地元に根付いた大会を密着リポート今年も1000人以上が参加「嬬恋キャベツヒルクライム2018」 大会新記録が樹立!
群馬県嬬恋村で9月2日、「嬬恋キャベツヒルクライム2018」大会が行われた。大型台風の接近が心配されていたが雨は降らず、1000人以上の参加者が大会を楽しんだ。
年に一度、この日だけ走れるコース
3回目の開催を迎えた嬬恋キャベツヒルクライムは、毎年9月第1日曜日に行われる。嬬恋村をスタートし、万座ハイウェーの終点近くをゴールとする19.8kmを走る。コースは時折やや勾配のきつい個所もあるが、平均勾配は5.1%と比較的緩めで、全体的に道路幅が広く走りやすい。万座ハイウェーは、プリンスホテルが管理する自動車専用の有料道路で、この大会以外は自転車で走ることができない。1日だけこのイベントのために封鎖される。
大会の最大の魅力は、コースの走りやすさと景色の美しさに加え、タイムを争う部とファンライドの部が設けられていることだ。ファンライドの部は距離も短い6.2kmで、話しながらでも上れるので、家族連れや子供の姿が目立った。
今年もイタリアから自転車のプロチーム、NIPPO・ヴィーニファンティーニがゲストで参加した。2004年、22歳の若さでジロ・デ・イタリアを総合優勝した、日本でも絶大な人気を誇るダミアーノ・クネゴ選手(イタリア)も特別に来日し、参加者と交流しながら大会を楽しんだ。クネゴ選手は2006年にはツール・ド・フランス新人賞も獲得、多くの有名な大会を制覇し、今年6月末で現役選手を引退したばかり。世界的にも有名なクネゴ選手に会うために、会場に多くの人が駆けつけ、その引退を惜しんだ。


キャベツとスポーツの街、嬬恋
嬬恋村は日本一の生産を誇るキャベツのイメージが強いことを利用し、毎年ユニークな参加賞を提供している。昨年のキャベツをモチーフにしたサイクリングキャップに続き、今年はキャベツの形をしたショルダーバッグになり、参加者の間でかなり好評だった。

一方、嬬恋はスポーツが盛んな地域でも知られている。嬬恋村から多くのスケート選手が冬季オリンピックに出場し、自治体も積極的に様々なスポーツイベントの開催に力を入れている。嬬恋キャベツヒルクライムは、産経新聞とプリンスホテルの協力でスタートし、毎年1000人以上が全国から参加する。今年は外国人の姿も目立ち、人気の高さを示している。嬬恋村村長の熊川栄氏はインタビューに対し、次のように述べている。
熊川栄・嬬恋村村長のコメント
嬬恋村は、冬季オリンピックに出たスケート選手が6人いますし、(夏になると)嬬恋高校のスケート部もみんな自転車をやっています。前から自転車がいいなと考えていました。そして最近、自転車人気が全国的に盛り上がっていますので、我々自治体と産経さんやプリンスホテルさんのような民間企業と連携して、大会の準備を進めていこうとなりました。(有料道路を封鎖し、イベントを行うことは)斬新なことです。大きな決断が必要でした。国からの許可を得た有料道路をまるきりストップさせることは、大変な努力が要りましたが、結果として素晴らしいコースが実現できて、今後はより多くのお客さんにこの素晴らしいコースを認識してもらいたいです。自転車を含めて、モータースポーツやマラソンを通じて嬬恋村の知名度を上げたいと考えています。


地元に根付いた大会
嬬恋キャベツヒルクライムは比較的新しい大会だが、地元の方が積極的に大会に関わっている印象だ。エイドステーションでは、地元のボランティアが自慢の手作り料理を振る舞うだけでなく、地元の若者の多くがライダーとして参加した。
初参加に挑む14歳の地元の参加者から次の声が聞かれた。「地元ですが、自転車が好きです。中学生でも自転車に乗る人が多いです。大会のコースは普段走れませんが、サイクリングや練習コースとしてパノラマラインがおすすめです。信号が少なくて、景色はすごくきれいです」。
大会当日は午前9時に、熊川村長の号砲でヒルクライムがスタートした。各カテゴリーにNIPPO・ヴィーニファンティーニの選手が付き添い、まずは若手選手の西村大輝選手(23歳)とフィリッポ・ザッカンティ選手(イタリア、22歳)が、エキスパートの部と一緒に上り、力を加減しながらプロの力を示した。クネゴ選手はファンライドの部からスタートし、参加者と会話を交わしながら、ヒルクライムに必要な知識を教えた。
そしてエキスパートの部では、大会新記録が生まれた。激しいゴール争いを制して優勝した西村育人さんは、47分59秒でゴールラインを切り、昨年より2分近く記録を伸ばした。これまでのタイムを大幅に更新した西村さんは、「昨年参加して、おもてなしが良く、今年も参加した。昨年は年代別2位で入賞したが、今年は一緒に出走してくれたゲストのNIPPOの選手たちのアシストで、とても良いタイムを出すことができて、優勝することができた。NIPPOの選手たちに感謝している。優勝できて嬉しい」と喜びを語った。
プロの技を間近で
大会前日、参加者受付会場となっている嬬恋会館前広場では、様々なイベントが行われた。NIPPOの機材トラックが会場に持ち込まれ、チーム所属メカニック、西勉さんによる洗車の仕方が披露された。西さんは参加者の自転車を実際に洗いながら、「洗車は自転車の寿命を伸ばすだけでなく、タイヤ劣化によるパンクを未然に防ぐことができる」とメンテナンスの重要性を訴えた。


西勉さん (NIPPOヴィニファンティーニ、メカニック)コメント
プロの大会では自転車をきれいに見せることが重要。レースを走る自転車なので、きれいだと格好いい。さらに自転車部品の摩耗を軽減し、部品の寿命を伸ばすことにつながる。特にチェーン周りをマメに掃除する必要がある。タイヤの痛みを防ぐこともできる。タイヤはよくガラスの破片などが刺さり、汚れを取らないと見えにくいので、タイヤも洗う。タイヤの劣化も見抜くこともできる。小さなひび割れもそのサインだ。汚れていると見つけにくい。掃除は面倒臭いと思う人はいるかもしれないが、慣れれば時間を短縮し、7分以内にできるようになる。
盛り上がった表彰式とトークショー
カテゴリーごとに開催された表彰式では熊川村長をはじめ、クネゴ選手やNIPPOの選手たちもプレゼンターとして登壇した。地元の野菜詰め合わせや、チームグッズやNIPPOのマスコット「ミッチーくん」などが選手から手渡された。トークショーイベントではクネゴ選手から引退後の意気込みを聞くことができただけでなく、8月にインドネシアで行われたアジア大会で、見事な活躍を見せた中根英登選手(28)にも注目が集まった。
その後の抽選会も盛大に行われ、豪華賞品やクネゴ選手の引退のために作られた記念ワインも用意され、会場を盛り上げた。