ブエルタ・ア・エスパーニャ2018 第9ステージ終盤20kmを独走したキングが大会2勝目 超級山岳の総合争いでイェーツがマイヨロホ獲得

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ブエルタ・ア・エスパーニャ2018は第1週の最終日。9月2日に第9ステージが行われ、序盤から逃げた選手たちがそのままステージ優勝争いへ。ベンジャミン・キング(アメリカ、チーム ディメンションデータ)が最後の20kmを独走し、第4ステージに続く今大会2勝目を挙げた。開幕以来初の超級山岳となるラ・コバティリャの頂上を目指したこのステージでは総合争いにも大きな変化が起こり、サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)が首位に浮上。マイヨロホに袖を通している。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2018第9ステージ、終盤の約20kmを独走して今大会2勝目を挙げたベンジャミン・キング Photo: Yuzuru SUNADA

ブエルタ2018最初の上級山岳ステージ

 主にスペイン南部を走ってきた大会の第1週。その最後となる第9ステージは、タラベラ・デ・ラ・レイナからラ・コヴァティリャまでの200.8kmが設定された。スタート直後から細かなアップダウンが待ち受けるが、本格的な登坂は37km地点から。頂上手前が15%の急勾配となる1級山岳プエルト・デル・ピコ(登坂距離15.3km、平均勾配5.5%)を上ると、その後も3級、2級と立て続けにカテゴリー山岳を通過。中盤からはダウンヒルと平坦区間とが続くが、終盤に勝負どころを迎える。

 今大会最初の超級山岳となるアルト・デ・ラ・コバティリャは、登坂距離9.8kmで、平均勾配は7.1%。上り始めと中腹に最大勾配12%を迎え、その後も10%前後の区間が続く。そして最大のポイントとなりそうなのが、フィニッシュ手前2kmで訪れる11%の区間。

 上級山岳ステージとしても今大会の最初とあり、ステージの結果がマイヨロホ争いの行方を左右する可能性は大きいと見られた。そんな1日は、11人の逃げで幕を開けた。

11人の逃げグループがそのままステージ優勝争いへ

 8.5kmのパレード走行を経てアクチュアルスタートが切られると、10人がほぼ同じタイミングで集団から飛び出す。さらに1人が続き、前方に合流すると、そのまま逃げグループ形成の構え。集団からはさらに数人が追う動きを見せるが、前を行く選手たちまでは届かず、やがて落ち着いた。

個人総合首位のマイヨロホを着て出走したルディ・モラール Photo: Yuzuru SUNADA

 逃げを決めた11人はキングを筆頭に、バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)、リュイスギジェルモ・マス(スペイン、カハルラル・セグロスエレヘアー)、ディラン・トゥーンス(ベルギー、BMCレーシングチーム)、レト・ホレンシュタイン(スイス、カチューシャ・アルペシン)、アリツ・バグエス(スペイン、エウスカディ バスク カントリー・ムリアス)、ヘスス・エスケラ(スペイン、ブルゴス・BH)、トマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)、ルイスアンヘル・マテ(スペイン、コフィディス ソリュシオンクレディ)、ケネット・ヴァンビルセン(ベルギー、コフィディス ソリュシオンクレディ)、トム・レーゼル(オランダ、ロットNL・ユンボ)。

 おおむね均等に先頭交代を繰り返した逃げグループだが、レース中盤までその中心となったのは山岳賞のモンターニャを着用するマテ。1つ目のカテゴリー山岳となった1級プエルト・デル・ピコを1位で通過すると、続く3級のアルト・デ・グレドス、2級のプエルト・デ・ペーニャ・ネグラと続いてトップを確保。モレマやキングが競る仕草を見せたものの、要所では先頭を譲らず、この段階で山岳ポイント18点を確保した。

メイン集団は逃げる11人の先行を容認。中央はトニー・ガロパン Photo: Yuzuru SUNADA

 メイン集団は、マイヨロホを着てスタートしたルディ・モラール(フランス)を擁するグルパマ・エフデジがペースコントロール。途中、モラールがシューズトラブルで後方へと下がる場面があったものの、アシストともに集団に復帰。また、集団後方では数人が絡む落車が発生し、ミカエル・シュレル(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)やロイック・シェトゥ(フランス、コフィディス ソリュシオンクレディ)が大きなダメージを受けたが、大勢に影響はせず、レースはそのまま進行した。

 しばらくは5分前後のタイム差で進んだ先頭11人とメイン集団だったが、中盤以降はその差が拡大傾向に。残り45kmを切ったあたりからモビスター チームが集団のコントロールに加わるが、前との差を縮める動きとはならない。残り35kmとなったところで、ついにその差は10分となった。

 逃げが完全に容認され、ステージ優勝の可能性が大きくなった先頭の11人。残り30kmを迎えるとともに、デヘントのアタックで均衡が破られた。これに対して素早い反応を見せたのは、キング、マス、モレマ、トゥーンス。さらにホレンシュタインも続く。一度は置いて行かれた選手たちも、しばらくして先頭に再合流を果たしたが、こうした動きによって完全に勝負を意識する状況へと変化。残り20kmでのマスのアタックが、その後の決定打を誘発することになる。

追い上げをかわしたキングが今大会2勝目

 マスの飛び出しに一瞬見合う形になったところで追走に出たのはキングだった。この2人の動きに合わせる選手が現れず、マスとキングは抜け出すことに成功。直後の短い急坂でキングがマスを引き離し、独走態勢へと持ち込んだ。

