JALが共同開発した輪行箱の実力検証自転車収納ボックス「エスビーコン」は飛行機輪行のハードルを下げるか モニターツアーで実体験

by 大澤昌弘 / Masahiro OSAWA
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 日本航空(JAL)が、せとうち観光推進機構、合同会社S-WORKSと共同開発した自転車収納ボックスの「SBCON」(エスビーコン)。この専用箱を使うことで、飛行機輪行における自転車の分解・組み立てが最小限となり、渡航先まで安全に自転車が届くという。実際の使い勝手はどうなのか。8月下旬、エスビーコンを活用したモニターツアーに参加し、飛行機輪行の旅を体験。エスビーコンの実力を検証し、課題も探った。

JALら3社が開発した自転車収納ボックスの「エスビーコン」 Photo: Masahiro OSAWA

2泊3日のモニターツアーで広島へ

 エスビーコンは今年6月、報道陣に披露された飛行機輪行専用ボックスだ。JALは地域とともに成長を目指す「JAL 新・JAPAN PROJECT」を推進しており、飛行機輪行の促進が、地域発展の一助になると見て、専用ボックスを共同で開発。このほどエスビーコンを活用したモニターツアーが開催された。

モニターツアーで向かうのは広島空港。そこからしまなみ海道をサイクリングする小さな旅が始まる Photo: Kairi ISHIKAWA

 ツアーは2泊3日のスケジュールで実施。初日は羽田空港でエスビーコンに自転車を収納して広島空港へ。広島空港で自転車を組み立てたら広島県の尾道市で1泊。2日目はしまなみ海道をサイクリングし、愛媛県の今治市で1泊。3日目の最終日に愛媛県の松山空港までサイクリングをし、そこで再びエスビーコンに収納して羽田空港へ戻るという行程だ。飛行機輪行には様々なハードルがあるが、概要を見る限り、便利そうだ。

直感的な収納が可能

 モニターツアー初日。電車輪行で羽田空港の受付カウンターに着くと、ツアー参加者のエスビーコンが用意されていた。

 受付カウンター前の区切られたエリアで、輪行袋から自転車を取り出し、自転車に後輪をはめる。JALの担当者から、スプレー類など一部の装備品が収納できないこと、ボトルは取り外すこと、タイヤの空気は抜くことなどのアドバイスを受けた後で、エスビーコンへの収納に取り掛かった。

 作業は意外すぎるほど簡単だった。「こうすれば収納できそうだ」という直感に従うだけで、大体の作業は済んでしまう。JAL担当者から少しアドバイスをもらっただけで、容易に収納できた。収納箱には、ヘルメットやシューズのシールが貼られた仕切りもあり、自転車以外の装備も入れられた。

空の状態のエスビーコン。ボックス内の小さな箱にはヘルメットやシューズなどが収納できる Photo: Kairi ISHIKAWA
直感的に自転車を入れ込んでいくだけで作業が終わる ※サイクルコンピュータやバッテリ類は要取り外し Photo: Kairi ISHIKAWA

 ちなみに、現状、エスビーコンに収納できるのは、タイヤ幅28Cまでのロードバイクのみ。ディスクロードの参加者もいたが、しっかり対応していた。サドルが高すぎて収まりきらない場合も、調整すれば済むので問題はない。BBセンターからサドルトップの長さが73cmまで調整なしで収納可能だという。

 箱の作りもしっかりしている。厚みのあるプラスチック製の段ボールが使われ、市販の飛行機輪行専用袋と比べて安心できる。箱の中も、フレーム部分と前輪収納部分には仕切りがあり干渉しない。前輪収納部分には、クイックリリース、タイヤと接する箇所にクッションが着けてあり、細かな配慮が感じられた。飛行機輪行では、愛車が傷つきはしまいか、と不安がつきまとうが、その心配はいらない。

ハンドル部分への衝撃を和らげる緩衝材 Photo: Kairi ISHIKAWA
傷みやすそうなハブ部分にも緩衝材がある Photo: Kairi ISHIKAWA
編集部の別動隊が撮影。受付カウンターで預けた自転車がカーゴから取り出される Photo: Kairi ISHIKAWA
機体後部にエスビーコンが吸い込まれていった Photo: Kairi ISHIKAWA

飛行機輪行のハードルの高さ

 広島空港に到着してサイクリングウェアに着替えると、モニターツアー参加者のエスビーコンが空港敷地の一角に並べられていた。各自開封して自転車を組み立て、出発準備が完了する。

モニターツアー参加者で広島空港にて記念撮影。エスビーコンは屋外に並べられた

 本来ならば、輪行袋の置き場所に困るところだが、エスビーコンを使った旅ならば、そうした心配はいらない。手荷物も宿泊先まで送ってくれるサービスがモニターツアーについている。広島空港で待機していた宅配業者に預け、ホテルで受け取り、翌日も宿泊先のホテルカウンターに荷物を預けるだけで、次の場所まで運んでくれる。

手荷物はチャーター便で輸送。写真は2日目の朝。ONOMICHI U2にて Photo: Masahiro OSAWA
サイクリングを終えると宿泊先に荷物が到着。写真は2日目宿泊先の今治国際ホテル Photo: Masahiro OSAWA

