「ファイヤー・キッズ・ライド」をリポートSNSから離れ、自転車に薪を積んで火を囲もう! 筑波大「竈プロジェクト」の活動に迫る

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 「100年後も火を囲もう」をキーワードに竈(かまど)と自転車を組み合わせたイベント「Rice Cooker Ride(竈プロジェクト)」が筑波大生によって定期開催されています。東日本大震災後に始まった、筑波大学創造的復興プロジェクトのひとつで、災害時に燃料がなくても動く自転車で竈を運び、竈の火を囲み、ご飯を炊いて食べることを通して地域の人々と交流し、コミュニティーのレジリエンス力(災害等が起きた時に生きていく、立ち直っていく力)を強めるという活動。その活動の1イベント「Fire Kids Ride」(ファイヤー・キッズ・ライド)が10月13日に開催。学内にある森で火を囲んだ楽しい活動を、筑波大サイクリング部の柳田周造さんによるリポートでお届けします。(写真・文 筑波大学体育会サイクリング41期 柳田周造)

全員が「火の子」に扮し、筑波大の校内を一周する通称「ループ」を走る Photo: Shuzo YANAGIDA

教員・学生が「火の子」に変身

Fire Kids Rideのフライヤー Ⓒ竈プロジェクト

 「ファイヤー・キッズ・ライド」は筑波大学で開講されている授業「創造的復興:ローカルデザイン演習」の一つのプロジェクトチームである「竈プロジェクト」に参加している教員、学生によって実施された。本イベントは動画サイトで見つけた「Aeolian Ride」という海外の自転車イベントを参考にし、「自転車をこいでいる際に受ける風を利用して『火の子』になり、火の子が集まってキャンプファイヤーを行う」というコンセプトで行った。

竈プロジェクトって何?

 「竈プロジェクト」では「100年後も火を囲もう」をキーワードに竈と自転車を組み合わせたイベントやワークショップを数多く実施してきた。災害時には電気やガスなどが使えなくなり、車での移動が制限される。そのようなときに自転車があれば移動に困らなくなるし、竈があれば周りに落ちている木の枝などで火を起こして料理ができる!という考えからこの組み合わせが生まれた。筑波大学は学内の敷地が異常に広く(東京ドーム55個分)、学内の移動には自転車が欠かせない。

 筑波大生には自転車は非常に身近な物であり、そのような背景もあって竈プロジェクトには自転車が不可欠な要素となった。また、災害等が起きた時に生きていく、立ち直っていく力を遊びながら学んでいこうということも授業の目標となっており、「プレイ・レジリエンス(Play Resilience)」を学生全員が意識している。

クラフト紙で衣装を作り「火の子」に変身 Photo: Shuzo YANAGIDA

クラフト紙で「火の子」に変身

「火の子」に変身して盛り上がる参加者 Photo: Shuzo YANAGIDA

 「ファイヤー・キッズ・ライド」には学生だけではなく、教授の家族や大学のOBなど多くの人が集まり、20人程での開催となった。まず初めに、ライドを行う前に参加者全員で「火の子」になるためにクラフト紙を切り、それを身に着けて変身した。参加には自転車が不可欠であるが、車種に制限はない。普段の生活で使っているママチャリ、クロスバイクを持ってくる学生もいればロードバイク、ピストを持ってくる学生もいる。

参加者の自転車たち。ママチャリからMTBまで人それぞれ Photo: Shuzo YANAGIDA
後ろに荷台を付けたMTB。キャンプファイヤー用に大量の薪を積載 Photo: Shuzo YANAGIDA

「RICE」+「BICYCLE」=「RICYCLE」

 中でも竈プロジェクトの象徴ともいえるのは「RICYCLE」と呼ばれ、竈や薪を積載するために使う積載力の高いカードバイクである。「RICYCLE」(ライシクル)とは、竈をのせて移動することのできる自転車の総称で、「RICE=米」 と「BICYCLE=自転車」 を合わせた造語だ。

コペンハーゲン発のBULLITTというカーゴバイク。電動アシストなので走りは快適 Photo: Shuzo YANAGIDA
学内ですれ違う学生には「なんだあいつら?」というような目を向けられしてやったり Photo: Shuzo YANAGIDA

 各自思い思いのバイクにまたがって出発。今回のライドでは学内を走行した。全員で列を作り目立つことを意識した。予想通り学内ですれ違う学生には「なんだあいつら?」というような目を向けられしてやったりの参加者一同。学内を縦断するように30分ほどサイクリングをし、十分に目立ったところで学内の施設である「野性の森」に到着した。

