title banner

福光俊介の「週刊サイクルワールド」<270>バルベルデ、ニバリら参戦 “落ち葉のクラシック”イル・ロンバルディア展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
  • 一覧

 1月に幕を開けたロードレースシーズンは大詰め。ヨーロッパを舞台とするレースシーンは最終週を迎えており、10月14日に開催されるレースをもって2018年シーズンが終わりを迎える。アジアをはじめ、他の大陸ではまだまだレース開催は続くが、トップシーンはひと段落といった趣きだ。そんなシーズンの終盤にふさわしいビッグレースこそ、“落ち葉のクラシック”ことイル・ロンバルディア(10月13日開催)である。今回は、大物が多数参戦する見通しの秋深まる伝統のレースにスポットを当てる。

2018年シーズンも大詰め。“落ち葉のクラシック”イル・ロンバルディアにビッグネームが集結する =2017年10月7日 Photo: Yuzuru SUNADA

レースの流れを左右する4つの登坂区間

 イル・ロンバルディアは、その名の通りイタリア北部のロンバルディア州を舞台とするワンデーレース。1906年に初開催され、今年で112回目を迎える。例年10月(一部9月下旬開催もある)に行われ、ここ数年は第1土曜に行われてきたが、今年は1週遅れで開催される。

イル・ロンバルディア2018コースレイアウト ©︎RCS

 秋に開催され、シーズンの終わりを告げるレースであることから別名「落ち葉のクラシック」とも言われる。主催はジロ・デ・イタリアやティレーノ~アドリアティコなどと同じ、イタリアのスポーツイベント会社のRCSスポルト。

 数あるクラシックレースの中でも特に古い歴史を持つ「モニュメント」の1つとされ、ミラノ~サンレモ、ツール・デ・フランドル、パリ~ルーベ、リエージュ~バストーニュ~リエージュとならんで、高い格式を誇る。

 今年のコースを見てみよう。コースは年々変化が加えられてきているが、登坂力とスピードを試されるセッティングである点は同様。ベルガモをスタートし、コモにフィニッシュするのは昨年と同じ。241kmで争われる今回は、レースの流れを左右するであろう4つの登坂区間が待ち受ける。

54.7km地点 コッレ・ガッロ 登坂距離7.43km、平均勾配6%、最大勾配10%
180.2km地点 マドンナ・デル・ギザッロ 登坂距離8.58km、平均勾配6.2%、最大勾配14%
193.6km地点 コルマ・ディ・ソルマーノ(ソルマーノの壁) 登坂距離1.92km、平均勾配15.8%、最大勾配27%
227.4km地点 チヴィリオ 登坂距離4.2km、平均勾配9.7km、最大勾配14%

 全体的なルートは昨年と似ているが、大きな違いは最終盤に通過した登坂区間「サンフェルモ・デッラ・バッターリア」がカットされたこと。昨年はレース後半で迎えたマドンナ・デル・ギザッロ、ソルマーノの壁ともに優勝候補たちは動かず、終盤のチヴィリオ勝負となった。サイクリストの聖地であるマドンナ・デル・ギザッロ、最大勾配27%の驚異の区間であるソルマーノの壁と、それぞれに見どころのあるポイントだが、フィニッシュまで50km近く残していることもあり、これらのポイントで決定打が生まれる可能性は低い。

 ただ、有力チームの準エースクラスや実力派アシストが集団から飛び出し、ライバルチームの脚を削る動きに転ずることは大いに考えられる。この2つの登坂区間で各チームの思惑がある程度見えてくるはずだ。

2017年大会はチヴィリオの下りでヴィンチェンツォ・ニバリが独走に持ち込んだ =2017年10月7日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そして、実質最後の勝負どころとなるチヴィリオ。頂上まで約1kmのところで最大勾配14%となる。昨年はこの上りでクライマーたちがアタックの応酬となった。今年も攻撃的な展開となることが期待される。

