニア、ラトビアなどの東欧諸国に進出している。

 また、プロコンチネンタルチームであるCCC・スプランディ・ポルコウィチェのスポンサーを2000年から務めていた。新CCCチームはオショヴィッツ率いるBMCレーシングの母体であるコンティニュアム・スポーツ社が引き継ぎ、現CCCチームはコンチネンタルチームのCCCディベロップメントチームとなり、新CCCチームの下部組織として活動を継続する。

ジロがイスラエルで開幕

 ジロ・デ・イタリア第101回大会はイスラエル・エルサレムで開幕した。グランツールがヨーロッパ以外の地域でスタートするのは史上初のことだった。

 イタリアから直線距離にして2000km離れており、チームバスや機材など物流の問題もさることながら、パレスチナ問題など政治問題・治安問題に不安を抱えていた。そこへアメリカ政府は2017年12月にエルサレムをイスラエルの首都として認める方針を示し、翌年2月には大使館を同5月にエルサレムに移転すると発表。イスラエルでは反対デモが繰り広げられるなど、治安面に不安を残したまま開幕を迎えた。

イスラエル国旗を掲げて沿道観戦する人々 Photo: Yuzuru SUNADA

 ジロ主催者とイスラエル政府は当初から一貫して「安全面には一切問題が無い」と強気の姿勢だった。実際に開幕してみると治安面では全く問題なく、むしろ参加した選手からはヨーロッパの都市部より安全であるという声も上がるほどだった。治安に問題があるのは、ガザ地区やヨルダン川西部など一部の地域に限られた話であり、レースが行われた地域に関しては何の問題も無かったそうだ。

 それ以上に沿道に詰めかけるファンの熱気が凄まじく、イスラエルでのレース開催は成功したといえそうだ。

フルームのサルブタモール問題の無罪が確定

 2017年12月、同年のブエルタ・ア・エスパーニャ期間中で採取されたクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)の尿サンプルより、基準値を上回るサルブタモールが検出されていたことがUCIより発表された。フルームとチーム スカイ側は持病の喘息を治療する目的でサルブタモールを使用した結果であると主張。基準値を越えた状況説明をするため、そしてUCIが無罪もしくは出場停止等の処罰などを下すかどうか判断を待つ状況となった。

 ところが2018年に入っても、表立った進展が見られず。フルームはルールに従ってレースへの出場は可能だったため、予定どおりジロ・デ・イタリアへ出場。大会前半は明らかに不調な場面も見られたが、第19ステージで歴史的な80km独走勝利を飾り、大逆転で総合優勝を決めた。

未舗装路のフィネストレ峠を独走するクリストファー・フルーム Photo: Yuzuru SUNADA

 サルブタモール問題は未解決のまま、総合4連覇のかかるツール・ド・フランスへの出場を表明。ところが、ツール主催者のASOが大会1週間前の7月1日にフルームに対して出場拒否すると発表。するとその翌日にUCIがフルームへの処罰を行わず、サルブタモール問題の手続きの終了を発表。急転直下の無罪判決の末、出場したツールではチームメイトのゲラント・トーマス(イギリス)が総合優勝を飾り、フルームは総合3位となった。

東京五輪自転車ロードレースのコース決定

 8月には東京オリンピック2020の自転車ロードレースのコースが発表された。男子エリートの獲得標高は4700mに達し、7月下旬に開催されることもあって、高温多湿な気候が選手たちに襲いかかることも想定される屈指の難関コースとなっている。また2019年7月にはプレ大会の開催も決定し、ヨーロッパで活躍するトップ選手たちの来日が期待されている。

 今年の世界選手権を制したアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスターチーム)は「2020年の東京オリンピックまでは現役を続けたい」とインタビューで答えており、40歳でのメダル獲得に意欲を燃やしている。真夏に1都3県をまたぐ大規模なサイクルロードレース開催にあたって不安の種は尽きないが、ファンにとっては超一流選手を間近で見られるまたとないチャンスとなるだろう。

クイックステップがスポンサー探し難航

 7年連続シーズン最多勝となる73勝をあげたクイックステップフロアーズだが、2019年シーズンのメインスポンサー探しに難航した。仮にスポンサーが見つからずとも、翌シーズンは活動を継続できる財政的な余力はあるとのことだったが、最多勝チームですらスポンサー探しに難航する事態に、少なからずショックを受けたファンも多かったのではないかと思う。

 10月に入って、ドゥクーニンク社とのスポンサー契約を締結、来季のチーム名が「ドゥクーニンク・クイックステップ」となることも合わせて発表された。解決まで長引いたこともあり、主力のフェルナンド・ガビリア(コロンビア)がUAEチーム・エミレーツへの移籍を決めてしまった。

ツール・ド・フランス第1ステージで勝利したフェルナンド・ガビリア Photo: Yuzuru SUNADA

 ドゥクーニンク社は1937年に創業されたベルギー企業で、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)を使用した窓枠、ドア枠、天井、シャッター、インテリアなどを製造する会社。同ジャンルにおいてヨーロッパでは3本指に入る大企業だ。また、同社のロゴカラーは青。伝統的に青色のジャージを着用してきたクイックステップのアイデンティティは守られることとなった。

