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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<274>新体制1年目はヴァンアーヴェルマートのクラシック制覇に注力 CCCチーム、2019年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 10月半ばに2018年シーズンのUCIワールドツアーが閉幕し、アジアなどのコンチネンタルツアーをのぞいて、サイクルロードレースシーズンはオフを迎えている。例年、夏以降は移籍決定の話題で盛り上がるストーブリーグ(移籍市場)だが、11月に入って多くのチームがおおよその陣容を固めつつある。そこで、今回からしばらくは、UCIワールドチームを中心に、2019年シーズンの展望をお届けしていく。まずは、新生「CCCチーム」。BMCレーシングチームとしての活動から、メインスポンサー変更にともない、ポーランド籍のチームとして新たな一歩を踏み出す。

新生CCCチームのリーダーとなるグレッグ・ヴァンアーヴェルマート。北のクラシックでチームにタイトルをもたらすことができるか =ツール・ド・フランス2018第9ステージ、2018年7月15日 Photo: Yuzuru SUNADA

旧チームの活動実態をリセットさせ新たな歩みを進める

 2007年にUCIコンチネンタルチームとして結成されたBMCレーシングチームは、翌年の同プロコンチネンタルチームへ、2011年には最上位カテゴリーの同プロチーム(現UCIワールドチーム)昇格。この間、ジョージ・ヒンカピー(アメリカ、2012年に引退)、カデル・エヴァンス(オーストラリア、2015年に引退)、トル・フースホフト(ノルウェー、2014年に引退)、フィリップ・ジルベール(ベルギー、現クイックステップフロアーズ)といったスター選手が次々と加入。エヴァンスに至っては、2011年にツール・ド・フランスを制覇。フースホフトやジルベールも期待に違わぬ活躍を見せ、着実にビッグチームとしての歩みを進めてきた。

10月に開催されたジャパンカップ サイクルロードレースにも出場し、日本でも馴染み深いチームだったBMCレーシングチーム。スポンサー撤退により、事実上の解散となる Photo: Yuzuru SUNADA

 スイスのバイクブランド・BMC社直系のチームとしての利点をフルに生かしてきたが、この数年は同社のスポンサー撤退がたびたび噂される状態にあった。そして2018年、このシーズン限りでのスポンサー契約満了にともなうスポンサー撤退が正式に決定した。

 マネージャーのジム・オショヴィッツ氏は、手塩にかけて育ててきたチームを守るべく、後継スポンサー探しに奔走。しかし、状況は好転しないまま、7月に行われたツールの時期に。その間、総合エースのリッチー・ポート(オーストラリア)が移籍に向けて動き出し、他の選手たちにも移籍先の具体名が挙がるほどの噂が出始める。

後継スポンサー探しに苦心したジム・オショヴィッツ氏だが、CCC社との合意で一安心。CCCチームではゼネラルマネージャー職に就く Photo: Yuzuru SUNADA

 ところが、厳しいと見られていた情勢がツール期間中に一変。ポーランド企業のCCC社が後継スポンサーに就くことが決定したのだ。同社は、チームを運営するコンティニュアム・スポーツ社とのタイトルスポンサー契約を結び、CCC社のオーナー兼社長であるダリウシュ・ミレク氏がチームオーナー、オショヴィッツ氏はゼネラルマネージャー職に就くことになった。ちなみに、CCC社は靴やバッグを製造販売するブランドで、ミレク氏は2017年のポーランド長者番付4位にランクインしている。

 7月16日に行われた発表会見では、グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー)をリーダーに、チームを再構築することも明らかにした。CCC社は今年までUCIプロコンチネンタルチーム「CCC・スプランディ・ポルコヴィチェ」のメインスポンサーであったが、BMCレーシングとともに活動実態をリセット。新生チームとして2019年シーズンを目指すことになった。

チームの浮沈を握るヴァンアーヴェルマート

 「チームの顔」として新体制1年目のチームを引っ張ることになったヴァンアーヴェルマート。主戦場であるクラシックレースにとどまらず、ステージレースでも力を発揮し、状況次第ではアシストとしての仕事もいとわない姿勢は、生まれ変わるチームにおける押しも押されもせぬリーダーに適任だ。同時に、彼の走りや結果の良し悪しでチームの浮沈やイメージに影響するという大きな責任もともなうことになる。

