狩野智也選手、牧瀬つばさ選手も参加「九州HeavenRide2018」開催 獲得標高3000mでも笑顔が絶えないイベントの魅力に迫る

  • 一覧

 2018年12月2日、熊本県小国町の木魂館(もっこんかん)をスタート・ゴールとした「九州HeavenRide2018」が開催され、くじゅうエリアを中心に設定された距離120km・獲得標高3000mの難コースを走破しようと、19チーム(約90人)が九州各地や遠くは名古屋から参加しました。ブログ「え、登らないんですか?」を運営し、ロードバイクコーディネーターとして活躍する大関賢土さんのリポートでお届けします。

急坂に苦しむどころか、楽しんでいるような九州HeavenRide2018の参加ライダー Photo: Koichi HIROWATARI 

2013年から小国の松崎猛さん主催

 このイベントは、2014年に行われた「Rapha Gentlemen’s Race」の事前企画として、2013年より小国町にあるTeaRoom茶のこを経営する松崎猛さんが主催し、運営は全て有志によるボランティアで行われているイベントだ。

各チーム、朝の寒さの中をスタートしていく Photo: Will LIEW
運営ボランティアスタッフの皆様とゲストの狩野智也選手 Photo: Takeshi MATSUZAKI
イベント愛溢れる手書きジャージで参加の「NESTのnagasakii Photo: Takeshi MATSUZAKI

 イベントは招待制で、5人(または4人)1チームで同じジャージを着ることが参加条件となる。毎年変更されるコースは、美しい景観やグラベル区間を含む構成で、参加者を苦しく楽しませる。また、コースの各所にはチーム全員で通過することを義務付けられたチェックポイントや、個人の実力を問われるKOMポイントの他、素敵な写真や迷子チームに贈られる各賞が設定されており、ただタイムを競うだけではなく、参加者全員が楽しむことのできる工夫が施されている。

Team chanokoの愉快なメンバー。左から筆者、外村さん、牧瀬さん、岩男さん、藤巻さん Photo: Takeshi MATSUZAKI

 初参加となる筆者も、TeaRoom茶のこを愛する九州の剛脚メンバー、熊本GINRINに所属する平坦番長の外村貴司さん、九州のあらゆるレースを総なめにする岩男大輔さん、生粋のイケメンクライマー藤巻仁さんの3人に加え、ゲストライダーの牧瀬つばさ選手(Maaslandster women International team所属)を加えたTeam chanokoに入れてもらい参加することとなった。

プロも前夜祭から参加

 前夜祭では、各チームの紹介や参加者同士の交流に加えて、地元の食材を味わいながらチームとしても参加するLaTICAのライブ演奏や、ゲスト参加する狩野智也GM兼選手(群馬グリフィン)と気さくに話すことができる豪華なパーティーだ。2015年から毎年HeavenRideに参加している狩野選手からは、「他にはない九州の人の温かさや、参加メンバーの面白さに何度も参加してしまう」とプロ選手も取り込んでしまう、このイベントの魅力について伺うことができた。また牧瀬選手は、「出身が佐賀県ということもあり、以前からこのイベントについて聞いており、ぜひ参加してみたいと思っていた」とイベントをとても楽しみにしていたようだ。

パーティーで意気込みを話すゲストの狩野選手 Photo: Koichi HIROWATARI
デュオユニットLaTICAによるライブ。もちろん彼らもHeaveRideの参加者だ Photo: Koichi HIROWATARI

噂通りのHeavenなライド

 HeavenRide当日は天候にも恵まれ、朝8時から各チーム3分間隔でスタートしていく。なんと前日にライブを披露してくれたLaTICAの福田ひとみさんは、ロードバイクに乗り始めて1年で100km以上は走ったことがないという初心者で、これには他の参加者からも驚きと声援が飛び、大いに盛り上がった。私たちのTeam chanokoも、スタッフや他チームの声援の中を12番目にスタートした。初参加ということもあり不安もあったが、スタート直後にパンクしたチームに遭遇し、笑いを提供してもらったことで不安もどこかへ消えていった。

