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山下晃和の「ツーリングの達人」秋吉台カルスト台地から萩へ 山口の絶景を走り抜ける“おいしいとこどり”自転車旅

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 山口県美祢市からのお誘いで、トレイルランニングのレース「秋吉台カルストトレイルラン」のゲストランナーとして招いてもらった。昨年の秋に雑誌の取材で秋吉台に訪れていたので、今回で2回目となる。前回はスタッフと一緒にレンタカーで移動したので、あっという間に秋吉台に着いた。今回は1人旅、そしてときは10月。日本列島の西エリアということで東京よりはいくぶん気温が高いらしいが、晩秋らしくなり、天気も安定していて好天が続くという予報なので、「よし、ならば自転車で行ってみよう!」と思い立った。

トレラン大会のあとは秋吉台カルストライド! Photo: Akikazu YAMASHITA

空港から自走でゲスト参戦

 ロードバイクを「タナックス」の輪行バッグに入れて、羽田空港から山口宇部空港まで飛ぶ。なんらかの飛行機トラブルによって到着時間に遅れが生じたので、空港から草江駅まで10分ほど歩き、輪行して新山口駅まで行くことに。そうすることで大会の前夜祭会場がある秋芳洞ロイヤルホテルまでおよそ25kmほどショートカットできる。

国内の飛行機輪行は普通の輪行バッグでも安心 Photo: Akikazu YAMASHITA

 新山口駅で自転車を輪行バッグから取り出し、山側へと向かう。車通りが少なくて、道も広く非常に走りやすかった。ただ、途中から「山口秋吉台自転車道」というサイクリングロードの道標が出て来たので試しに走ってみたものの、たくさん枝が落ちていて、たまに泥や大きな水たまりがあったり、砂利が多かったり、どんぐりのような木の実や松ぼっくりが落ちていたり、あまり走っている人がいない様子だった。

山口秋吉台自転車道。サイクリストが通った気配あまりなかった Photo: Akikazu YAMASHITA

 あまりにもパンクの危険性が高いので、ロードバイクでは走らない方が良いかもしれない。繋ぎ目が多いものの、車道のほうが広いのでそちらを走ることにした。

 道のそばには田んぼがあり、人家もあるが、歩いている人はほとんどいない。どこか寂しい感じもしたが、これが地方の現状なのだろう。途中、休憩できるようなところも無かったので、ホテル手前にあるコンビニエンスストアでようやく飲み物を買うことができた。それほど飛ばしてはいなかったはずだが、峠が一つあったので、そこで汗をかいた。

 そして最後の最後に激坂があり、とうとう漕ぐことができなくなった。自転車を押してまた汗をかき、ギリギリの時間で前夜祭に間に合った。

ギリギリで間に合った前夜祭。空腹を抱えてゲスト出演… Photo: Akikazu YAMASHITA

 会場に用意されていた食事を食べたくて仕方なかったが、まずはゲストランナーとして挨拶を。このレースは広島県のトレイルランやイベントを手掛ける団体が主催しており、参加者も県内だけでなく広島や九州から来ている人が多かった。飛行機移動と自転車移動で想像以上に疲れていたようで、温泉に入ったあとは布団に吸い込まれるように眠りについた。

トレランでの出会いで旅の予定を変更

快晴に恵まれたイベント当日。コースディレクターはプロのトレイルランナー、奥宮俊祐選手(左) Photo: Akikazu YAMASHITA

 翌朝5時に目を覚まし、会場の秋吉台家族旅行村まで15分ほど歩いた。昨年は雨に見舞われ非常に寒かったそうだが、今年は快晴。美しい青空が広がるなか、参加者たちと記念の写真撮影などをしてフルコースの選手がスタートした。

 少し待機してウィメンズという女性だけのコース20kmに同行した。秋吉台のカルスト台地は草原が広がり、日本とは思えないような絶景が続く。岩がゴロゴロと草の中から見える景色はかつて見たラオスのジャール平原のよう。国立公園なので普段は走ることができないが、この日だけ特別に走ることができる貴重なレースでもある。

