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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<272>2018年シーズンUCIワールドツアー閉幕 サイモン・イェーツが初の年間総合1位を獲得

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 日本のサイクルシーンを熱狂の渦に巻き込んだジャパンカップ サイクルロードレース。ときを同じくして、海外ではサイクルロードレースの最高峰リーグであるUCIワールドツアーが閉幕した。1月のツアー・ダウンアンダー(オーストラリア)で幕が開け、10月21日に最終ステージが行われたグリー・ツアー・オブ・広西(中国)まで、シーズンは長きにわたった。ツアー・オブ・広西終了後には、UCI主催の年間表彰「UCIガラ」が開催され、各種のタイトル表彰が行われた。注目のワールドツアー個人ランキング1位は、サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)。今回は、イェーツらタイトルホルダーの活躍に目を向け、シーズンの戦いぶりを振り返ってみる。

ブエルタ・ア・エスパーニャ個人総合優勝など、ステージレースで活躍したサイモン・イェーツがUCIワールドツアー年間ランキングで初の1位に輝いた =ブエルタ・ア・エスパーニャ2018第20ステージ、2018年9月15日 Photo: Yuzuru SUNADA

ステージレースで抜群の安定感を誇ったイェーツ

 例年、UCIワールドツアー最終戦の終了に合わせて開催されるUCIガラ。昨年に引き続き、ツアー・オブ・広西の閉幕後に2018年シーズン表彰が実施された。

 このイベントに出席できるのは、主にそのシーズンに活躍した選手や関係者、往年の名選手など。いわばVIPだけが列席できる場であり、出席できる選手はまさに一流の証ともいえる。

 ツアー・オブ・広西終了時のポイント合算によって、今年のUCIワールドツアーランキングが確定。ステージ・ワンデー全37大会が設けられたロード最高峰ツアーの年間タイトルホルダーが決まった。

UCIガラでは欠席したサイモン・イェーツに代わりマッテーオ・トレンティンが年間1位のトロフィーを受け取った Photo: Sean Robinson/velofocus.com

 花形の個人ランキングは、シーズン最後のグランツールであるブエルタ・ア・エスパーニャでの個人総合優勝が記憶に新しいサイモン・イェーツが、初の年間1位を獲得。今シーズンはステージレースをメインにレースプログラムを組み、出場したほとんどのレースで表彰台を獲得。3月のボルタ・ア・カタルーニャ(スペイン)こそ個人総合4位と、トップ3圏内からは漏れたが、それでも最終ステージで勝利を挙げるなど要所はしっかりと押さえた。

 シーズン最初のグランツール、5月に行われたジロ・デ・イタリア(イタリア)では、第19ステージでの大ブレーキの印象が強いが、その前日まで13日間にわたり個人総合リーダーの証である「マリアローザ」を着用。最終結果は個人総合21位だったが、ステージ3勝を含む上位フィニッシュ分と、リーダージャージ着用者に付与されるUCIポイントを合計すると、この大会だけで632点を獲得。グランツールの個人総合上位選手にも劣らない点数(ジロとブエルタは個人総合1位で850点)を稼いだ。

サイモン・イェーツは初制覇することとなるブエルタ・ア・エスパーニャだけで1230点を稼ぎ、UCIワールドツアー個人ランキングで首位に立った =ブエルタ・ア・エスパーニャ2018第14ステージ、2018年9月8日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そしてシーズンのハイライトとなったブエルタ。悔しい形で終戦したジロのリベンジに燃えた3週間は、個人総合トップの選手が着る「マイヨロホ」獲得によって成就。この大会だけで1230点を稼ぎ出し、ワールドツアーの個人ランキング首位に浮上。そのまま、この地位をキープした。

