女子は松本璃奈が最初から独走V銀世界の全日本シクロクロス選手権、前田公平が「雪で吹っ切れて」男子エリート初優勝

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 12月9日に行われた第24回シクロクロス全日本選手権大会は、白銀の世界の中で、男女とも力と力がぶつかる熱い戦いが展開された。男子エリートは前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム)、女子エリートは松本璃奈(TEAM SCOTT)がともに独走で初優勝。男子U23で初優勝した村上功太郎(松山工業高校)とともに、コメントで振り返る。

男子エリートで念願の日本一となり、ガッツポーズで優勝をかみしめる前田公平 Photo: Kenta SAWANO 

重なる「苦手」で逆に集中

 シクロクロスの神様がいるとすれば、神様からの贈られた一足早いクリスマスプレゼントのような雪の舞台が整った。2011年、13年についで3度目の全日本選手権開催となった滋賀県・マキノ高原スキー場の特設コース。朝起きると、前日までなかったまさに白銀の世界に一変していた。通常ならコース全体がスキー場の緩斜面を利用した芝生で、キャンバーが前半に3カ所あるのみの“ほぼパワーコース”。走力に長けた選手が有利となるはずだった。しかし、前夜から降り続けた雪が20cm近く積もり、レース中も降っては止むという、シクロクロスファンにとってはたまらない舞台となった。

白銀のマキノ高原スキー場特設コースで、エリート男子が午後2時にスタート Photo: Kenta SAWANO 

 雪もいったん落ち着いた午後2時に男子エリートがスタート。ホールショットは横山航太が取ったが、第1コーナーを曲がると約80人の出場者が一気にバイクを降り、担いで雪の深いゾーンへ。一列に走るさまは、さながら“ランニング大会”のようにも見えた。そんな中から「このコースには苦手意識しかなかった」と言う前田が一歩リードする。

 11月のマキノのJCXレースをあえてスキップした優勝候補の前田は、雪のレースが苦手だったという。さらに全日本の成績は2017年3位、2016年2位と、タイトルに手が届く実力がありながら「勝手に緊張して勝手に自爆していた」と精神的な弱さを実感していたという。しかし「会場が雪一色になっているのを見て吹っ切れました」と、優勝候補のプレッシャーも、苦手意識も消えて、レースに集中してスタートに臨んでいた。

エリート男子 スタート後、第1コーナーを曲がると、深い雪のため、ほとんどの選手がバイクを担いで一列に進んだ Photo: Kenta SAWANO

 前田はその後、1周目の深い雪のゾーンをバイクを降りて淡々とバイクを担ぎランで、一気に先頭に立った。「雪の上での乗車スキルでは分が悪いと思ってランで行ったらよい感触だったので、全開で行きました」と1、2周目はランを多用し、ペースを刻んだ。

冷静に乗車とランを繰り返しペースを刻んだ前田公平 Photo: Kenta SAWANO

 「航太(横山)は長野出身で雪にも強いし、怖かった」(前田)という横山が単独で追走し、さらに約30秒開いて、沢田時(チーム ブリヂストンサイクリング)、丸山厚(チームリドレー)、小坂光(宇都宮ブリッツェン シクロクロスチーム)が単独で続いた。3人は徐々にパックになり、2位横山を追う展開となった。

序盤、先行する前田公平を追う横山航太(右)と丸山厚 Photo: Kenta SAWANO
横山航太を追う3位パックの沢田時(手前)と小坂光 Photo: Kenta SAWANO

 中盤になると、約80人のエリート男子が走ったコースには、雪の間にしっかりとした轍ができ、前田は抜群のバイクコントロールで乗車したままでペースを上げた。3周目からは1周9分台になり、同じくペースを上げる2位横山の追い上げを許さない。「人の後ろを走るより、前に立って自分のラインを、自分のペースで走りたかった」という言葉通りの展開を最後まで続け、何度もガッツポーズしながら初優勝のゴールを切った。

 2位には続いて横山が16秒差でゴール。「雪は得意なんで、僕としては願ってもないコンディションだったんですけど、なかなか…やはり前田公平選手が強かったですね。でも去年2位、今年2位なんで、来年こそは取れるように頑張りたいと思います」と雪辱を誓った。3位にはパックからペースを上げて飛び出した小坂がスプリントでゴールし、前年優勝の意地を見せた。

ゴール後健闘を称えあう前田公平(右)と2位の横山航太 Photo: Kenta SAWANO
弱虫ペダルサイクリングチームの佐藤監督から祝福され笑顔の前田公平 Photo: Kenta SAWANO

 今季は、「Raphaスーパークロス野辺山」(2日目・UCI-Class1)で海外選手を抑え優勝を飾ったが、「あくまで海外選手のペースについていって最後に勝っただけ。これから全日本ジャージの重みを感じていくと思う。少しでも世界との差を縮めていけるようにしたい」と日本代表としての目標も語った。

笑顔で表彰式に臨んだ(左から)2位の横山航太、1位・前田公平、3位・小坂光 Photo: Kenta SAWANO

■男子エリート結果 14.10km(0.10km+2.80kmx5Laps)
1 前田公平(弱虫ペダルサイクリングチーム) 50分29秒
2 横山航太(シマノレーシング) +16秒
3 小坂光(宇都宮ブリッツェン シクロクロスチーム) +36秒
4 沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling) +41秒
5 竹之内悠(ToyoFrame) +1分02秒
6 丸山厚(チームリドレー) +1分10秒

