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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<271>UCIが2019年ロードシーズンに向けた登録申請状況を発表 注目のチーム動向が明らかに

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 サイクルロードレースの最高峰である、UCIワールドツアーは10月16~21日のグリー・ツアー・オブ・広西(中国)で2018年シーズンの戦いが終わる。各大陸で開催されるコンチネンタルツアーについては、今年のレースプログラムが残っているものもあるため、チームによっては活動が継続されるケースもあるが、日ごとにシーズン閉幕ムードが濃くなってきている。そんななか、UCI(国際自転車競技連合)は10月5日に、2019年のサイクルロードレースシーズンに向けた登録申請状況を発表。来季トップシーンの大枠が見えてきつつある。そこで、今回はその申請状況を解説。先を見据える各チームの動向を見ていくとする。

2019年シーズンに向けたチーム登録申請状況が明らかになった。UCIワールドチームは18チームが審査を受けることになる(写真はイメージ) =2018年7月26日 Photo: Yuzuru SUNADA

全40チームが登録申請

 このほど発表された登録申請状況は、ファーストディビジョンに位置付けられる「UCIワールドチーム」と、セカンドディビジョンにあたる「UCIプロコンチネンタルチーム」に関してのもの。サードディビジョンの「UCIコンチネンタルチーム」については、基本的に表立った発表はなされていない。つまりは、ツール・ド・フランスなどのグランツールや、13日にイタリアで開催されたイル・ロンバルディアなどが含まれる最高峰リーグの「UCIワールドツアー」への出場権を持つ、または出場権を得る可能性を持つチームのみに限定されている。

 それでは、申請を行ったチームを見ていこう。チーム名後ろのカッコ内は登録国。

●UCIワールドチーム(ファーストディビジョン)

アージェードゥーゼール ラモンディアール(フランス)
アスタナ プロチーム(カザフスタン)
バーレーン・メリダ(バーレーン)
ボーラ・ハンスグローエ(ドイツ)
CCCチーム(現BMCレーシングチーム、ポーランド)
グルパマ・エフデジ(フランス)
ロット・スーダル(ベルギー)
ミッチェルトン・スコット(オーストラリア)
モビスター チーム(スペイン)
クイックステップフロアーズ(ベルギー)
ディメンションデータ(南アフリカ)
EFエデュケーションファースト・ドラパック p/b キャノンデール(アメリカ)
チーム ユンボ(現ロットNL・ユンボ、オランダ)
カチューシャ・アルペシン(スイス)
チーム スカイ(イギリス)
チーム サンウェブ(ドイツ)
トレック・セガフレード(アメリカ)
UAEチーム・エミレーツ(UAE)

●UCIプロコンチネンタルチーム(セカンドディビジョン)

アンドローニジョカットリ・シデルメク(イタリア)
バルディアーニ・CSF(イタリア)
カハルラル・セグロスエレヘアー(スペイン)
コフィディス ソリュシオンクレディ(フランス)
デルコ・マルセイユプロヴァンス(フランス)
ディレクトエネルジー(フランス)
エウスカディバスクカントリー・ムリアス(スペイン)
ガスプロム・ルスヴェロ(ロシア)
ハーゲンスベルマン・アクセオン(アメリカ)
イスラエルサイクリングアカデミー(イスラエル)
NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネ(イタリア)
ラリーサイクリング(アメリカ)
ロームポット・シャルル(オランダ)
スポーツフラーンデレン・バロワーズ(ベルギー)
フォルトゥネオ・サムシック(フランス)
チーム ノボノルディスク(アメリカ)
タルコール(現ウィリエールトリエスティーナ、イタリア)
ヴィタルコンセプト・B&Bホテルズ(フランス)
ワロニーブリュッセル(現WBアクアプロテクト・ベランクラシック、ベルギー)
ワンティ・ゴベールサイクリングチーム(ベルギー)
コレンドン・サーカス(ベルギー)
リワルサイクリングチーム(デンマーク)