 26歳での年間1位獲得とあり、この先どれほどの活躍を見せるのか楽しみは大きく膨らむ。双子の兄弟であるアダムとの共闘はもとより、チームメートであり、グランツールレーサーとして同等の地位にあるエステバン・チャベス(コロンビア)との切磋琢磨や、実力派アシストがそろう充実した戦力も魅力的。来シーズンはツール・ド・フランス出場へ意欲を見せており、今後の走りも注目だ。また、同様に表彰が行われたUCIウィメンズツアーでは、女子チームに所属するアンネミーク・ファンフルーテン(オランダ)が1位に輝き、ミッチェルトン・スコットはチームとしても大成功の1年となった。

ヴィヴィアーニ、マシューズらスピードマンもランク上位へ

春のクラシックやツール・ド・フランスで活躍したペテル・サガンは年間ランキング2位 =ツール・ド・フランス2018第21ステージ、2018年7月29日 Photo: Yuzuru SUNADA

 イェーツから80点差の2位だったのが、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)。上位選手に大量得点が入るシステムのUCIワールドツアーだけに、両者の80点は僅差だったといえるだろう。ダウンアンダーでステージ2勝を挙げるなど、上々のシーズンインで、春のクラシックシーズンではパリ~ルーベを初制覇。順調に勝利を重ね、ツールでも3勝を挙げるなどポイント賞のマイヨヴェールで復権を果たしたが、大会終盤での落車負傷をきっかけに、シーズン後半は体調を見ながらの走りとなった。ツール以降は勝ち星を増やせなかったと同時に、レースプログラムをセーブせざるを得なかったあたりが、トップとの点差に現れたように思われる。

UCIロード世界選手権を制して獲得した600点でランキングをアップさせたアレハンドロ・バルベルデ =2018年9月30日 Photo: Yuzuru SUNADA

 3位には、悲願の世界王者となったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)。昨年のツール第1ステージでの落車からの復活をアピールすべく、シーズン序盤から飛ばした。2月のアブダビ・ツアー(UAE)、3月のボルタ・ア・カタルーニャを制し、クラシックシーズンはラ・フレーシュ・ワロンヌ(ベルギー)で2位。ツールは精彩を欠いたが、ブエルタではステージ2勝を挙げて個人総合でも5位。そして、UCIロード世界選手権での優勝。このときに獲得した600点が、ランク上位進出の決め手となった。

今年のツールを制したゲラント・トーマス(左)は年間ランク4位、クリストファー・フルームは9位だった =ツール・ド・フランス2018第21ステージ、2018年7月29日 Photo: Yuzuru SUNADA

 今年のグランツールを沸かせた3選手、ツール個人総合優勝のゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ)は4位。ジロを制し、ツールでも個人総合3位としたクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)、ジロ・ツールともに個人総合2位のトム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ)は、ともに狙いを3週間の戦いに絞ったことも関係して、それぞれ9位と10位。

 一方、ステージ優勝を量産したエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ)や、9月のカナダ2連戦「グランプリ・シクリスト・ド・ケベック」「グランプリ・シクリスト・ド・モントリオール」を連勝したマイケル・マシューズ(オランダ、チーム サンウェブ)が6位と7位に食い込み、スプリンターの躍進も光っている。

 ステージレースの総合成績や、ワンデーレースでは、60位までにポイントが付与され、下位選手にもポイント獲得のチャンスがある。ただ、ツール総合優勝で1000点を得る一方で、パリ~ルーベなどのワンデーレースでは優勝しても半分の500点と、ランキングにおいてはグランツールで活躍した選手が上位入りを果たしやすいシステムであることも否めない。とはいえ、スプリンターやクラシックレーサーの健闘が近年目立ってきており、シーズンを通してクオリティの高い走りをしたライダーが誰であったのかを測る指標として押さえておくと、今後のレースチェックがより楽しめるはずだ。

 なお、各選手の獲得ポイントの合算によって順位が決定するチームランキングでは、シーズン73勝を挙げたクイックステップフロアーズが“圧勝”。2位のチーム スカイに約3600点もの差をつけて年間1位となった。3位には、サガンらスプリンターの活躍が目立ったボーラ・ハンスグローエが続いた。

