ブエルタ・ア・エスパーニャ2018 第20ステージ23歳マスがグランツール初優勝、総合でも2位獲得 イェーツは総合優勝が確実に

by 米山一輝 / Ikki YONEYAMA
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 ブエルタ・ア・エスパーニャは9月15日、第20ステージがアンドラ公国のエスカルデス=エンゴルダニからコル・デ・ラ・ガリナに至る97.3kmで争われ、山岳最終決戦のステージを23歳のエンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)が、24歳のミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム)との競り合いに勝ち、グランツール初優勝を飾った。両者は総合でもマスが2位、ロペスが3位に躍進。総合首位のサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)は区間3位で、最終日を前に、自身初のグランツール制覇をほぼ手中にした。

23歳のエンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)がブエルタ初優勝 Photo: Yuzuru SUNADA

山岳ショートステージでの最終決戦

 今年のブエルタは総合争いの大詰めを迎えた。最終日のマドリードステージでは総合争いを行わないことが通例のため、この日の成績で実質的な総合優勝が決定する。前日のゴールから引き続きアンドラ公国で行われたこの日は、山に囲まれた小さな国土を行ったり来たりで、合計6つの山岳をこなす。100kmに満たないショートステージながら、約4000mもの獲得標高を経ての山頂フィニッシュ。まさに決戦の舞台にふさわしいステージだ。

 レース序盤は、こちらも大詰めの山岳賞争いを中心に進んだ。山岳賞首位のトマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)が最初の上りで攻撃を見せると、集団から15人の逃げが形成。山岳賞上位では3位に付けるバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)も逃げに入り、デヘントと山岳ポイントを争った。最初の2級山岳は、デヘントがロングスパートをかけてまず先頭通過を果たした。

山岳賞ジャージのデヘント Photo: Yuzuru SUNADA

 逃げにはこのほかラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)、ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チーム スカイ)、ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)、ゴルカ・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)、ダビ・デラクルス(スペイン、チーム スカイ)といった名だたるエース級の選手が入った。総合争いをするモビスター チームは1人、同じくアスタナ プロチームは2人、アシストの選手を送り込み「前待ち」の構えを取る。

 続く1級山岳ベイサリス峠でも、メイン集団の動きは落ち着かない。ファビオ・アル(イタリア、UAEチーム・エミレーツ)、ピエール・ロラン(フランス、EFエデュケーションファースト・ドラパック)らが抜け出したところで、たまらずリーダーチームのミッチェルトン・スコットが道一杯に広がり、物理的に動きを遮断する構えを見せた。15人の先頭からメイン集団までは約2分まで差が開いたが、続いて集団内では総合6位のナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)がペースアップ。集団の人数を絞り込みながらベイサリス峠を越えた。先頭ではデヘントがモレマと争うも、再びデヘントが山頂を先頭通過し山岳ポイントを重ねた。

中盤はアスタナが攻撃

 この日3つ目の山岳は、1級山岳のオルディノ峠。距離が9.8kmとこの日最も長い上りだ。下りで若干人数を戻したメイン集団だが、上り中盤からアスタナが集団先頭に立って攻撃に出た。ハイペースを刻む中で、首位のサイモン・イェーツを守るミッチェルトン・スコットのアシストは、双子の兄弟のアダム・イェーツのみとなってしまった。

途中の1級山岳でアタックしたヘスス・エラダが敢闘賞を獲得 Photo: Yuzuru SUNADA

 先頭ではヘスス・エラダ(スペイン、コフィディス ソリュシオンクレディ)が単独で逃げて山頂を先頭通過し、デヘント、モレマと続いた。デヘントはこの時点でモレマに20点の大差を付け、総合山岳賞を濃厚とした。

 4つ目の上りは、この日2つ目に上ったベイサリス峠を再び越える。メイン集団ではアスタナのペースアップが続き、集団の人数は刻一刻と少なくなっていく。逃げる先頭ではクウィアトコウスキーが先頭でペースを上げて、15人の集団が完全に崩壊。クウィアトコウスキー、デラクルス、マイカ、モレマの4人が先頭となった。

 山頂まで約5kmの中腹で、アスタナのエース、ロペス自身が攻撃に出た。アタックを仕掛けると、逃げ集団で「前待ち」をしていた、アシスト2選手と合流。そのままメイン集団を引き離しにかかった。だが首位のサイモン・イェーツは、ロペスとのタイム差が2分以上あるため、まずは静観の構え。アシストするアダム・イェーツの牽引で、ペースを保っての追走を選択する。

 先頭では山頂まで約3kmでマイカがアタックを仕掛け、辛うじてデラクルスのみが追随する。ロペスはニバリと合流して、山頂まで約1kmで先頭のマイカらに追い付いた。しかしすぐ後方には、アダム・イェーツが率いるメイン集団も迫っていた。ベイサリス峠の頂上を前に、逃げは一旦全て吸収され、残り30km余りは、ゼロからの戦いとなった。

バルベルデ、クライスヴァイクが陥落

 ベイサリス峠の頂上を越えての下り、次の上りを待たず攻撃を仕掛けたのは、再びのキンタナだった。大差は得られないものの、メイン集団をアダム・イェーツに引かせて、その脚を削りに出る。下りを終えると、この日5つ目の上りとなる、3級山岳のコメリャ峠が待ち受ける。

最後まで山岳賞を争う姿勢を見せたモレマ Photo: Yuzuru SUNADA

 上りに入るとロペスがキンタナへの単独ジャンプに成功。総合5位のロペスは、キンタナのチームメートで総合2位のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)を脅かす存在だが、キンタナはイェーツ兄弟への攻撃のため、ロペスとの先頭交代に応じて逃げを継続した。

