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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<265>サガン、ポート、ニバリらが参戦 ブエルタ・ア・エスパーニャ2018各賞候補クローズアップ

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 サイクルロードレースシーズン後半戦のビッグイベントといえば、ブエルタ・ア・エスパーニャ。今年は8月25日から9月16日まで、スペイン各地をめぐっていくことになる。シーズン最後のグランツールには、多くの有力選手が参戦を表明。それぞれに目的をもって、大会へと乗り込むことになる。そこで今回は、参加が決定、または予定される有力選手を総まとめ。4賞の行方を占っていくとともに、注目される選手たちの動向を追っていきたい。

8月25日開幕のブエルタ・ア・エスパーニャ2018。スペインの首都・マドリードの総合表彰台に立つのは誰になるのか。写真は2017年大会 =2017年9月10日 Photo: Yuzuru SUNADA

個人総合争いは大混戦か 上位進出に燃えるキンタナやイェーツ

 まずは、やはり大会の華。個人総合のマイヨロホ争いの有力候補から見ていこう。情熱の国・スペインらしく、赤のジャージがプロトン全体のトップを走る選手であることを証明する。

 今回は前回覇者のクリストファー・フルーム、今年のツール・ド・フランスを制したゲラント・トーマス(ともにイギリス、チーム スカイ)、この2人とならんで今年のグランツールを盛り上げてきたトム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ)が欠場。今年は各グランツールの王者が大会ごとに異なることとなる。

戦力充実のモビスター チーム。ナイロ・キンタナ(右から5人目)、アレハンドロ・バルベルデ(左から4人目)が中心となって頂点を狙う =ツール・ド・フランス2018第21ステージ、2018年7月29日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ブエルタの覇権をかけて、ベストメンバーをそろえて今大会へと臨むのが、地元トップチームのモビスター チーム。総合エースはナイロ・キンタナ(コロンビア)だ。2年前に頂点に立ち、大会との相性も抜群。7月のツール・ド・フランスではステージ1勝を挙げたものの、大会終盤の落車の影響で個人総合10位と、キンタナとしては物足りない結果に終わった。そこから、大会の開幕までにどれだけ立て直すことができているか。

 チームはツール同様、キンタナとともにアレハンドロ・バルベルデ、ミケル・ランダ(ともにスペイン)のスリートップを組む公算だったが、ランダが8月4日のクラシカ・サンセバスティアンで落車負傷。ランダ抜きでの戦いとなるが、ジロ個人総合4位のリカルド・カラパス(エクアドル)らがその穴を埋める。チーム力としては今大会ナンバーワンといえそうだ。

ジロ・デ・イタリア2018で初の総合表彰台を確保したミゲルアンヘル・ロペス。ブエルタで初の戴冠なるか =2018年5月27日 Photo: Yuzuru SUNADA

 キンタナと同じコロンビアンクライマーのミゲルアンヘル・ロペス(アスタナ プロチーム)は、前哨戦のブエルタ・ア・ブルゴス(スペイン)で個人総合2位と仕上がりは上々。今年のジロでは個人総合3位と、初の総合表彰台を確保。このときに上位を占めたフルームとデュムランがいない今回は、グランツール初制覇の大きなチャンス。ジロ個人総合6位のペリョ・ビルバオ(スペイン)も控えており、どちらでも勝負はできる態勢を整える。

実力派グランツールレーサーを揃えるロットNL・ユンボ。ツール・ド・フランスに続きステフェン・クライスヴァイクが参戦する =2018年7月27日 Photo: Yuzuru SUNADA

 今年のグランツールでの躍進が目覚ましいロットNL・ユンボは、ツールに引き続きダブルリーダーを敷く。大役を担うのは、ジロ個人総合8位のジョージ・ベネット(ニュージーランド)と、ツール同5位のステフェン・クライスヴァイク(オランダ)。山岳での安定感抜群の2人が、初のビッグタイトル獲得を目指す。バックにはツアー・オブ・ユタを制した新鋭のセップ・クス(アメリカ)が控える。

サイモン・イェーツ(左)は兄弟であるアダムのアシストを受けて上位進出を狙う。ミカル・クウィアトコウスキー(中央)、ティボー・ピノ(右)もブエルタ参戦を予定している =ツール・ド・ポローニュ2018第7ステージ、2018年8月10日 Photo: YSP

 アダムとサイモンのイェーツ兄弟(ミッチェルトン・スコット)は、今シーズン初めてとなるグランツール揃い踏み。サイモンは今年のジロでマリアローザを13日間着用し続けながら、第19ステージでまさかの大ブレーキ。ビッグチャンスを逃している。その後はブエルタに向けて調整を行い、8月に入ってからはツール・ド・ポローニュで個人総合2位と仕上がりの良さを示している。ツールを終えたばかりのアダムはアシストに回ることを公言しており、兄弟でのコンビネーションでサイモンの上位進出を狙う。

