バイクインプレッション2018イタリアンハンドメイドの最高級チタンバイク パッソーニ「トップフォース」
PASSONI(パッソーニ)は、チタンバイクの製作を得意としているイタリアの最高級ハンドメイドバイクメーカーの一つ。今回はレーシーな乗り味を提供する「トップフォース」のインプレッションをお届けする。
パッソーニがフレームを1本作製する時間は、他社のそれとは比較にならないほど手間暇をかける。自転車フレームに使用される金属のなかでも、特に硬いとされるチタン合金製のチューブを丁寧に溶接。その後、30時間(20日間)を費やしてやすり掛けを行い、継ぎ目がわからないほどスムーズな接合面に整えられている。

一本一本を顧客の体格に合わせてオーダーできるのも特徴の一つ。乗り味の好みや、ポジションに沿ったミリ単位の細かい注文が可能となっている。今回試乗したバイクはカンパニョーロの電動コンポーネント(EPS)が組み付けられていたが、それに合わせてインナールーティング専用の造りとなっていた。ヘッドチューブにはシリアルナンバーが刻まれたヘッドバッジが存在感を放っており、オーナーはヘッドバッジと同じキーホルダーが納車時に与えられるという所有欲を高める演出も用意されている。
フレームセットで税抜120万円という超高額なトップフォースだが、実物を目の前にするとそれも納得する。細部まで妥協のない造りには感動すら覚えるほどで、見れば見るほど魅力的に思えてくる。作品として飾っておきたい、という心境にもなるが、しっかりと乗ってフィーリングを確かめた。
走行感はカーボンバイクのように軽くないし、性能だけ比べると最新のエアロロードバイクのほうが何枚も上手だろう。しかし、チタン合金が実現する人間に馴染む独特な乗り味が前面に表れており、「もっと踏んでみよう」と思わる心地よさがある。しなやかでありながら、踏めば進む。振動はライダーへと伝えるも、不快なバイブレーションはバイクの芯で抑え、不快なものとしない。チタン合金の良いポイントがまとめられていた。
オーダーフレームなので、ハンドリングやポジションはジオメトリーによって1台1台変わってくるだろうが、今回のバイクでも直進安定性に優れたイタリアンバイクらしい性格は確認することができた。以前、筆者はパッソーニのバイクに乗っていた期間があったが(トレーニングやレースで使用していた)、基本的にはそれほど大きくハンドリングは変わらなさそうだ。いきなり破綻することはなく、乗り手が意図する動きに逆らわず素直に操ることができる。
パッソーニを買い求める顧客は、トレーニングや練習でハードに使用することはそれほど考えていないだろう。こだわりのウェアやアクセサリーをそろえ、大人のサイクリストがサイクリングで余暇を楽しむ姿が目に浮かぶ。ゆったりと走っても、チタンが放つその質感や、余裕のある走りを堪能することができるはず。しかし、優れた基本設計は鞭打てば応え、俊敏な走りを実現する。乗り手を退屈させず、“床の間”バイクには決してさせない上質な1台だ。
■トップフォースディスク
税抜価格:1400,000円(フレームセット)

サイクリスト編集部員。10代からスイスのUCIコンチネンタルチームに所属し、アジアや欧州のレースを転戦。帰国後はJプロツアーにも参戦し、現在は社会人チーム「Roppongi Express」で趣味のレースを楽しむ。JBCFのカテゴリーはE1。数多くのバイクやパーツを試してきた経験を生かし、インプレッション記事を主に担当している。