 ところが峠の山頂近くで、総合首位のサイモン・イェーツが自ら動き集団からアタック。総合4位のマスとともに、先頭のロペス、キンタナへと合流することに成功した。総合2位のバルベルデと、同3位のステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNL・ユンボ)はこれに反応できず。モビスターはアシストのリチャル・カラパス(エクアドル)を出して先頭を追うが、ここまでの攻撃から一転、苦しい守勢となった。

 一方で先行する総合4位のマス、同5位のロペスは、タイム差によっては総合表彰台に登れるチャンス。総合2位のバルベルデを突き放したいサイモン・イェーツも協力し、先頭グループは追走との差を徐々に開いていく。不利と見たモビスター チームは、最後の上りを前に先頭にいたキンタナが追走へと下がって牽引を担うが、3人で分担してペースを上げる先頭に対し、不利な状況だ。

 ゴールに至る超級山岳ガリナ峠の上りに入ると、先頭ではロペスがペースアップ。マスはこれに付くが、サイモン・イェーツは無理に反応せず、一定ペースを刻んで上ることを選択した。

遅れたバルベルデをキンタナが引き上げる Photo: Yuzuru SUNADA

 一方の追走グループでは、キンタナが先頭で前を追う中、急勾配区間で肝心のバルベルデが遅れ始めてしまう。キンタナが一人下がってアシストするが、バルベルデは完全に力尽きた様子だ。今大会、序盤から区間2勝と好調を保っていたバルベルデだが、チームの本来の総合エースはキンタナだった。バルベルデの好調とキンタナの不調からエースが入れ替わっていたが、最後の最重要局面で、本来エースではなかったバルベルデの燃料が尽きてしまったのだ。

 バルベルデが脱落した追走グループでは、総合3位の座を守りたいクライスヴァイクが先頭に立つ。しかし差を縮められないまま、力を使い果たしたところで、総合8位のリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック)のアタックに、全く反応できず脱落してしまう。バルベルデとともに、クライスヴァイクの総合表彰台も、今や絶望的な状況になった。

マス(右)とロペスのゴール争い Photo: Yuzuru SUNADA

敢闘賞から1年でグランツール勝利、総合表彰台へ

 先頭を行くロペスとマスは快調に残り距離を減らしていく。上りではロペスが攻撃的だが、マスも追随してこれを離さない。ラスト1kmからは互いに牽制。そしてラスト100mからのスプリントで、マスが最終コーナーを押さえると、そのままフィニッシュラインまで先行して雄叫びとともにガッツポーズを見せた。

 マスは2度目のグランツールで念願の初勝利。ワールドツアーは今年のバスク一周第6ステージに続く2勝目となった。実は昨年のブエルタ第20ステージ、マスは敢闘賞を獲得していた。このときスペインの英雄、アルベルト・コンタドールの現役最後の勝利を途中アシストしたマスは、コンタドールが運営するアマチュア育成チームの出身。コンタドール最後の輝きからちょうど1年、コンタドールの直弟子が大きな勝利を挙げた。

最後まで力を振り絞ったサイモン・イェーツ。区間3位でゴールし苦悶の表情がわずかに緩む Photo: Yuzuru SUNADA
今大会大活躍のバルベルデだが、最後の最後で力尽きた Photo: Yuzuru SUNADA
クライスヴァイクも総合表彰台から陥落 Photo: Yuzuru SUNADA

 マスとロペスは同時に、個人総合成績でも躍進した。総合3位のバルベルデと同4位のクライスヴァイクが大きく遅れたことで、ともに総合2位、3位の表彰台を確実にしたのだ。そして総合首位のサイモン・イェーツは、マスから23秒差でゴール。この瞬間、イェーツのブエルタ総合優勝が、ほぼ確定した。このほか総合各賞では、デヘントの山岳賞、バルベルデのポイント賞がこの日で実質確定している。

デヘントの山岳賞が確定 Photo: Yuzuru SUNADA

 最終日の第21ステージは、恒例の首都マドリードへのステージ。100.9kmの完全平坦コースは、途中からマドリード市内の5.9kmの周回へと入り、これを12周してゴールとなる。総合争いは実質行われず、最後のゴールを争うスプリンターらの競演で、3週間のブエルタは華々しく幕を閉じる。

グランツール初制覇をほぼ手中に収めたサイモン・イェーツが笑顔のガッツポーズ Photo: Yuzuru SUNADA

第20ステージ結果
1 エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ) 2時間59分30秒
2 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム) +0秒
3 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) +23秒
4 ティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ) +54秒
5 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) +57秒
6 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、チーム サンウェブ) +1分11秒
7 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNL・ユンボ) +1分15秒
8 ダビ・デラクルス(スペイン、チーム スカイ) +2分17秒
9 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) +3分9秒
10 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)

個人総合(マイヨロホ)
1 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 79時間44分30秒
2 エンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ) +1分46秒
3 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム) +2分4秒
4 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNL・ユンボ) +2分54秒
5 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) +4分28秒
6 ティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ) +5分57秒
7 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) +6分7秒
8 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) +6分51秒
9 ヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ) +11分9秒
10 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、チーム サンウェブ) +11分11秒

ポイント賞(プントス)
1 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) 131 pts
2 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 104 pts
3 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム) 103 pts

山岳賞(モンターニャ)
1 トマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) 95 pts
2 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) 83 pts
3 ルイスアンヘル・マテ(スペイン、コフィディス ソリュシオンクレディ) 64 pts

複合賞(コンビナダ)
1 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 9 pts
2 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム) 11 pts
3 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) 18 pts

チーム総合
1 モビスター チーム 239時間45分40秒
2 バーレーン・メリダ +45分36秒
3 ボーラ・ハンスグローエ +47分57秒

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