title banner

福光俊介の「週刊サイクルワールド」<277>バルデを軸にビッグレースの上位戦線へ アージェードゥーゼール ラモンディアール 2019年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
  • 一覧

 フランス自転車界の希望、ロマン・バルデ(フランス)。20歳代半ばにして2度のツール・ド・フランス総合表彰台を経験し、もはや目標はマイヨジョーヌに絞られている。そんな彼は2018年シーズン、クラシックレースやロード世界選手権でも結果を残し、ワンデーレースへの適性を示した。ここ数年でお家芸となりつつある北のクラシックと合わせ、チームとしての可能性が高まってきた。自国ライダーを中心に戦力を整備し、新たなシーズンへ視野を定めたアージェードゥーゼール ラモンディアールの2019年シーズンを展望しよう。

グランツールからクラシックレースまで幅広い活躍が見込まれるアージェードゥーゼール ラモンディアール。ロマン・バルデの走りが命運を握る(中央) =イル・ロンバルディア2018、2018年10月13日 Photo: Yuzuru SUNADA

ジロとツール グランツール連戦を検討するバルデ

 押しも押されもせぬチームの顔であるバルデ。2018年シーズンは、自他ともにマイヨジョーヌを期待したツールでは個人総合6位に終わった。同2位と大躍進を遂げた2年前、ステージごとに波がありながらも同3位とまとめた昨年と、総合表彰台を確保した2回のような鮮烈なインパクトは残すことができなかった。2015年以来、連続してステージ優勝も挙げてきたが、今年はそれもかなわず、本人は「学ぶことが多かった大会だった」と振り返る。

ツール・ド・フランスでは5年連続のトップ10フィニッシュ。ロマン・バルデが目指すのはマイヨジョーヌのみだ =ツール・ド・フランス2018第19ステージ、2018年7月27日 Photo: Yuzuru SUNADA

 とはいえ、5年連続での総合トップ10で終えたあたりはさすが。今年からは高地トレーニングを本格的に取り入れており、新たなシーズンはより自らに合ったトレーニング法で目指すレースへと向かっていくことだろう。

 これまでのツールで上位進出を果たしてきた要因は、山岳での安定感と強力なアタックにある。特に急坂で見せる繰り返しのアタックは、ライバルを消耗させ、自身の上位フィニッシュはもとより、総合成績にもつなげている。加えて、ダウンヒルのテクニックにも長けており、多くの選手が慎重に対応していると見るや、下りアタックに打って出るなど、上り・下り問わず攻撃的な走りが大きな魅力である。

 そんなバルデにとって、山岳比重が高くなる来年のツールは大きなチャンス。決して得意とは言えない個人タイムトライアルは1ステージに限定され、距離も27kmと近年のグランツールにおいては短め。第13ステージと、大会中盤に設定されるあたりでも、その結果いかんで山岳ステージがひしめく大会後半の作戦を組むことができる。まさに、冷静にレースを読むことができるタイプのバルデ向きのステージ構成だ。

2018年はワンデーレースでも結果を残したロマン・バルデ。UCIロード世界選手権では銀メダルを獲得 =2018年9月30日 Photo: Yuzuru SUNADA / Pool

 ヨーロッパのサイクルメディアで、ジロ・デ・イタリアにも意識が向いていることを報じられていたバルデだが、このほどチームマネージャーのヴァンサン・ラヴニュー氏が2019年大会の出場について否定。バルデ自ら「ジロのタイトル獲得はキャリアプランの一部」と公言しているが、当面はツールに集中する。

 また、グランツールでの強さが印象的なバルデだが、今年はワンデーレースでの適性の高さも示した。4月のリエージュ~バストーニュ~リエージュで3位になると、9月にはUCIロード世界選手権で銀メダル。ともに優勝争いに加わり、積極性が好リザルトに結びついた。アップダウンの多いコースでのスピード勝負を得意とするが、今後はツールの山岳ステージで見せるような“会心の一撃”で勝利をもぎ取る走りに期待が膨らむ。2019年は新たなタイトルを手にしているかもしれない。シーズン前半はアルデンヌクラシックでの戦いぶりに注目だ。

 11月上旬に28歳になった。フランスメディアでのインタビューで「28歳から32歳の間にキャリアのピークを迎えたい」と述べるなど、まだまだ向上する余地はあると感じているよう。先ごろ、彼のコーチを務めたサミュエル・ベルヌー氏のチーム移籍が明らかになったが、シーズンインまでには状況を整えて競技に集中できることだろう。

計算できるオールラウンダーがそろうチーム編成

 バルデにとどまらず、チームはグランツールをメインにオールラウンドに活躍が見込まれる選手をそろえ、戦える体制づくりを進める。

2018年はツール・ド・フランスでマイヨブランを獲得したピエール・ラトゥール。さらなる飛躍が期待される =2018年7月29日 Photo: Yuzuru SUNADA

