商品開発担当者にインタビュー楽天損保の自転車保険「サイクルアシスト」 業界最安水準の年間1620円で高額賠償請求にも対応

by 後藤恭子 / Kyoko GOTO
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加害者側になる可能性もある自転車。高額な損害賠償請求はもはや他人事ではない Photo: iStock.com/akiyoko

 自転車側が加害者となり、高額な損害賠償を請求されるケースが相次ぐなか、けがの補償だけでなく対人事故時にも備えた自転車保険選びが求められている。しかし年間数千円の保険料等がネックとなり、いまだに普及していないのが現状だ。同業他社の商品は年間3000円台からラインナップされるなか、そのハードルを下げようと、業界最安水準の保険料を実現したのが楽天損害保険(以下、楽天損保)の「サイクルアシスト」。死亡・後遺障害、入院補償に最高1億円の個人賠償責任補償がつきながら保険料を年間1,620円に抑え、オリコン顧客満足度調査で第1位を獲得するなど、注目を集めている。

被害者にも加害者にもなる若年層

 自転車保険のニーズをどう読み解き、保険料と補償のバランスをどう作り出したのか、同社で商品開発を手がける商品開発部長の原田学さんと、同部商品開発課の岡本壮平さんに話を伺った。

Q, 「サイクルアシスト」を開発した背景を教えてください

楽天損保 商品開発部長の原田学さん Photo: Kyoko GOTO

原田 現在、自転車事故は約6分に1件の割合で発生しているといわれています。警察庁が発表した2017年の「交通統計」によると、年間の自転車乗用中の交通事故件数は9万407件と前年に比べて少し減少していますが、交通事故全体に占める割合は19.1%と、前年から増加しました。また、死傷者数は8万9368人と交通事故全体の死傷者数の15.3%を占め、歩行中の死傷者数に比べて約1.7倍と高い数値を示しています。

自転車乗用中の交通事故件数、およびその構成率の推移。自転車事故が交通事故全体の約2割を占める 出典:交通統計 平成29年度版
被害者のうち、半数を未成年者・高齢者が占める 出典:交通統計 平成29年度版

 事故の被害者と加害者の割合を年代別に見てみると、被害者として多い世代は未成年者と高齢者で、両世代を合わせると全体の半数を占めています。未成年者に関していえば、14歳以下が12.0%、15~19歳で18.6%と、この世代だけで全体の30%を超えます。一方で13~18歳以下の子供は加害者にもなりやすい点も特徴で、要するに被害者になるのも加害者になるのも若年者層が非常に多いという実態があります。

 さらに、こうした事故では請求される賠償額が非常に高額になっているケースも目立ってきており、中には1億円に迫る高額な賠償事案もあります。その加害者となるケースに未成年者が多いという点を踏まえ、最近は交通ルールの指導を強化する一方で自転車保険の加入を義務化する都道府県も増えており、「努力義務」も含めると2018年10月現在で18の都道府県または政令指定都市まで拡大しています。

Q, 高額なケースでは具体的に何を賠償しているのでしょうか?

岡本 被害者の症状や必要な治療費などによってさまざまですが、例えば将来にわたってかかる介護費や、事故によって得ることのできなかった逸失利益、けがの後遺症に対する慰謝料などが該当します。

「高額賠償請求のリスクに備え、“資力”を補うために自転車保険の加入を」と話す岡本壮平さん Photo: Kyoko GOTO

 1億円近く賠償請求された事例の補償内容をみると、被害者の平均余命などを勘案してそれぞれに数千万円が計上されています。特に被害者の意識が戻らない状態が続いているということで慰謝料などが高額となり、最終的に賠償額が跳ね上がりました。

 従来はクルマに対して自転車はいわゆる“交通弱者”で、自転車保険はサイクリストがけがから身を守るための手段でした。しかし近年は自らがサイクリストとして加害者になった場合に発生する高額賠償請求のリスクに備えて、“資力”を補うための手段としての必要性が高まっています。

Q, 自転車保険の加入は進んでいるのでしょうか?