EFのアフターパーティーがヤバい

 ジャパンカップサイクルロードレースの後には、各所でアフターパーティーが開催される。なかなか間近で見ることのないトップ選手たちと交流できる貴重な機会となっている。

 筆者はEFエデュケーションファースト・ドラパックのパーティーを取材した。スタート30分前に会場前の待合いスペースのソファに座って待機していると、全身ピンクの集団がわらわらとパーティーが行われる会場へ入っていった。筆者は場所を間違えたかなと思い案内メールを確認したのだが、何回見ても、異質なピンク集団がなだれ込んでいった会場が開催場所に違いなかった。

パーティー中、壇上で踊りまくるピンクの集団 Photo: Yuu AKISANE

 パーティー中にはDJが爆音で音楽をかけながら、全身ピンクの集団が選手を巻き込んで踊りまくるなど、もう「ヤバい」としか形容しようがない熱狂的な空間だった。取材を進めていくと、全身ピンクの集団はEFエデュケーションファースト社の社員であることが判明。このようなパーティーでは、全身タイツを着て派手に騒ぐのがEF流だそうだ。オリンピックの公式スポンサーを務めるお堅い会社というイメージは完全に崩れ去った。

 キャノンデール広報の方が言うには「これが本場の雰囲気」とのことだった。本場のパーティーを実際に体験したことがないので、真偽の程は不明であるが、少なくとも日本のサイクルロードレース界に対して革命的な衝撃を与えたパーティーだったといえよう。そして、不思議と来年もEFエデュケーションファースト・ドラパックのアフターパーティーに行きたい気持ちになっているのだ。

ビッグネームとベテランの移籍ラッシュ

 今年の主な移籍情報をまとめてみた。

2018年オフ移籍情報

リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシングチーム)→トレック・セガフレード
ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)→バーレーン・メリダ
ディラン・トゥーンス(ベルギー、BMCレーシングチーム)→バーレーン・メリダ
ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシングチーム)→バーレーン・メリダ
シュテファン・キュング(スイス、BMCレーシングチーム)→グルパマ・エフデジ
ダニーロ・ウィス(スイス、BMCレーシングチーム)→ディメンションデータ
ニコラス・ロッシュ(アイルランド、BMCレーシングチーム)→チームサンウェブ
ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)→EFエデュケーションファースト・ドラパック
フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)→UAEチーム・エミレーツ
ニキ・テルプストラ(オランダ、クイックステップフロアーズ)→ディレクトエネルジー
マクシミリアン・シャフマン(ドイツ、クイックステップフロアーズ)→ボーラ・ハンスグローエ
トニー・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)→ロットNL・ユンボ
カレブ・ユアン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)→ロット・スーダル
ヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)→アスタナプロチーム
ゴルカ・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)→アスタナプロチーム
ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、バーレーン・メリダ)→ウィリエール・トリエスティーナ
ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、アスタナプロチーム)→ディメンションデータ
セルジオルイス・エナオ(コロンビア、チーム スカイ)→UAEチーム・エミレーツ
アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・スーダル)→アルケア・サムシック
ラルス・ボーム(オランダ、ロットNL・ユンボ)→ルームポット・チャールズ
ローレンス・テンダム(オランダ、チームサンウェブ)→CCCチーム
サイモン・ゲシュケ(ドイツ、チームサンウェブ)→CCCチーム
ワウト・ヴァンアールト(ベルギー、ヴェランダス・ウィレムス・クレラン)→ユンボ・ヴィスマ

 いわゆるビッグネームの移籍が多いように思える。特にシーズン前半からスポンサー問題を抱えていたBMCレーシングからは、引退選手を含め17人が退団。そのうちポートやデニスといったスター選手を含む15人がワールドチームへ移籍したため、CCCチームはもはや別チームといえる体制になっている。他にはマルティン、ユアン、イサギレ兄弟らが活躍の場を求めて移籍するなど、今年の移籍市場は活発に動いていた。

 またテルプストラ、グライペルなど長年ワールドチームで活躍してきたベテラン選手のプロコンチネンタルチームへの移籍も目立つ。まだまだワールドツアーで勝てる力を持ちつつも、新天地では若手の指南役を兼ねてプロ選手として終盤のキャリアを歩む決断だ。

 12月にはシクロクロス世界王者のヴァンアールトがユンボ・ヴィスマへの移籍を発表。旧所属チームとは契約問題をこじらせ、今冬のシクロクロスレースにはチーム無所属として出場していたため、ひとまず一件落着といえよう。

スカイが2019年限りでスポンサー撤退を発表

 BMCとクイックステップのスポンサー問題だけでもお腹いっぱいのところに、今度はチーム スカイのメインスポンサーを務めるスカイ社が2019年限りでのスポンサー撤退を発表。年間50億ともいわれる大規模な予算を注ぎ込んでいた大型スポンサーの撤退に、サイクルロードレース界に激震が走った。

 ひとまず2019年は現体制で戦うことができるものの、2020年以降も活動継続するために新スポンサー獲得を模索することとなる。現時点では2020年以降の活動について、何も決まっていない。BMCのようにスポンサー問題が長引くほど主力選手の移籍が加速してしまうため、チームの骨格を守るためにも早めに2020年以降のスポンサーが決まることを願うばかりだ。

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