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旅サイクリスト昼間岳の地球走行録<17>世界最強の日本パスポートも通用しなかった 中央アジア最難関の自転車“ビザ取得”旅

by 昼間岳 / Gaku HIRUMA
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 先日、日本のパスポートが「ビザなしで渡航が出来る行き先」の数を基準にしたランキングで世界1位になり、“世界最強のパスポート”になったという記事が出ていた。世界を回った実感としても、1位かどうかは別にして日本のパスポートはタンスの中で眠らせておくのは余りにももったいないと思うほど、ものすごい力があると実感できた。本連載第3回目の『サイクリストは乾季のウユニ塩湖を目指す』で記述したように、世界中を自由気ままに走れるわけではないが、ビザが要らなかったり、国境で簡単に取得できたりするのは本当に有難かった。ところが、中央アジアの国々だけはそうは行かなかった。

基本的にイミグレーションではカメラはトラブルになるので絶対に出さないが、クロアチアでは珍しく「一緒に写真を撮りましょう」と言ってくれる気さくな係員がいた Photo: Gaku HIRUMA

国によって異なるビザの取得難度

 僕の走行した2014年はキルギスタン以外はすべての国にビザが必要だった。まずビザ取得の基本として、申請方法・申請書類などはそれぞれの国のホームページで確認する。ただ、その前に国の公式ホームページでも載ってない情報を調べる必要がある。それは、ビザが取りやすい大使館や総領事館の情報だ。

アメリカとメキシコの国境。メキシコからアメリカへ向かう車と人の列には長蛇の列が出来ていた Photo: Gaku HIRUMA

 不思議なことに同じ国の大使館や総領事館でもビザの取得難度は全く違う。ある国の大使館では大量の書類提出を求められた挙句、何日もかかってようやく発給されるという状況なのに、違う町の総領事館では最低限の書類で即日にビザが発行されるなんてこともザラにある。

 そのような状況を加味して、僕はイランのテヘランで中央アジアのトルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタンのビザを一気に申請することにした。本来であれば、ビザは日程が調整しやすい入国する前の国で申請するのがベストだ。ただ、トルクメニスタンは5日間のトランジットビザしか取れず、申請している時間はない。ウズベキスタンでタジキスタンのビザを取るにしても、パスポートの携帯義務がある国なのにパスポートを預けなければならなかったり、色々リスクが高かったので、テヘランで行うことにした。

 テヘランでのビザ取得は比較的やりやすいが、3カ国を跨ぐ走行の日数を予め決めておかなければならない。これには本当に頭を悩ませた。自転車旅の良い所は、気に入った街なら気ままに連泊する事ができるところなのに、実際走行してても残りの距離と日数を常に気にして走行しなければならず、かなりストレスだった。

イランの滞在延長の手続きに訪れたエスファハーン。割り切って観光も楽しむ Photo: Gaku HIRUMA

 ビザの取得方法は国によって違うが、中央アジアの国の多くは日本大使館でのサポートレターが必要になるので、取りに行ってから必要書類を揃えて各国の大使館へ朝一で向かった。旅人はもちろん、ビザの取得を代行しているであろう地元の業者がごった返しているためだ。発行に数日かかる国、パスポートを預けなければならない国などまちまちなので、どの国から申請するかも重要になってくる。

 さらにビザの申請をしていると肝心のイランの滞在日数を過ぎてしまうので、並行してイランビザの延長手続きをしなければならい。しかし、それはテヘランでは難易度が高いので、申請しやすいエスファハーンという町まで観光がてら行くかなければならないという。本当に、手続きだけで東奔西走しなければならなかった。

大使館が突然まさかの9連休!

 ウズベキスタンとタジキスタンを無事申請でき、残すはトルクメニスタンだけだという時、想定外の事が起きた。なんとトルクメニスタン大使館が突如として9連休に入ってしまったのだ。数日前に申請した人は、そんな通知はどこにもなかったというし、本当に突然決まったかの如く大使館の門にポツンと貼り紙がしてあるだけだった。もうすでにウズベキスタンとタジキスタンの日程を確定してしまっているので、予定が9日遅れることはかなりの痛手だ。こういう予測できない事態が起きるのが中央アジアだ。突如として国境が閉まってしまう事もある。

トルクメニスタンからウズベキスタンへの入国を待つトラック。自転車で通るだけでも時間がかかるのに、これだけのトラック。いったい何日待っているのだろう Photo: Gaku HIRUMA

 必死に情報収集した結果、マシュハドにある総領事館は開いているという。「それも意味が解らない」と思いつつ、すぐに移動してダメもとでマシュハドで申請と受け取りを試みたら、案外あっさりと発給してもらえた。ネットの情報が普及しすぎて、皆、取りやすいといわれている大使館などに集中しがちだが、意外な穴はあるものだ。イランでビザを全て取り終えた時は、すでに中央アジア走行が終わったかのような疲労感と充実感があった。

便利になる反面、寂しさも

 ところが最近(2018年11月現在)ウズベキスタンの30日間の観光ビザが免除されたり、タジキスタンが「eビザ」という電子申請で簡単に発給していたりと、日本の“最強パスポート”が遺憾なく力を発揮しているという。どんどんと便利になっていく半面、旅人の中央アジアのビザ取りの苦労話やビザの取りやすい大使館などの情報も、ネットよりもタイムリーな旅人との情報交換が最も役に立っていただけに、そういった話題が旅人の間から消えるようで少し残念な気もする。

 追記として、中央アジアに限らず世界中のイミグレーション(入国審査)で賄賂を要求されたことは一度も無かった。世界一周をする前はある程度そういう事も覚悟していただけに、一度もなかったことは本当に驚いた。一昔前に、ある程度包んで渡していたものを正式に手数料として徴収されているだけかもしれないが、不正は無かった。

昼間岳昼間岳(ひるま・がく)

小学生の時に自転車で旅する青年を見て、自転車で世界一周するという夢を抱いた。大学時代は国内外を旅し、卒業後は自転車店に勤務。2009年に念願だった自転車世界一周へ出発した。5年8カ月をかけてたくさんの出会いや感動、経験を自転車に載せながら、世界60カ国を走破。2015年4月に帰国した。『Cyclist』ではこれまでに「旅サイクリスト昼間岳の地球写真館」を連載。ブログ「Take it easy!!

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