チームリーダーのグレッグ・ヴァンアーヴェルマート。北のクラシックでの走りがチームの浮沈のカギを握ると言っても良い =パリ〜ルーベ2018、2018年4月8日 Photo: Yuzuru SUNADA

 今年のヴァンアーヴェルマートは、ツールで8日間マイヨジョーヌを着用したほか、5月に行われたツール・ド・ヨークシャー(UCIヨーロッパツアー2.1)で個人総合優勝を収めるなど、一定の成果を収めたシーズンとなった。だが、絶対的な強さを誇る北のクラシックでは、あと一歩勝ちきれず。結局、チームタイムトライアルをのぞく個人としての勝利は2勝にとどまった。リオデジャネイロ五輪を制した2016年や、北のクラシックでタイトルを総なめにした2017年シーズンと比べると、物足りなさは否めなかった。

 新シーズンは、復権にかけることになる。まずは北のクラシックに集中し、パヴェ(石畳)での活躍を狙う。今年はアムステル・ゴールド・レースの出場にとどめたアルデンヌクラシックについては流動的。2017年には、北のクラシックで大活躍した勢いで、アムステル・ゴールド・レースとリエージュ~バストーニュ~リエージュに出場。両レースともに上位争いに加わっており、コンディション次第では優勝を狙える立場にもある。来季も、パヴェでの走りを最優先しつつ、その後のレースプログラムにも柔軟性を持たせることになるだろう。

グランツールはステージ優勝狙いへ

 新たな活動形態となる初年度から、ヴァンアーヴェルマートでの上位進出を視野に入れ、クラシックレースを得意とする選手を中心にアシストを強化した。普段のトレーニングパートナーであるギヨーム・ヴァンケイスブルク(ベルギー、ワンティ・グループゴベール)や、ハイス・ヴァンフック(ベルギー、ロットNL・ユンボ)といった気心知れた選手たちを呼び寄せ、戦えるチームを構築。実質BMCレーシングチームからの残留となるミヒャエル・シェア(スイス)、フランシスコホセ・ベントソ(スペイン)といったベテランや、将来を嘱望されるネイサン・ヴァンフーイドンク(ベルギー)らが脇を固める。

ヴァンアーヴェルマートのトレーニングパートナーでもあるギヨーム・ヴァンケイスブルク。クラシック路線でのアシストに期待がかかる =ツール・ド・フランス2018第4ステージ、2018年7月10日 Photo: Yuzuru SUNADA

 かたや、グランツールをはじめとするステージレース路線は、BMCレーシングチームを支えてきたポートや、ローハン・デニス(オーストラリア)らの移籍もあり、当面のところステージ優勝狙いとなる見通し。ヴァンアーヴェルマートもツールではステージ優勝にフォーカスするとしており、「総合成績にとどまらない見せ場づくりができると思う」と自信を見せる。

 山岳逃げを得意とするアレッサンドロ・デマルキ(イタリア)がBMCレーシングチームから残留するほか、ステファン・デニフル(オーストリア、アクアブルースポート)やシモン・ゲシュケ(ドイツ、チーム サンウェブ)、セルジュ・パウェルス(ベルギー、ディメンションデータ)、ローレンス・テンダム(オランダ、チーム サンウェブ)といったベテランクライマーの合流が次々と決定。彼らの存在は、将来的な総合系ライダーの獲得を見据えた土台づくりの意味合いも持ちそうだ。

2018年は13勝を挙げたスプリンターのヤクブ・マレチュコが祖国ポーランドのチームへと加入する =ジロ・デ・イタリア2018第2ステージ、2018年5月5日 Photo: Yuzuru SUNADA

