新春インタビュー2019<4>山本幸平、東京五輪に向け「やることをやれば出られるし、やると決めてます」

by 大澤昌弘 / Masahiro OSAWA
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 2018年、全日本MTB選手権のクロスカントリーで10度目の制覇という偉業を遂げた山本幸平(Dream Seeker Racing Team)。国内では敵なしの山本だが、2017年は落ちるところまで落ちていた。2018年は復調。山本を取り巻く環境も大きく変化した。ドリームシーカーレーシングチームのMTB部門を立ち上げ、プライベートでは子供が生まれて家族も増えた。山本の現況に触れつつ、2019年シーズンの目標を聞いた。

2018年の年末にインタビューに応じてくれた山本幸平 Photo: Masahiro OSAWA

どん底から持ち直した2018年

―2018年シーズンを総括してください。

 2017年に結婚し、2018年6月に娘が生まれたり、ドリームシーカーレーシングチームのMTBチームを立ち上げたり、自分を取り巻く環境が大きく変化したシーズンでした。プライベートの変化は競技にも力になってくれましたし、レースには若手と一緒に海外遠征したり、チームを作るうえでスポンサーとの関わり方を知ったりするなど、様々なことを学んだ年でした。

―UCIランキングも2017年からは持ち直しましたね。

 2017年は選手として研ぎ澄まされていませんでした。練習時のデータはいい数値が出ていましたが、レースとうまくかみ合いませんでした。スタートするとダメなんです。レースを想定した練習をしなければなりませんが、練習メニューをこなすだけで、レースで勝つための練習に結び付けられていなかったように思います。レースに向けた思いに欠けている部分もあったと思います。

―持ち直したのはいつからだったのでしょうか?

 気分的にも変わったのは、2017年の9月にオーストラリアのケアンズで行われた世界選手権です。レースに向けてしっかりと練習できたし、気持ちも持っていけました。レース後の達成感もあって、気持ちよく終えられた感じです。

私生活の変化がプラスに

―結婚、子供の誕生と、生活環境が大きく変化しましたね。

2018年全日本選手権で10度目の日本一に輝いた山本。6月に誕生した娘の写真を手に Photo: Kenta SAWANO

 メンタル面がかなり変わったと実感しています。取り組むことすべてにおいて、質が違ってきているのかなとも思います。独身のときは、練習後に料理、洗濯、掃除、買い物など、家事をしなければいけませんでした。結婚したことで、お互いにできることを分担するようにしています。料理は妻にお願いしていますが、プライベートの時間が楽になりました。

―奥様の敬子さんは元トライアスリートですよね。食事の気遣いもありそうですね。

 トライアスロンの第一人者なので、食事面はばっちりですね。彼女自身も本気で競技に取り組んでいたので、理解してもらえることが多いです。練習の大切さもわかってもらえるし、その後の昼寝の重要さも理解してくれる。普通の女性だったら昼寝の大切さはわからないですよね。昼寝をするときは、子供と別々の場所で寝かせてくれたりと、いろいろと気遣ってもらえて、サポートしてもらっています。

 環境が変化したことで、練習と練習以外の切り替えがうまくいくようになったと思います。以前は、神経を尖らせている時間が多かったのですが、それが短くなったというか、今は練習から帰ってきて、落ち着けるようになりました。生活が変わって、トレーニングと私生活の切り替えはやはり必要だなと。リラックスできるところがあるからこそ、レースでもさらに頑張れると思っています。

―若いころは違っていましたか?

 世界チャンピオンを目指して、日本人がいない海外で約10年活動を続けてきました。常に研ぎ澄ませながら日々を過ごしてきました。頭はいつもフル回転の状態です。言わば孤独ですよ。孤独で「やるしかない」という状況に自らを追い込みました。若い頃はそれでよかったと今でも思っています。

―一人で10年も生活すると内向きな性格になりそうです。ブログは前向きな言葉が並んでいます。前向きでいられることが不思議なのですが…。

 僕にはそれができるんですよ。日本人の僕ただ一人だけで、チームを渡り歩いて、チームメートとコミュニケーションをとってきました。大して言葉は話せませんが、コミュニケーションはとれます。そもそもですが、24時間を過ごすなら、楽しく過ごせたほうがいいじゃないですか。だから海外に行っても頑張れます。

 それから、「アジア人でもできるんだ」というところを見せてやるという思いも強かったです。ワールドカップでトップ10に入れたら、それが本気で言えるなと思っています。今はまだ15位が最高位なので、そこをめがけて「やるんだ」という状況ですけど…。

ワールドカップでトップ10入りのポテンシャルはある

―その目標はまだ変わっていませんか?

