title banner

栗村修の“輪”生相談<136>10代男性「Wレバーのバイクですが、クリテリウムレースで入賞したいです」

  • 一覧

 
 地元のクリテリウムレースに参加しています。現在私が乗っているロードバイクはWレバータイプのクロモリフレームです。Wレバーはヌルヌル変速するタイプです。レースでは入賞まであと少しなのですが、Wレバーのため最終コーナーの立ち上がりで遅れてしまいます。それで、Wレバーでコーナーの立ち上がりを良くするにはどうしたら良いのでしょうか? コーナーの前でギアを軽くするなどの対策をしてみましたが上手く行きませんでした。回答していただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

(10代男性)

 電動変速、ディスクブレーキ、チューブレスカーボンクリンチャー、エアロバリバリのカーボンフレームと、ロードバイクのハイテク化が進むこの時代に、Wレバー付きのクロモリに乗る少年! しかも出場するレースは、変速性能が成績に直結するクリテリウムです。なんと美しい光景でしょうか。

 「W(ダブル)レバー」ってなに? という人も多そうなので解説しますと、昔のロードバイクは、ダウンチューブに設置したレバーを動かすことで変速していました。僕がロードバイクに出会ったころには、レバーが「カチカチ」と適正位置に導くインデックス機能が出始めましたが、質問者さんはインデックスすらない、いわゆるフリクションです。

 率直に言いますと、今の段階で入賞が見えている質問者さんなら、普通のエントリークラスのロードバイクに替えれば即入賞できるわけですが、Wレバー世代のオジサンたちは、質問者さんが並み居るハイテクバイクを打ち倒すところを見てみたいと思うことでしょう。

1990年のツール・ド・フランスに出場したコルナゴのバイク。ダウンチューブの両サイドに2本の変速レバー(Wレバー)が付く Photo: Yuzuru SUNADA

 というわけで、テクニックを伝授しますね。まず、ブレーキを欧米式の「左・前ブレーキ」にする手があります。なぜかと言いますと、Wレバーは右レバーがリアディレーラーに繋がっているので、変速が必要なコーナー前後では右手をハンドルから離す必要があります。なので、制動力の高い前ブレーキをハンドルを握っていられる左手に対応させておくと、ブレーキングに余裕が出るのです。

 コーナー前では左手でフロントブレーキをかけ減速。同時に右手でシフトダウンをしてからコーナーに突っ込めば、最適なギア比で立ち上がれます。もっとも、加速しながらのシフトアップ時は都度腰を下ろす必要があるので圧倒的に不利であることには変わりはないのですが…。

 なお、ブレーキの左右入れ替えは慣れに時間がかかりますので、安全な私有地などでしっかりとしたプロテクションを付けた上で、最低でも数カ月間の練習を積んでからレースに挑むようにしてください。

 さらなる超裏ワザとしては、右膝でWレバーを蹴ることで、手をハンドルから離さずに変速する上級(?)テクニックがあります。しかしこの方法ではシフトアップしかできない上に微調整も不可能ですし、なにより膝が痛いので、あまりお勧めしません。膝の当て方をミスると青タン(アザのことです)だけでは済まなくなる恐れもあります。

 ちなみにいずれのテクニックも「デュアルコントロールレバーにすればいいじゃん」というツッコミの前には無力ですので、その点はご了承ください。

 また、競技ルール上ではOKでも、レース中に他の参加者と異なるタイミングでブレーキングやシフトチェンジを行うことになるので、周りに迷惑が掛からないように十分注意してください。理想的には単独で飛び出して独走勝利を飾れると良いですね。

1991年ロード世界選手権のゴールスプリント。優勝したブーニョを始め上位3人全員が、変速レバーがブレーキレバーと一体化していない、Wレバーのロードバイクだ Photo: Yuzuru SUNADA

 現在のロードバイクと比べると昔はなんて原始的なシステムだったんだ、と思う方も多いかもしれませんが、一方で、制動力の低いブレーキ、片手を離さないと変速できないディレーラー、重くて頑丈なフレームとホイールなどなどなど、自転車の性能が低い方が皆が注意しながら余裕を持って走る傾向にあったので、皮肉にもレース中の重大事故の発生件数は今より少なかったように感じます。

 まるで、便利になったことで、ある側面においては生きづらくなってしまった現代社会と似たところがありますね。人間にはある程度の不便さとルーズさが時には必要だということかもしれません。

 10代の若者がWレバーのクロモリバイクでクリテリウムを勝つ、という目標は、プロペラ機が最新鋭のジェット戦闘機に勝つようなものです。オジサンライダーたちは大感激だと思いますよ。安全にはくれぐれも気を付けて、Wレバーバイクでの表彰台を目指してみてください。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

関連記事

この記事のタグ

栗村修の“輪”生相談

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

ショップナビ

スペシャル

自転車協会バナー
CyclistポケットTシャツ

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載