上りでアタック一閃、集団を置き去りに女子エリートはファンデルブレッヘンが独走で初アルカンシエル 與那嶺恵理は79位

by 米山一輝 / Ikki YONEYAMA
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 オーストリア・インスブルックで開催のUCI(国際自転車競技連合)ロード世界選手権は9月29日、女子エリートのロードレースが156.2kmで行われ、オランダのアンナ・ファンデルブレッヘンが残り39kmから独走に持ち込み、世界選手権初優勝を飾った。日本勢は與那嶺恵理(ウィグル・ハイファイブ)が、20分47秒遅れの79位で唯一完走を果たした。

女子エリートのロードレースは、オランダのアンナ・ファンデルブレッヘンが初優勝 Photo: Yuzuru SUNADA

リオ五輪女王が念願の世界タイトル

 2016年リオデジャネイロ五輪金メダル、ジロ・ローザ総合優勝2回、ラ・フレーシュ・ワロンヌ通算4勝など、輝かしい戦績を誇るファンデルブレッヘンが、新たな栄冠に輝いた。女子の主要タイトルの多くを勝ち取ってきた、現役最強女子レーサーの一人であるファンデルブレッヘンだが、くしくも世界選手権のタイトルとはこれまで無縁だった。

ゴールラインをくぐり、感情が湧き出す Photo: Yuzuru SUNADA

 「(今回の世界選の)周回コースは、初めて見た時から気に入っていました。今シーズンはいつもよりフレッシュになるよう、昨年優勝したジロ・デ・イタリア(ジロ・ローザ)を欠場して臨みました。日に日にプレッシャーが大きくなり、今日まで本当に長かったけれど、今朝、もうすぐ終わると思い、ようやくリラックスできました」

 そう語るファンデルブレッヘンは、女子最強チーム、オランダのダブルエースの一角として今大会に臨んだ。オランダ勢はほかに今大会個人タイムトライアル(TT)2連覇のアンネミーク・ファンフルーテン、昨年大会優勝のシャンタル・ブラークら、合計8人が出走。日本勢は與那嶺のほか、金子広美(イナーメ信濃山形)、唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム)の3人が出場した。

クーフシュタインを出発する女子エリートの集団 Photo: Yuzuru SUNADA

 コースはドイツ国境に近いクーフシュタインを出発し、インスブルックに至る一方通行の84.9kmに、インスブルック周辺を走る23.8kmの周回コース3周を組み合わせたもの。周回コース直前に約9kmの峠越えがあるほか、周回コースでは7.9kmで448mを一気に上る、平均勾配5.7%の上り坂を毎周回こなす。獲得標高は合計2413mにも及ぶ。

周回1周目から厳しい展開に

 レースは序盤の小さなアップダウンでの小競り合いから、コロンビアのアナ・サナブリアら2人がまず抜け出した。さらに小さな追走グループが複数先行するなか、メイン集団は淡々とレースを進めた。途中オランダはもう一人のエース、ファンフルーテンが落車に巻き込まれるトラブル。集団には復帰したが、不安要素となった。

チロルの山あいを走るプロトン Photo: Yuzuru SUNADA

 周回コース直前のグナーデンヴァルトの上りで、メイン集団は早くもスピードを上げた。サナブリア以外の逃げを全て吸収して、集団は各国エース級のみの20人ほどに絞り込まれた。下りまでにいくつかのグループが追い付き再び人数を増やしたが、この時点で日本勢は集団内に與那嶺1人となっていた。

周回1周目で遅れた與那嶺恵理 Photo: Yuzuru SUNADA

 逃げていたサナブリアも下りで吸収され、今大会個人TT3位のエレン・ファンダイク(オランダ)ら4人がアタックで先行し、周回コースへと突入した。上りもハイペースのまま進み、集団の人数は一気に絞られた。逃げを吸収して到達した頂上の時点で、メイン集団はわずか24人。與那嶺もすでに後方へと遅れていた。