校内の森の中のシングルトラックをママチャリで走る自由さよ Photo: Shuzo YANAGIDA

学内にあるキャンプ場で火を起こす

学内にある「野性の森」。バーベキュー施設も完備 Photo: Shuzo YANAGIDA

 筑波大では野外活動をできる施設を学生に開放している。事前に研修を受けていれば誰でも「野性の森」を利用してキャンプファイヤーやBBQを楽しむことができる。施設内には水道や調理台、竈も用意されている。周囲は森に囲まれているので薪も採り放題である。竈プロジェクトのメンバーは「好きに薪が拾える!」とハイテンションになっていた。

着火の様子。みんな火をつけるのが上手だ Photo: Shuzo YANAGIDA

 キャンプファイヤーの準備ができたところであたりも暗くなり、竈プロジェクトの指導教員である原忠信先生からあいさつを頂いた。今回原先生には「プレイ・レジリエンスおじさん」として楽しくレジリエンス力を身に着ける必要性をお話ししていただいた。そのあとキャンプファイヤーを始めるために儀式を行った。

火を囲みリラックスする参加者 Photo: Shuzo YANAGIDA
火の柱は自分たちの遥か上空まで伸びた Photo: Shuzo YANAGIDA

 地域によって差はあれど、キャンプファイヤーをやる際には儀式を行うことが多いらしく、本イベントでもそれに従った。火の神(今回はプレイ・レジリエンスおじさんこと原先生)から数人の学生が火を分けてもらいキャンプファイヤーに着火。参加者は自らが来ていたクラフト紙の衣装も着火に利用した。土台作りをしっかり行っていたので特に問題もなく火はどんどん大きくなっていった。この授業を受講している学生は誰でも火を起こすのが上手い。

 竈×自転車ではあったが今回はキャンプファイヤーということもあって竈ではなくダッチオーブンで料理。原先生が「ダッチオーブンでお米が炊けるか試したい」とのことだったのでダッチオーブンでキノコの炊き込みご飯に挑戦。今回使用したお米は地元谷田部産「やたべのコシヒカリ」。そのお米のパッケージのデザインには原先生の研究室の学生が手がけてしている。

火を囲み音楽をかけ談笑タイム

ダッチオーブンではジャーマンポテトと焼きいもも作られた Photo: Shuzo YANAGIDA

 炊き込みご飯の他にはダッチオーブンで作るジャーマンポテトと焼きいもを用意。火の勢いが非常に強かったので料理もすぐ完成し全員で美味しくいただいた。火力のせいで多少焦げてしまった料理もあったが味は抜群だった。食事を終えた後は全員で火を囲みながら談笑タイム。各自飲み物も用意して音楽をかけながら楽しい時間を過ごした。

 各自が談笑する中、ほぼ全員が口をそろえて「火をみるとなんだか落ち着くね~」と話していたのが印象的だった。10月のつくばは夜になるとかなり冷え込むがキャンプファイヤーの周囲は非常に暖かく快適だった。薪もなくなり、そろそろ片づけをして解散というところで原先生からお言葉を頂いた。

地元茨城・谷田部のお米で作ったキノコの炊き込みご飯 Photo: Shuzo YANAGIDA 

「竈も自転車も人が集まる中心」

 なぜ自転車と竈なのかという点について改めて説明があった。先生は「レジリエンス力の向上はもちろん、竈も自転車も「人の集まる中心になりうる」という点で同じではないのか」と指摘。SNS等の普及でお互いの顔を合わせなくてもコミュニケーションが可能になった時代だからこそ本イベントのような人の集まる場所を作り提供することが大切だと話してくれた。

プレイ・レジリエンスおじさん(左)に扮した原先生 Photo: Shuzo YANAGIDA

 そして既に社会に出ているOBからも、竈も自転車も自分たちでエネルギーを生み出して運用する点で同じだとお話を頂いた。その楽しみは車などでは得られない。社会に出るようになってから改めて自らエネルギーを生み出していく大切さを痛感した、と自らの経験を踏まえて話してくださった。

 本イベントでは改めて「一つの場所に集まり一つの物を囲む楽しさ」を共有することができた。竈プロジェクトでは毎月第二土曜日を「竈の日」と決め今回のようなライド×竈のイベントを企画していく。次回以降のイベントではもっと多くの人を巻き込んでいけるようにしていきたい。

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