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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<278>積極補強でシーズン勝利数アップを目指す ディメンションデータ 2019年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 来年の陣容が固まり、次のシーズンに向けた準備を着々と進める各チーム。そんな中、ストーブリーグで最も積極的な補強を見せたチームの1つとして、ディメンションデータの名が挙がる。2018年シーズンは9勝で、そのうちUCIワールドツアーでの勝利数はわずか2つにとどまった。同ツアーチームランキングで最下位に終わったチームは、下位でシーズンを終えているここ数年からの脱却を図り、大幅な改革を断行。成果がいかなるものか、注目度が高まっている。

2018年シーズンは9勝にとどまったディメンションデータ。ベンジャミン・キングがブエルタ・ア・エスパーニャで貴重な2勝を挙げた(写真は第4ステージ) =2018年8月28日 Photo: Yuzuru SUNADA

アムステル・ゴールド・レースのトップ3が集結

 このチームの来シーズンを図るうえで、まず着目しておきたいのは、実力・経験ともに申し分のない選手たちを多数と獲得した点にある。

2018年シーズンにブレイクしたミケル・ヴァルグレンがディメンションデータに加わる =オムループ・ヘット・ニュースブラッド2018、2018年2月24日 Photo: Yuzuru SUNADA

 UCI(国際自転車競技連合)が定める、チーム移籍の正式契約・発表解禁(8月1日)を受けて、新加入選手たちを続々と発表。まず、その名が明らかになったのが、ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、アスタナ プロチーム)。2月に開催された石畳系レースのオムループ・ヘット・ニュースブラッドを皮切りに、4月にはアムステル・ゴールド・レースで優勝。移籍発表直前のツール・ド・フランスでは、チームメートのステージ優勝をお膳立てするなど、今シーズンブレイクした26歳の加入はビッグトピックになった。

 チームが来シーズンからBMC社のバイクで走ることを受けて、今年で実質“解体”となるBMCレーシングチームからダニーロ・ヴィス(スイス)が加わる。スイスのバイクブランドであるBMC社にとって、同国のトップ選手として走り続けるベテランはアンバサダー的な存在。ディメンションデータ入りにはなにひとつ障壁がなかったという。

ロマン・クロイツィゲルはクラシックとツール・ド・フランスに意欲的 =ジロ・デ・イタリア2018第2ステージ、2018年5月5日 Photo: Yuzuru SUNADA

 この2人に続いて移籍発表されたのが、ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ミッチェルトン・スコット)。これまでのプロキャリアで数々のトップチームを渡り歩き、近年はアルデンヌクラシックのスペシャリストとして活躍すると同時に、グランツールではアダムとサイモンのイェーツ兄弟(イギリス)をアシストするなど、職人的な働きを見せている。環境を一新し、確実に優勝争いに加わるであろうアルデンヌとツールでの活躍を誓う。

 大物の発表はとどまることはなく、スプリントトレインの牽引や北のクラシックのアシストが計算できるラースユティング・バク(デンマーク、ロット・スーダル)の加入を発表。

 9月に入ると、アムステル過去2勝のクラシックハンター、エンリーコ・ガスパロット(イタリア、バーレーン・メリダ)も続いた。「本当の自分の走りを見せることができるはず」と自信に満ちたコメント。今年のアムステルではヴァルグレン、クロイツィゲル、ガスパロットがトップ3。表彰台を占めた3人が来シーズンは1つのチームに集結する。

アムステル・ゴールド・レース2018のトップ3が来季、ディメンションデータに集結。左からロマン・クロイツィゲル、ミケル・ヴァルグレン、エンリーコ・ガスパロット =2018年4月15日 Photo: Yuzuru SUNADA

 スプリント路線の強化には、ジロ・デ・イタリアでポイント賞2回のジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、トレック・セガフレード)の獲得でメドが立った。このところはけがの多かったフィジカル面も、ブエルタ・ア・エスパーニャでのまずまずの走りで問題ないことをアピールしている。

 インパクト十分の積極的な補強。その背景には、チームのウィークポイントを埋めていくとともに、環境を変えて「もうひと勝負」を志す選手たちの強い思いとが合致したことが挙げられる。いずれの選手も、移籍に際して「新たなチームでステップアップを図りたい」「大きな信頼を寄せてくれるチームのプロジェクトに報いたい」といった旨のコメントを残しているあたりにも、選手とチームが相思相愛の関係に至っていることがうかがえる。

 なお、2019年シーズンの新加入選手は、前述の6人を含めて9選手。若手とベテラン、バランスのよいスカウティングも特徴に挙げられる。

 ちなみに、1999年のパリ~ルーベ優勝など、同時期の最強チーム「マペイ」を牽引したアンドレア・タフィ氏(52歳)が現役復帰を目指し、ディメンションデータと交渉しているとの話題がヨーロッパのサイクルメディアで報じられたが、チームが全面否定。ディメンションデータの一員として戦うことはないとしている。