 今回申請を行ったのは、ファーストディビジョン18チーム、セカンドディビジョン22チーム。

BMCレーシングチームは新体制となって「CCCチーム」として申請 =UCIロード世界選手権チームタイムトライアル、2018年9月23日 Photo: Yuzuru SUNADA

 UCIワールドチームに該当するファーストティビジョンへ申請した18チームについては、顔ぶれが現在と同じ。ポーランド籍のCCCチームは、メインスポンサーの撤退により新体制へと移行するBMCレーシングチームの後継となる。また、オランダ籍のロットNL・ユンボは、来季からチーム ユンボとして活動する見通しとなっている。

 同プロコンチネンタルチームにあたるセカンドディビジョンは、幾分の変化がみられる。まず、2017年のブエルタ・ア・エスパーニャに初出場し1勝を挙げた、アイルランド籍のアクアブルースポートがシーズン途中に資金不足による活動停止。そのままチームは解散となった。オランダ籍のロームポット・シャルルは、今季ロームポット・ネーデルランゼロタレイ(オランダ)とヴェランダスウィレムス・クレラン(ベルギー)として、それぞれ活動したチームが合併し新体制化。

 また、今年の同プロコンチネンタルチームのうち、ブエルタ出場経験のあるブルゴス・BH(スペイン)とマンザナポストボンチーム(コロンビア)、後継スポンサー探しが難航していることを公表しているユナイテッドヘルスケア(アメリカ)、今年のツアー・オブ・カリフォルニアに出場したホロウェスコ・シタデルは、何らかの理由で今回の申請リストから外れている。

ここ数年で強化を進めてきたリワルサイクリングがUCIプロコンチネンタルチームを目指す。先頭左がパトリック・クラウセン =ツール・ドゥ・ロワール・エ・シェール2018第5ステージ、2018年4月15日 Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 一方で、現在同コンチネンタルチームとして走る2チームは、事実上の昇格を目指して新たに申請を行っている。ベルギー籍のコレンドン・サーカスは、シクロクロスの元世界王者で、現在はシクロクロス・ロード・マウンテンバイクの3種目でオランダ王者に就くマチュー・ファンデルポールが所属する有望チーム。デンマーク籍のリワルサイクリングは、UCIワールドチームで走った経験のある同国選手を中心にスカウトしてチームを強化。今年のUCIロード世界選手権アンダー23(23歳未満)個人タイムトライアルで銅メダルのマティアス・ノスルゴール(デンマーク)などが所属する実力派チームだ。

 日本人選手が7人所属するNIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニは、新たにファイザネ社をスポンサーに迎えることが決まり、「NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネ」として申請を行っている。

厳しい審査を経て2019年シーズンの活動へ

 今回の申請を行った全40チームについては、UCI内に設けられるライセンス委員会の審査によってライセンス発行がなされていく。ここで重要とされる条件としては、チーム力(競技性)、運営面(財務)、アンチ・ドーピング姿勢(倫理)が問われることになる。また、ある程度チーム陣容が固まっていることも求められており、申請時にはその時点で決定している選手についても提出することになる。

ツアー・オブ・オマーン2013第4ステージで勝利を挙げたホアキン・ロドリゲス。所属するカチューシャ チームの登録申請が一度は却下されたが、CASでの裁定でUCIプロチームとして戦うことがシーズンイン後に決まった =2013年2月14日 Photo: Yuzuru SUNADA

 スポーツ界全体でドーピングスキャンダルが多いこともあり、ロードレースにおいても厳しくチーム姿勢を見ていくことになる。2013年には、カチューシャ チーム(現カチューシャ・アルペシン)が当時のファーストディビジョンだったUCIプロチーム申請をライセンス委員会から却下され、スポーツ仲裁裁判所(CAS)での裁定に持ち込んだ事例がある。このときは、シーズンが明けてから同プロチーム申請を認める決定がなされ、この年は特例で上限を超える19チームがファーストディビジョンに名を連ねることとなった。

