『Cyclist』編集部が体験リポート黄金色の「カルデラ」ワールドへ ヒルクライムが楽しくなる絶景イベント「RIDE in 阿蘇」

by 後藤恭子 / Kyoko GOTO
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 アウトドア総合ブランドのモンベルがプロデュースするファンライドイベント「第2回 RIDE in 阿蘇」(以下ライド イン 阿蘇、主催:ジャパンエコトラック阿蘇実行委員会)が12月2日、熊本で開催された。阿蘇の自然を舞台にレベルに応じて選べる3コースが用意され、最難度のコースでは、総距離140km超、獲得約3000mに及ぶダイナミックなルートが登場。最短ルートでも70kmで「阿蘇五岳(ごがく)一周コース」という名がつけられるなど、思わず「ファンライド?」と首をかしげてしまうようなレベル感だ。そんな山をフィールドとするモンベルならではのチャレンジングな山岳ライドイベントに、『Cyclist』の記者が参戦した。

草千里ヶ浜へと向かう阿蘇南登山道。黄金色の草原がサイクリストを迎える Photo: Kyoko GOTO

脚力・目的別に選べる3コース

 火の国熊本のシンボルである「阿蘇山」は、高岳を最高峰に根子岳、中岳、烏帽子岳、杵島岳と連なっている阿蘇五岳を中心とする山々の総称と認識されていることが多いが、広い意味では外輪山や火口原を含む全域を指す。外輪山は南北25km、東西18km、周囲128㎞という規模を誇る、世界最大級の火山だ。

南側の外輪山から一望する阿蘇五岳 Photo: Kyoko GOTO

 今年2回目となる「ライドイン阿蘇」では、この舞台を3つのルートに分けてA、B、Cのコースを設定している。Aは距離70km、獲得標高1280mの「阿蘇五岳一周ルート」。阿蘇南登山道を上り、阿蘇の代名詞にもなっている草千里を堪能するルートだ。Bは92km獲得1930mの「阿蘇南外輪山満喫ルート」。その名の通り南側の外輪山周辺を一周するルートで、難易度の高いヒルクライムルートが混ざることで、Aから約20km増えただけで獲得標高がぐっと約600m増す。

ライドイン阿蘇のコースマップ ©montbell

 そしてCは難易度が一気に上がる145km、3090m獲得の「阿蘇一周チャレンジルート」。AとB両方のコースを一度に味わえる、健脚サイクリストのみに許された欲張りコースだ。順位を競わないファンライドだが、それぞれに設けられた制限時間(A・Bは7時間半、Cは9時間半)内での完走が求められるため、脚力の有無はもちろん、どう楽しみたいかという目的によっても異なる。

黄金色の大草原「日本じゃないみたい」

Cコースは陽が昇る前の早朝6時半スタート。気温は10℃を下回る冷え込みに Photo: Takahiro TANAKA

 阿蘇初ライドの筆者が選んだのはAコース。草千里の絶景を制限時間を気にせずに楽しみたいという思いから選択した。一方、今回の取材をサポートしてくれた一般参加者の田中孝宏さん(30)は、「外輪山エリアを走ったことがない」という理由で全域を廻れるCコースをチョイス。ツール・ド・おきなわで140kmの市民レースを走った健脚で「景色とエイドのグルメを堪能しつつも、上りはガッツリ攻める。目標は無事完走!」と、それぞれの目的で臨んだ。

地元から参加した、写真左から崎村雄太さん、田尻靖孝さん、細野英治さん。「初めての阿蘇ライドならAコースがおすすめ!」と太鼓判 Photo: Kyoko GOTO
「一度阿蘇を走ってみたかった」という神奈川県川崎市在住の須堯登さん。オートバイにも乗るが、飛行機での移動が簡単な自転車を選んだ Photo: Kyoko GOTO
AコースとBコースは朝8時にスタート Photo: Kyoko GOTO

 Aコースのスタート地点「高森湧水トンネル公園」を朝8時に出発し、わずか9kmほどで第1エイドのある道の駅「あそ望の郷くぎの」に到着。A、B、Cコースでエイドステーションを共有するため、Aでは少し早めのエイド出現となる。走行履歴は受付時に渡されるチェック専用のカードで管理するため、各エイドに立ち寄って読み取り機にカードを通す必要がある。

1つめのエイド、道の駅「あそ望の郷くぎの」にあるモンベル南阿蘇店 Photo: Kyoko GOTO

 いよいよ“阿蘇山エリア”へ足を踏み入れる。上るのは南北に内輪山を貫く阿蘇南登山道。草千里ヶ浜を目指して標高500m地点から、15km650mアップのヒルクライムが始まった。標高が上がるとすぐに眼下に広がる街の景色に、カルデラ特有の低地からそそりたつ山の形を想像する。漕ぎ進めていくとやがて視界から樹木が消え、今度はモコモコとした草原で膨らんだ黄金色の山が目の前に現れた。