最年少17歳と最年長69歳のメンバーを擁する、地元サイクリングチーム CLUB BEAR Photo: Koichi HIROWATARI

 スタート後、すぐに道は林道へと変わり、標高差500mの上りが待ち受けていた。早速呼吸は荒くなっていくが、景色は非常に気持ち良く、途中の岳の湯温泉では、もうもうと立ち上る湯気に各チーム足を止めてしばし撮影タイムに没頭していた。

立ち上る湯気が美しい岳の湯温泉 Photo: Takeshi MATSUZAKI

 最初の坂を登り切ると、すぐに2kmにも及ぶグラベル区間が待ち受けていた。前半のゴツゴツとした岩場と後半の深めの砂利に上りが組み合わされたグラベルは、通常であればロードバイクで走る事はないような区間だが、どのチームも悲鳴とも歓喜ともとれる声を上げながら楽しそうに進んでいく。

つい笑顔になるようなグラベル区間を越えていく Photo: Koichi HIROWATARI
乗って進めない区間は、自転車を担ぐ参加者も Photo: Koichi HIROWATARI

 グラベル区間で遅れた我々は、35km地点にある最初のチェックポイント(CP)まで猛烈な勢いでトレインを回し、遅れを取り戻していく。「スピードを緩めましょう」という私の声も空しく、剛脚揃いのTeam chanokoは、なぜか短い坂ごとに加速を繰り返す。ゴールまで100km近い距離が残されているのに、早くもHeavenへ逝ってしまうところであった。

序盤から早くも空中分解気味のTeam chanoko Photo: Koichi HIROWATARI

 何とかたどり着いた第1CPでは、参加者が持ち寄った各地のお土産が振舞われ、各地の甘味によって削られた体力を回復することができた。他の参加者も、お土産に舌鼓をうちながら写真を撮ったり、今後のルートを確認していた。

最初のCPでは、九州各地のお土産を片手に話が弾む Photo: Takeshi MATSUZAKI
参加者が持ち寄ったお土産はどれも美味しい。個人的には地元熊本の山鹿羊羹がホームラン Photo: Takeshi MATSUZAKI

 回復を済ませ最初のチェックポイントを出発すると、長めの林道を下っていく。下りにも林道を使うあたりHeavenRideのルートへのこだわりを感じる。下り切ったところで、最初のKOMポイントが待っていた。距離2.5km、平均勾配は8%を超える急坂だが、各チームとも自分たちの出せる力でべストを尽くしている。

 チームからは、KOMポイントを待ち望んでいた岩男さんと藤巻さんが飛び出す。牧瀬さんは、楽しむ走りをすると宣言しながらも、綺麗なフォームでどんどんと遠ざかっていく。残された外村さんと私は、「ここは出番ではない」と言い訳しつつ、苦しみながらなんとか上りきる。

チームで走りつつも、KOMポイントでは、各人の脚力が試される Photo: Takeshi MATSUZAKI
最も難易度の高い第2KOMポイント Photo: Shigeru MATSUZAKI

 その後、素敵な景色のアップダウンルートを10km程走り、第2CPへ到着した。ここでもスタッフからの温かいもてなしと、お土産の数々で体力と気力を回復することができた。第1CPからは20km程で、下り区間も多めだったこともあり、体力的には比較的余裕を持って第2CPをスタートできたのだが、直後に最大勾配20%超を誇る二つ目のKOM区間が待ち構える。ここでも飛び出していく岩男さんと藤巻さんに、なんとか必死に食らいつこうとするが、日本とは思えない石畳路面に車体は跳ね、後輪は踏み込むほどにスリップし、進むこともままならない。自転車を押して上る参加者も多く、仮に雨であれば自転車を押して登る事さえも難しいルートだったのではないかと、つくづく雨でなかったことに感謝するポイントであった。

脚力だけではなく、コース取りも要求される上りだ Photo: Koichi HIROWATARI
天候を気にしながら長者原を進む Photo: Takeshi MATSUZAKI