リタイアに終わったジロ・デ・イタリア以降、立て直しを図ってきたファビオ・アル。3年ぶりのブエルタ制覇を狙って参戦する =2018年5月16日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ジロではよいところがなく、大会終盤にリタイアしたファビオ・アル(イタリア、UAEチーム・エミレーツ)は、3年前に頂点に立ったブエルタに狙いを切り替えてきた。ジロ後のレースでは目立つ場面こそ少なかったが、徐々に調子を上げてきている印象を残している。チームは、ツールで活躍したダニエル・マーティン(アイルランド)も送り込む予定としており、2人のリーダーが展開に合わせてチャンスをうかがっていくことになる。

 フルームとトーマスを欠くチームスカイは、ダビ・デラクルス(スペイン)が総合エースを担うことになりそうだ。クイックステップフロアーズの一員として出場した昨年は、総合トップ10を狙える位置にいながら大会終盤でリタイア。今シーズンは個人タイムトライアルでも進境著しく、オールラウンドに戦える力をつけているあたりに期待が膨らむ。

チーム サンウェブの総合エースを務めるウィルコ・ケルデルマン。昨年の個人総合4位を上回る成績を狙う =ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第20ステージ、2017年9月9日 Photo: Yuzuru SUNADA

 チーム スカイ同様にスーパーエースのデュムラン抜きで戦うチーム サンウェブは、ウィルコ・ケルデルマン(オランダ)が昨年の4位を上回る成績を狙う。前回は総合表彰台圏内にいながら、土壇場での逆転を許した。今年は当初、ツールでデュムランのアシストを務める予定だったが、直前の国内選手権で落車負傷。ブエルタはそれ以来のレースとなる。

 そのケルデルマンと前回、総合表彰台争いを繰り広げたイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)はツールからの連戦。今年はタイトル獲得こそないものの、ツールでは大会後半に調子を上げて個人総合9位とまとめた。山岳はもとより、得意の個人タイムトライアルでタイムを稼ぐことができれば、上位争いに加わるはず。

 3年前には個人総合3位に入っているラファウ・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)は、不本意に終わったツールのリベンジに燃える。ジロ同10位のダヴィデ・フォルモロ(イタリア)や総合力のあるエマヌエル・ブッフマン(ドイツ)も控えており、どこからでも上位をうかがえるあたりが強み。

ツール・ド・フランス2018での落車負傷で戦線を離脱していたヴィンチェンツォ・ニバリもブエルタ参戦。その後のUCIロード世界選手権に向けた調整として走る =2018年7月19日 Photo: Yuzuru SUNADA

 クラシカ・サンセバスティアンで2位に入ったバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)も、かつてマイヨロホを着用するなど、この大会を得意とする1人。グランツールのトップ10フィニッシュ経験豊富なルイス・メインチェス(南アフリカ、ディメンションデータ)も活躍を誓う。6月のツール・ド・スイスで個人総合4位と健闘したエンリク・マス(クイックステップフロアーズ)は、地元スペインが誇る若手として上位進出が期待されている。

リッチー・ポートもブエルタ参戦を表明。ツール・ド・フランス2018第9ステージでのクラッシュを乗り越えて戦線へと戻る =2018年7月13日 Photo: Yuzuru SUNADA

 今回は、大会閉幕1週間後に競技が開始されるUCIロード世界選手権に向けた調整として、ブエルタのスタートラインにつく選手が多数。落車負傷でツールを去ったヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)や、リッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシングチーム)、リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック)、さらには代表チームのリーダー格となるティボー・ピノ(フランス、グルパマ・エフデジ)らは、総合争いには加わらず、コンディションを高めることに終始する見通しだ。

 彼らがマイヨアルカンシエルを目指す、男子エリートロードレースは、9月30日に実施。開催地のオーストリア・インスブルックのコースは、クライマー有利とのもっぱらの評判だ。ブエルタから世界選手権への道を拓く選手たちの走りも押さえておきたい。

サガンやヴィヴィアーニが中心のスプリント争い

 スプリンターの勲章でもあるポイント賞だが、ブエルタにおいてはフィニッシュや中間スプリントポイントでの上位通過者に付与されるポイントが、ステージ難易度を問わず配分が同じため、総合系ライダーが有利となる傾向にある。昨年は、フルームが個人総合と合わせて“2冠”を達成している。

 ただ、今年はそうした構図に変化が生まれるかもしれない。例年、平坦ステージが少なめに設定されがちなブエルタだが、今回は6ステージ用意され、そのいずれもがスプリンターが対応可能なコースレイアウト。途中、山岳ポイントが設けられるなど、登坂区間こそあるものの、それがステージ優勝争いに直結する可能性はそう高くはなさそうだ。ポイント賞ジャージのプントスに袖を通すためには、平坦ステージで取りこぼすことなく、しっかりと上位フィニッシュを繰り返すことと、中間スプリントポイントでの上位通過を狙っていくことが重要となる。

ペテル・サガンがブエルタに乗り込む。スプリンターの中心的存在となりそうだ =ツール・ド・フランス2018第13ステージ、2018年7月20日 Photo: Yuzuru SUNADA