 スプリンターでは、今シーズン13勝のスピードスター、ヤクブ・マレチュコ(イタリア)をウィリエールトリエスティーナ・セッレイタリアから獲得。マレチュコ自身、ポーランドにルーツがあり、5歳で家族とともにイタリアへ渡った経緯の持ち主。晴れて、祖国が誇るチームへと“凱旋”することになった。ここ2シーズンはジロ・デ・イタリアに出場しているが、トップカテゴリーへのフル参戦は来シーズンが初めて。狙うは、やはりジロでのステージ勝利となってくるだろう。

タイムトライアルスペシャリストのジョセフ・ロスコフも主力候補に名が挙がる =ブエルタ・ア・エスパーニャ第16ステージ、2018年9月11日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そのほか、今年のUCIロード世界選手権個人タイムトライアル8位のパトリック・ベヴィン(ニュージーランド)、同種目のアメリカ王者であるジョセフ・ロスコフといったスペシャリストもBMCレーシングチームから引き続き所属。CCC・スプランディ・ポルコヴィチェからも、有力ポーランド人ライダーを中心に6人が合流する。

 当初23~25人で編成したいとしていたチームは、順調なスカウティングもあり、本記執筆時点で12カ国・24人との契約に合意。おおむね、いまの段階で決定している選手たちで来シーズンを戦うことになりそうだ。

 その他のトピックとして、ポーランド籍の下部チーム「CCCデベロップメントチーム」がUCIコンチネンタルチームとして登録する予定であるほか、マリアンヌ・フォス(オランダ)らが所属する女子チーム、ワオウディールス プロサイクリングチームの後継スポンサーにCCC社が就くことも決定。女子チームは「CCCウィメン」として、現体制同様にオランダ籍でUCIウィメンズツアーを戦うことになる。バイクは男女ともにジャイアント(CCCウィメンは女性向けラインの「リブ」)から供給を受ける。

 先行きに期待が高まるなか、チームは12月14日に記者発表を行う。選手・スタッフの顔見せはもちろんのこと、レーシングジャージなどのチームキットも披露される。

CCCチーム 2018-2019 選手動向

【残留】
●BMCレーシングチーム
パトリック・ベヴィン(ニュージーランド)
アレッサンドロ・デマルキ(イタリア)
ジョセフ・ロスコフ(アメリカ)
ミヒャエル・シェア(スイス)
グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー)
ネイサン・ヴァンフーイドンク(ベルギー)
フランシスコホセ・ベントソ(スペイン)

●CCC・スプランディ・ポルコヴィチェ
アマーロ・アントゥーニス(ポルトガル)
パヴェウ・ベルナス(ポーランド)
カミル・グラデク(ポーランド)
ルカシュ・オフィシャン(ポーランド)
ジモン・サイノク(ポーランド)
ミハル・シュレグル(チェコ)

【加入】
ウィリアム・バルタ(アメリカ) ←ヘーゲンズバーマン・アクセオン
ヨーゼフ・チェルニー(チェコ) ←エルコフ・アーサー
ヴィクトル・デラパルテ(スペイン) ←モビスター チーム
ステファン・デニフル(オーストリア) ←アクアブルースポート
シモン・ゲシュケ(ドイツ) ←チーム サンウェブ
ヤクブ・マレチュコ(イタリア) ←ウィリエールトリエスティーナ・セッレイタリア
セルジュ・パウェルス(ベルギー) ←ディメンションデータ
ローレンス・テンダム(オランダ) ←チーム サンウェブ
ハイス・ヴァンフック(ベルギー) ←ロットNL・ユンボ
ギヨーム・ヴァンケイスブルク(ベルギー) ←ワンティ・グループゴベール
ルーカス・ヴィシニオウスキー(ポーランド) ←チーム スカイ

