血糖管理を身に付け選手としても成長強豪国ニュージーランドのトラックレースで優勝 1型糖尿病アスリート田仲駿太さん

by 石川海璃 / Kairi ISHIKAWA
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 11月30日から12月2日にかけて、ニュージーランドのインバーカーギルで行われたトラックレースの大会「サウスランド トラック チャンプス」に、1型糖尿病アスリートの田仲駿太さん(鹿屋体育大学)が出場した。トラック強豪国で開催された大会のケイリン種目で見事に優勝。Cyclistでは糖尿病を抱えながら海外レースで優勝した田仲さんに、競技を始めたきっかけや、1型糖尿病と競技の付き合い方について聞いた。

ケイリンで優勝し、表彰台に立つ田仲駿太さん Photo: Novo Nordisk Pharma

トラック強豪国で存在感を示す

 田仲さんは1999年大分生まれの19歳で大学1年生。今年鹿屋体育大学に進学したばかりだ。自転車競技を始めたのは、高校受験を控えた中学3年生の時で、近所に住む友人から自転車競技をやろうと誘われたことがきっかけだった。競技歴4年で今回、ノボ ノルディスク ファーマの「日本から世界へ、1型糖尿病アスリートの応援プロジェクト」の一環で、ニュージーランドのインバーカーギルで行われたトラック競技の大会「サウスランド トラック チャンプス」に参加した。

 今回参加した「サウスランド トラック チャンプス」はニュージーランドの南側、サウスアイランドの地区大会。しかし、大会に参加した総勢180人の選手の中には、2018年のジュニア世界選金メダル(団体追い抜き)のコービン・ストロングが参加するなど、非常にハイレベルなレースだった。

 ニュージーランドは自転車競技が盛んな国で、ジョージ・ベネット(ロットNL・ユンボ)やジャック・バウアー(ミッチェルトン・スコット)、サム・ウェブスターらロード、トラックレースを問わず、これまで数々のプロ選手を輩出している。中でもトラックレースでは、国別ランキングで3位に入るほど選手層が厚い。

「サウスランド トラック チャンプス」ケイリンでの一幕 Photo: Novo Nordisk Pharma

 田仲さんは、1型糖尿病患者で構成されるUCIプロコンチネンタルチーム「チーム ノボ ノルディスク(UCIプロコンチネンタルチーム)」の元選手でアンバサダーのジャスティン・モリス氏から、現地でのサポートと血糖管理のアドバイスを受け、エリートケイリン優勝、スプリント3位、1kmTT7位と出場した全種目で大活躍。慣れない環境と初の海外レースのストレスをものともせず、トラック強豪国で存在感を示した。

30kmの道のりを自転車で通学した高校時代

1型糖尿病を患いながらも現役の大学生アスリートとして活躍する田仲駿太さん Photo:Kairi ISHIKAWA

 友人に誘われるまでは「近くの高校に進学し、幼いころから好きなサッカーを続けるつもり」だったが、「車など車輪がついた乗り物が好きで、新しいことに挑戦するのも面白いと感じていました。色々悩んだ結果、友人と一緒に自転車競技部のある大分県立別府翔青高等学校に進学しました」と明かす。

 高校入学後は朝の練習も兼ねて片道約30kmをロードバイクで通い、めきめきと力を付けた。もともと長距離が得意だと自負していたが、「2年生のはじめに1kmや200mのタイムが自分でも驚くほど伸びたので、短距離に力を入れてみよう」と決意。日々の努力が実を結び、先輩たちと互角に戦えるようになった。その後は短距離種目でチーム・個人問わず、インターハイなど全国レベルの大会で数々成績を残し、自転車競技の第一線で活躍する選手になった。

1型糖尿病を発症「この先どうなっていくのだろう」

 しかし、ここまでくるには決して楽な道ではなかった。8歳から1型糖尿病という疾患を抱えていたからだ。「小学3年生に上がる前の3月頃から喉が渇き、トイレが近くなるなど、体の異変を感じた」という。その後病院に行くと医師から1型糖尿病と診断された。「言われた時は、糖尿病がどういう病気なのかあまり理解できませんでした」と当時を振り返る。

