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栗村修の“輪”生相談<141>10代男性「競技部のある高校に行かなくても、クラブチームなどでプロを目指せますか?」

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 いつも楽しく見させてもらっています。

 僕は今中学2年生でプロになるという夢があり、高校は自転車競技部のある学校を受験しようとしていました。高校入学までにはロードバイクを買ってもらえる予定でしたが、家庭の事情で経済的にロードバイクを買ってもらえる状況ではなくなってしまいました。

 ですから自転車競技部のある高校の受験は諦め、高校でアルバイトをしお金を貯めロードバイクを買おうと思っているんですが、高校生の間はどこかに入ろうと思っているんですが、クラブチーム以外に選択肢はありますか?

 あと、クラブチームなどではプロは目指せるでしょうか?

(10代男性)

 ロードレースは機材スポーツなので、質問者さんのようなケースが起こりえることは理解しています。僕は、自転車界全体として、ロードバイクを買えない若者たちへの支援プログラムのようなものが必要だと考えています。

 ただし、他のスポーツと比べると簡単ではなさそうです。理由の一つは値段です。サッカーボールを買うのとロードバイクの購入サポートを行うのとでは、あまりに負担が違います。数十万円をポンと出せる大人はそうはないでしょう。

 ロードバイクを支給する、あるいは貸与することにはもうひとつ重大な問題があります。それは、安全です。

 サッカーボールやテニスのラケットを子供に買い与えることで重大な安全上の責任が生じることは殆どありませんが、ロードバイクは違います。きちんと定期的な整備をしたり、交通ルールを教えなければ事故に繋がりますし、仮に機材と走り方が完璧でも、不測の事故は起こりえます。そして事故があれば、最悪、若い命が失われます。ロードバイクを安易に与えることには重い責任が付きまとうんです。言いわけじみてはしまいますが、難しいスポーツですよね。

 話を戻しますね。高校時代をどう過ごすかですが、チーム探し以前に、焦る必要はありません。僕があちこちで言っていることですが、才能さえあれば、適切な努力によってあっというまに強くなるのが自転車ロードレースです。

 新城幸也選手が自転車競技を本格的に始めたのは18歳のときですし、ジュニアで圧倒的な力を見せて、エディ・メルクスの再来とも言われているベルギーのレムコ・イヴェネプールも、サッカーを辞めて初めて自転車レースに出場してからからわずか1年で、ジュニアの国内選手権、ヨーロッパ選手権、世界選のロードレースとタイムトライアルをすべて勝っています。

本格的に競技を始めてわずか1年あまりで世界の頂点に立ったレムコ・イヴェネプール(ベルギー)。2019年のロード世界選手権ではジュニアのタイムトライアルとロードレースをダブル制覇 Photo: Yuzuru SUNADA

 したがって、あわてなくて大丈夫です。今はロードレースをバリバリやるよりは、体を左右対称に使うスポーツ(自転車競技は左右対称ですからね)で体を作ってください。球技よりも陸上や水泳がいいかもしれません。

 もちろん、可能なら自転車にも乗って欲しいのですが、高価なロードバイクである必要はありません。安価なスポーツバイクでいいので、パイロンを置いてS字走行をするなどして基本的なスキルを身につけて下さい。若い時(ジュニア以下)に身につけて欲しいことは自転車の乗車技術です。そういった意味ではオフロード系の種目(MTB、BMX、シクロクロスなど)に遊び感覚で参加することはとても有益だと思います(若い時は楽しむことが重要です)。

 ロードレースを始める環境を探すにしても学校の部活動である必要はなく、クラブチームでもよいのですが、どのチームかは非常に大切です。ロードレースはノウハウが必要な競技なので、知識と経験がある人がいるチームに入るべきです。

 そして、競技を見据えたときに理想的なクラブチームは、実業団レースの最高峰であるJプロツアーとその下のJエリートツアーの、両方で活動しているチームです。たとえば、宇都宮ブリッツェン(Jプロツアー)には下部チームであるブラウ・ブリッツェンがありますが、こういうチームがいいでしょう。

 トップチームの選手と練習する機会があるだけで、得られる情報量がぐんと上がります。ただし、Jプロツアーチームがなかったとしても、若手育成の実績のある名監督・名コーチがいるようなチームであればもちろんオススメいたします。

 ともかく、まずはしっかりした指導者がいるJエリートツアーチームから始めましょう。今はクラブチームからプロになる選手も増えており、たとえば宇都宮ブリッツェン所属選手の大半はクラブチーム出身です。ヨーロッパを強く意識するなら早めのタイミングで浅田顕監督のチームである「エカーズ」の門をたたくという選択肢もありますね。

 応援しています。焦らずに、がんばってください。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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