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旅サイクリスト昼間岳の地球走行録<14>旅先で出会った仲間とともに走る「ペアラン」 偶然の楽しさと必然性、そしてリスク

by 昼間岳 / Gaku HIRUMA
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 僕は1人で旅に出たのだが、結果的に旅の3分の1の期間は誰かと一緒に走っていた事になる。連載第3回目の「サイクリストは乾季のウユニ塩湖を目指す」でも書いたように、世界中どこでも自由に走れるわけではないので、海外を走るサイクリストは同じようなタイミングで同じような地域を走っていることが多い。そのため走行していると多くのサイクリストと出会うことになる。偶然出会うこともあれば、ネットを通じて連絡を取り合い落ち合うこともある。バックパッカーから「サイクリストをあの町で見ましたよ」なんて情報も、集めようと思ってなくても入ってくるので、同じ大陸にいるサイクリストは大体どこにいるかも把握していた。

治安が不安でペアランしたコロンビアは予想に反して、穏やかな国だった Photo: Gaku HIRUMA

辺境の地で仲間が近くにいることの嬉しさ

 いつも自由気ままに走ってる分、海外で同志のサイクルストに出会えると本当に嬉しくとりあえず次の町まで一緒に走ろうかとなる。同じ方向に進んでると別れる理由がないし、いつも孤独で走ってるので、誰かと走ることが思った以上に楽しく、長く“ペアラン”をすることはよくあった。

 朝早く動き出す人もいれば遅い人もいる。状況によって、ちょうどいい時間を決めて朝から一緒に動き出すように決めたときもあるし、朝のスタートさえ別々にしたときもある。朝遅い人は大体走るのが早いので、夕方までには大体合流できたりする。そこで野宿地やホテルを探すときに一緒になって探すというようにしていた。これだと全然ペアランと呼べないかもしれないが、辺境の地で仲間が近くにいるという事実だけでも走っている楽しさは全然違った。

 ここで重要なのは、あまり干渉しすぎず、自分があまりに遅かったら先に行ってくれと伝えること。「あまり合わないな」と思う人も正直いるので、そういう場合はこれでうまくフェードアウトしていく。

危険地帯でリスクを減らす目的も

 それとは別に危険地帯を走るときは、連絡を取り合い一緒に走ってリスクを減らすこともあった。僕の場合は、治安に心配のあった南米のコロンビアやイランの西部などを一緒に走った。欲をいえば危険な地域はいつも誰かと一緒に走ってリスクを減らしたいところだが、知り合いのサイクリストが近くにいないとなかなか難しい。

 とくにイラン西部からトルクメニスタン、ウズベキスタンをグループで走った時は印象深い。治安の悪いイラン西部を安全に抜けるためにイラン西部の町マシュハドの宿に集合した。僕を入れて日本人5人とボスニア人1人の計6人のグループになった。

イラン西部からウズベキスタンは5人でのグループで走った Photo: Gaku HIRUMA

 これくらい多い人数で走ると、大体ばらけていくものだけど、ばらけずに走れたのは危険地域ということのほかに、トルクメニスタンの50℃近い灼熱の何もない砂漠だったからかもしれない。

 360°見渡す限りの地平線が何十kmと続く一本道の炎天下。休憩中はブッシュ(低木)の陰になんとか潜り込み、直射日光を避けて休む。休憩を終えて道路に戻ると、どっちから来てどっちへ行くのか本当に一瞬迷ったりするほどで、仲間がいることがこんなに有難かったことはなかった。ひとりだったら心が先に折れそうな所だけど、グループのおかげで走り切ることができた。

旅は道連れ

 そして宿代なども節約できるのも大きな魅力だ。海外の安宿はシングルよりもツインの方が多い。そして宿代は一部屋の料金になるので当然シェアした方が安くなる。パナマからコロンビアに渡るヨットでも、走行中に知り合ったサイクリストと連絡を取り合ってシェアし、一緒のヨットに乗るように日程を調整した。

サイクリストが良く利用する手段なので、自転車の乗船の交渉はスムーズに行われる Photo: Gaku HIRUMA

 バックパックで旅をしていた友人を自転車旅に誘って少しの間一緒に走ることもあったし、これから始めたいという子と一緒に装備や自転車を買いに行ったりもした。マウンテンバイクは中規模の街であれば購入できたが、さすがに自転車に付けるバッグまでは売っていなかった。

 そこで、ビニールバッグを強引に括り付けたり、ポリタンクを切ってリアバッグになるように工夫して、その上に今まで使っていたバックパックを載せるようにして強引に即席のツーリング自転車を作り上げた。

僕のフロントバッグを友人のリアバッグに使い、代わりにビニールバッグを括り付けた Photo: Gaku HIRUMA
ポリタンクを切ってリアバッグに代用した Photo: Gaku HIRUMA

 当然壊れたり破れたりするけど、現地で買った物なのでまたすぐに買い足せる気軽さも魅力だった。自転車旅というと、しっかりとした自転車と装備でないと到底走れそうもないイメージがあったが、現地の安いマウンテンバイクでも充分旅することができるんだなと、誘った僕自身が一番驚いた。

集団で走るリスクも

 ただ、補足として、今年の7月にタジキスタンで欧米人サイクリストのグループ7人に乗用車が突っ込み、4人が死亡した。タジキスタンの捜査当局はテロの可能性もあるとしている。僕はグループで走った方がリスクが減るとばかり思って旅していたが、テロの標的にされるとは思ってもみなかった。本当にあってはならいことで非常に悲しい出来事だった。

 今回はペアランについて書かせてもらったが、色々なリスクを考えて旅のスタイルを決めて欲しい。

昼間岳昼間岳(ひるま・がく)

小学生の時に自転車で旅する青年を見て、自転車で世界一周するという夢を抱いた。大学時代は国内外を旅し、卒業後は自転車店に勤務。2009年に念願だった自転車世界一周へ出発した。5年8カ月をかけてたくさんの出会いや感動、経験を自転車に載せながら、世界60カ国を走破。2015年4月に帰国した。『Cyclist』ではこれまでに「旅サイクリスト昼間岳の地球写真館」を連載。ブログ「Take it easy!!

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