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栗村修の“輪”生相談<137>20代男性「自転車メーカーのデザイナーを目指していましたが、進路に迷っています」

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 私は現在、東京の芸術大学の4年生でデザインについて学んでいて、就職活動では自転車メーカーのデザイナーを目指していました。

 最終的にはそれは叶わなかったのですが、自転車への情熱が捨てられず、大学院へ進学してもう一度デザイナーを目指そうと思っています。

 でも、自分は自転車整備のアルバイト経験があり、自分のバイクのメンテナンスも苦ではないので、早いうちにショップに入りメカニックを目指すことも一つの道ではと考えています。

 しかし、ショップでは美術大学へ行った意味があまりないと両親から言われてしまい、だったらいっそのことフレームビルダーを目指し、設計からデザイン、販売まで自分で行ってしまえばいい、とも考え始めています。

 両親は最終的には自分で決めろと言っており、自分はどの道も決して簡単ではないのはわかっていますが、どの道にも進みたいと思っており自転車と関われるなら後悔はしません。

 院に行って勉強するか、ショップや工房で修行をし将来独立するか、自分のことだとはわかっていますが、何か後押しやアドバイスが欲しいです。

(20代男性)

 これは新しい質問ですね。自転車関連デザイナーの仕事というのは僕もそれほど詳しくはないのですが、一緒に考えてみましょうか。

 質問者さんが言う「自転車メーカーのデザイナー」とは、フレームのデザイナーさんでしょうか。たしかに、スチールフレームが一般的だった昔は、装飾にも重きが置かれました。しかし、今はどうでしょう? 剛性や空力などでデザインが決まる現代のフレームでは、デザイナーが腕を振るえる余地はもしかすると減っているかもしれません。

 ただ、カラーリングやロゴデザイン、一部のフレーム形状などが購入者にとって重要な選択基準となっているのも事実であり、デザイン面についてはどうしても欧米ブランドが先行している要素もあるので、日本の自転車界に新しい風を吹き込んでほしい気持ちも、個人的にはあります。全体的なデザインのトレンドは押さえつつも、「日本の匠」的な美しさがデザインな面に反映されるとワクワクしますよね。

 しかし、次の問題があります。仮に自転車メーカーにデザイナーとして入ったとしても、ロードバイクなどのスポーツバイク全般のデザインができるとは限りません。たぶん、数が多い一般車の仕事が多いのではないでしょうか。

1990年のパリ〜ルーベを制した、アンドレア・タフィのバイク。コンポはシマノ・デュラエース Photo: Yuzuru SUNADA

 また、日本には世界を代表する自転車部品メーカーである「シマノ」がありますが、こちらでも多くのデザイナーが魅力的なパーツのデザインを手掛けています。もしかすると、質問者さんがおっしゃっている自転車メーカーとはシマノさんなのかもしれませんが…。

 ただし、大手であれば雇用条件などは良いでしょうが、やはり自分がやりたいことをやれる可能性をどうしても低くなってしまいますね。

 ですから、メーカー以外に目を向ける手もありそうです。たとえば、質問者さんがおっしゃっているショップですね。オリジナルのフレームやウェアを展開しているショップはいくつもあるので、デザイン力を発揮できるかもしれません。

 より正確に言うと、デザインを中心とした企画力が重要ですね。店舗やクラブのイメージカラーやデザインなどを統一させ、そのショップに通うことやクラブなどに所属することの心地よさや付加価値を上げることができるならば、自分のやりたいことをやりながら目に見える成果を挙げることも可能となるでしょう。そして、その先には独立という選択肢も待っています。

 もちろん、ショップ経営を成功させることは決して簡単ではありませんが、その意味では、大学院に通いながらアルバイト的にショップなどで経験を積んでいき、いくつかの選択肢を保ちながら勉強を続けていくのはありかもしれません。

イタリアを象徴するレース、ジロ・デ・イタリアの一コマ Photo: Yuzuru SUNADA

 どの道に進むにせよ、僕がお勧めしたいのは、ヨーロッパ、とくにイタリアを経験することです。米国メーカーが席巻している今の自転車界ですが、デザインの本場はやはりイタリアを中心としたヨーロッパだと言わざるを得ません。

 なぜなら、洗練された自転車のデザインのためには、街並み、建てもの、ファッション、自動車など、自転車以外のものも洗練されていなければいけないからです。その点では、今もイタリアの右に出る国はないと個人的に感じております。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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