草原が広がり、日本とは思えないような絶景が広がる Photo: Akikazu YAMASHITA

 エイドにはいろいろな食べ物があり、中でもこの秋吉台でしか味わえないという「梨あん餅」がものすごく美味しかった。

美味しすぎて、帰りにお土産として3箱注文してしまった Photo: Akikazu YAMASHITA

 20kmを走り終えた後、会場に戻って、ロングコースを走っていたランナーたちを応援し、ゴールでハイタッチ。たくさんの人がゴールできたことに感動し、涙する人もいれば、待っていた家族とハグする人もいる、とても温かいレースだった。

 その日も疲れがあったので、早めに温泉に浸かって翌日の走りに備えた。

 本当は翌日空港までロードバイクで戻るつもりだったが、トレイルレースの途中で話をしながら一緒に走った一般ランナーの方が萩市でうどん屋を営んでいるということを聞き、食べに行く約束をした。こういう偶然の出会いがあるから旅は面白い。萩市はいつか行ってみたい場所だったので、お言葉に甘えることにした。

秋吉台の美しいワインディングロード Photo: Akikazu YAMASHITA

 翌朝早くから、秋吉台の美しいワインディングロードをロードバイクで駆け抜け、一気に萩市まで走らせた。距離は35kmくらい。かかった時間は2時間ほどだろうか。途中、けっこうな上り坂があってスピードダウンしてしまった。トレイルランで20km走った大腿四頭筋に筋肉痛が残っていたのも原因かもしれない。

絶好のサイクリング日和 Photo: Akikazu YAMASHITA
ブルーラインが描かれており、道もわかりやすい Photo: Akikazu YAMASHITA

 トンネルを抜けると一気に下りになり、萩市の町と日本海が見えた。ここまでの道中と比べて都会的な雰囲気だ。

 招いていただいたうどん屋に向かう。店名は「どんどん 土原店(ひじわらてん)」。山口県にたくさん店舗を構える大手チェーン店でビックリ。そこでご夫婦と再会し、美味しいうどんをごちそうになった。

朝から混んでいたうどん屋「どんどん 土原店」 Photo: Akikazu YAMASHITA
肉うどんとわかめのおにぎりをごちそうになった Photo: Akikazu YAMASHITA

 僕が表紙モデルをしていた自転車雑誌を持っていてくださっていたので、恥ずかしながらサインを書かせてもらった。ちょうど旦那さんがトライアスロンに出る予定とのことで、お互いに情報交換をし、再会できることを祈って旅を続けることにした。

自転車フレンドリーな街、萩

萩城址へは自転車の乗り入れができる Photo: Akikazu YAMASHITA

 萩城跡は自転車でそのまま乗り入れて見学ができるので、ぐるっと自転車で城の周辺を一周した。城の裏側には海と白い砂浜が広がっていて、思わず「ここがキャンプ場になれば、旅サイクリストがここを拠点に萩市の町へと繰り出せる」と想像を巡らせた。

 その後、吉田松陰を祀る神社、松陰神社にも立ち寄った。東京・世田谷区にある松陰神社には行ったことがあるが、こちらの方が荘厳で規模が大きかった。

萩城址の中にある鳥居 Photo: Akikazu YAMASHITA

 萩市は3年前に「明治日本の産業革命遺産」としてユネスコの世界遺産に登録されている。萩反射炉、恵美須ヶ鼻造船所跡、大板山たたら製鉄遺跡、松下村塾、萩城下町の5つの遺産があるのだが、そのなかでも萩の城下町が気に入った。

サイクリストに優しい萩の城下町 Photo: Akikazu YAMASHITA

 白い壁が続く道は風情があり、自転車で走るのにちょうど良い。歩くにはちょっと時間がかかるし、バスだと時間が自由でなくなる。となると、タクシーか自転車しかないということになる。ちょうど城下町の真ん中に大きな駐輪場もあって、そこに停めたら周辺を歩くこともできる。

