8・25開幕 ブエルタ2018直前コラム<2>ブエルタではニューヒーロー誕生を見逃すな! 過去5年間で45人がグランツール初勝利

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 グランツール最終戦であるブエルタ・ア・エスパーニャが8月25日に開幕する。接戦と逆転が多いブエルタでは、総合系の選手に限らず意外な選手が活躍する番狂わせの展開が多く、これまでにたくさんの選手がグランツール初勝利を飾ってきた。今回は、グランツール初勝利を飾った選手の数を、グランツール3大会間で比較しながら、ブエルタの特徴を考察していきたい。

グランツール初勝利を飾る選手が最も多いブエルタ

 グランツール初勝利を飾った選手について、ジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランス、そしてブエルタの過去5大会にさかのぼって調べてみた。また、その勝利がプロ初勝利だった数も一緒にカウントしてみた。

 ※グランツール初勝利を「GT初」、プロ初勝利を「プロ初」と省略している。プロ初勝利はUCIカテゴリー1クラス以上のレースでの勝利をカウント。所属チームはすべて当時のもの。

ジロ・デ・イタリア

2014年:GT初 7人、プロ初 1人
2015年:GT初 8人、プロ初 2人
2016年:GT初 7人、プロ初 2人
2017年:GT初 8人、プロ初 0人
2018年:GT初 3人、プロ初 0人
 合計:GT初 33人、プロ初 5人

ジロ・デ・イタリア2014 第15ステージでプロ勝利を飾ったファビオ・アル。翌年のブエルタでは総合優勝を飾ることに Photo : Yuzuru SUNADA

 ジロでプロ初勝利を飾った選手は、2014年のファビオ・アル(イタリア、アスタナプロチーム)、2015年のダヴィド・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ガーミン)、ヤン・ポランツェ(スロベニア、ランプレ・メリダ)、2016年のジュリオ・チッコーネ(イタリア、バルディアーニ・CSF)、アレクサンダー・フォリフォノフ(ロシア、ガスブロム・ルスヴェロ)の5人だ。チッコーネはプロ1年目での勝利だ。

 地元イタリアの期待の若手選手による勝利が目立つように、グランツール初勝利を飾った33人中9人がイタリア人だった。なかには、ミケル・ランダ(スペイン、アスタナプロチーム)、イルヌール・ザカリン(ロシア、チーム カチューシャ)、ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・スーダル)、ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、クイックステップフロアーズ)といった主力に加え、すでにスプリンターとし実績を積んでいたエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チーム スカイ)、サーシャ・モードロ(イタリア、ランプレ・メリダ)、フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)もいる。

ツール・ド・フランス

2014年:GT初 4人、プロ初 1人
2015年:GT初 4人、プロ初 0人
2016年:GT初 1人、プロ初 0人
2017年:GT初 3人、プロ初 0人
2018年:GT初 0人、プロ初 0人
 合計:GT初12人、プロ初 1人

ツール・ド・フランス2014 第14ステージでプロ初勝利を飾ったラファル・マイカ。この年は2勝&山岳賞を獲得し、翌年のブエルタで総合3位となった Photo : Yuzuru SUNADA

 ツールでプロ初勝利を飾った選手は2014年のラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)のみ。マイカは2014年ツールが、自身6度目のグランツールへの出場であり、同年のジロでは総合6位となるなど勝利こそなくとも高い実力を示している選手だった。

 また、グランツール初勝利した選手には、アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、チーム カチューシャ)、アルノー・デマール(フランス、エフデジ)、ゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ)といった既に主力となっている選手も含まれている。そして、12人中5人がフランス人選手だった。

ブエルタ・ア・エスパーニャ

2013年:GT初 11人、プロ初 1人
2014年:GT初 5人、プロ初 1人
2015年:GT初 9人、プロ初 2人
2016年:GT初 12人、プロ初 2人
2017年:GT初 8人、プロ初 1人
 合計:GT初 45人、プロ初 7人

ブエルタ・ア・エスパーニャ2013 第13ステージでプロ初勝利を飾ったワレン・バルギルは、第16ステージでも勝利しプロ1年目に華々しい活躍を見せた Photo : Yuzuru SUNADA