 スーパーエースのバルデに続く2番手として名が挙がるのが、今年のツールで新人賞のマイヨブランを獲得したピエール・ラトゥール(フランス)。早くから将来を嘱望され、初のグランツールとなった2016年のブエルタ・ア・エスパーニャではステージ1勝、個人TTで国内選手権タイトルを2連覇中と、オールラウンダーとしての資質は十分。ツールではバルデのアシストが主たる任務だったこともあり、マイヨブランの一方で個人総合では13位にとどまったが、本来はトップ10圏内を狙えるだけの能力はある。来年は、バルデとラトゥールを棲み分け、両者が与えられたポジションで上位を狙うことも考えられる。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2018第7ステージで優勝したトニー・ガロパン。個人総合でも11位とし、総合系ライダーとしての可能性を示した =2018年8月31日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ワンデーレースからステージレースまで幅広く戦えるトニー・ガロパン(フランス)は、ブエルタで個人総合11位とし、いよいよ本格的に3週間の戦いでの上位進出を視野に入れる。1週間程度のステージレースではたびたび好成績を残してきたが、今年の現チーム入りを機にグランツールでの総合エースを引き受け、一定の成果を挙げた。堅実な走りでバルデのアシストをメインとするが、レースプログラム次第でチームリーダーとなる機会も増えてきそうだ。

 アレクシー・ヴィエルモーズ(フランス)は今年こそツール途中リタイアに終わったが、2015年にはステージ1勝を挙げるなど、3週間の戦いを得意とする。2017年にはバルデの山岳最終アシストを務めながら、自身も個人総合13位。総合力は高い。

アメリカ王者を経験しているラリー・ワーバスが2019年からチームに加入する =ツール・ド・スイス2018第5ステージ、2018年6月13日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ビッグレースの経験が豊富なマティアス・フランク(スイス)やベン・ガスタウアー(ルクセンブルク)も山岳の走りが計算できるほか、今年のブエルタでステージ1勝のアレクサンドル・ジェニエス(フランス)もグランツールの総合トップ10経験者。さらに、シーズン途中に解散したアクアブルースポートからオールラウンダーのラリー・ワーバス(アメリカ)が加入することになり、より厚みが増している。

 誰がどのレースに配置されるのか。チーム内競争の高まりとともに、各選手のレースプログラムといった見どころも押さえておきたいところだ。

ナーセンとディリエがパヴェのタイトル獲得に挑む

 グランツールやステージレースにならび、チームの主戦場といえるのが「北のクラシック」。こちらも絶対的なリーダーを擁し、2019年シーズンこそタイトル奪取に挑む。

パヴェ路線で絶対的エースとなるオリバー・ナーセン =パリ〜ルーベ2018、2018年4月8日 Photo: Yuzuru SUNADA

 その先鋒となるのが、オリバー・ナーセン(ベルギー)。ここ数年の活躍で、すっかりパヴェ(石畳)での戦いには欠かせない1人となった。要所でのアタックや、決定的な場面でチェックに動く姿など、勝負を左右する局面では確実に前方に位置するが、まだタイトルには縁がない。北のクラシックでの表彰台が、3位に入った2017年のE3ハーレルベーケの1回のみというのも意外だ。

 パヴェ上での攻撃的な走りはもちろん、得意とするのは少人数に絞り込んでのスプリント。ライバルにはスプリント力の高い選手が多いだけに、いかに有利な展開にもっていくかが課題。ベルギー人ライダーの誰もが憧れるツール・デ・フランドル、そしてパリ~ルーベで頂点に立つことができるか。

 また、パヴェにとどまらず平地系ワンデーレースにめっぽう強いあたりも魅力。今年は8月のブルターニュクラシック・ウェストフランスで2年ぶりの優勝を果たしたほか、9月にはグランプリ・シクリスト・ド・モントリオールで4位。レース運びの巧みさも光る。ステージレースでは逃げや集団牽引でもチームに貢献しており、来シーズンも主力として大車輪の働きを見せるはずだ。

パリ〜ルーベ2018でペテル・サガン(右)と激闘を演じたシルヴァン・ディリエ。得意の逃げの走りとともにクラシック戦線での活躍に期待が膨らむ =2018年4月8日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ナーセンとの2枚看板の一翼を担うのが、シルヴァン・ディリエ(スイス)。昨年まで所属したBMCレーシングチームでは「逃げのスペシャリスト」として鳴らしたが、現チームに加わった今年、初出場のパリ~ルーベで2位。ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)との激闘は世界中を興奮させた。