 遠く離れた場所を普段と同じように走るのは難しい。飛行機や新幹線での輪行を試みたことのある人なら、そのことがよくわかるはず。2年前にしまなみ海道を走ったことがあるが、最も大変だったのは準備だった。

 まずは自転車をどう運ぶかに、頭を悩ませた。新幹線で大荷物を運ぶのは気が引けるし、飛行機ならば輪行袋の置き場所に困ってしまう。結果、ロードバイクを持参することはあきらめ、現地でクロスバイクをレンタルすることにした。

しまなみ海道を自分のバイクで走れる日が来たことに感動しきり Photo: Masahiro OSAWA

 次に悩んだのが手荷物だ。宿泊先にあらかじめ交渉し、事前発送することで解決したが、手段を探るだけでもかなりの時間がかかった。準備が苦行だったことを思い出す。

 今回のモニターツアーでは、わずらわしさが一切ないのが魅力だ。レンタルバイクで走ることを余儀なくされた経験があるだけに、乗り慣れたロードバイクで走れる嬉しさはひとしお。絶景を前に走れる爽快感。気持ち良すぎて、歓声をあげたくなったが、いい年なので、すべての思いをペダルにぶつけた。

どの橋も勾配3%の緩い坂を1kmほど走ると絶景を拝める Photo: Masahiro OSAWA

モニターツアーの評価

 ツアー最終日、松山空港の敷地内に入ろうとしたところで、担当者がエスビーコンのある場所まで誘導してくれた。広島空港同様、空港敷地内の一角にエスビーコンが置いてあったが、要領を得ているので、難なく収納することができた。

松山空港の屋外にエスビーコンが用意 Photo: Masahiro OSAWA
フレームがすっぽり納まる瞬間に感動を覚える Photo: Masahiro OSAWA

 飛行機輪行の課題をすべて取り払ってくれた今回のモニターツアー。スケジュールがタイト(取材時間も取られるので)だったこと以外、個人的に不満はない。エスビーコンも作りに不安を感じさせないし、容易に収納できる。手荷物配送にも魅力を感じた。トータルでは楽しさのほうが何倍も大きく、有意義な時間を過ごせたと思う。

本間広人・恵子ご夫婦。ジャイアントストア尾道とジャイアントストア今治を訪れ夫婦でしまなみオリジナルジャージを手に入れたとか Photo: Masahiro OSAWA

 ツアー参加者の声にも耳を傾けてみよう。気軽な飛行機輪行にひかれて参加したという本間広人・恵子ご夫婦。一度はしまなみ海道を訪れたいと思っていたが、新幹線や飛行機での輪行にハードルの高さを感じていたという。本間夫妻は、ひとつの点を除けばかなり満足していたようだった。

 それは、自宅から羽田空港までのアクセスについてだ。羽田空港まで自走を目指したが、それが叶わず、電車輪行を余儀なくされたことを残念がっていた。

エスビーコンが抱える課題

 本間夫妻が投げかけた「自転車で羽田空港まで行けるのか」というシンプルな問い。これを掘り下げると、エスビーコンの利用拡大に向けた課題のひとつが見えてくる。上記の問いに答えておくと、羽田空港まで自転車で行くことは可能だ。だが、空港の建物には入れない。建物に入るには輪行袋が必要になるのだ。

 JAL担当者に話を聞くと、各空港の管理者の規定による部分もあるが、空港施設内(建物内)での移動は自転車は輪行袋に入れる必要があるという。羽田空港はまさに輪行袋が必要となる空港だ。

 空港内を自由に移動できないことの意味は大きい。とりわけ、今回のようなツアーではなく、エスビーコン単体のサービス提供を考えた場合の障壁となりそうなのだ。

今回、羽田空港では特別に許可を得たために建物内で自転車の収納が可能になったという Photo: Kairi ISHIKAWA

 サイクリングを楽しんで空港まで戻り、受付カウンターでエスビーコンを受け取るシステムにしていたとする。そのような場合、サイクリストは一度、輪行袋に納めなければ受付カウンターまでたどりつけないのだ。サービス提供側が担当者を決めてその都度、指定の場所にエスビーコンを持っていけばいい、などアイデアはいくつも出てきそうだが、都度運ぶのは人的コストが嵩んでしまう。様々な観点から考えて、単体でのサービス提供はまだ厳しい。モニターツアーでも、エスビーコンを指定の場所に運びだすために人的負荷はかかるが、単体でのサービス提供よりは負担が少ない。今のところおさまりがよさそうなのが今回のようなツアー形式というわけだ。

 いちサイクリストとしては、飛行機輪行のハードルを思いっきり下げてくれそうな、エスビーコン単体のサービスの登場にも期待してしまうが、それを実現するにはクリアすべき課題は多いようだ。まずは、モニターツアーという試験的な取り組みから、継続実施されるツアー商品となることを願いたい。

なお、2回目となるモニターツアーが9月に実施される。ツアーは2種あり、ひとつが「9月28日に帯広到着、30日に釧路を出立」するプラン、もうひとつが「9月28日に釧路到着、30日に帯広を出立」するプラン。いずれも各5人計10人を募集している。エスビーコンを使ったツアーに興味のある方は参加してみてはいかがだろうか。

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