 ブエルタでプロ初勝利を飾った選手は、2013年のワレン・バルギル(フランス、アルゴス・シマノ)、2014年のヴィエル・アナコナ(コロンビア、ランプレ・メリダ)、2015年のジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレックファクトリーレーシング)、クリスティアン・スバラーリ(イタリア、MTN・キュベカ)、2016年のリリアン・カルメジャーヌ(フランス、ディレクトエネルジー)、ダビ・デラクルス(スペイン、エティックス・クイックステップ)、2017年のサンデル・アルメ(ベルギー、ロット・スーダル)の7人だった。

 バルギルとカルメジャーヌはプロ1年目での勝利であり、アルメはプロ8年目31歳でようやく掴んだ初勝利だった。

 ブエルタでグランツール初勝利を飾った選手のなかには、2013年のマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)、2015年のエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)、カレブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)、トム・デュムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)、2016年のサイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)、2017年のジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)、ミゲル・ロペス(コロンビア、アスタナプロチーム)など、いまや超主力クラスとなっている選手ばかりだ。

 しかし、スペイン人による初勝利は全体では45人中たったの2人であり、ジロとツールと比べると非常に少ない。

ブエルタは若手選手にもチャンスあり

 これらのデータから、グランツール初勝利に加えて、同時にプロ初勝利を飾った選手が最も多く、そのなかで開催国出身の選手が占める割合が最も少ないグランツールはブエルタであることがわかった。

 その要因の一つに、シーズン終盤で選手のコンディションにバラつきがあることがあげられるだろう。

 サイクルロードレースのシーズンは早くは1月から始まり、遅いと11月までレースは続く。ブエルタはシーズン終盤の8〜9月に開催されることもあり、疲労が溜まっている選手が多くなっている。そのため、有力選手といえどもブエルタへの出場を見送ることもあれば、疲労が溜まったままの出場となり本来の実力を発揮できない選手もいるだろう。

 一方で、それほど疲れていないフレッシュな選手にとっては、グランツールの晴れ舞台で活躍する大チャンスとなるのだ。

 ブエルタ開幕までのシーズンのレース走行距離を調べてみると、出場全選手の平均はおよそ8000km程度だ。過去10大会のブエルタ総合優勝者のレース走行距離は軒並み7000〜8000km程度で、2010年のヴィンチェンツォ・ニバリ(リクイガス・ドイモ)のみ1万kmだった。総合優勝する選手は、疲労しすぎないように走行距離を抑えている傾向にあるのだ。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017、ダブルツールを達成したフルームは7000kmほど、総合3位のザカリンは1万kmほどのレース走行距離だった。実力差だけでなく、蓄積した疲労の差も結果に表れたのかもしれない Photo : Yuzuru SUNADA

 続いて2016、2017年のブエルタでグランツール初勝利を飾った選手の、レース走行距離を調べてみると、8000kmを大きく超える選手は20人中7人だった。

 比較的走行距離の少ない、フレッシュな選手が活躍しており、言い換えればブエルタは蓄積した疲労の影響が大きく出る大会だといえよう。

 また、2014〜2017年のグランツール出場選手の平均年齢はそれぞれ、ジロが28.6歳、ツールが29.5歳、ブエルタが28.2歳となり、ブエルタが一番若かった。

 このことから、ブエルタでは若手選手を積極的に起用していることがわかる。そうして、結果的に初勝利を飾る選手が増えているのだろう。

23歳のエンリク・マスはスペインの次代を担うレーサーとして大きな期待を集めている選手だ Photo: Yuzuru SUNADA

 別の見方をすると、シーズン序盤でコンディションが整っているジロよりも、世界最高峰の自転車レースであり注目度が非常に高いツールよりも、各チームともに主力選手に疲れが見えてくるブエルタの方が、若手選手にも活躍するチャンスが巡って来やすいともいえよう。

 期待のイタリア人はジロに、期待のフランス人はツールで積極的に起用される一方で、期待のスペイン人の選手層があまり厚くないために、ジロとツールに比べて母国開催のグランツールで初勝利を飾る選手が少ないのかもしれない。

 現時点でのブエルタは世界中の若手選手にとって、トップレベルのレースで活躍するための試金石のような役割もかねているのだ。ブエルタでの活躍をきっかけに、大きく飛躍した選手は数多くいるからだ。

 もしかしたら、今年も新たなヒーロー誕生の瞬間を目撃できるかもしれない。

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