 ルーベでの快走も、得意とする逃げからのものだった。このときは別のレースで落車負傷したナーセンに代わって勝負に出た形だったが、パヴェへの適性を証明したことでチームの中心的存在となることは必至。シーズン前半は、彼の積極的な走りが何度も見られるかもしれない。同様に、ステージレースでの逃げっぷりも見ものだ。

 そんな2人を支えるのが、ベテランのスティーン・ヴァンデンベルフ(ベルギー)。かつては上位戦線をにぎわせた実力者は、年下の選手たちを後押ししつつも、展開次第では自ら勝負に出られるよう心の準備を行う。

 今年の15勝を上回る勝利数を挙げたいと意気込むチームは、2019年シーズンを28人で戦う見通し。うち20人をフランス人ライダーで固める。ちなみに、チームの単独タイトルスポンサーであるアージェードゥーゼール ラモンディアール社は、フランスの保険・年金共済組合。ツールなど、A.S.O.(アモリ・スポル・オルガニザシオン)主催レースのスポンサーも務めている。

アージェードゥーゼール ラモンディアール 2018-2019 選手動向

【残留】
ゲディミナス・バグドナス(リトアニア)
ロマン・バルデ(フランス)
フランソワ・ビダール(フランス)
ミカエル・シュレル(フランス)
クレメン・シェヴリエ(フランス)
ブノワ・コズネフロワ(フランス)
ニコ・デンツ(ドイツ)
シルヴァン・ディリエ(スイス)
アクセル・ドモン(フランス)
サミュエル・デュムラン(フランス)
ユベール・デュポン(フランス)
ジュリアン・デュヴァル(フランス)
マティアス・フランク(スイス)
トニー・ガロパン(フランス)
ベン・ガスタウアー(ルクセンブルク)
アレクサンドル・ジェニエス(フランス)
アレクシー・グジャール(フランス)
カンタン・ジョレギ(フランス)
ピエール・ラトゥール(フランス)
オリバー・ナーセン(ベルギー)
オレリアン・パレパントル(フランス)
ナンズ・ピーターズ(フランス)
スティーン・ヴァンデンベルフ(ベルギー)
クレマン・ヴァントゥリーニ(フランス)
アレクシー・ヴィエルモーズ(フランス)

【加入】
ジェフリー・ブシャール(フランス) ←CR4C ロアンヌ(アマチュア)
ドリアン・ゴドン(フランス) ←コフィディス ソリュシオンクレディ
ラリー・ワーバス(アメリカ) ←アクアブルースポート

【退団】
ヤン・バーケランツ(ベルギー) →チーム サンウェブ
ルディ・バルビエ(フランス) →イスラエルサイクリングアカデミー
シリル・ゴティエ(フランス) →ヴィタルコンセプト・B&Bホテルズ
マッテーオ・モンタグーティ(イタリア) →アンドローニジョカットリ・シデルメク

※11月27日時点

今週の爆走ライダー−ニコ・デンツ(ドイツ、アージェードゥーゼール ラモンディアール)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 シーズン最終盤、10月6日のツール・ド・ヴァンデ(UCIヨーロッパツアー1.1)で優勝。うれしいプロ初勝利は、来シーズンへの期待を持たせるとともに、フランス国内のUCIレースも重視するチームに大きな1勝をもたらした。

上り・平坦ともに力を発揮するニコ・デンツ。ドイツ代表としても活躍の場を広げている =サントス・ツアー・ダウンアンダー2018チームプレゼンテーション、2018年1月13日 Photo: Yuzuru SUNADA

 1994年生まれの24歳。フランス人ライダーがほとんどを占めるチームにあって、唯一のドイツ人。ただ、選手としてのキャリアは、フランスで歩む時間が長くなりつつある。チームの下部組織で走り始めたのが6年前。2014年には、実力がないと勝つことが難しいフランスのアマチュアレースで勝利を量産。トップチーム昇格の足掛かりにした。

 プロ入り後はアシストを務めることが多いが、上りから平坦までそつなくこなせるあたりが大きな武器。今年はロード世界選手権のドイツ代表入りも果たし、自信を深めている。

 来年は1月のサントス・ツアー・ダウンアンダーでシーズンインすることを公表。1年の始まりとなるレースをチームから任されたことを喜ぶ。オフは好きなことをして過ごしているといい、来たるシーズンに英気を養っているところだ。

 成長著しい走りと並行して、経営学を専攻する学生としての一面も持つ。ロードレース・学業ともに“本職”と位置づけて邁進するあたりは、いかにも勤勉なドイツ人らしさがうかがえる。

2019年はサントス・ツアー・ダウンアンダーでシーズンインするニコ・デンツ。チームからの期待も高まっている =ジロ・デ・イタリア2018第16ステージ、2018年5月22日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

関連記事

この記事のタグ

チーム展望2018-2019 週刊サイクルワールド

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

ショップナビ

スペシャル

自転車協会バナー
新春初夢プレゼント2019

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載