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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<267>混迷のマイヨロホ争い ブエルタ2018第1週考察と第2週の見どころをクローズアップ

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 シーズン最後のグランツール、ブエルタ・ア・エスパーニャ2018は第1週が終了。ここまで9ステージを行い、各賞争いの形勢が見えてきた。なかでも大会の華である個人総合争い、マイヨロホをめぐる戦いは混戦模様。有力選手ひしめく争いに、誰が有利かはまだまだ見極めが難しい状況だ。今回は、第2週の6ステージを踏まえたレースの見どころを整理。大会中盤戦を見るうえで押さえておくべきポイントをまとめていく。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2018第1週を終えて個人総合首位に立つサイモン・イェーツ。マイヨロホ争いは大混戦模様だ Photo: Yuzuru SUNADA

マイヨロホ争い“有資格者”は14人? 激坂3連戦がポイントに

 ブエルタ最高の栄誉であるマイヨロホ争いは、第1週を終えて早くも候補選手たちの人数を絞り込んだ。個人タイムトライアルの第1ステージを皮切りに、1級山岳頂上フィニッシュの第4ステージ、横風がプロトンを分断した第6ステージ、そして超級山岳ラ・コバティリャを上った第9ステージと、力のある選手たちを占う機会となった。

第9ステージをフィニッシュするナイロ・キンタナ。イェーツから14秒差の個人総合3位につける Photo: Yuzuru SUNADA

 しかし大会前半にあたる9ステージまでは、有力選手同士で「好調な選手の探り合い」に終始していた印象だ。マイヨロホの行方に大きな変化が起こる可能性のあった第9ステージも、特定の選手がライバルに大差をつけるような展開とはならず、個人総合優勝候補に推されるミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム)やナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)といった選手たちは、ステージ上位を押さえつつも余力を残してのフィニッシュに見受けられた。

 先が長いこともあってか、実力者といえどステージごとにその動きに良し悪しがあることも感じられた。第4ステージではライバルを引き離したサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)は、肝心の第9ステージでロペスらのペースアップに反応が遅れたほか、快調に個人総合上位を走っているように思われたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)やエマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)らが同ステージで遅れを喫するなど、現状を見る限りこの先誰がベストコンディションを迎えるのかが測りにくい。

第9ステージで好走したウィルコ・ケルデルマン(右)。第2週はサイモン・イェーツ(左)を追う立場となる Photo: Yuzuru SUNADA

 それらを裏付けるように、第9ステージ終了時点で個人総合首位に立ったイェーツから、総合タイム差48秒以内に10選手、さらに2分以内に視野を広げると14選手がひしめく混戦模様。ちなみに、個人総合14位はラ・コバティリャで好走したウィルコ・ケルデルマン(オランダ、チーム サンウェブ)。第6ステージで遅れたのが痛手となっているが、その原因はメカトラブル。フィジカル的は上々と見られている。

リゴベルト・ウランは個人総合8位。上々の第1週だった Photo: Yuzuru SUNADA

 前回のこのコーナーで「マイヨロホ争いの有資格者」について触れたが、各選手のコンディションや今後のステージ編成を考慮すると、第1週終了時点でのそれはケルデルマンまでではないかと筆者は捉えている。この中に含まれるのは、イェーツを筆頭に総合タイム差14秒で3位のキンタナや、同27秒差で7位のロペスはもちろん、32秒差で8位のリゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック)、43秒差で9位のステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNL・ユンボ)と、そうそうたる面々。ここまで目立っていないが、ファビオ・アル(イタリア、UAEチーム・エミレーツ)も、1分8秒差の11位と好位置につけている。

 この混戦状態は、次回このコーナーをお届けする頃には人数がさらに絞られ、マイヨロホの形勢もよりクリアになっていることだろう。彼らの力を試すのは、第2週後半は第13~15ステージに設けられた、アストゥリアスでの激坂3連戦。詳しくは筆者解説の「第2週コースプレビュー」(本日夕方掲載予定)をご覧いただきたいが、この3日間で上位14選手(後続から浮上する選手が現れるかもしれないが)の明暗がくっきりと分かれることだろう。

第2週はマイヨロホを着て迎えるサイモン・イェーツ。ジャージキープに意欲を見せる Photo: Yuzuru SUNADA

 何より、自らの登坂力に頼りたいクライマーにとっては、第2週を終えた段階で僅差は必ずしも望ましい状況とは言えないのだ。なぜなら、第3週の初日にあたる第16ステージは32km個人タイムトライアル。高低の変化が少なく、近年のグランツールではスタンダードとなりつつある30~40kmの個人タイムトライアルは、TT能力の差が顕著となりがち。3週間、総走行距離3000kmをはるかに超える戦いにあって、数字の上では“わずか”30~40kmが個人総合争いの方向性を左右してしまうほど。それだけ比重が高くなる傾向にあり、このブエルタも同様となることが予想される。その前に、いかにしてライバルからアドバンテージを奪えるかがポイントになるだろう。