【退団】
●BMCレーシングチーム
アルベルト・ベッティオール(イタリア) →EFエデュケーションファースト
トム・ボーリ(スイス) →UAE・チーム エミレーツ
ブレント・ブックウォルター(アメリカ) →ミッチェルトン・スコット
ダミアーノ・カルーゾ(イタリア) →バーレーン・メリダ
ローハン・デニス(オーストラリア) →バーレーン・メリダ
ジャンピエール・ドリュケール(ルクセンブルク) →ボーラ・ハンスグローエ
キリアン・フランキーニー(スイス) →グルパマ・エフデジ
サイモン・ゲランス(オーストラリア) →引退
シュテファン・キュング(スイス) →グルパマ・エフデジ
リッチー・ポート(オーストラリア) →トレック・セガフレード
ニコラス・ロッシュ(アイルランド) →チーム サンウェブ
ユルゲン・ルーランズ(ベルギー) →モビスター チーム
マイルズ・スコットソン(オーストラリア) →グルパマ・エフデジ
ディラン・トゥーンス(ベルギー) →バーレーン・メリダ
ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ) →EFエデュケーションファースト
ロイック・ヴリーヘン(ベルギー) →ワンティ・グループゴベール
ダニーロ・ウィス(スイス) →ディメンションデータ

●CCC・スプランディ・ポルコヴィチェ
アラン・バナチェク(ポーランド) →カハルーラル・セグロスRGA
ピオトル・ブロツィーナ(ポーランド) →CCCデベロップメントチーム
パウェル・チースリク(ポーランド) →未定
マルコ・クンプ(スロベニア) →未定
カミル・マレチュキ(ポーランド) →CCCデベロップメントチーム
ミハウ・パルタ(ポーランド) →CCCデベロップメントチーム
レチェク・プリュチンスキ(ポーランド) →ヴォステル・ATSチーム
フランチェスク・シスル(チェコ) →エルコフ・アーサー
パトリク・ストシュ(ポーランド) →未定
マテウシュ・タチアク(ポーランド) →未定
ヤン・トラトニク(スロベニア) →バーレーン・メリダ

【未発表】
●CCC・スプランディ・ポルコヴィチェ
パウェル・フランチャク(ポーランド)
ヨナス・コッホ(ドイツ)
アドリアン・クレク(ポーランド)

※11月6日時点

今週の爆走ライダー−ネイサン・ヴァンフーイドンク(ベルギー、BMCレーシングチーム)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 新たにチームを作り直すにあたり、エースのヴァンアーヴェルマートがその才能を認め、アシスト役として指名した1人が23歳のヴァンフーイドンク。プロ2年目のシーズンを終え、いまのところは目立ったリザルトこそないが、潜在能力から将来を約束される選手とも言われている。

フランドル王者を叔父に持ち、父もプロ選手という家庭に育ったネイサン・ヴァンフーイドンク。必然的に彼への期待も高まる =ドバイ・ツアー2018第4ステージ、2018年2月9日 Photo: Yuzuru SUNADA

 それもそのはず、叔父のエドウィグ氏は1989年と1991年にツール・デ・フランドルを制覇した元プロ選手。パリ~ルーベでも2度の3位を経験する、一流のパヴェスペシャリストだったのだ。父のジノ氏も元プロ選手。自転車一家に育ち、ジュニア時代から各年代の国内チャンピオンになっているというから、必然的に期待値は高まる。

 だからこそ、チームは彼を大切に育てる。2015年にBMCレーシングチームの育成組織に入り、2017年途中にプロデビュー。このほどのチーム再編でも、“残留組”に名を連ねることになった。

 それは、ヴァンアーヴェルマートが後継者として一目置いていることを意味するのかもしれない。ヴァンフーイドンクも、自国が誇るスーパーエースに大きな影響を受けているといい、「彼以外のもとで走ることは想像できない」とまで言い切る。

 もちろん、いつまでもアシストとして仕える立場で居続けることは考えていない。「必要とされるところで活躍したいし、チャンスが訪れれば両手でつかんでみせる」と語る。

 チームの状況からみて、存在感を示せるかと、首脳陣やチームメートからの高い評価が得られるかが飛躍のきっかけになりそうだ。パヴェのほか、逃げやタイムトライアルも得意。ビッグレースで彼の姿を目にすることが増えてきたら、その時は大ブレイクが近いと捉えてもよさそうだ。

ネイサン・ヴァンフーイドンクの2019年シーズンのミッションはパヴェでヴァンアーヴェルマートを支えること。だが、チャンスが訪れれば何としてもつかみたいと意気込んでいる =ドバイ・ツアー2018第3ステージ、2018年2月8日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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