 1型糖尿病は自己免疫の異常やウイルス感染などにより、膵臓のβ細胞のインスリン分泌機能が無くなる疾患。生活習慣の悪化や遺伝が要因で発症する2型糖尿病と異なり、小児から思春期にかけて突然発症することが多い病気だ。

神妙な面持ちで発症した時を振り返る田仲駿太さん Photo:Kairi ISHIKAWA

 糖尿病に対しては「世間で広く認知されている2型の印象が強かったです。今後は食事や運動制限が課されるのではないかと疑問に思いました」。さらに「分からないなりに自分はこの先どうなっていくのだろうとか、病気としっかりと向き合えるのか」など、漠然とした不安が常にあったという。

 その不安を拭い去ったのが日本糖尿病協会が主催する「小児糖尿病サマーキャンプ」(※)。小学生から高校生までの1型糖尿病患者が集まり、3~7日間かけて生活を共にするもので、糖尿病と付き合っていくために必要な知識を習得することが目的としているイベントだ。「糖尿病歴が長い先輩患者から、自分の経験や病気との向き合い方、管理方法などをアドバイスしてもらいました。そこから病気に対するイメージがガラッと変わりましたね」と心境の変化を明かす。

※1967年から全都道府県で毎年開催。地域によっては未就学児も参加可能。

 キャンプ参加を機に自ら血糖管理を学び始めた。時には両親の協力を仰ぎながら、日々の体調や血糖値をノートに記録し、低・高血糖になるラインを探っていったという。その過程で「幼稚園の頃から取り組んでいたサッカーも、血糖管理を適切に行うことで普通にプレーできました。2型のように食事や運動を制限することなく、普通に運動できるんだな」と実感したそうだ。そして「日常のタスクに血糖値管理が増えただけで、何も不自由することないんだ」と前向きに捉えるようになった。

自転車競技での課題

 高校から始めた自転車競技では、血糖管理が課題となった。ロードレース、トラック共に激しい運動量を要求される自転車競技では、その分消費されるエネルギーも大きい。「休日は100km以上走る練習もあったため、慣れないうちは高確率で低血糖になった」というほど苦労したそうだ。

現在では、医療機器が発達・普及し、センサーを皮膚に取り付けることで、簡単にそして持続的に血糖値を測定できるようになった Photo:Kairi ISHIKAWA

 現在では、血糖値を測定する医療機器が発達・普及し、センサーを皮膚に取り付けることで、簡単にそして持続的に血糖値を測定できるようになったが、「高校生の時に行っていた方法は、自転車で走行中にできるほど簡単ではなかったので、感覚を頼りに血糖管理を行っていました」と当時を振り返る。具体的には練習前に必ず血糖値を測定し、その結果と体調、練習内容をもとに、インスリンの注射単位設定と補給食を準備。低血糖に備えたそうだ。

 低血糖の症状は糖尿病患者によって異なり、血糖値が低すぎず、高すぎないポイントで適切に管理することが重要となる。そしてその範囲内で管理・調整することによって、レースでは選手が持つパフォーマンスを最大限発揮できるという。

 田仲さんは日々の練習で試行錯誤しながら、感覚で管理する術をマスター。糖尿病では欠かすことのできない血糖値のコントロールや日々の練習が身を結び、今回のレース結果に繋がった。

初の海外レース「今後の収穫になった」

田仲駿太さんとノボ ノルディスク日本法人社長のオーレ ・ムルスコウ・ベック氏 Photo:Kairi ISHIKAWA

 遠征を振り返り「血糖値の変動が大きくなったので、日本にいる時以上に気を使いました。ストレスを抱えた時は自分の体にどういう変化が起こるのか非常に勉強になりました」と明かす。また、レースにについては、「国内とは違うレース展開だったけれど、対人種目のスプリントやケイリンでの立ち回り方が参考になり、次に繋がる収穫です」と強調した。

 今後は、オフシーズン中に自分のできることをしっかりとやった上で、「来年のインカレや全日本選手権など大きな大会に向けて準備していく」と方向性を示した。将来的な目標はオリンピックや世界選手権で活躍できるような選手という田仲さん。1型糖尿病アスリートの挑戦はこれからも続く。

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