厳しい勾配を乗り越え単独でフィニッシュを目指すベンジャミン・キング Photo: Yuzuru SUNADA

 その後も淡々とペースを刻むキングは、後続との差を1分30秒として最後の上りである超級のアルト・デ・ラ・コバティリャへ。キングの後ろでは、モレマがアタック。徐々にキングとの差を縮めていく。

 急坂区間でペースを落としかけたキングに対し、要所をダンシングで攻めるモレマ。残り3kmとなったところで、その差は20秒にまで迫った。しかし、最終盤にきてキングが盛り返した。残り1kmを迎えて、差は約30秒。厳しい勾配に苦しみながらも、好調そのままに走ったキングが最後はモレマを引き離してフィニッシュへとやってきた。最後は高らかに手を掲げて、ステージ2勝目をアピールしてみせた。

 かたや、キングを視界に捉えながらも最後の最後まで届かなかったモレマは、48秒差の2位で終えた。さらに時間を置いて、3位にはトゥーンスが続いた。

ステージ優勝を決めたベンジャミン・キングはフィニッシュ直後にその場に座り込んでしまった Photo: Yuzuru SUNADA

ロペス、キンタナらがアタック マイヨロホはイェーツへ

 ステージ優勝争いとは完全に別のレースとなったメイン集団。レース後半に入ってからは、モビスター チームやチーム スカイ、アスタナ プロチームなどが代わる代わるペーシングを担い、最後の上りを目指す。

 そのラ・コバティリャへ入ると、ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)が集団を牽引。実力者によるペースコントロールによって、集団の人数が絞られていく。上りの中腹ではモラールが脱落。4日間着用したマイヨロホを明け渡すことが濃厚となった。マイカに代わってセップ・クス(アメリカ、ロットNL・ユンボ)が引き始めると、ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チーム スカイ)が遅れた。

超級山岳ラ・コバティリャで争う個人総合上位陣。左からナイロ・キンタナ、ヨン・イサギレ、ミゲルアンヘル・ロペス Photo: Yuzuru SUNADA

 そして、残り2kmからの急坂でマイヨロホの候補たちが、ついにその走りの最前線へ躍り出た。ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム)がスピードを上げると、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)がカウンターアタックで応戦。ヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)、ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNL・ユンボ)らも続く。

 残り1km手前では、ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、チーム サンウェブ)がアタック。真っ先にキンタナがチェックに動き、ロペス、イサギレ、リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック)が追いつく。

 結局、ステージ3位のトゥーンスの直後で上りスプリントの形となり、ロペス、キンタナ、ケルデルマンの順にフィニッシュ。ウラン、イサギレが数秒差でステージを終えている。

ステージ9位でフィニッシュしたサイモン・イェーツ。個人総合で首位に立った Photo: Yuzuru SUNADA

 これらの結果を受けて、このステージ終了時点でのマイヨロホは9位でフィニッシュしたイェーツへ。最終局面でロペスらの動きに乗り遅れたものの、残り1kmから追い上げてタイム差をわずかにとどめていた。前日まで自身より上位に位置していたモラール、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)、エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)を上回り、個人総合で首位に立った。

 レース後のインタビューでイェーツは、「マイヨロホまでは考えていなかった。力のある選手たちから数秒遅れてしまったので、ジャージを着ることになると聞いて正直驚いた」とコメント。とはいえ、今年のジロ・デ・イタリアでも首位のマリアローザを着用し、追われる立場には慣れているとし、「今後の総合争いについて、チームと作戦を立てていきたい」と意欲を見せている。

大会第1週を終えてマイヨロホを着る際もオン・イェーツ。ジャージのキープに意欲を見せる Photo: Yuzuru SUNADA

 第1週を終えて、個人総合争いは首位のイェーツからタイム差1分以内に10選手、2分以内にまで目を向けると14選手がひしめく混戦模様。翌3日は今大会最初の休息日。同国中西部のサラマンカで過ごすことになる。第2週の初日、第10ステージはサラマンカからフェルモセリェまでの177km平坦ステージが行われる。

第9ステージ結果
1 ベンジャミン・キング(アメリカ、チーム ディメンションデータ) 5時間30分38秒
2 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) +48秒
3 ディラン・トゥーンス(ベルギー、BMCレーシングチーム) +2分38秒
4 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム) +2分40秒
5 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)
6 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、チーム サンウェブ)
7 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) +2分43秒
8 ヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ) +2分46秒
9 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) +2分49秒
10 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNL・ユンボ) +3分2秒

個人総合(マイヨロホ)
1 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 36時間54分52秒
2 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) +1秒
3 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) +14秒
4 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) +16秒
5 ヨン・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ) +17秒
6 トニー・ガロパン(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール) +24秒
7 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム) +27秒
8 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック) +32秒
9 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNL・ユンボ) +43秒
10 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNL・ユンボ) +48秒

ポイント賞(プントス)
1 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) 81 pts
2 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 63 pts
3 ベンジャミン・キング(アメリカ、チーム ディメンションデータ) 58 pts

山岳賞(モンターニャ)
1 ルイスアンヘル・マテ(スペイン、コフィディス ソリュシオンクレディ) 60 pts
2 ベンジャミン・キング(アメリカ、チーム ディメンションデータ) 33 pts
3 バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) 24 pts

複合賞(コンビナダ)
1 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) 18 pts
2 ベンジャミン・キング(アメリカ、チーム ディメンションデータ) 23 pts
3 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム) 30 pts

チーム総合
1 ロットNL・ユンボ 110時間44分52秒
2 モビスター チーム +1分36秒
3 アスタナ プロチーム +4分8秒

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