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山下晃和の「ツーリングの達人」いま注目の自転車スポット、青森へ 小径車で巡る白神山地のポタリング旅

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 近年、ツーリングの行き先として1番オススメしている場所は青森である。初めて自転車を持って訪れた2010年。某自転車雑誌で青森を輪行ツーリングするという企画で訪れたが、当時はまだ青森への東北新幹線が無かったため、新幹線とローカル線を乗り継いでかなりの時間を要した。自転車で走る人も少なかったので、道もそれほど整備されていなかったように思う。しかし現在は新幹線で東京-新青森間を約3時間半で行けるようになった。青森だけでなく、東北の道は震災以降少しずつ新しい舗装ができている。青森県の「サイクルツーリズム推進協議会」の努力によってインフラが整えられ、サイクルスタンドを置く店舗も増加。さらにはそのまま自転車を載せられるサイクルトレインも登場している。

いま一番ホットなツーリングスポット、青森へ Photo: Akikazu YAMASHITA

山を境に東西文化が異なる青森

 青森県は日本でも珍しく西海岸と東海岸があるアメリカのような地形で、西の文化と東の文化に大きな違いがある。仕事やプライベートで東は何度も訪れていたので、今回は西の白神山地へと行くことになった。

最近の旅の相棒、小径車「バーディー」 Photo: Akikazu YAMASHITA
このあたり一帯で1番古くて趣きのある長勝寺 Photo: Akikazu YAMASHITA

 弘前(ひろさき)城で有名な弘前からスタートし、禅林街(ぜんりんがい)を通る。禅の寺が33も連なっていて、1629年に建立された長勝寺は重要文化財にもなっている。古い木造の雰囲気や、いかにもといった仁王像などタイムスリップしたような気分に浸る。レンタカーで来る距離としては近すぎて、バス利用だとタイムスケジュールが制限されるので自転車が一番。弘前にはレンタサイクルもある。

 そこから西へと向かい街を抜けると、ドーンと岩木山が見えてくる。青森の西地区津軽のシンボルでもあり、標高1625mの独立峰。津軽富士とも呼ばれている。青森の真ん中に位置する八甲田山は標高1584mとやや低いものの、前述のとおり、この山を境に西が津軽地方、東が南部地方。この山を境に方言、文化、食も変化するのがおもしろい。

独立峰の様が「津軽富士」と称される岩木山 Photo: Akikazu YAMASHITA

眺めて触れて、ブナの原生林を堪能

 白神山地がある地域は青森県東部から秋田県北部まで広範囲に渡っており、1993年に世界自然遺産に認定されたブナの原生林が有名だ。

世界自然遺産になったブナの原生林 Photo: Akikazu YAMASHITA

 この日の宿は西目屋村(にしめやむら)という地域で宿泊。「目屋グリーン」というビアンキの「チェレステグリーン」のようなカラーリングの屋根が多くなってくるのが分かる。村が連携してこのイメージカラーにしているらしく、緑好きとしてはたまらない!

 翌日に予約しておいた西目屋スポーツ交流センターに入っている「A’GROVE」でカヌーをレンタルすることになっていた。晩秋の白神山地を津軽白神湖から眺めるという贅沢なツアーだ。

白神山地を白神湖から眺める Photo: Akikazu YAMASHITA
バーディーを先頭に載せ船体を安定させる Photo: Akikazu YAMASHITA
風と水の流れる音しか聞こえない穏やかな時間 Photo: Akikazu YAMASHITA

 時期を狙えば紅葉も見られる。最近の旅の相棒、小径車「バーディー」を先頭に載せて船体を安定させ、枯れた木々の中を漕ぐ。穏やかで静かな時間だ。河原の中州でコーヒーとクッキーを用意してもらい、川の流れる音をBGMに過ごすおやつタイムは格別だ。

 このあと西目屋小学校を居抜きで工房にした「BUNACO」へ。ここは加工の難しいブナを使ってスピーカー、家具、器などを制作しているところで、ワークショップで器づくりが楽しめる。

ブナを使って伝統工芸発のインテリアを作る「BUNACO」 Photo: Akikazu YAMASHITA

 コイル状になったブナの木を湯のみで押して立体にしていくと、年輪のような美しい模様の器ができる。工場見学とセットになっているので絶対に立ち寄ってほしいスポットだ。

 自分の好きな色を指定すれば、後日完成品を自宅に配送してくれるので、荷物を増やしたくない自転車乗りにはありがたい。

加工が難しいブナ Photo: Akikazu YAMASHITA
ワークショップで器作りが体験できる Photo: Akikazu YAMASHITA

青森といえばりんご!