 一方、山岳・TTのバランスに富むオールラウンダーは最低限、登坂力に長ける選手たちとの差を最小限にとどめることが求められる。展開次第では、リードを奪って優位な状勢とすることも一手だ。さらにどのタイプの選手にも当てはまるのが、横風区間で後手を踏むことや、落車やメカトラブルといった思わぬアクシデントに見舞われないこと。週前半の平坦ステージは、アシストとともに危険回避に努めるなど、チームプレーも大切になる。

 各選手、そして重要な総合エース擁するチームの思惑が交錯する大会の中盤戦。イェーツがマイヨロホを着用して、第2週の幕開けを迎える。

プントス、モンターニャも激戦ムード

 マイヨロホのみならず、ブエルタでは他の個人賞も激戦となるのが慣例だ。

ポイント賞のプントス争いで首位に立つアレハンドロ・バルベルデ Photo: Yuzuru SUNADA

 まず、ポイント賞のプントスは、たびたび上位フィニッシュでポイントを稼いでいるバルベルデがトップ。81点を獲得し、2位のペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)に18点差をつけている。

 各ステージ、1位でフィニッシュすると25点が付与されることから、リザルト次第でサガンを含む上位陣はいずれもプントス着用が可能な位置につける。スプリンターにとっては、第2週前半に2つ控える平坦ステージで確実に好リザルトで終えることが必要で、両ステージとも勝利するくらいの結果は欲しいところ。取りこぼしが大きいと、山岳ステージで総合系ライダーのものとなる可能性が高まる。

山岳賞のモンターニャを着用するルイスアンヘル・マテ。たびたびの山岳逃げでポイントを伸ばしている Photo: Yuzuru SUNADA

 山岳賞のモンターニャは、ルイスアンヘル・マテ(スペイン、コフィディス ソリュシオンクレディ)が60点を獲得してトップ。2位のベンジャミン・キング(アメリカ、ディメンションデータ)に27点差をつける。

 毎日のようにレースをリードするマテの逃げへの“嗅覚”に驚かされるが、こちらもまだまだ後続にもチャンスがある。特に頂上フィニッシュが続く週の後半に得点を伸ばす選手が出てくることも考えられる。さらには、総合成績を諦めて山岳賞狙いに切り替える選手がライバルとして急浮上する可能性もある。開幕以来山岳賞狙いに一貫するマテだが、もうしばらくは山岳逃げを繰り返し、ポイントを加算していく必要がありそうだ。

今週の爆走ライダー−ルディ・モラール(フランス、グルパマ・エフデジ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 「キャリアのターニングポイントになりそうだ」と語ったブエルタのマイヨロホ。第5ステージの逃げ切り(ステージ6位)で思いがけず訪れたプロトンのリーダーに就くという経験は、まもなく29歳と、プロとして脂が乗るタイミングでどのような変化を与えることになるだろうか。

パリ〜ニース2018では第6ステージで優勝。その後のクラシックレースでも好走。ルディ・モラールの好調はブエルタ・ア・エスパーニャまで続く =2018年3月9日 Photo: Yuzuru SUNADA

 過去の実績をたどっていくと、伏線はいくつもあったことに気づかされる。今年3月のパリ~ニース第6ステージでは、有力選手たちの動きを上手くかいくぐって優勝。「実は得意なレース」というラ・フレーシュ・ワロンヌでは、ユイの壁で激坂ハンターに負けない登坂力を見せて、昨年は8位、今年も13位とまとめた。派手さはないが、器用さと堅実さでチームから課されるオーダーをこなしてきた。

 そんな彼の最大の魅力は、グランツール連戦でも大崩れしないタフなところ。今年のツールでは山岳逃げにたびたびトライし、その勢いのまま臨んだブエルタでマイヨロホをゲット。当初はティボー・ピノ(フランス)のアシストを務める予定だったのが、思わぬプラン変更に。「今日でジャージを手放すことは分かっている」と言ってコースへ繰り出した第9ステージも、アシスト陣の力を借りてレース後半までプロトン統率。責任はまっとうした。

 そんな彼は、3世代続くサイクリスト一家の育ち。まさにサラブレッドといった印象だが、高校時代はクロスカントリースキーとマウンテンバイクを合わせて行う、ウィンタートライアスロンでジュニア世界選手権優勝という実績の持ち主。サイクリストとしてのベースを築き上げたのは、そんな異色の経歴だった。

 晴れの日々を経て、第2週からは“通常営業”へと戻る。総合エースのピノが大会前半戦で苦戦を強いられたが、これからの巻き返しを誓っている。そのサポートをするべく、モラールはミッションに復帰する。マイヨロホを着た経験は、走り、メンタル両面でチームに勇気を与える要素となるはずだ。

4日間着用したマイヨロホは第9ステージで手放した。それでも、ルディ・モラールにとってはキャリアのターニングポイントになると前向きに捉える Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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