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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<273>来年に向けてシーズンオフもアクティブ UCIワールドチームのビルディングキャンプ

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 10月中旬に今年のUCIワールドツアーが終わったばかりのサイクルロードレースシーンだが、トップチームはすでに次のシーズンに向けて動き出しを図っている。来季の陣容がおおむね固まったチームは、続々と「チームビルディングキャンプ」をスタート。新メンバーも加えて、選手やスタッフ、その他関係者を交え、チームとしての結束を高めるための日々を送っている。そこで、この時期のキャンプの意味合いを解説するとともに、来シーズンの活躍が期待されるチームのキャンプ風景をご覧いただくとしよう。

オーストリア・東チロル地方でキャンプを行ったボーラ・ハンスグローエ。ペテル・サガンらがサイクルアスロンやクライミングに挑戦した © BORA - hansgrohe / VeloImages

チームビルディングキャンプの意義

 UCIワールドチームは、UCI(国際自転車競技連合)が定める30人を限度に、選手と契約し、チームに所属させる。上限の30選手を所属させるチームもあれば、今年は23選手で戦ったチーム サンウェブのように、シーズンの方針や運営資金、給与予算などをチームごとに総合的に判断して所属選手や人数を決定していく。

サイクルアスロンで結束力を高めたボーラ・ハンスグローエの選手たち ©︎BORA - hansgrohe / VeloImages

 とはいえ、チームに所属する選手が何人であろうと、1レースにエントリーできる選手数はUCIワールドツアーの場合7選手、例外となるグランツールであっても8選手。チームとして同時期に複数のレースへ出場するといったケースが多いことや、脚質によって招集されるレースに幅が出る、居住地やトレーニング環境が異なる、などの要因から、同じチームにいながらほどんと顔を合わせることのない選手が発生することは、トップチームではよくある話。

 そこで、選手同士はもとより、スタッフ、その他チーム内外の関係者を含めて、一定期間寝食をともにし、互いの人柄やライダーとしての特徴などを知る場として設けられるのがチームビルディングキャンプである。

次のシーズンに向けてタイムトライアルバイクのフィッティングを行う Photo: Team Sky

 傾向として、晩秋から初冬にかけて実施されるキャンプでは、顔合わせや次のシーズンに使用するバイクやウェアといったアイテムのフィッティングを優先し、本格的なトレーニングやライドを行わない点が挙げられる。それは、長いシーズンを戦い抜いた選手たちの心身の疲労を回復することを目的としている。さらに、「結束力を高める」ところで、サイクリングとはまったく異なるアクティビティにトライし、“遊び”からチームメートとの距離を近づけていくといったねらいもある。過去には、軍隊へ体験入隊や、みんなで登山に勤しんだ例など、ユニークなキャンプは数多い。

バイクアスロン、サッカーなどバラエティに富んだキャンプ

 10月下旬にキャンプを実施した3チームを紹介しよう。

全力でバイクアスロンに挑むマークス・ブルグハート(中央)やパスカル・アッカーマン(右)ら © BORA - hansgrohe / VeloImages

 ペテル・サガン(スロバキア)擁するボーラ・ハンスグローエは、オーストリア・東チロル地方にチーム関係者が集結。バイクアスロンやロッククライミングを楽しんだ。

 バイクアスロンは、マウンテンバイク・射撃・釘打ちの3種目をミックスした競技。チームが配信する動画を見る限り、数チームを編成してのリレー形式で競ったようで、サガンも全力で取り組んだ様子。ロードでは百戦錬磨の選手たちでも、競技が変わればそう簡単にこなすことは難しいよう。

 UAEチーム・エミレーツは、チームのお膝元であるUAE(アラブ首長国連邦)へ。アラビア半島に位置する国ならではのアクティビティとして、砂漠見学や広大な砂漠の中に敷かれた道路を使って地元サイクリストとのライドを行った。また、選手たちがそろってのミーティングも開かれ、これらの活動には先ごろ移籍加入が発表されたフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)や、クライマーとして飛躍を目指すセルジオルイス・エナオ(コロンビア、チーム スカイ)らも参加した。

砂漠に赴くUAEチーム・エミレーツの選手たち。新加入のフェルナンド・ガビリア(左端)も参加 Photo: UAE Team Emirates
ミーティングに臨むファビオ・アル(左端)ら Photo: UAE Team Emirates
チーム スカイのキャンプでサッカーに取り組むクリストファー・フルーム Photo: Team Sky

 チーム スカイは、サッカー・イングランド代表のトレーニングベースでもある「セント・ジョージズ・パーク」でキャンプを行った。タイムトライアルバイクのフィッティングのほか、室内コートではサッカーに挑戦。「クロスバーチャレンジ」なるゲームでは、バイクをサッカーボールに替えて真剣勝負。レースで大活躍する選手たちだが、あらゆる意味で思いがけないサッカースキルであることを動画から感じさせてくれる。

 今後も各チームがキャンプインすることになる。それぞれの趣向を凝らした取り組みは、そのチームの色を表しているともいえる。引き続きキャンプ情報が届き次第、レポートしていくのでご期待あれ。

今週の爆走ライダー−バンジャマン・トマ(フランス、グルパマ・エフデジ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 トラックレースのシーズンが本格化していることもあり、ロードとトラックの兼任で奮闘する選手を紹介したい。

トラック中距離のスペシャリスト、バンジャマン・トマ。ロードではブエルタ・ア・エスパーニャ2018でグランツールデビューを果たした(写真は第7ステージ) =2018年8月31日 Photo: Yuzuru SUNADA

 グルパマ・エフデジで今シーズン、トップシーンにデビューしたバンジャマン・トマは23歳のスピードマン。ロードでも各年代で国内トップに君臨し、プロ入り前の昨年にはヨーロッパ選手権のフランス代表に大抜擢されるなど、将来性の高さを見込まれている。

 ロードでのこれからを期待されているのに対し、彼のベースにあるトラックでは、すでに2つの世界タイトルを獲得している。なかでも専門とするのはオムニアム。伝統的にフランスが得意とする、戦術と走力とが問われる競技において、最前線に位置する1人である。

 彼の名が世界に轟いたのは、2017年。同年の世界選手権でオムニアムとマディソン(2人1組で戦うポイントレース)の2冠に輝くと、ロードでも前述したフランス代表入りと大ブレイク。当時所属していた陸軍チーム「アーミー・ド・テッレ」は解散することになったが、すぐに現チームとの契約がまとまった。

 ただ、環境の変化もあってか、今年はトラックでのタイトルをすべて失ってしまった。ロードではブエルタ・ア・エスパーニャでグランツールデビューを果たすなど、順調に進んでいるが、2020年東京五輪まではトラックに注力する意向。いよいよ始まったトラックシーズンでは、オムニアムでワールドカップ1勝を挙げるなど、“復権”しつつあるのも明るい。

 当面の目標は、来年2月から3月にかけて行われる、UCIトラック世界選手権でのマイヨアルカンシエル奪還。このところ苦戦が続くフランス代表だが、その中にあって一筋の光となっているのが、彼の存在だという。ちなみに、ロードではタイムトライアルを得意とし、世界選手権にも参戦。スプリンターとしても首脳陣の期待を集めているといい、トラックで培ったスピードがあらゆる可能性を育んでいるのである。

2020年の東京五輪まではトラックをメインに走る意向を示しているバンジャマン・トマ。タイムトライアルやスプリントで可能性を秘めるロードと並行して活躍を誓う =ブエルタ・ア・エスパーニャ2018第16ステージ、2018年9月11日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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