輪行時の注意点も紹介ツール・ド・おきなわ市民210kmで実走 本格ロードレースで試したディスクブレーキ

by 松尾修作 / Shusaku MATSUO
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 ディスクブレーキロードバイクが市場での認知度を拡大しているが、そもそものメリットは何だろう。国内のロードレースで初めて使用が解禁された「ツール・ド・おきなわ」にCyclist編集部の松尾がシマノの「R9100」系デュラエースのディスクブレーキを登載したメリダ「SCULTURA DISC TEAM-E」で挑戦。輪行時の注意点や、本格コースで試した走行感をリポートする。

本格ロードレース「ツール・ド・おきなわ市民210km」にシマノのディスクブレーキで挑戦 Photo: Masahiro Osawa

解禁初レースでディスクが勝利

 今大会でディスクブレーキの解禁は最も注目されたトピックだった。市民210kmの優勝候補として挙げられていたディフェンディングチャンピオンの高岡亮寛選手(Roppongi Express)や、紺野元汰選手(SBC Vertex Racing Team)らがディスクブレーキを登載したエアロロードを勝負バイクに選択。バイクメーカーサイドもスペアホイールを積んだサポートカーをレースに帯同させ、ディスクブレーキを選択した使用選手のサポートも行った。結果的に紺野選手が市民210kmを独走で優勝し、その優位性を知らしめた。

ディスクブレーキ搭載バイクで初優勝を飾った紺野元汰(SBC Vertex Racing Team)選手 Phot: Shusaku MATSUO

 使用選手が「速い」と口を揃える理由とは何だろうか。制動装置である以上の効果があるのか。筆者自身もディスクブレーキロードバイクでレースに出場したことがなかったため、同大会で試してみることにした。

輪行時にローターの歪みを防ぐカバーで保護した Photo: Masahiro Osawa

 沖縄へ向かうに当たっては、輪行はマストだ。国内線を利用するため、国外のエアラインと比較すると扱い方は丁寧なのは間違いないが、それでもローターへの外的な衝撃による歪みは気になるところ。少しでも歪みをきたすと、パッドと擦れて音鳴りや、スムーズな回転の妨げになってしまう恐れもある。

 歪みを防ぐため、筆者はローターをすっぽり覆うカバーを前後に装着して保護した。それに加えて、キャリパーにも気をかけなければならない。ホイールを外した後、ブレーキを握ると、キャリパー内部のピストンが出てしまい、互いに接触するためだ。最悪、ピストンが出きってしまうと、オイル漏れを起こし、制動力を弱めてしまう恐れも生じる。今回はホイールを抜いたあと、「ダミーローター」を挟んで対応した。ローターが入る隙間にダミーローターを差し込み、本体の輪ゴムをキャリパーに巻き付けて固定するだけと非常に簡単だ。

キャリパーに挟む「ダミーローター」 Photo: Masahiro Osawa
本体に付属した輪ゴムでキャリーパーに固定した Photo: Masahiro Osawa

 最後に、アクスルシャフトを忘れないため、フロントフォークとフレームに固定し、輪行袋へ収納。リアディレーラーを外したり、リアエンドを保護するのは通常のリムブレーキ仕様と変わりなく、丁寧にパッキングした。扱い方が異なるだけで、そこまで面倒だとは感じず輪行できた。

ライダーの負担を確実に軽減

 いよいよレースの火ぶたが切られると、さすがは市民カテゴリーのトップクラスだけあり、高いアベレージスピードで進む。平地でも400人の集団が時速50km近い速さで密集して走るため、バイクの安定性はいつも以上に求められるといってもいい。スクルトゥーラは12mmのシャフトを採用しており、走りを支える軸はクイックリリースと比べると太いため、路面からの恐怖要素をカットしてくれる。上ハンドルからブレーキレバーを握っても、より軽い力で制動力を発揮できる油圧システムと相まって、ハイスピードな走行時に抜群の安心感を提供してくれた。