“台風の目”になりそうなクラシックシーズン

 軸となる選手たちを迎えることで、戦いにも幅が広がることが期待される。

石畳系クラシックでチームの中心となるエドヴァルド・ボアッソンハーゲン =ツール・ド・フランス2018第14ステージ、2018年7月21日 Photo: Yuzuru SUNADA

 当面の目標となるであろうクラシックは、石畳系をヴァルグレンとエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)を中心に戦うことになりそう。そこに、ベテランのベルンハルト・アイゼル(オーストリア)、ジュリアン・ヴェルモート(ベルギー)らが底上げを図る。スプリント勝負になる可能性が高いヘント~ウェヴェルヘムでは、ニッツォーロが切り札になる。

アルデンヌクラシックでの走りが注目されるベテランのエンリーコ・ガスパロット =リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ2018、2018年4月22日 Photo: Yuzuru SUNADA

 石畳系以上にダークホース的存在になりそうなのが、アルデンヌクラシック。まず、新加入のヴァルグレン、クロイツィゲル、ガスパロットは当確。石畳、丘陵の隔てなく戦う姿勢を見せるヴァルグレン、アムステル2位を筆頭に今年は3戦すべてでトップ10フィニッシュのクロイツィゲル、実績十分のガスパロットのトリオは他チームから見ても脅威に映るだろう。いずれもエースを担うことのできる実力を持っており、本番でどう役割分担をするのかもポイント。クロイツィゲルが「トリプルエース体制」に前向きなのも大きい。そして、この3人を支えるのがルイス・メインチェス(南アフリカ)やトムイェルト・スラフテル(オランダ)、さらにはブエルタでのステージ2勝が記憶に新しいベンジャミン・キング(アメリカ)といった面々になる。

 今年のクラシックシーズン、石畳系ではボアッソンハーゲンがツール・デ・フランドル19位、パリ~ルーベ34位。アルデンヌではスラフテルのラ・フレーシュ・ワロンヌ12位がそれぞれのチーム最上位と、苦戦を強いられた。それだけに、“現役”優勝候補のヴァルグレンやクロイツィゲルの加入は、チーム力の大幅アップ必至といえる。

 これらビッグレースに先だって、3月に行われるミラノ~サンレモについては、ニッツォーロのモチベーションが高い。ここもボアッソンハーゲンをリーダーに据えながら、ニッツォーロのスプリントなどのオプションを準備していくことになる。

カヴェンディッシュら27選手が2019年シーズンへ

 チームは11月下旬、来シーズンを27選手で戦うことを発表。同月中旬には、拠点の南アフリカ・ケープタウンでチームビルディングキャンプを実施している。

マーク・カヴェンディッシュは10月下旬にチームと契約延長にサイン。来シーズンに復活をかける =ツール・ド・フランス2018第2ステージ、2018年7月8日 Photo: Yuzuru SUNADA

 2019年陣容の中には、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)の名も含まれている。今年はシーズン初戦として臨んだドバイ・ツアーでステージ1勝を挙げたが、その後のアブダビ・ツアーで落車し脳震盪でリタイア。ミラノ~サンレモでの落車負傷で戦線を2カ月離れたが、復帰後も調子が上がらず、何とかスタートラインについたツールも第11ステージでのタイムアウトで幕切れ。シーズン後半は、エプスタイン・バーンウイルスに感染したこともあり、完全に棒に振ってしまった。

 早々とシーズンを終えたカヴェンディッシュには、バーレーン・メリダ移籍の噂などが持ち上がったが、10月下旬にチームとの契約延長に合意。キャリアの多くをともに過ごしてきたアイゼルやマーク・レンショー(オーストラリア)に続きチーム残留を表明した。けがや体調不良に苦しむ間も自身について理解を示していたチームに感謝していると述べ、33歳となったこれからの目標を「ツールのステージ優勝記録の更新」に設定。エディ・メルクスの34勝まであと4つに迫り、「難しい記録であることは分かっているが、トライはやめない」と宣言。復調できれば、スプリント路線は彼を中心に回っていくことだろう。

グランツールでの上位返り咲きを目指すルイス・メインチェス =ジロ・デ・イタリア2018第14ステージ、2018年5月19日 Photo: Yuzuru SUNADA

 クラシックやスプリントは戦う見通しが立ってきたが、グランツールやステージレースでの奮起も求められる。総合エースは、ツールのトップ10フィニッシュ2回のメインチェス。今年は出場したジロ、ブエルタともに不調に終わったが、本来の力が戻れば総合トップ5入りが現実的なターゲットとなってくる選手。上位進出のカギは、山岳ステージでクオリティの高い走りが見せられるかになってくる。

気鋭のオールラウンダー、ベン・オコーナー。グランツールの総合エースを担う可能性が高まっている =ジロ・デ・イタリア2018第14ステージ、2018年5月19日 Photo: Yuzuru SUNADA

 23歳のベン・オコーナー(オーストラリア)もエースとして戦う公算が高まってきている。今年のジロでは結果的に途中リタイアに終わったものの、一時は上位戦線が見える位置を走るなど、可能性を見せた。来季は大役を任されることが考えられる。