 チヴィリオの頂上からコモのフィニッシュまでは、13.6km。昨年は頂上からの下りでヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)が独走に持ち込んだが、この時と異なるのが、前述したサンフェルモ・デッラ・バッターリアが採用されていないこと。今回のルートは小さなアップダウンがあるのみで、前回と比べ最終盤の平坦区間が長めであるあたりに、これまでとは違ったドラマが待っているかもしれない。上りで抜け出した選手が独走を決めるか、または上りで絞られたメンバーによる勝負となるのか。はたまた、下りで勢いづいた選手が前に追いついて優勝争いに加わる、なんてことも大いにあり得る。

 いかなる勝負の決し方であろうと、幕切れは劇的なものに。それがイル・ロンバルディアの魅力でもある。

前回覇者ニバリ、世界王者バルベルデら豪華顔ぶれ

 シーズン終盤とあり、選手たちのコンディションはさまざま。ハードな戦いが続いただけに、疲労や調整不足など致し方のない理由で出場を取りやめる選手が出てくることも予想される。最終的なスタートリストはレース直前まで待つことになるが、主催者RCSが発表した暫定の出場予定選手から、今大会の注目選手を取り上げておきたい。

UCIロード世界選手権では不本意な結果に終わったヴィンチェンツォ・ニバリだが、直近のレースで復調の兆しを見せている =UCIロード世界選手権、2018年9月30日 Photo: Yuzuru SUNADA

 まず、前回覇者を示すゼッケン1番で出走するのがニバリ。3度目の優勝をかけて走ることになるが、ツール・ド・フランスでの落車で負ったけがの回復具合はいかに。9月30日のUCIロード世界選手権では終盤に遅れ、不本意な結果に終わった。それでも、ここへきて調子を上げてきており、10月6日のジロ・デル・エミーリア(UCI1.HC)ではトップから15秒差の8位とまとめた。ロンバルディア本番へ、光が射している印象だ。

スペインでのイベントでマイヨアルカンシエルをお披露目したアレハンドロ・バルベルデ。ロンバルディアでも輝きを放つか Photo: Movistar Team

 そのニバリを抑えて今大会の優勝候補筆頭といえそうなのが、世界王者の証であるマイヨアルカンシエルで臨むアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)。世界選手権での劇的勝利が記憶に新しいが、本人はシーズン終わりまでやる気に満ちる。アルカンシエル獲得後は、10月に入ってスペインでのサイクルイベントで虹色のジャージをお披露目。レースでは10月9日のトレ・ヴァッリ・ヴァレジーネ(イタリア、UCI1.HC)で初出走する。モビスター チームは、8月のクラシカ・サン・セバスティアンで落車負傷したミケル・ランダ(スペイン)が復帰するほか、マルク・ソレル(スペイン)といった若手もメンバー入り予定。どこからでも仕掛けられる隙の無い布陣を組み、バルベルデを盛り立てる。意外にも、バルベルデはロンバルディア未勝利。タイトルリストに新たなレースが加わるか。

ジュリアン・アラフィリップはダウンヒルや少人数スプリントに絶対の自信を持つ =クラシカ・サン・セバスティアン2018、2018年8月4日 Photo: Yuzuru SUNADA

 昨年は終盤の猛追で2位に入ったジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)は、名立たるクライマーとともに上りをクリアできると、一気に勝機が膨らむ。ツールで見せた圧倒的なダウンヒルや、少人数でのスプリントの強さはプロトン随一。展開次第では、ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)やエンリク・マス(スペイン)が勝負に出ることも考えられる。

 タフなレースになれば、今年のグランツールを盛り上げた選手たちにも出番がやってくる。世界選手権銀メダルのロマン・バルデ(アージェードゥーゼール ラモンディアール)や、プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア)、ジョージ・ベネット(ニュージーランド)、ステフェン・クライスヴァイク(オランダ)の3本柱がそろう見通しのロットNL・ユンボ勢に期待。前回優勝争いを演じたティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ)は少人数でのスプリントに強く、ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム)は高い独走力を誇る、といった具合に、オールラウンダーでもそれぞれの特徴を生かせるかがポイント。

