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猪野学の“坂バカ”奮闘記<28>“計り知れない男”マリンの本性をあばく! どっきりヒルクライムで極秘密着<前編>

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 その男の名はマリン。29歳のお笑い芸人だ。NHKBSの自転車情報番組『チャリダー★』の新メンバーオーディションを勝ち抜き、番組にやって来た。元南米のプロサッカー選手であり、フィジカルの強さが期待されている男。わずか3カ月で私に勝つと宣言した計り知れない危険な人物だ。私としては心中穏やかではない。もし負けるようなことになれば、番組レギュラーの座が危うい。何としてもこの男の実力と人間性を見極める必要がある。ちょうど良い具合にマリンと対決する予定の「椿ヶ鼻ヒルクライム」(大分県)が近い。私はマリンに「ドラマの撮影で行けなくなった」と嘘をつき、マリンの付き位置(真後ろ)でヤツの実力を見極めることにした。

ポテンシャルは高いがビビり屋のマリン

正体を隠して追跡開始

 やるからには絶対にバレないように徹底する。服装もマリンの前では着たことのない昔の服をチョイスし、帽子にマスクという出で立ちで羽田空港へ向かった。搭乗口に番組スタッフと戯れるマリンの姿がある。すっかりレギュラーキャスト気取りだ! 「何様のつもりだ」と嫉妬心を燃やしていたら、最後に搭乗する羽目になってしまった。

笑いも初心者のマリン(右)。大先輩の牧野ステテコ(中央)と旅をして、笑いの極意を盗もうとしていた

 すると、なんと私の席は最後尾で、通路側にはマリンの姿が…。いきなり最接近だ! 私は腹を決めてマリンの真横を足早に通過する。マリンは眼光鋭く一点を見つめている。その目線は私に移ることなく、なんとか気付かれず通過した。危なかった、彼は南米で強盗に背中を刺された経験がある。警戒心は人並み以上だ。なんとかバレることなく羽田を離陸した。

 福岡空港到着後も思わぬ接触を避けるために、すぐさまトイレへ避難する。すると先に入ってる人がいて、長蛇の列が出来ている。なかなか出て来ない。随分長い大便だ。やっと水の流れる音がしてドアが開くと、現れたのはどや顔のマリンだ!私は咄嗟にスマホに顔を伏せ、難を逃れた…。

箱根の坂で初ヒルクライム!いきなり2年前の私に迫るタイムを出し、ポテンシャルを見せつけた

 私は胸を撫で下ろすとともに、猛烈に腹が立って来た。長蛇の列を作っておきながらあのどや顔は何だ! カメラの前では見せない顔だ! 私は早くもマリンの本性を垣間見ることに成功した。

 やっとホテルに着き、ロビーで寛いでいるとヒルクライムに出場する家族だろうか? 「猪野さんですよね? 子供と一緒に写真撮って下さい」と頼まれた。私は今回は極秘で来ているので、マリンにバレるリスクは避けたかったが、子供との写真を断るわけにはいかないため、仕方なく撮影に応じた。この写真が後に最大の危機をもたらすとは知らずに…。

「水玉なし」に“変装”してドッキリロケスタート

 一夜明けいよいよヒルクライム当日! マリンより遅めに会場に乗り込む。ちなみにこの日の私はいつもの赤い水玉ジャージを封印し、青いサングラスに青いジャージという出で立ち。自慢ではないが、私は水玉に黒縁眼鏡をかけてないと「坂バカ」と気付かれない。会場に着くと意気揚々とロケをしているマリンの姿が見える。「打倒猪野学です!絶対倒します!」とドヤ顔で叫んでいる。本人がすぐ近くにいるとは知らずに、哀れな男だ。

「打倒猪野学です!絶対倒します!」とドヤ顔で叫ぶマリン。哀れなヤツだ…

 スタートまでの時間は無用なリスクを避けるためにスタッフの車に隠れていた。するといきなりフロントガラスにマリンの姿が! 咄嗟にシートにうずくまったが一瞬目が合った。バレたか!? するとマリンは私をスタッフと思ったのか、「レッグカバー探してるんですが、こっちにありますか?」と。7月のレースでなぜレッグカバーが必要だというのだ! 全くもって計り知れない!

水玉なしで“非”坂バカに扮した筆者 Photo :Kyoko GOTO

 そしてやっとの思いでスタートの列に並ぶ、ここまでくれば大丈夫だ。私の存在に気付かない隣の男性が、「猪野さん来とらすやろか? ゴールしたら一緒に写真ば撮ってもらうばい」と話しかけてきた…。あ、ありがたいことだが、ここで名乗り出るわけにはいかない。私は何としてもヤツの本性をあばく必要があるのだ。

 そしていよいよスタートの合図が! ついに「どっきりヒルクライム」の幕が開けたのであった─。

<後半に続く>

(写真提供:NHK)

猪野 学猪野 学(いの・まなぶ)

俳優・声優。自転車情報番組NHK BS1『チャリダー☆』(毎週土曜18:00〜18:25)にレギュラー出演し、「坂バカ俳優」という異名で人気を博す。自転車の他、空手やスキーなども特技とするスポーツマン。俳優として舞台や映画、ドラマなどで活躍する一方、映画『スパイダーマン』のトビー・マグワイアの声優としても知られる。ウェブサイト「マナブログⅡ

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