 KOMポイントを越えた後も登りは続き、疲弊しつつも頂上と思われるトンネルを越え下りに入ったかと思えば、すぐに脇道に誘導されグラベルの上りとなる。まるでコースディレクターの手のひらの上で踊らされるように、一喜一憂を繰り返し、どんどんHeavenRideの沼に引きずり込まれていく。ここまでで、まだコースの半分である60kmを走ったに過ぎないのだ。HeavenRideにはトラブルが付き物と聞いていたが、グラベル区間を過ぎたところで、私の自転車がスローパンクを起こしてしまった。振動の激しいグラベルを走ってきたこともあり、手に力が上手く入らずパンク修理に戸惑ったが、ここはメンバーの協力を得て修理時間を短縮することができた。これもチームで走るから成せる技で、メンバーには心から感謝であった。

トラブルもチームメイトと解決する。これもHeavenRideの醍醐味だ Photo: Koichi HIROWATARI
第3CPまで来て一息つく参加者たち Photo: Koichi HIROWATARI

 85km過ぎにある長者原の第3CPまでは、標高1100m付近までの上り基調であったものの、メンバーで声を掛け合いペースを調整しながら走ることで、スムーズに進む。第3チェックポイントに着いた頃には、雨がパラパラと降り始め気温も下がり始めたものの、スタッフの方々が用意してくれた温かい飲み物で、心からほっと一息つくことができた。

 第3CPからは、ゴールまでおおよそ30kmの下り基調だが、途中には距離1.5km、平均勾配8%を超える最後のKOMポイントが控えている。10%をオーバーする勾配が何度も現れ、残り少ない体力をごっそりと削ってくる登りだ。さすがに他のメンバーも疲労が蓄積しているのか、前半の様な元気はなくなり、淡々と上りをこなすことに専念している様子であった。

 最後のKOMを越えると、ここからはほとんど下りだ。雨で湿った路面に注意しながら、安全にゴールすることだけを考え、安全速度で進んでいく。ゴールまで残り7kmの地点にある、最後のチェックポイントとなるTeaRoom茶のこまで来ると、皆ほっとした様子で自然と笑顔があふれてくる。

茶のこをバックに笑顔でポーズを決める参加者たち Photo: Takeshi MATSUZAKI

 しかし、ここまで来た我々に最後の試練が待っていた。スローパンクしていた牧瀬さんのパンク修理を終えて走り出したところ、修理したばかりのタイヤからチューブが飛び出してしまったのだ。どうやらタイヤのビードが切れてしまった様で、立ち往生を余儀なくされた。だがここまで来ると、順位や到着時間を気にするよりも、とにかくみんなでゴールしようという一体感が強く、他のチームからも気にかけていただいたり、予備のタイヤを提供してもらったりと、ここまで走ってきたことでチームを越えた結束力が生まれ、とても心地の良い雰囲気を感じることができた。

最後に待ち受ける廃線のグラベル区間 Photo: Koichi HIROWATARI

 そしてゴールまで残り2kmからは、鉄道の廃線跡を利用したグラベル区間が、最後のデザートとして用意されていた。夕闇が迫る中、ぐちゃぐちゃのぬかるみに倒木、ゴロゴロした岩に「最後の最後でこれか!」と思ったが、HeavenRideのマジックに掛かった参加者たちは、皆笑い合いながら楽しく乗り越えていく。

全チームが無事に帰還

 グラベルを抜けるとすぐにゴールの木魂館が現れ、先に到着したチームやスタッフからの祝福を受けながら、午後5時過ぎでのゴールとなった。他のチームも続々とゴールに現れ、参加者全員で完走を祝福した。最終的には未完走のチームもあったものの、全てのチームが木魂館のゴール地点まで戻ってくることができた。

ゲストの狩野選手と共に最後のチームが帰還 Photo: Takeshi MATSUZAKI

 通常の自転車イベントではお目に掛かれない、雄大な自然を感じることのできる厳しいコース設定ではあるが、それ故に生まれる絆や達成感は「HeavenRideを終えなければ年は越せない」という参加者がいることも頷ける、このイベントでしか味わうことのできない素敵なものであった。もしこのイベントに参加したいと思う人がいれば、熊本県小国町のTeaRoom茶のこへ行き、松崎さんにその熱い想いを伝えてほしい。来年の11月ごろには、素敵な招待状が届くかもしれない。

関連記事

この記事のタグ

ロングライド 熊本県

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

ショップナビ

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載