 チームは来シーズンに向け、前述したBMC社とのパートナーシップに加え、アソス(Assos)社のレースキットを採用したことも公表している。

 そしてもちろん、南アフリカのチャリティ基金「クベカ」との関係は継続。アフリカ大陸での就学率や就業率を高めるため、移動手段としての自転車を人々に贈る取り組みは、選手・スタッフが全面的に賛同。年内の寄付台数5000台を目指しており、先のキャンプでは選手たちが同国の中学校に75台を手渡している。

 そのほか、首脳陣も新たな顔ぶれが増える見通しで、レースを実際に指揮するスポーツディレクターには、今年までユナイテッドヘルスケアを率いたベルギー人のヘンドリック・レダン氏が就任。下部組織「ディメンションデータ・フォー・クベカ」も引き続き活動を行い、若手選手をトップチームに送り出すことを目指していく。

ディメンションデータ 2018-2019 選手動向

【残留】
エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー)
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)
スティーヴン・カミングス(イギリス)
スコット・デーヴィス(イギリス)
ニコラス・ドラミニ(南アフリカ)
ベルンハルト・アイゼル(オーストリア)
アマヌエル・ゲブレイグザブハイアー(エリトリア)
ライアン・ギボンズ(南アフリカ)
ジャック・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ)
レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ)
ベンジャミン・キング(アメリカ)
ルイス・メインチェス(南アフリカ)
ベン・オコーナー(オーストラリア)
マーク・レンショー(オーストラリア)
トムイェルト・スラフテル(オランダ)
ジェイロバート・トムソン(南アフリカ)
ジェイコブス・フェンター(南アフリカ)
ジュリアン・ヴェルモート(ベルギー)

【加入】
ラースユティング・バク(デンマーク) ←ロット・スーダル
ステファン・デボ(南アフリカ) ←ディメンションデータ・フォー・クベカ
エンリーコ・ガスパロット(イタリア) ←バーレーン・メリダ
ロマン・クロイツィゲル(チェコ) ←ミッチェルトン・スコット
ジーノ・マダー(スイス) ←イアム・エクセルシオール(アマチュア)
ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア) ←トレック・セガフレード
ラスムスフォッスム・ティレル(ノルウェー) ←ヨーケル・イコパル
ミケル・ヴァルグレン(デンマーク) ←アスタナ プロチーム
ダニーロ・ヴィス(スイス) ←BMCレーシングチーム

【退団】
イゴール・アントン(スペイン) →引退
ナトナエル・ベルハネ(エリトリア) →コフィディス ソリュシオンクレディ
マクセブ・ドゥバサイ(エリトリア) →未定
ニック・ドゥーガル(南アフリカ) →未定
メルハウィ・クドゥス(エリトリア) →アスタナ プロチーム
ラクラン・モートン(オーストラリア) →EFエデュケーションファースト・ドラパック
セルジュ・パウェルス(ベルギー) →CCCチーム
スコット・スウェイツ(イギリス) →未定
ヨハン・ファンジル(南アフリカ) →未定

今週の爆走ライダー−ニコラス・ドラミニ(南アフリカ、ディメンションデータ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 プロとして初めてのレースだったサントス・ツアー・ダウンアンダー。再三の逃げで山岳ポイントを獲得していくと、やがて山岳賞争いで彼を追う選手が現れなくなった。終わってみれば、文句なしのジャージ獲得。センセーショナルなデビューだった。

デビュー戦のサントス・ツアー・ダウンアンダー2018で再三アタック。山岳賞ジャージ獲得につなげた =2018年1月20日 Photo: Yuzuru SUNADA

 以降はビッグリザルトこそなかったものの、ほぼ予定通りレースプログラムを消化。世界選手権の南アフリカ代表にも選出され、大いに経験を積んだルーキーイヤーを終えた。

 根っからの自転車好き。12歳で始めたスポーツサイクルは、彼をとりこにした。「自転車に乗りたくて、当時のコーチに毎日会えることを願っていた」と回顧し、サイクリストとしてキャリアを歩むことは自然な流れだったとも語る。

 転機が訪れたのは、2015年。現チームの下部組織に入り、イタリアへ渡ってから飛躍的に実力が向上した。2017年には、ジロの若手版“ベビー・ジロ”では2017年に山岳賞を獲得。南アフリカ自転車界の希望は、着実なステップでプロへの階段を上がっていった。

 目標を達成するたびに「次は何を目指すべきか、自分自身への興味が湧いてくる」という23歳。プロレベルが現実のものとなって以来、強い意志を持ち続けることの重要性を学んだとか。“気持ち”で走るヤングライダーだが、得意の上りもまだまだ伸びる余地あり。新たなシーズンは、より多くのビッグレースで彼の攻撃的な走りが見られることだろう。

得意の上りはまだまだ向上中。強い意志を持って走り続ける =サントス・ツアー・ダウンアンダー2018第6ステージ、2018年1月21日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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