UCIガラでチームランキング1位の表彰を受けるクイックステップフロアーズの選手たち Photo: Sean Robinson/velofocus.com

UCIワールドツアー2018シーズン 最終ランキング

●個人トップ10
1 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 3072pts
2 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 2992pts
3 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) 2609pts
4 ゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ) 2534pts
5 グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム) 2442pts
6 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、クイックステップフロアーズ) 2399pts
7 マイケル・マシューズ(オーストラリア、チーム サンウェブ) 2393pts
8 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) 2161pts
9 クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ) 1976pts
10 トム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ) 1975pts

●チーム
1 クイックステップフロアーズ 13322pts
2 チーム スカイ 9718pts
3 ボーラ・ハンスグローエ 9138pts
4 BMCレーシングチーム 8343pts
5 ミッチェルトン・スコット 8150pts
6 アスタナ プロチーム 7817pts
7 バーレーン・メリダ 7377pts
8 モビスター チーム 7319pts
9 チーム サンウェブ 7236pts
10 ロットNL・ユンボ 6991pts
11 アージェードゥーゼール ラモンディアール 6397pts
12 UAEチーム・エミレーツ 5488pts
13 トレック・セガフレード 5428pts
14 グルパマ・エフデジ 5002pts
15 ロット・スーダル 4682pts
16 EFエデュケーションファースト・ドラパック 4373pts
17 カチューシャ・アルペシン 2757pts
18 ディメンションデータ 2014pts

今週の爆走ライダー−パヴェル・シヴァコフ(ロシア、チーム スカイ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 UCIワールドツアー最終戦のツアー・オブ・広西は、チームリーダーの1人であるジャンニ・モズコン(イタリア)が個人総合優勝。上りで強さを見せ、オールラウンダーとしての真価を見せた。モズコンのアシストとしても貢献したパヴェル・シヴァコフは、この大会を個人総合27位で完走し、プロ1年目のシーズンを終えた。

ブエルタ・ア・エスパーニャでグランツールデビューを果たしたパヴェル・シヴァコフ =2018年8月25日 Photo: Yuzuru SUNADA

 イタリアで生まれ、フランスで育ったロシア人ライダー。昨シーズン、“ベビージロ”ことジロ・チクリスティコ・デ・イタリアを制し、鳴り物入りでプロトン最強チームへと加入した。だが、希望に満ちたプロ生活は、ひざの痛みで始まった。シーズンインが3月まで遅れ、思ったように調子を上げられないまま、時間だけが過ぎていった。8月に臨んだツール・ド・ポローニュでは足首を負傷する不運もあり、直後のブエルタも第14ステージで限界を迎えてしまった。

 その間、同い年のチームメート、エガン・ベルナル(コロンビア)がブレイクし、チームの総合エースの座に届くところまで成長。チームに同時加入しただけでなく、昨年までアンダー23カテゴリーでたびたび好勝負を演じた間柄だけに、周囲からの比較の目はどうしても避けられなかった。

 だが、そんな困難な日々も本人は前向きにとらえる。スター選手ぞろいのチームにあって、グランツールを走る機会を与えられたことなど、戦力として計算されていることを喜び、「もっと上を目指せる」と意欲に燃える。ベルナルとの比較も、「彼は別格。自分は自分」と割り切って考えられるようになった。

 タイムトライアルを得意とし、一定ペースで上りをこなす器用さは、今年のツールを制したトーマスを彷彿とさせる。徹底したペースメイクでレースをコントロールすることが得意なチームの戦術にもマッチしており、「レベルを上げていけば戦える選手になれる」と自信を見せる。目に見える結果こそ少なかったが、自らの可能性と課題を見つけられた1年は今後につながることだろう。決して無駄な日々ではなかったことを、来シーズン以降証明していくつもりだ。

山岳での一定ペースでの走りを得意とするパヴェル・シヴァコフ(右)。近いうちにチームの主軸となることが期待される =2018年8月31日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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