愛媛出身U23の村上功太郎は「雪も得意」

雪のキャンバーを軽やかにクリアーする村上功太郎 Photo: Kenta SAWANO

 注目の男子U23は1周目から昨年の覇者・織田聖が飛び出したが、コース中盤のキャンバーで竹内遼、村上がとらえ、竹内、村上のパックと、江越、織田の弱虫ペダル陣のパックができた。しかし「なるべく1人になって自分のペースで走りたかった」という村上がペースを上げると、徐々に2位、3位との差が広がった。他のライダーが雪に苦しむ中、52kgの体重と抜群のバランス感覚でほかのライダーより軽やかな乗車で、雪の轍を進んだ。

男子U23 で先頭の村上を追う、竹内と江越 Photo: Kenta SAWANO 
昨年覇者の織田聖は大きく息をしながらキャンバーを押して進む Photo: Kenta SAWANO

 村上は四国・愛媛県ながら、冬場に雪の多いという西予市出身。「シクロクロスを始める前も、冬はママチャリで8km雪の中を楽しみながら通学していた。苦手意識というより、雪の上は得意なんです」と雪に強い理由を明かしてくれた。

■男子U23結果 11.30km(0.10km+2.80kmx4Laps)
1 村上功太郎(松山工業高校) 55分15秒
2 江越海玖也(弱虫ペダルサイクリングチーム) +2分18秒
3 坂本章(Sonic-Racing) +2分45秒
4 竹内遼(FUKAYA RACING) +4分00秒
5 久保一真(ProRide) +6分03秒
6 片桐翼(TEAM GRM) +6分11秒

「世界を目指す」18歳松本璃奈が新女王に

 40-50分で行われた女子エリートのレースは、ディフェンディングチャンピオンの今井美穂(CO2 bicycle)と、2週間前に同会場でのUCIレースで優勝している松本との争いとなった。スタートダッシュからの第1コーナーから競り合った2人だが、「最初からガンガン行こうと思っていた」という松本がまずは先頭を取った。

ホールショットは松本璃奈(手前)が取り、今井美穂が続いた Photo: Kenta SAWANO

 第1コーナーを曲がるとゲレンデの雪区間。松本はすぐにバイクを降りて押しに切り替える一方、今井は乗車したまま追うが、前輪が雪にはまって転倒してしまう。しかしすぐ起き上がった今井は、再び松本を猛烈に追いかける。松本を抜きにかかる今井。両者のバイクが接触する場面もあったが、今井が意地で押し切って松本を抜き去り、先頭を奪い取った。

松本璃奈(手前)が雪にはまり、今井美穂と接触 Photo: Kenta SAWANO
バイクを降りて松本璃奈を抜きにかかる今井美穂 Photo: Kenta SAWANO
今井美穂(右)を追う與那嶺恵理 Photo: Kenta SAWANO

 しかし1周目の中盤になると状況は一変する。松本が再び今井をパスして先頭に立ち、さらにそのまま徐々に差を付け始めたのだ。積極的にバイクを降りて押す松本が着々と前に進んでいくのに対し、乗車のまま粘る今井は雪に阻まれ止まってしまってからバイクを降りる場面が散見され、今一歩スピードに乗り切れていない。松本は1周目で今井から1分近い差を奪い、逆に今井は後ろから追い上げてきた與那嶺恵理(OANDA JAPAN)が間近に迫る位置となってしまった。

 結局これが決定的な差となった。3周回のレースで松本は、最終的に今井から2分のリードを持って独走ゴール。今井は與那嶺を振り切ったものの、松本を追い込むまでは至らなかった。

レース終盤、観客の声援に笑顔で応えながら走る松本璃奈 Photo: Kenta SAWANO

 松本はマウンテンバイクレースでも活躍する高校3年生。今年は世界選手権にも出場した。雪の中での走りは、マウンテンバイクのバランス感覚が生かされたという。「世界を目指しているので、来年からは海外に挑戦していきたい。2年後にマウンテンバイクでオリンピック代表候補に選んでもらえるように頑張っています。シクロクロスでも世界で戦えるようになりたい」と夢は大きい。

 2週間前に同会場で行われたUCIレースでの大金星は、ライバルの不運にも助けられたが、この日はスタートからゴールまで実力。文句なしで全日本新女王の座を勝ち取ってみせた。

エリート女子の表彰式。左から2位・今井美穂、1位の松本璃奈、3位與那嶺恵理 Photo: Kenta SAWANO

■女子エリート結果 8.50km(0.10km+2.80kmx3Laps)
1 松本璃奈(TEAM SCOTT) 41分35秒
2 今井美穂(CO2 bicycle) +2分03秒
3 與那嶺恵理(OANDA JAPAN) +2分40秒
4 宮内佐季子(Club La.sista Offroad Team) +5分20秒
5 江嶋綾(MAAPxIN THE WOODS) +6分11秒
6 唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム) +7分29秒

■男子ジュニア結果 8.50km(0.10km+2.80kmx3Laps)
1 小島大輝(SNEL CYCLOCROSS TEAM) 42分29秒
2 柳澤創(Team CHAINRING) +1分40秒
3 鈴木来人(伊那北高校) +1分56秒
4 川野碧己(慶應義塾高等学校) +2分41秒
5 黒田拓杜(チームローマン) +3分05秒
6 山口創平(ProRide) +5分30秒

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