 今回のスプリンター陣の中心となるのが、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)。ツール終盤での落車の影響が尾を引いたが、8月19日のユーロアイズ・サイクラシックス・ハンブルグでは10位に入り、復調の足掛かりをつかんだ印象だ。あくまでも目指すのは世界選手権ロード4連覇。ブエルタは調整の意味合いが強いが、プントス争いに加わって勢いを得たいところ。

エリア・ヴィヴィアーニは直前のユーロアイズ・サイクラシックス・ハンブルグで優勝。絶好調でスペイン入りする =2018年8月19日 Photo: YSP

 そのユーロアイズ・サイクラシックス・ハンブルグを制したのが、エリア・ヴィヴィアーニ(クイックステップフロアーズ)。イタリアチャンピオンジャージを身にまとい、プントス獲得に名乗りを挙げる。リードアウトマンも複数そろえ、平坦ステージでは主導権を握る構えだ。

 昨年はステージ4賞を挙げながらも、2点差でプントス獲得を逃したマッテーオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)も有力候補。8月12日のヨーロッパ選手権を制し、チャンピオンジャージで堂々のスペイン入りとなる。

 ダニー・ファンポッペル(オランダ、ロットNL・ユンボ)もスピードでは負けていない。総合狙いのチームにあって、どれだけチャンスがめぐってくるか。

 ジロのポイント賞経験者であるジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、トレック・セガフレード)は、ブエルタでもジャージ獲得なるか。ツール出場を逃したナセル・ブアニ(フランス、コフィディス ソリュシオンクレディ)は、今大会での活躍で存在をアピールしたい。フィル・バウハウス(ドイツ、チーム サンウェブ)も有力だ。

大会最初のマイヨロホ着用者が誰になるかも注目

 マイヨロホとプントスのほか、この大会では山岳賞の選手には白地に青の水玉があしらわれるモンターニャと、個人総合・ポイント賞・山岳賞の各賞順位の合算で争われる複合賞のコンビナダが設けられる。

山岳賞のモンターニャは山岳逃げを得意とする選手に有利。2015年と2016年にはオマール・フライレが2連覇した =2016年9月11日 Photo: Yuzuru SUNADA

 モンターニャは、山岳比重の高いブエルタだけあって、山を逃げた選手たちが山岳ポイントを稼いでジャージ獲得に至るケースが多い。今大会にも出場予定のオマール・フライレ(スペイン、アスタナ プロチーム)は、2015年と2016年にこの賞で2連覇を達成している。

 コンビナダは、各賞で上位に位置している選手ほど有利となる。個人総合争いと直結する傾向にあり、結果的にマイヨロホと合わせてこの賞を獲得している選手が多い。

 その他の注目点としては、個人タイムトライアルで争われる第1ステージの覇者が誰になるのかも興味深い。開幕地・マラガの市街地や海岸沿いを走る8kmのコースは、おおむね平坦で、極端にテクニカルなコーナーがないため、ハイスピードバトルとなる可能性も十分にある。今大会最初のマイヨロホ着用を目指す選手が意欲を燃やす。

 ステージ優勝候補としては、ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)や、ヨーロッパ王者のヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、ロット・スーダル)、ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド)とディラン・ファンバーレ(オランダ)のチーム スカイ勢、マティアス・ブランドル(オーストリア、トレック・セガフレード)、ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル、モビスター チーム)といった選手の名が挙がる。

今週の爆走ライダー−カスパー・アスグレーン(デンマーク、クイックステップフロアーズ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 昨年のこの時期は「若手の登竜門」と呼ばれるツール・ド・ラヴニールで、必死にマイヨジョーヌを守っていた。第1ステージで手にしたリーダージャージは、その後4日間着用。そのジャージはやがて、いま注目度ナンバーワンのヤングライダーであるエガン・ベルナル(コロンビア、チーム スカイ)へと渡った。

クラシカ・サンセバスティアンを走ったカスパー・アスグレーン。オールラウンドに実力を発揮する23歳 =2018年8月4日 © Getty Images

 昨年までのライバルからは少し遅れて、4月にプロ入り。けが人が続出していたとチーム事情も絡んでいたとはいえ、念願のトップチーム入りとなった。若手の育成に長ける自国でのレース活動を卒業し、まだまだプロとしての歩みを進めたばかりである。

 そんな彼に大舞台への切符が渡された。ブエルタへの参戦が決まったのだ。シーズン55勝と圧倒的な勝ち星を誇るチームだけに、経験を積むためだけの3週間とはいかない。力のあるエースのために、しっかりと働くつもりだ。

 これからのキャリアで何を目標にしていくかは、まだまだ模索中。とはいえ、ジュニアやアンダー23カテゴリーでは、個人タイムトライアルで強さを誇った。ブエルタの第1ステージは8kmと短く、なおかつ得意の平坦とあればトライする価値はありそうだ。

 初のグランツールであいさつ代わりの快走といきたい。スペインでの3週間が、この先続くプロ生活のターニングポイントとなるかもしれない。

アンダー23カテゴリーまでは個人タイムトライアルを得意としてきた。初出場のブエルタ・ア・エスパーニャでカスパー・アスグレーンの名を轟かせることができるか =ユーロアイズ・サイクラシックス・ハンブルグ、2018年8月19日 © Getty Images
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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