油圧ブレーキの軽いレバータッチとDi2の組み合わせは長距離レースで確実にライダーをサポートする Photo: Masahiro Osawa

 “おきなわ”の特徴の一つに挙げられるのが、一般公道を大胆に封鎖したダイナミックなコースレイアウトにある。北部の山岳エリアでは、ダウンヒル時、時速80kmを超えるスピードで突っ込んでいく。当然、速度コントロールのため、“当て効き”状態にするのだが、ディスクブレーキの場合やや従来のリムブレーキと異なる操作だと感じた。

 リムブレーキの場合、リムをシューが掴んでから、キャリパーのたわみ、ワイヤーの伸縮、ブレーキレバーのしなりなど、多くの“あそび”のなかでスピードをコントロールする。一方のディスクブレーキは油圧ピストンでパッドを押し、ローターを掴むため、とてもダイレクトなフィーリングとなる。これは好みが分かれるところか。新たな感覚に慣れが必要だと感じた。しかし、結果的に速い速度域でも、リムブレーキを用いた選手たちと集団で下っていてもリズムが合わないなど、走り辛いという印象はなかった。

ローターやキャリパーの重さはさほど感じず、サクサクと軽快に上った ©ツール・ド・おきなわ実行委員会

 なお、ホイールはシマノ「WH-R9170-C40-TU」を履いた。リム高は37mmとミドルハイトで、平地の高速走行から、山岳での軽やかな走りも実現した頼もしい武器となった。最も恩恵を感じたのはリム幅28mmに合わせた28Cの太めのタイヤだ。エアボリュームをもたせることで空気圧を落とせ、優れた乗り心地を可能とし、長距離レースでの疲労軽減に繋がった。ホイール全体の剛性も非常に高く、踏み出しのトラクションと操作性の高さも際立った。

油圧ディスクブレーキと電動変速でライダーの走りを支える「R9170」系デュラエース ©SHIMANO

 レースを走り終えて感じたのは、ディスクブレーキの優れているポイントは、制動力だけに囚われないということだ。むしろ、フレーム設計の自由度を高め、バイク全体のポテンシャルを底上げしてくれることこそメリットだろう。現代のエアロロードフレームに見受けられる複雑な内部構造でも、油圧ブレーキのレバータッチは軽く、電動コンポーネント(Di2)の容易で速い変速は確実にライダーの負担を減らしてくれる。

スリムでコンパクトな「ST-R9170」 Photo: Shusaku MATSUO

 結果的に、筆者は128位で完走となった。序盤に落車をし、肋骨の骨折と全身打撲で負傷。しかし、集団へと追いつき、中盤までチームメートの高岡選手らとレースを進めた。うまく呼吸ができず、2回目の普久川ダムの上りで遅れ、グルペットでのフィニッシュとなった。全身に痛みがありながらも、確実な変速と減速を楽にできたのも油圧ブレーキとDi2の恩恵だったと思う。R9100系デュラエースから採用された油圧ブレーキとDi2の組合せは、レースシーンだけでなく、ロングライドでも快適なサイクリングを実現するコンポーネントだろう。STIの握りも油圧システムが内蔵されてるとは思えないほどスリムで握りやすい。

 レースに向けて用意したスクルトゥーラの重量はペダルやボトルケージ込みで約7.1kgと軽量だった。リムブレーキより重量増となる機構のディスクブレーキだが、この重量に抑えられれば十二分に戦える。メリダのエアロロードバイク「REACTO DISC TEAM-E」も、完成車で7.5kgのスペックだ。ブレーキアーチがディスクキャリパーに置き換わったことで、更なるエアロ効果を生んでいる。

 かつてディスクブレーキのデメリットと表された項目は、時代と機材の進化の過程で存在感が薄くなっているようだ。速さを求めるライダーにこそ、ディスクブレーキ搭載のバイクは必需品となる日も近いだろう。

松尾修作松尾修作

サイクリスト編集部員。10代からスイスのUCIコンチネンタルチームに所属し、アジアや欧州のレースを転戦。帰国後はJプロツアーにも参戦し、現在は社会人チーム「Roppongi Express」で趣味のレースを楽しむ。JBCFのカテゴリーはE1。数多くのバイクやパーツを試してきた経験を生かし、インプレッション記事を主に担当している。

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