ブエルタ・ア・エスパーニャ2018直前コラム<4>フルームのダブルツール、コンタドールの引退 ブエルタ2017をプレイバック

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 グランツール最終戦となるブエルタ・ア・エスパーニャが8月25日に開幕する。今回は、ブエルタ2017プレイバックと題して、昨年大会を振り返ってみたいと思う。大記録達成、偉大な選手の引退レース、若手の躍進とベテランの意地、21日間のレースに様々なドラマが凝縮されていた。

2017年のブエルタ・ア・エスパーニャはとてもドラマチックだった Photo: Yuzuru SUNADA

フルームのダブルツール達成

 最も大きな出来事は、クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)が同一年にツール・ド・フランス、ブエルタと連続で総合優勝する「ダブルツール」を達成したことだろう。ブエルタがいまの8〜9月開催に移行してから、ツール、ブエルタと連勝したパターンは史上初の快挙だった。

 同大会最初の山岳ステージとなった第3ステージで3位に入ると、総合首位に浮上。山頂フィニッシュの第9ステージでは、フルーム自ら攻撃を仕掛け、ライバル全員を引きちぎる走りを見せつけステージ優勝を飾った。最終的に総合2位となるヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)に対して1分以上のリードを築いて盤石の第1週を終えた。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017 第9ステージ、渾身のアタックを決めたクリストファー・フルーム Photo: Yuzuru SUNADA

 第12ステージでは2度の落車もあってタイムを失うものの、ワウト・プールス(オランダ)、ミケル・ニエベ(スペイン)らチーム スカイの強力アシスト陣がバックアップ。第16ステージの個人タイムトライアルでは、圧巻の走りでステージ優勝を飾り、ニバリに対して1分58秒ものリードを築き、勝負あったかに見えた。

第17ステージ、苦悶の表情を浮かべ、激坂に苦しむクリストファー・フルーム Photo: Yuzuru SUNADA

 しかし、翌日の第17ステージ、最大勾配28%に達する激坂フィニッシュでフルームは失速。42秒ものタイムを失った。それでも、最後の勝負どころである第18、第20ステージでは立て直し、逆にニバリを突き放して、2分15秒差で総合優勝とダブルツール達成を決めたのだった。

 マイヨロホだけでなく、ポイント賞のマイヨプントス、複合賞のマイヨコンビナダも獲得し、もはやフルームの独壇場といえる輝かしい結果を残すこととなった。

 また、総合勢では20代の若手選手の躍進が目立つ大会でもあった。

 自身初のグランツール表彰台となる総合3位に入ったイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)は山岳ステージで安定した走りを見せた。自己最高順位の総合4位となったウィルコ・ケルデルマン(オランダ、チームサンウェブ)は個人タイムトライアルでフルームに次ぐ成績を収め、グランツールレーサーとしての高い素質を持っていることを示した。

タイムトライアルに強みを持つ、総合4位のウィルコ・ケルデルマン Photo: Yuzuru SUNADA
ステージ2勝をあげ、総合8位となったミゲルアンヘル・ロペス Photo: Yuzuru SUNADA

 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナプロチーム)は、難関山岳ステージで圧倒的な登坂力を示しステージ2勝を飾り、総合8位となった。今シーズンはジロで3位表彰台を獲得し、ブエルタではマイヨロホ候補に有力視されるほどの存在となった。

有終の美を飾るコンタドールの勝利

 アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)は同大会前に、現役引退を表明していた。「これがファンにお別れを言うのに最良の方法」と話し、母国スペインのレースで花道を飾ることとなった。

 弱冠25歳にして、全グランツール総合優勝を果たし、グレンブテロール問題により抹消された2010、2011年の成績も含めると、9度のグランツール総合優勝を飾った21世紀を代表するスーパースター選手だ。

積極的な走りを見せるものの、最終的に遅れてフィニッシュすることの多かったアルベルト・コンタドール Photo: Yuzuru SUNADA

 コンタドールといえば、どんな逆境からでも山岳の上りひとつで逆転を可能にする攻撃性が最大の持ち味だった。2017年ブエルタでも大会序盤から非常にアグレッシブな走りで、ステージ優勝と総合優勝を狙っていた。しかし、往年の走りは陰りを見せ、アタックを仕掛けてもまた吸収されてしまい、ペースの上がる集団から脱落する姿もしばしば見られた。それでも総合5位につける走りを見せていた。

 いよいよもう後がなくなった第20ステージ。魔の山アングリルへとフィニッシュする最難関ステージで、コンタドールは再び攻撃を仕掛けた。

 チームメイトのヤルリンソン・パンタノ(コロンビア)に引き連れられて、メイン集団から先行した状態でアングリルへ到達。逃げていた選手たちと協力しながら、後続集団とのリードを保ったコンタドールは、最も勾配が厳しくなる区間でペースアップし、独走に持ち込んだ。