ベストメンバーで臨む見通しのミッチェルトン・スコット。ブエルタを制覇したサイモン・イェーツ(左)とアダム・イェーツのコンビネーションが見られるか =ブエルタ・ア・エスパーニャ2018第12ステージ、2018年9月6日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そして、ブエルタ・ア・エスパーニャを制したサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)も、双子の兄弟であるアダムとともにエントリー。ミヒャエル・アルバジーニ(スイス)、ロマン・クロイツィゲル(チェコ)などが控えるベストメンバーで本番に臨む。

 10月に入り、イタリアではワンデーレースが連日開催されている。ロンバルディアの前哨戦的な意味合いも強く、これらのレースで有力選手の調子を図ることができる。ジロ・デル・エミーリア(207.4km)ではアレッサンドロ・デマルキ(イタリア)が優勝。ディラン・トゥーンス(ベルギー)が3位に続き、BMCレーシングチーム勢が活躍。

 2位にはリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーション・ファースト)が入ったほか、世界選手権銅メダルのマイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト・ドラパック)やピノ、バルデも臨み、それぞれ4位から6位を占めた。

 翌7日のGPブルーノ・ベゲッリ(UCI1.HC、196.3km)では、バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)が独走勝利。ロンバルディアの有力候補たちがしっかりと調子を上げてきている。

 ロンバルディア前哨戦、残すはトレ・ヴァッリ・ヴァレジーネ(212km)、10日のミラノ~トリノ(UCI1.HC、200km)、11日のグラン・ピエモンテ(UCI1.HC、191km)の3レース。これらのレースでの選手たちの動向を追っておけば、ロンバルディアをより深く楽しむことができるはずだ。

今週の爆走ライダー−ブノワ・コズネフロワ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 10月7日の行われた伝統のレース、パリ~ツール(UCI1.HC)は今回からグラベル区間(砂利道)が採用されるなど、これまで以上に難易度が増した。実際、この区間でフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)らがパンクするなど、有力選手を含む多くの選手がアクシデントに泣くレースとなった。

過酷な条件下で行われたパリ〜ツール2018。強敵相手にブノワ・コズネフロワ(右)は3位と健闘した Photo: ASO/Gautier DEMOUVEAUX

 そんな条件下にあって、プロ1年目のコズネフロワは勝負どころで前方をキープ。優勝争いに食い込んだ。追走グループに位置したエースのオリバー・ナーセン(ベルギー)を待つあまり、優勝したソーレンクラーク・アンデルセン(デンマーク、チーム サンウェブ)のアタックを逃してしまったが、3位で表彰台の一角を確保。3回目の出場にして得た好結果に喜んだ。

 もっとも、実力は折り紙付き。なぜなら、昨年のアンダー23(23歳未満)のロード世界王者なのだ。逃げや一発のアタックを得意とし、アルカンシエルを獲った時も最後まで一緒に逃げたレナード・ケムナ(ドイツ、チーム サンウェブ)とのマッチアップを制したものだった。

 当面はワンデーレーサーとしての能力を培う方針。春にはアルデンヌクラシックのメンバー入りを果たし、バルデらをアシスト。シーズン後半はブルターニュクラシック・ウェストフランスで9位に入るなど、UCIワールドツアーで自らの成績を求めていけるレベルにまで達している。

 ブルターニュ地方で生まれ育ち、先にサイクリングに目覚めていた従兄の影響で入ったという自転車の世界。すでに競技を引退した彼の分も活躍したいと誓う。いまの走りを生かすのは、ジュニア時代に取り組んだシクロクロスの経験。そう聞けば、パリ~ツールのグラベル区間での強さも合点がいく。

 現チームの下部組織に入ったのが15歳の時。「自転車と勉強を両立できる環境だったから」というのが決め手だったのだとか。現在も自転車を離れれば、経営学を専攻する学生。将来を嘱望される23歳は、競技者としても1人の人間としても、未来に目を向けているのである。

当面はワンデーレーサーとして鍛える方針のブノワ・コズネフロワ。すでにビッグレースで上位進出を果たすなど、才能の片鱗を見せている =アムステル・ゴールド・レース2018、2018年4月15日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

関連記事

この記事のタグ

UCIワールドツアー 週刊サイクルワールド

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

ショップナビ

スペシャル

自転車協会バナー
新春初夢プレゼント2019

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載