title banner

旅サイクリスト昼間岳の地球走行録<13>個性とトラブルを楽しむか?市販車最強にするか? 旅の”相棒”の選び方

by 昼間岳 / Gaku HIRUMA
  • 一覧

 約60kgもの荷物を積んで、コンディションの悪い道を毎日のように走っていたら、自転車はいくら手をかけていても悲鳴を上げる。アラスカでのスタート時から使用していた完組ホイールは1万km前後でスポークが折れはじめ、その後何度替えたか覚えていないし、仕方なく買った安いタイヤは1000km持てば良い方だった。

過酷な土地でもサーリーと最強の装備はトラブル知らずで、パンクすら数える程度しかしなかった Photo: Gaku HIRUMA

満身創痍の自転車

 1000kmといえばそこそこ持つように聞こえるが、約10日で新品のタイヤが駄目になってしまうとなると気が滅入る。パンクは日常茶飯事で、日に3回もパンクするとさすがに発狂しそうになり、キャリアは何カ所も折れ、その度に町の車などの整備工場に持っていき、溶接してもらった。海外では小さな町でも車の整備工場があることが多く、持ち込んで事情を話せば溶接してもらえるが、その腕前は大体「とりあえず繋げたぜ」といった感じだった。

 「ホローテックⅡ」のボトムブラケットは、2度ベアリングが破損し、その度に取り寄せて交換した。恐らく激しいフレームのたわみと、負荷に耐えられなかったのだろう。フロントフォークも一度替えている。アメリカで走行中に大きいボルトを踏んでしまい、それが車輪に巻き込まれフロントフォークがぶつかり、前輪が強制ロックされ体が宙に放り出された。

写真中央のボルトを踏み前輪がロックした。日本の走行でも注意してほしい Photo: Gaku HIRUMA

 体の痛みよりもまず自転車の状態が気になり、すぐに起き上がってチェックした。無残にも泥除けがくしゃくしゃに曲がり、前輪がフレームのダウンチューブにもろに当たり走行不能だった。ビザの日程も残りわずかだったため、一時帰国が頭をよぎる。まだアメリカとカナダしか走ってないのに、おめおめと帰るなんてあまりにも情けない。

ボルトを踏んでフロントフォークが無残にも曲がってしまった Photo: Gaku HIRUMA

 絶対直すと覚悟を決め、荷物を外し、その場でフロントフォークを引き抜いた。そして長い時間をかけて曲がりを直すため、フォークを体重とテコの原理でとにかく踏んだ。どのくらいの時間がかかったのか覚えていないが、とにかく自走可能なレベルまでなんとか戻し、前ブレーキも使えるように調整した。こんな時のためにカンチブレーキにしておいて良かった。繊細なディスクやVブレーキだったらこのフォーク曲がりに対応できなかっただろう。

ボロボロになるほど湧く愛着

 その後、フォークのみ交換して旅を続けることができた。満身創痍の自転車だったが、溶接個所が増え、オーストリッチの布バックが日に焼けボロボロになっていくほど愛着が湧いていった。ところが4年目のエチオピアを走行中にフレームのリアエンドのチェーンステーが折れてしまった。

フレーム折れも溶接してもらったが、今にもバラバラになりそうな乗り心地だった Photo: Gaku HIRUMA

 走行中、「パキッ」と嫌な金属音を耳にし、またスポークが折れたのかと見てみると、なんとフレームがぽっきりいっていた。さすがに頭が真っ白になった。どうしていいかわからず、とりあえずテープでぐるぐる巻きにして走り出そうとしたが、当然走行できる代物ではなかった。

 そこで溶接できそうな大きい町まで、バスを捕まえすぐに向かった。溶接は問題なくでき、走行は可能になったが、今にもバラバラになりそうなほど頼りなかった。この先の旅路を考え苦渋の決断だったが、一度日本に帰り新しい自転車を調達することにした。

ボロボロになる布バッグにワッペンを張る。これだけでも言葉が通じない地元の人達とのコミュニケーションになる Photo: Gaku HIRUMA

最強だがどこか物足りなさも…

 1台目は、オーダーメイドで作ったが、2台目は市販の最強と呼び声高かった「サーリー」のロングホールトラッカーをベースに、折れたという話を聞いたことがないチューブスキャリアに、数千km走ってもパンクしなかったとも聞く「シュワルベ」のマラソンプラスなど、最強と呼ばれる装備で取り揃えた。

 サーリーと、最強と謳われる装備は最高だった。ほぼトラブルもパンクすらしないまま帰国することができたが、面白味が失われてしまう面もあった。ネットが普及し、皆同じような自転車に同じような装備を選ぶようになってしまったからだ。中央アジアの宿ではたまたま出会った8人のサイクリスト全員がサーリーだったりということもあった。

ウズベキスタンの有名宿に集まるサイクリストは全員サーリー乗りだった Photo: Gaku HIRUMA

 個性的な自転車が現れ、観察するということも少なくなった。色褪せ、ツギハギだらけになり、興味津々で見られた初代バイクの方が、旅らしさを味わえたのかもしれない。

昼間岳昼間岳(ひるま・がく)

小学生の時に自転車で旅する青年を見て、自転車で世界一周するという夢を抱いた。大学時代は国内外を旅し、卒業後は自転車店に勤務。2009年に念願だった自転車世界一周へ出発した。5年8カ月をかけてたくさんの出会いや感動、経験を自転車に載せながら、世界60カ国を走破。2015年4月に帰国した。『Cyclist』ではこれまでに「旅サイクリスト昼間岳の地球写真館」を連載。ブログ「Take it easy!!

関連記事

この記事のタグ

旅サイクリスト昼間岳の地球走行録

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

ショップナビ

スペシャル

自転車協会バナー
新春初夢プレゼント2019

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載