山肌に沿って生い茂る草原。秋の阿蘇ならではの光景が目の前に迫ってきた Photo: Kyoko GOTO

 間近に迫りくる山の迫力に背中を押されるようにペダルを回す。標高が高くなったところで斜度が緩まるとともに、眼の前に現れたのは真っ青な空と一面黄金色の大草原のコントラスト。時折草原を揺らして吹いてくる標高1000mの山風が、火照った体を通り抜けていった。

左手に見える烏帽子岳。この山の向こう側が草千里ヶ浜 Photo: Kyoko GOTO

 見渡す限りの草原に心を奪われ、ヒルクライム途中だがつい脚を止めてしまった。同じく脚を止め、絶景にカメラを向ける参加者と「まるで日本じゃないみたいですね」と感動を共有する。そう、これはレースじゃない。感動の赴くまま、脚を止めても良いのだ。

 そしてようやく1100m地点、草千里ヶ浜に到着。烏帽子岳の北麓、火口跡に広がる78万5000平方mの大草原が第一関門をクリアしたサイクリストを歓迎してくれた。

1つめの頂上、草千里ヶ浜。烏帽子岳の麓に大草原が広がる絶景ポイント ©montbell
草千里を過ぎて少し下ったところに見える、お椀をひっくり返したような形の「米塚」。これも立派な火山 Photo: Kyoko GOTO

 火山活動で煙を上げる中岳を背景に、朝日の中、放牧された牛や馬が草を食んでいる独特な風景に、再び足が止まる。ゴール後、制限時間に余裕があったことを考えると、草千里で自転車を下りて少し周辺を散策する時間を作れたかもしれない。脚力によっては、そういった余裕をもった楽しみ方もできるのがAコースなのだ。

絶景&おいしい補給食で回復

 草千里ヶ浜の絶景を堪能し、北側の斜面を13km、約650m下ったところで2つめのチェックポイント「道の駅阿蘇」に到着。阿蘇エリアでは、サイクリングを快適に楽しむためのサポート拠点となる「サイクルステーション」の設置が進んでおり、道の駅阿蘇もそんなステーションの1つとなっている。サイクルラックの設置や空気入れの貸出しはもちろん、タイヤチューブの販売や荷物の一時預かり・配送などのサービスを提供しているところもあったりと、サイクリストウェルカムなエリアなのだ。

サイクルラックの設置や空気入れの貸出し等を行うサイクルステーションがエリア各地に設けられている Photo: Kyoko GOTO
2つめのエイド「道の駅 阿蘇」では大人の顔ほどある巨大なベーコンエピー(パン)が登場 Photo: Kyoko GOTO

 エイドステーションをあとに、目指す2つめのヒルクライムは箱石峠。阿蘇山東側を南北につなぐ途中、外輪山を登り切ったところにある峠で12kmで370mほど上る。外輪山の縁から阿蘇谷を見下ろす眺めと、間近に迫る根子岳の雄姿を望むことができ、ツーリングや写真愛好家の中では有名な「絶景街道」としても知られる。

上ってきた道が見える箱石峠。阿蘇四岳をバックに Photo: Takahiro TANAKA
Aコースのゴール地点、高森湧水トンネル公園で振る舞われたミネストローネ。熊本の伝統野菜「つるの子芋」が使われている Photo: Kyoko GOTO

 箱石峠を越え、下ったところでAコースは終了。絶景ポイントが多かったためか、70kmという距離に比して十分な達成感だ。むしろ、しっかり上ったにもかかわらず「まだ走りたい、もっと絶景が見たい」と思いがこみ上げる。それに応えるようにB、Cコースがあるのは、なかなかニクいコース設定だ。

 B、Cコースの参加者たちにとっては、ここはまだ通過点。補給食のミネストローネで最後のエネルギーを注入し、途中7km・300mアップほどのヒルクライムを含んだ残り約20kmを走る。

Bコースを走る工藤大亮さん(左)、山本尚博さん。「ここでゴールでいいかな」(笑)といいつつ、2人揃ってゴール目指して再出発 Photo: Kyoko GOTO
Cコースを走行中の田中孝宏さん。ミネストローネに前のエイドでゲットしたパンを併せて堪能 Photo: Takahiro TANAKA

 しかし、この坂が最後の“曲者”で、「九十九曲の道」という名の通り細かなつづら折りが幾重にも連なる様が下から上まで仰ぎ見ることができる。ここまでいくつもの峠を越えてきたB、Cコースの参加者の心をへし折り、残りわずかな脚を削るとどめの坂だ。

最後の坂、「九十九曲の道」。下から上を見上げると道が見え、心が折れる Photo: Takahiro TANAKA

 ただ、Cコースの全行程を走り終えた田中さんはコースの印象について「距離と獲得標高の割には、終わってみればもっと走れたかも」とのこと。「Cコースの魅力は景色の変化が目まぐるしく、絶景の連続を堪能できるところ。山都の渓谷沿いののんびりとした里山風景からの高原の風景。地蔵峠を越えた辺りから目の前に突然広がる雲海と阿蘇山は感動的だった。メインの阿蘇山エリア(Aコース)に入り、ぐいぐいと高度を上げていくと日本とは思えないような景色が徐々に現れた。噴煙をあげる火口や金色に染まった山肌、突然広がる草千里の平原も雄大。まるでRPGの世界に迷い混んだかのような風景の連続で、おかげで疲れを忘れながら走れました」と語っていた。