 ランチを求めて、インターネットで調べて雰囲気が良さそうだった「晦事」(コトコト)というカフェに立ち寄った。200年前の町家をリフォームした店舗で、窓から眺める坪庭が趣深く、落ち着く。

200年前の町家をリフォームしたというカフェ「晦事」 Photo: Akikazu YAMASHITA

 美味しい焼きカレーとコーヒーが、ロードバイクでシャカリキになって漕いできた時間を忘れさせてくれた。店内では雑貨や洋服(主にレディース)も扱っていて、おそらく女性にも人気だろう。店を出るときに「自転車でいらしたんですか?」と声をかけられ、東京から飛行機で宇部空港まで来て、そこから自走して来たことを話すと驚いていた。トレランのレースも走った、とは言わないでおいた。

窓から眺める坪庭 Photo: Akikazu YAMASHITA

“宝石”のような道「萩三隅線」

 萩市から長門市までを海沿いで繋ぐ道「山口県道64号萩三隅線(はぎすみさんせん)」は、まるで“宝石”のような道だった。おそらく旧道なので車通りがほとんど無く、私が通ったときは一台も通らなかった。ところどころ山陰本線の鉄道の線路が見え、さらに天気が良い日は眼下に真っ青な日本海が見えるのもいい。また適度にアップダウンがあって立ち漕ぎをしないと上れないところもある。神奈川県から山梨県に抜ける「道志みち」の10倍の楽しさだと思った。

眼下に望む真っ青な日本海 Photo: Akikazu YAMASHITA

 やがて大きな道へと戻り、長門市駅まで走って輪行の作業をした。ちょうど僕と同じタイミングでもう一人のサイクリストが来て輪行をしていた。

 長門市駅からJR美祢線で厚狭駅(あさえき)へと向かう。東京都内の交通系の電子マネーである「パスモ」で支払いたい旨を伝えると「山口県はそういうカードがほぼ使えないと考えてください」と駅員さんは苦笑いだった。現金で払わなくてはならないのは海外観光客からしたらけっこう面倒だが、僕が幼い頃は駅員さんが切符をカチカチとはさみで切っていたことを思い出し、自動改札になっただけでも進化だと思うようにした。

バイクラックが完備されていた長門市駅 Photo: Akikazu YAMASHITA

 田園風景や山間の風景などローカル線ならではの車窓を楽しんでいたが、電車の揺れが心地よく、次第に眠気に襲われ、気づいたら厚狭駅に着いていた。もう一人のサイクリストはいつの間にか途中で降りていたようだ。そこからさらに草江駅まで輪行した。

 自転車で走っても良かったが、厚狭駅から草江駅まではわりと都会的な景色なので、早めに空港に着いてレストランで美味しいものでも食べようという気になっていた。夕焼けで空がオレンジ色に染まるなか、山口宇部空港へと続く道にヤシの木が立ち並ぶ様子がまるでハワイのように美しかった。

夕焼けに染まるヤシの木。良い旅だった Photo: Akikazu YAMASHITA

 山口宇部空港を拠点に自転車で走るルートは、秋吉台の絶景カルストロードと萩市の城下町、そして県道64号萩三隅線という極上の道まであって、その懐の深さに驚かされた。輪行ができれば、さらにいろいろなルートが広がる。この山口県の自転車旅を、もっと多くの人に楽しんでほしいと思う。

山下晃和山下晃和(やました・あきかず)

タイクーンモデルエージェンシー所属。雑誌、広告、WEB、CMなどのモデルをメインに、トラベルライターとしても活動する。「GARVY」(実業之日本社)などで連載ページを持つ。日本アドベンチャーサイクリストクラブ(JACC)評議員でもあり、東南アジア8カ国、中南米11カ国を自転車で駆けた旅サイクリスト。その旅日記をもとにした著書『自転車ロングツーリング入門』(実業之日本社)がある。趣味は、登山、オートバイ、インドカレーの食べ歩き。ウェブサイトはwww.akikazoo.net

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