ポテンシャルはある、やるべきことをやれば結果はついてくるという言葉が印象的だった Photo: Masahiro OSAWA

 変わっていません。様々なことがかみ合えばトップ10に本当に入れます。そのポテンシャルは絶対にあると思っています。練習、食事、リカバリー、会場までの行動ルート、すべてがうまくハマる行動というか、そうした考えを持たないと、あの舞台では戦えません。

 最近になって、ブラジル出身の選手も活躍していますが、突き詰めると、ヨーロッパのスポーツですね。そこにいかに馴染んで、スタートできるかが、重要だと僕は思っています。僕は長らくヨーロッパで暮らしてきたし、顔はみんなに知れているので、そこはクリアできていると思います。だから、あとは練習、質だなと。

―2019年は日本を拠点にして、ワールドカップで10位以内を目指すと。

 まずはシーズンを気持ちよく走って、感覚も研ぎ澄まされていけば、ワールドカップで上位にいけるかもしれない。ガツガツしないで、日々成長を感じながら、やれたらいいかなと。

―日々成長を感じながら…、というのはどのあたりを指しているのでしょうか?

 練習前に行うストレッチの研ぎ澄まされ方です。2015年のケアンズで落車してから、僕の体は狂ってしまいました。それまでは、自由自在に動いて、すべてが順調でした。その落車でイメージ通りに体が動かなくなり、成績も下がってしまった。もう一度、体の動きに集中したら、何か変わるかもしれないと思い、ストレッチにフォーカスしています。

 いろいろな動きをしていて、ウォーミングアップの段階で研ぎ澄まされると、いい動きができます。もちろん、2017年もやっていましたが、それが投げやりになっていたかなと。オフの今は体がどう反応するのかを試しています。自転車の練習というより、ストレッチが勝負という感じです。

―競技の結果よりも体の動きにフォーカスしていますか?

 今はそうですね。ポテンシャルはあると思っているので、それがうまくいけば、成績(ワールドカップでトップ10入り)は勝手についてくると思っています。ただし、全日本選手権やアジア選手権など日本やアジアで行われるレースは絶対に勝たないといけません。負けられないレースです。

2018年の全日本選手権。国内レースは山本にとって負けなられないレースに位置づけられる Photo: Kenta SAWANO

―東京五輪は、2019年5月下旬からの一年間が選考対象期間となります。五輪出場の自信は?

 考えているというか、選考されることを前提にして生きているので、もし、出られなかったとしても、悔いはないですね。100%やることをやっておけば、納得できると思います。中途半端になって、やるべきことをやらなかったら、後悔してしまいます。やることをやれば選ばれるし、出ると決まったら最終調整もできます。もう、僕は、やるべきことをやると決めてます。

後継者、北林力の成長を楽しみに

―2018年3月にドリームシーカーの立ち上げを発表しました。いつから動いていたのですか?

 チームの立ち上げは世界選の前から考えていて、当初はアジアのドリームチームを作りたいと思っていました。ワールドカップにフル参戦し続ける選手は、アジアの中では僕だけ。それが悔しい。アジア人だってできると言いたい。そういう気持ちがあって、チームを作ろうと動いて、声をかけてみたものの、資金面を含めてうまくいかなかった。そうした流れで、2020年には東京五輪も待っているし、日本人のチームを作ろうと考えました。

 チームの立ち上げとなると、予想よりも大きな予算になるので、そこを理解してくれるのがなかなか難しかったのですが、メインスポンサーの日本写真判定の渡辺俊太郎社長には、自転車競技全体を広めたい、伝えたいという気持ちを持っておられ、チーム立ち上げに至りました。

ドリームシーカーレーシングチームのマウンテンバイク部門が結成。写真中央が山本幸平、左隣が北林力©Dream Seeker

―2019年、ドリームシーカーとしての目標は?

 チームメートでまだ18歳の北林力に期待したいですね。力君がU23の全日本選手権で優勝して、エリートは僕が勝つと。

―北林選手は山本選手の後継者ともいわれていますが、どんな出会いでしたか?

 全国小学生・中学生マウンテンバイク大会で、体も大きいし、いい走りをしているなと。その後、一緒に走る機会があって、走ってみたら、僕よりスプリント力があった。「なんだ、この子!?」という感じです。MTBと並行してスキーをやっていて、スキーでも実績を残していて、下りも僕より速いので、ポテンシャルはすごくあると思います。

 そんな力君と2017年の夏に話す機会があって、彼から「MTBに絞りたいので、スキーを辞める」と聞いていました。その後、力君の両親と話しをしたところ、MTBの選手としてやっていくことに理解を示してくれていましたので、チームの一員になりました。力君はハーフでルックスもいいし、これからのMTB界を引っ張っていってほしいです。春先からどれだけ伸びるか楽しみです。

五輪プレイベントにも期待

―日本のMTBレースについて、どう感じていますか?

 長らくファクトリーチームに所属していたので、全日本選手権以外、日本のレースには出られませんでした。けれど、日本で走っていても強くはなれないと思っています。海外とは選手層が違うし、そもそものコースが違います。ワールドカップと国内のレースコースを比べると、難易度というかタフさが全然違います。

 アジアでクロスカントリーのワールドカップが行われたことがないので、誰も本物のサーキットを知らないのだと思います。その意味で、今年10月に行われる五輪のプレイベントはいいきっかけになるのではないでしょうか。

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