 また、前年にトレーニー(研修生登録の選手)を含む複数の選手による禁止薬物使用が判明したアスタナ プロチームは2015年、第三者機関による監視のもと活動するという条件付きで同ワールドツアーを戦っている。

 ライセンス委員会が求める財務状況に届かず、ファーストディビジョンのライセンスが得られなかったケースもある。2015年シーズンのヨーロッパカー(現ディレクトエネルジー)は、運営費がわずかに足りず、申請が却下された。結局、この年はセカンドディビジョンで再申請を行い、同プロコンチネンタルチームとして登録した。

 ほかにも、申請書類の不備や提出ミスにより、再審査となるケースや、さまざまな事情により申請締め切り後に滑り込みで書類を提出し、なんとかライセンス発行に至るといったものなど、これまでの多くのチームが運営面で難しい状況にあることを露呈している。

審査の結果が明らかになるのは例年11月から12月にかけて。チームにとって来季に向けた大切な日々は続く(写真はイメージ) =ツール・ド・フランス2018第21ステージ、2018年7月29日 Photo: Yuzuru SUNADA

 前述したように、UCIワールドチームについては現在と同様の18チームが申請しており、近年の活動状況を見る限り、チーム力や運営方針、倫理面でも大きな問題がないため、よほどのことがない限り審査が通るものとみられる。このままいけば、このカテゴリーではUCIの定める上限の18チームで2019年シーズンも展開されていくことになりそうだ。

 2つの上位ディビジョンの登録チームが確定するのは、例年11月から12月にかけて。自動的にUCIワールドツアーが主戦場となる同ワールドチームと、各大陸が舞台の同コンチネンタルツアーをメインとしながらビッグレースのワイルドカード(主催者推薦)を目指す同プロコンチネンタルチーム。トップシーンでの活躍をかけた大事な時期は、もう少し続くこととなる。

今週の爆走ライダー−タコ・ファンデルホールン(オランダ、ロームポット・ネーデルランゼロタレイ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 このほどロットNL・ユンボは、来季のメンバーに24歳のオランダ人ライダーを追加すると発表した。

ロットNL・ユンボ(来季チーム ユンボ)への移籍が発表されたタコ・ファンデルホールン。ビンクバンク・ツアー2018第3ステージでの逃げ切り勝利で一気に株を上げた =2018年8月15日 Photo: YSP

 タコ・ファンデルホールンは、8月に行われたビンクバンク・ツアー第3ステージで逃げに乗ると、ともに先頭を走ったチームメートのアシストもありステージ優勝。名立たるトップライダーを破った走りによって、世界的に無名だったそれまでを一変させた。

 また、勝ったその日は、シーズン4レース目。なぜなら、昨オフにマウンテンバイクでクラッシュし、脳震盪の影響が長く続いていたのだという。ツール後の興行クリテで久々にレーススピードで走ると、一気に調子が上がった。その2週間後にはビッグレースを制し、以降も1勝を含む上位フィニッシュの連続。

 小さなチームで走り続けてきた彼にとって、夢にまで見たUCIワールドチームでのレース活動。来年は自国の雄であり、大型スーパーマーケットチェーンがメインスポンサーとなる、チーム ユンボの一員に。すでに役割も明確になっていて、石畳系クラシックの主力候補とのこと。

 競技と並行して、大学ではスポーツ動作科学を学んだといい、得た知識は自らの走りに生かしたいと意気込む。そんな理性的なところが、勝敗を分ける大きな局面で役に立つ日も近そうだ。

これまで小さなチームで走ってきたタコ・ファンデルホールンにとって、初めてとなるビッグチームへの移籍。北のクラシックでの走りに期待が膨らんでいる =ビンクバンク・ツアー2018第3ステージ、2018年8月15日 Photo: YSP
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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