 次は、有名な「アップルロード」へと自転車を走らせた。りんご園が広がるエリアはアップダウンが激しく、ロードバイクでは良いかもしれないが、小径車ではちょっと辛かった。運よく、収穫をしているおじさんがいたので話を聞くと、今年はりんごの収穫が遅れたらしい。地面に目をやると、アルミホイルのような銀色のシートが置いてあった。話を聞くと、下から太陽を当てることで真っ赤なりんごにするのだという。美味しいりんごを作ろうとする農家の皆さんの必死な様子が伝わってきた。

りんご園が広がる「アップルロード」へ Photo: Akikazu YAMASHITA
農家さんからいただいたジョナゴールド Photo: Akikazu YAMASHITA

 日本のりんごは世界中で最も大きいように思う。ニュージーランドのりんごは小さいし、ベトナムで食べたりんごも小さくて酸味が強かった。どちらも美味しかったが、大きさと甘みでは日本のものが優っていたように思う。

 「一つりんご食べて良いよ」と許可をもらい、「ジョナゴールド」という銘柄を食べた。一口頬張ると、シャリっという歯ごたえに甘い汁がジュワっと口の中に広がった。豊潤な味に、つい笑顔にならざるをえない。このほかに王林、つがる、ふじ、紅玉、むつなど種類も豊富で、素人の私には見分けるのが非常に難しかった。

 最後に立ち寄ったのは宮崎駿監督のスタジオジブリで作られたアニメ映画「借りぐらしのアリエッティ」の舞台となっているという「盛美園」(せいびえん)へ。青森県平川市にあり、弘前駅からフラットな道で約9kmの距離。自転車では約20分くらいのところにある。

「借りぐらしのアリエッティ」の舞台となっている盛美園 Photo: Akikazu YAMASHITA

 2階が洋館、1階が和館という珍しい建築で、中には日本庭園が広がる。小高い展望所にベンチもあり、ここも静かで落ち着く場所だ。

 そこから弘前駅まで戻り、輪行バッグにバーディーを積んで電車に乗る。そこから新青森駅までは約30分。新幹線が停まる駅は青森駅ではなく、“新”青森駅なので要注意だ。

何度訪れても新しい発見がある

 今回は弘前から西の津軽地方を旅したが、ロードバイクでガンガン走るなら、北の竜飛崎(たっぴみさき)、津軽海峡までの奥津軽もよし。ポタリングならもっと楽しい。

白飯を持って海鮮を載せてもらうのっけ丼市場もおすすめ Photo: Akikazu YAMASHITA
完成した「のっけ丼」 Photo: Akikazu YAMASHITA
青森といえばほたて! Photo: Akikazu YAMASHITA

 ほたてが好きなら夏泊半島を巡って、浅虫温泉に浸かるも良い。東の南部地方なら八戸の銭湯や朝市。種差海岸でキャンプ。十和田なら奥入瀬渓流と十和田現代美術館。下北半島なら大間のまぐろなどなど、他にも自転車で巡るのに最適なツーリングルートがたくさんある。季節によっても景色が変わり、何度訪れても新しい発見があるので、ぜひとも訪れてみてほしい。

山下晃和山下晃和(やました・あきかず)

タイクーンモデルエージェンシー所属。雑誌、広告、WEB、CMなどのモデルをメインに、トラベルライターとしても活動する。「GARVY」(実業之日本社)などで連載ページを持つ。日本アドベンチャーサイクリストクラブ(JACC)評議員でもあり、東南アジア8カ国、中南米11カ国を自転車で駆けた旅サイクリスト。その旅日記をもとにした著書『自転車ロングツーリング入門』(実業之日本社)がある。趣味は、登山、オートバイ、インドカレーの食べ歩き。ウェブサイトはwww.akikazoo.net

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