 下りに入ったところでコリン・リヴェラ(アメリカ)が単独アタックを敢行。1人抜け出し、集団から12秒のリードを持って、残り2周のフィニッシュラインを通過した。

残り1周半で早くも単独先頭

 2周目に入ったところで、リヴェラにファンダイクら5人の追走が合流。6人の先頭グループが、集団に1分の差を付けて上りへと突入した。ところが上り序盤で、ファンダイクが先頭から脱落。これを知ったメイン集団では、オランダ勢が怒濤の攻撃を仕掛けた。

 アタックと吸収を繰り返すメイン集団先頭はペースを上げ、ファンフルーテンが先頭に立ってスピードが上がり切った上り中盤で、ついにファンデルブレッヘンがアタックを仕掛けた。猛烈なスピードで一気に集団を置き去りにして先頭5人に追い付き、そのままさらにアタックしていく。

アタック一発で先頭集団に単独ブリッジしたファンデルブレッヘンが、そのままアタック Photo: Yuzuru SUNADA

 ファンデルブレッヘンに反応しようとする先頭の5人だが、次々と脱落していき、唯一オーストラリアのアマンダ・スプラットのみが追随した。しかしスプラットも付き位置で前には出られず、ファンデルブレッヘンが淡々と一人で先頭を引き、それでも後続との差はあっという間に開いていった。

 上り頂上近くで、ようやくファンデルブレッヘンがスプラットに先頭交代をうながし、スプラットが先頭に立った。しかし一旦下がったファンデルブレッヘンは、ペースが上がらないと見るやすかさずアタック。スプラットを置き去りにし、ゴールまで39kmを残して単独先頭に立った。

唯一追いすがるスプラットを一旦前に出したファンデルブレッヘン Photo: Yuzuru SUNADA
再度のアタックでスプラットを置き去りにしたファンデルブレッヘン Photo: Yuzuru SUNADA

2位スプラット、3位はグデルツォ

 残り1周のフィニッシュラインを通過した時点で、ファンデルブレッヘンはスプラットに1分19秒の差を付け、オランダ勢がライバルをマークするメイン集団とは、実に4分23秒もの差を築いていた。ファンデルブレッヘンは上りでもしばしばドロップの下ハンドルを握り、高ケイデンスを維持して快調に一人旅を続けた。

淡々とハイペースを刻み続けたファンデルブレッヘン。前日の男子U23に続き、女子エリートもディスクブレーキバイクが優勝を飾った Photo: Yuzuru SUNADA

 一方で単独2位を走るスプラットは、苦しそうな走りが続くものの、ペースは維持して2位の座を守り続けた。3位争いは6人の追走グループから、上りでイタリアのタティアナ・グデルツォが単独抜け出しに成功した。厳しいアップダウンコースは、勝負をゴール前まで持ち込まず、上り区間でその大勢を決した。

上り頂上付近を独走で通過するファンデルブレッヘン Photo: Yuzuru SUNADA

 早くも優勝をほぼ確実にしたファンデルブレッヘンだが、ゴール直前まで淡々とハイペースを刻み続けた。残り1kmを切ってようやく幾度か後ろを振り返り、勝利を確信。残り100mでハンドルから手を離し、噛みしめるような表情からガッツポーズを見せ、ゴールラインをくぐった。

 過去2015年には、トップと同タイムの2位に入っていた世界選手権ロードレース。個人TTでも3度2位に入っているが、アルカンシエルにはあと一歩届かずにいた。得意とする厳しい上りのコースに照準を定めた今年、ファンデルブレッヘンはついに念願の虹色のジャージに袖を通した。

 日本勢で唯一最終周回へと入った與那嶺は、完走81人の後ろから3番目となる、79位でゴールを果たした。

女子エリート表彰。(左から)2位のスプラット、優勝のファンデルブレッヘン、3位のグデルツォ Photo: Yuzuru SUNADA

女子エリート結果(156.2km)
1 アンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ) 4時間11分4秒
2 アマンダ・スプラット(オーストラリア) +3分42秒
3 タティアナ・グデルツォ(イタリア) +5分26秒
79 與那嶺恵理(日本) +20分47秒
DNF 金子広美(日本)
DNF 唐見実世子(日本)

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UCIロード世界選手権2018 女子ロードレース

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