疲れも吹っ飛ぶ豪華景品

 制限時間内に完走した参加者は、ゴール直後に景品が当たる抽選に参加できる。景品はJALの航空券や、ゴアテックスの新素材「シェイクドライ」を採用した自転車用レインウェア、地元の食材詰め合わせ等、豪華ラインナップ。到着順にクジを引くため引けるクジの多さは“速い者”順だが、「残りものには福がある」方式なのか、各コースともに到着順に関係なく豪華景品が当選。ここまでの疲れを忘れるように一喜一憂していた。

ゴール後、豪華賞品が当たる抽選くじを引く完走者 Photo: Kyoko GOTO

 神奈川県から参加した大塚あかりさんは、見事制限時間内にCコースを完走。「ストレスがなく、とても走りやすくて楽しかった。地元の特産品を使ったエイドの内容がよかった!おかげで回復しながら走りきれました。とくに大きなベーコンエピー。ミネストローネもおいしかった。傾斜はかなりきつかったけど、景色も本当に良くて上ったときの達成感がすごかった」と語っていた。

豪華賞品を当てた、4人だけど「坂バカトリオ」の皆さん。平島貴史(左から2番目)さんはJALの航空券、柄本成巳さん(左)はゴアテックスの自転車用レインウェアをゲット Photo: Kyoko GOTO
福岡の北九州市から参加した松本直彦さん(左)と篠崎正司さん。地元食材の詰め合わせセットをゲット Photo: Kyoko GOTO
神奈川県から参加した大塚あかりさん。140km、3000mアップのCコースを見事完走! Photo: Takahiro TANAKA

 なお、モンベルでは自転車やトレッキング、カヤックといった人力による移動手段で日本各地の自然を体感し、地域の歴史や文化を楽しむ旅のスタイルを提唱する取り組みとして「ジャパンエコトラック」(JET)という活動を展開している。統一されたデザインの公式ルートマップをベースに、ルート情報、協力店の情報、地域の魅力を発信し、受け入れ態勢を整備することで旅行者の快適な旅をサポートするインフラづくりを進めており、今回の阿蘇エリアもその地域の一つとなっている。

 イベントでなく、プライベートで阿蘇を訪れてもアクティビティを楽しめるルートマップが作成されており、それらは「JET」のホームページから閲覧することができる。ただ、今回のCコースは大会限定で設定された特別なルートなので、挑戦してみたいと思った人は次回の「ライド イン 阿蘇」にエントリーしてみてはいかがだろう。

航空輪行のハードルを下げるJALの「エスビーコン」ツアー

 今回のイベントでは、日本航空(JAL)の国内線ツアー客を対象にしたロードバイク輸送ボックス「SBCON」(エスビーコン)が組み込まれたパックツアーを利用した。

今回利用したJALの「エスビーコン」。重量約15kg。身長175cm程度の人が乗る自転車が入るよう想定し、荷物コンテナの形に合わせて作られている。現在はツアーパック限定のサービス Photo: Kyoko GOTO

 通常、航空輪行をする場合はプロテクション性能のある専用の輪行ケースを使用するが、その場合、クルマで空港まで搬送するか、最寄りのリムジンバスまでケースごと運ぶ手間があった。今回のツアーには通常の公共交通機関用に使用するモンベルの輪行バッグが付属していたため、最寄りのリムジンバスの発着場まで自走でき、その輪行袋を使ってリムジンバスに積載した。

 空港到着後は手荷物検査場付近まで自転車をカートに載せて運び、待機していたスタッフとともに梱包。前輪のみを外し、所定の場所に車体とホイールをはめ込む形。ハンドルを曲げる必要はなく、サドルの高さによってはシートポストを下げる手間もない。バイクシューズやヘルメット等は所定の位置に収めることができるが、CO2ボンベを入れて運ぶことはできないので、その点は注意が必要だ。

プラスチック製の段ボールで、内部には車体を固定するためのパーツが配置。空いたスペースにはシューズやヘルメットの入れられる空間が設けられている Photo: Kyoko GOTO

 これまでのように免責事項の承諾サインは必要だが、「これで護ります」といわんばかりのケースに感じる安心感はこれまでの単なる荷物預けとは雲泥の差。空港までのアクセスも通常の輪行なので大幅にストレスが低減された。地方の空港同様に自走でアクセスできるようになれば、より利便性が高まるだろう。

 エスビーコンの登場を機に二人で航空輪行旅を始めたという本間広人さんと恵子さんご夫婦は、今回でツアーを利用するのは3回目とのこと。広人さん自身は航空輪行の経験はあったが、恵子さんは未経験で、このエスビーコンができたことで「二人で出かけるハードルが下がった」という。「パックツアーとしても航空券+2泊の宿泊代+搬送サービス込で6万8800~8万9800円(※)はお得。これからも利用したい」といち早く快適な航空輪行旅を楽しんでいた。

※大会エントリー代は含まない

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