 コンタドールに総合で逆転されたくない、ザカリンやケルデルマン、そしてフルームらが猛追するなか、コンタドールは全盛期を彷彿とさせる快調な走りで山頂へ到達。お馴染みのバキューンポーズを繰り出し、まさしく有終の美となる現役最後の勝利を飾った。

第20ステージ、アングリルを制したアルベルト・コンタドールは、往年のバキューンポーズを繰り出した Photo: Yuzuru SUNADA

 引退後のコンタドールは自身が立ち上げた育成チームの運営により密接に関わり、2018年はUCIコンチネンタルチームのポーラテック・コメタとしてシーズン参戦。エースのマッテオ・モスチェッティ(イタリア)はシーズン9勝を飾る活躍を見せており、来季はトレック・セガフレードでプロデビューすることが決まっている。

進退をかけたベテランの意地

 コンタドールのように華やかに自らの処遇を決めることができる選手の一方で、アシストを主な仕事とする裏方的な存在としてあまり日の目を見ることのなかったベテラン選手たちのなかには、翌年以降の契約がないまま大会に出場している場合もある。

 トーマス・マルチンスキー(ポーランド、ロット・スーダル)は国内選手権でロード3勝・タイムトライアル1勝の実績を持っていたが、ワールドツアーの舞台では1勝もしていない、プロデビューから12年目を迎えた33歳の選手だ。2009、2015年はコンチネンタルチームで走り、2013年には所属チームが解散の憂き目にあった苦労人は、持ち前のタフさを生かして2017年シーズンに出場したレースはすべて完走していた。しかし、33歳という年齢もネックになっていたためか、所属チームとの契約は2017年までとなっており、翌年以降の契約が決まっていなかった。

 そんな状況下で、第6ステージは逃げ切った3人によるスプリントを制して、マルチンスキーがグランツール初勝利&ワールドツアー初勝利を飾った。勢いに乗ったマルチンスキーは第12ステージでは終盤に独走に持ち込み大会2勝目をあげた。

第6ステージで勝利したトーマス・マルチンスキー Photo: Yuzuru SUNADA

 もうひとり、サンデル・アルメ(ベルギー、ロット・スーダル)も翌年以降の契約がない選手だった。2010年にプロデビュー、2014年からロット・スーダルに移籍し、ルーラーとして自分を犠牲にしながらチームオーダーを着実に実行しつづけていたが、気がつけば31歳。プロとしての勝利数はゼロのままだった。

 第18ステージで逃げに乗ったアルメは、第5ステージで勝利した24歳のアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナプロチーム)との一騎打ちとなった。3級山岳の山頂フィニッシュに向けて、残り1kmを切ったところでアルメはアタック。ルツェンコを振り切って、初勝利をあげた。

ブエルタ2017 第18ステージ、大舞台でプロ初勝利を飾ったサンデル・アルメ Photo: Yuzuru SUNADA

 これらの活躍により、ロット・スーダルはマルチンスキーとアルメに対して、それぞれ2020年まで3年間の契約延長を提示した。地道なアシストを続けながら、チームに貢献していたとしても必ずしもプロ選手を続けられるとは限らない厳しい世界で、少ないチャンスを掴み、自らの実力を示した2人のベテランの執念が印象に残った。

◇         ◇

 他には、翌年にミッチェルトン・スコットへの移籍をすでに決めていたマッテオ・トレンティン(イタリア、クイックステップフロアーズ)が、惜別の勝利となるステージ4勝を飾った。

 22歳のマテイ・モホリッチ(スロベニア、UAEチーム・エミレーツ)、24歳のアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナプロチーム)、25歳のジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)といった次世代のスター候補たちによるグランツール初勝利も印象に残った。

ブエルタ2017、第5ステージで勝利を収めたアレクセイ・ルツェンコ。今年はアジア大会ロードで金メダルに輝いた Photo: Yuzuru SUNADA

 プロコンチネンタルチームのアクアブルースポートは大会中にチームバスが放火されて全焼する事件が起き、悲しみに暮れるチームにシュテファン・デニフル(オーストリア、アクアブルースポート)が第17ステージで逃げ切り勝利をもたらした。

 同年のツールでは1000km以上逃げながら総合敢闘賞を逃したトマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)は、第19ステージで逃げ切り勝利を飾り、ダヴィド・ヴィレッラ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)はスポンサー問題に揺れていたチームを鼓舞するかのように山岳賞を獲得した。

 2017年は毎ステージのように数々のドラマが生み出された。見どころ満載のブエルタ・ア・エスパーニャは、いよいよ明日開幕する。

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