原田 警察庁がまとめた2017年のデータ(「平成29年における交通死亡事故の特徴等について」)によると自転車運転者による対歩行者死亡・重傷事故のうち、損害賠償責任保険等の加入が確認された自転車運転者は約60%にとどまったというデータがあります。ただ、調査により加入率にはバラつきがありますし、自転車保険はまだまだ普及の途上にあると考えています。

保険料を安く抑えるシンプル設計

原田 その加入を阻む要因の1つとなっている保険料のハードルを少しでも下げるため、当社の「サイクルアシスト」は、お客様が自転車保険に求めている最大のニーズである賠償責任に特化し、簡単かつリーズナブルに加入いただけるシンプルな商品として設計しました。個人プランで基本タイプ、保険期間1年間の場合、保険料は年間1620円、月々わずか135円で死亡・後遺障害と入院を補償、そして個人賠償では最高1億円を補償します。

「サイクルアシスト」の特長 ©楽天損保

 また、日本国内で発生した賠償責任について、保険会社が示談交渉を引き受ける「示談交渉サービス」も用意しました。ご自身で示談交渉し、解決するには大きな労力や専門的な知識を要しますので、同サービスはサイクルアシストの特長の1つです。

 さらにサイクルアシストの契約プランには本人、カップル、ファミリーの3つがありますが、賠償責任の補償は契約プランを問わず、被保険者の家族も対象に含まれます。けがの補償は自転車事故以外のけがも含みますし、賠償責任は自転車以外の賠償事故を含みます。契約期間も1年から最長3年まで加入できるので、継続漏れや再契約の手間も省けます。

自身のけがや、対人の賠償責任も幅広く補償 ©楽天損保

Q, リーズナブルな価格を実現できた理由は?

岡本 販売チャネルがインターネット限定であることと、補償内容を簡潔にしたことです。けがの補償に通院を含まず、死亡と後遺障害、入院に限定している点、そして、人によって必要性が分かれるであろう、ロードサービス等の付帯サービスも外したことで保険料を抑えました。通院のリスクは変動しやすく不安定であるのに対し、死亡・後遺障害については比較的リスクが安定しているので、その点が長期での販売も可能にしています。

 ロードサービス等の付帯サービスは、頻繁に遠出したりするヘビーサイクリストにとっては有益なサービスですが、通勤、通学時のみ自転車を利用するというライトユーザーにとっては、そこまでのサービスは必要ないと考えます。もちろんヘビーサイクリストに加入していただくことも重要ですが、対人事故の多くは通勤や通学など一般歩行者と自転車が交わる道で発生しているので、その点に注力してシンプルな設計にしました。

Q, 保険料の安さを最優先した商品ということですね

原田 通院を補償した方が手厚い印象はありますが、保険料の高さが自転車保険加入のハードルになっている現状を踏まえると、まずは通院補償を対象外として安い保険料の商品を提供することで、自転車保険に対する認識を高める方が重要だと考えています。

Q, 楽天グループとしての今後の商品開発の方向性を教えてください

原田 2018年7月2日、当社は「朝日火災海上保険株式会社」から「楽天損害保険株式会社」へ社名変更しました。

「サイクルアシスト」について説明してくれた原田学さん(左)と岡本壮平さん(右) Photo: Kyoko GOTO

 従来の対面での代理店を通じた保険販売とともに、お客様のニーズに合わせ、主にeコマースを利用しているユーザーに対してサイクルアシストのような「わかりやすく簡便でリーズナブル」をコンセプトにさまざまな商品を開発していきたいと思っています。サイクルアシストは楽天グループ入りして第一弾の商品です。この他にも今後は自動車保険や火災保険など、同様のコンセプトで商品開発をしていく予定です。

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