求められるチームの自立、連盟は舵取りの難しさJBCFの「自転車新リーグ構想」検討が明らかに 現状から見える期待と課題

by 大澤昌弘 / Masahiro OSAWA
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 日本最高峰のチームがロードレースで競う「Jプロツアー」。それを統括する全日本実業団自転車競技連盟(JBCF)が12月1日に行った中長期活動方針説明会では「自転車新リーグ構想」の検討を開始したことが発表された。リーグ開幕に向けたロードマップや概要は2019年3月に公表される予定だが、現状把握できうることに考えを張り巡らせると期待ばかりではなく、JBCFの舵取りの難しさが見えてくる。

JBCF中長期方針について片山右京理事長が思いを語った Photo: Masahiro OSAWA

新リーグ構想で判明したこと

 自転車新リーグ構想で明らかになったことは少ない。何チームが関わるのか、何戦あるのか、そもそも競技種目はロードレースだけなのか、それ以外にもあるのか。数多くのことが未公表のままだ。

概要とロードマップは2019年3月に発表 Photo: Masahiro OSAWA

 一方で明らかにされたのは、新リーグ構想の検討を開始したこと、それを踏まえて今後、自転車界(チーム、選手、観客、審判)や第三者の有識者(経済界・スポンサー、交通セクター、メディア、有識者)といった立場の人たちとの意見交換を2019年1月から2月にかけて行い、2019年3月に新リーグの概要とロードマップを策定、KPIを設定して実現に向けた歩みを進めることだ。

 もうひとつは、検討段階にあるという新リーグの理念の方向性について。とはいえ、レース、競技性の向上、ビジネス、エンタメ、地域、アカデミーといったキーワードが示されたのみに過ぎない。ただし、競技性の向上に関しては、新リーグの活動を通じて、新城幸也、別府史之に続くワールドツアーで活躍できる選手の輩出することを目指すという。

新リーグ構想で想定されること

 この「世界で活躍する選手の輩出」という目標は、新リーグの行く先を予測するうえで非常に重要な部分だ。

 片山右京理事長は世界で活躍するチーム・選手を生み出し続けるJBCFを理想の姿として掲げ、そのうえで、「選手の雇用を守ったり、新リーグを設計したい。今のままでは島国から世界に飛び出せない。なんとか新しい人材を生み出したい」と発表会の席上で述べている。

 また新リーグ構想の説明を行った連盟戦略室長の栗村修理事も「新リーグからツール・ド・フランスへ。(JBCFの)エリートツアーからツール・ド・フランスへ」といった思いを語っている。 

新リーグ構想について説明をした栗村修理事 Photo: Masahiro OSAWA

 現状は、才能がありながらも大学卒業後に、一般企業へ就職してしまう選手は少なくない。それは、自転車選手では生活していくのが非常に厳しいからに過ぎない。こうした可能性を潰さず、才能ある選手を見出し、世界で活躍する選手を輩出するには、野球やサッカーのように、契約選手に対して相応の報酬を支払えるよう、より一層のプロスポーツ化が望まれる。そのためにも、片山理事長らの発言をくみ取ると、新リーグでは、プロスポーツ然とした環境を整えることをベースにしていくようなのだ。

 そのことから、Jプロツアーで2019年から組み込まれていく参加資格が、新リーグにも、ある程度転用されてもおかしくはない。2019年からのJプロツアーの参加資格について具体的に述べておくと、参加チームの法人化(法人格を有した組織による運営)が義務付けられ、出走費用として200万円の拠出が求められる。2020年以降は運営法人の経営の健全化と安定性が求められつつ、有償プロ契約選手の保有を求め、ホームタウンを定めてのレースを開催していくこと、チーム機材の統一化なども進めていく。

 現在のJプロツアーは社会人チームが混在しており、そうしたチームにとって、とりわけ法人組織化は非常にハードルが高くなるが、新リーグの目標達成を考えると、正統進化といえそうだ。

 それでもなお、社会人チームがあってもいいではないか、といった意見も出そうだ。だが、この先を考えると、法人組織が運営・参加するプロスポーツ化への道が正しいように思える。たとえば、この先、本格的なプロスポーツ化を図ったとして、放映権収入・分配を考えると、代表者(責任者)が明確にならなければ、話がまとまらない。金銭収入の適正な処理を考慮しても、法人組織であることが望ましい。

 新リーグの統括団体となるJBCFが全体最適化を図る上で、参加チームへの一定のハードルを設けて、自立して運営体制を行うように言及していくとしても、それは間違いではないし、実際起こりそうなことだろう。

国内で最高峰のロードレースシリーズ「Jプロツアー」。新リーグではレースコンテンツのみならずチーム運営にも注目すべきだ Photo: Shusaku MATSUO

参加側にも覚悟が必要に

 ただし、どれだけのチームが法人組織化して、継続・安定的な運営を行えるのか、という実現可能性には大きな課題が残る。現状、Jプロツアーにおいて、シマノレーシングやチーム ブリヂストンサイクリングといった一部のチームは例外として、事業基盤が強固なチームは少ないと見られるからだ。

 ロードレースはアリーナ型のスポーツではなく、観戦収入が望みにくい。スポンサー収入も現状では限られている。そうしたなかで、地域密着型スポーツチームとして、最も成功しているとされる宇都宮ブリッツェン(運営元はサイクルスポーツマネージメント)でも、年商は約2.3億円。その内訳はスポンサーがずば抜けて高いわけではなく、宇都宮市の指定管理の受託管理者事業が事業収入上の一大基盤にもなっている。

 多くのチームの収支状況が明らかにされていないながらも、各チームのサービス展開を見る限り、収益基盤は強固ではない。多くのプロスポーツチームの収益の柱になる放映権収入も、現状は観客が少なく、またその数を公表できていない国内ロードレースにおいてはかなり先のことになり、各チームは分配金を頼ることなどできない。

 となれば、プロスポーツ化を進めるうえで、各チームの経済的な自立が強く求められることになるだろう。統括するJBCFも、舵取りを見誤り、継続的な参加チームが少なくなれば、新リーグの発展は見込めなくなってしまう。

 ひとつ言えるのは、国内ロードレースは、現状を延長し続けても、大きな飛躍は見込みにくく、リーグ新設による新プラットフォームの整備が必要だと判断したように思えることだ。国内ロードレースが新たな局面を迎えつつあることは確か。だが、それは統括側にも参加側にも山積した課題を解決していく必要がありそうだ。

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