『Cyclist』が選ぶ今年の注目ニュース<2>航空輪行問題にテコ入れなるか JAL「エスビーコン」今後の展開に期待

by 後藤恭子 / Kyoko GOTO
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エスビーコンと日本航空、せとうち観光推進機構、S-WORKSの関係者の皆さん(=2018年6月22日撮影) Photo: Kenta SAWANO

 『Cyclist』編集部の記者が選ぶ「今年の注目ニュース」。旅好き記者、後藤恭子が注目したニュースは今年6月に報じられた記事、『JALが飛行機輪行用ロードバイク輸送ボックス「エスビーコン」を発表』です。様々な意見があり、課題も指摘されているサービスですが、個人的には大きな目で見てまずは航空会社が自転車の輪行旅に着目し、航空輪行のあり方にテコ入れしたことは歓迎すべき動き。ここを出発地点とした今後の展開に期待を込め、一サイクリストとしてエールを送りたいと思います。

読者から寄せられたたくさんの反響

 このニュースが発表された当時、読者の皆さんから非常に大きな反響がありました。SNSでの反響も基本的には歓迎ムードで、各コメントから、これまでいかにサイクリストが航空輪行で苦労してきたのかがうかがい知れました。

記事に対してツイッター上で寄せられた読者の反応 ©Cyclist

 多くの方が目にしたニュースだとは思いますが、「今知った!」という方に簡単に説明しますと、「エスビーコン」(SBCON)は「Smart Bicycle Container」の頭文字をとった略称。JALが掲げる「新・JAPAN PROJECT」のテーマの1つ、「交流人口(※)の拡大」を目指す施策として開発されたものだそうで、つまりはサイクルツーリズムの促進を目的とした輪行サービスです。現在は羽田空港を拠点とするモニターツアーに限定して試行的に運用しています。

※交流人口:地域に訪れる(交流する)人。「定住人口」に対する概念

 ボックスはプラスチック製の段ボールで作られており、内部には車体を固定するためのパーツが配置。空いたスペースにはシューズやヘルメットが入れられる空間が設けられてます。

 サイズは縦170cm、横52cm、高さ94cm。身長175cm前後の人が乗るバイクのサイズまで対応し、かつ格納する荷物コンテナの形に合わせてデザインされています。収納作業としては前輪を外すだけで、ハンドルや、高さによってはシートポストも動かす必要はありません。ペダルを定められた台座に載せながら車体を後輪と一緒に固定台に差し込めば収納完了。とても簡単です。

ストレスフリーな航空輪行

 11月に某イベントと組んだツアーパックとして、羽田─熊本間でエスビーコンを利用する機会がありました。普段、航空輪行をする際はプロテクション性能のある専用の輪行ケースを使用していますが、その際、重いケースをもって電車輪行できるほどの腕力がないため、ケースごとクルマで空港まで搬送するか、最寄りのリムジンバスの停留所までタクシーで運び、バスに載せて行くかのどちらかしか手段がありませんでした。

最寄りのリムジンバスの停留所まで自走でアクセスし、通常の輪行で羽田空港へ。なんて快適 Photo: Kyoko GOTO

 しかし、エスビーコンがあるおかげで、いつもの“ペラペラ輪行袋”を使った輪行で空港にアプローチできました。最寄りのリムジンバスまでスイーっとひと漕ぎし、バスで輪行。そのまま指定された空港内の手荷物検査場に行き、輪行解除。スタッフさんの案内を受けながら自分の手で梱包しました。

 地方の空港と違い、羽田空港は自走アプローチができない(難しい)エリア。こういうサービスができたことを機に空港そのものがより開かれてほしいと期待する一方、自分が航空輪行をする際には大抵大きめの荷物も背負っているので、個人的には重たい輪行ケースを伴う移動が解消されただけでもかなり満足でした。

 何よりも、公私ともに国内外の航空輪行を何度も経験してきた者として歓迎すべきは、「破損しても責任をとりません」と言われながら不安な気持ちで愛車を渡さなくて良い点。もちろんこれまで通り免責事項にサインは必要なのですが、「これで守ります」と言ってもらう相手に愛車を渡すのでは、ストレスの度合いはまったく違います。

 ただ、案内するスタッフさんはまだ不慣れなようで、ボックスの周辺にたくさん人が集まっている様子に同サービスにかかる人件費が気になりましたが、話を聞くと皆さん「勉強したい」と集まっていたようで、それも含めた“試行”なのだと理解しました。

総出で梱包作業にあたるJALのスタッフの皆さん(阿蘇くまもと空港) Photo: Kyoko GOTO

 「ツアーでなく通常利用のオプションとして利用できるようになればニーズは拡大するのでは」とたずねると、「ボックスの利用価格や空港に乗れる状態のまま自転車を持ち運んでいいかなどは現在検討中で、モニターツアーで得られた意見を元に、箱と輸送手順など適宜改良を加え、将来的には個人客でも気軽に利用できる準備を進めていきます」という返事が返ってきました。その言葉通り、利用後に依頼されたアンケート用紙には質問項目がびっしり。本格稼働に向けて試行錯誤しているJAL側の様子が伝わってきました。

 今回は利用しませんでしたが、モニターツアーには宿泊先まで手荷物を送ってくれるサービスもついています。個人旅では荷物を軽減するため、宅配便を利用して事前に宿泊先へ荷物(着替え等)を送るなどしていたので、こうしたサービスもありがたいところ。ただ、人によっては不要という人もいるでしょうから、これによってコストがかさばるならば、この点はオプションか、あるいはエスビーコンのみのサービスだけでも良いのではと個人的には思いました。

利用者の声を受けた発展に期待

 航空輪行は世界中のサイクリストが抱える永遠の悩み。愛車を護るための輪行ケースは多種あれど、保護強度 vs. 訪れた先でのケースの処理(自宅での保管)、自転車のばらし度合い vs. ケースのコンパクトさ、そしてコストの見合い等など、何を優先するかによって求めるものが異なるため、万人に「これがベスト」と言える選択肢はありません。ただ、こんなに頭を悩ませている問題点は空輸時のリスクのみなのです。そこさえしっかり安全に運んでもらえれば、旅の足かせとなる輪行ケース問題から我々サイクリストは一気に解放されるのです。

 国内の航空輪行は、海外のそれと比べて壊れるほど手粗に扱われることはないと聞きますが、せっかく入れた“テコ”ですから、海外の航空会社に影響を与えるほどに、利用者の意見を吸収して実用的な方向へと発展していってほしいと思います。

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