8・25開幕 ブエルタ2018直前コラム<1>ブエルタ・ア・エスパーニャの醍醐味は「接戦と逆転」 過去10年で6回、タイム差1分以内で決着

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 グランツール(世界3大ステージレース)最終戦であるブエルタ・ア・エスパーニャが8月25日に開幕する。スペイン特有の険しい山岳ステージを含んだ難易度の高いコース設定が特徴の一つであるが、巷では「一番おもしろいグランツール」として評判も高い。今回はブエルタの魅力について、全3回にわたって特集したいと思う。

ブエルタ・ア・エスパーニャは接戦・逆転が多いグランツールだ。わずか13秒差で勝利したファンホセ・コーボ(左)、史上最高齢の41歳で総合優勝のクリストファー・ホーナー(中央)、第20ステージで大逆転を飾ったファビオ・アル(右) Photo: Yuzuru SUNADA

常に接戦が繰り広げられるブエルタ

 ブエルタはジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランスとならぶグランツールの一つとして認識されているが、その歴史は3つのグランツールのなかで最も浅い。ジロが101回、ツールが105回開催されているのに対して、ブエルタは今年で73回目の開催となる。

 1994年大会までは、4月下旬から5月にかけて開催されていた。このため、5月上旬から下旬にかけて開催されるジロと時期がかぶるために、両者の歴史を比較してもブエルタの方が格下のレースと見られていた。

 1995年から8月下旬から9月にかけて開催時期を移行したことで、徐々に盛り上がりを見せてきた。そして、近年では3週間にわたって戦う世界3大ステージレースの一角として、確固たる地位を築きつつある。

 グランツールといえば、スプリント争い、日々の逃げ、ポイント賞や山岳賞ジャージを巡る戦いも見どころの一つではあるが、やはりリーダージャージをかけた総合争いが最大の見どころだろう。ブエルタの総合争いは、スペイン特有の凄まじい激坂区間を含む難易度の高い山岳コースのために、幾度となくドラマチカルな展開を生み出していた。そのため、非常に接戦となるケースが多い。

 そこで過去10年間、2008年以降の総合上位3人のタイム差をまとめてみた。

 ※所属チームは全て当時のものを記載

 ●2008年
 1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)
 2位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ)+46秒
 3位 カルロス・サストレ(スペイン、CSCプロチーム)+4分12秒

 ●2009年
 1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)
 2位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル・エウスカディ)+55秒
 3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、サイレンス・ロット)+1分32秒

 ●2010年
 1位 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、リクイガス・ドイモ)
 2位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+43秒 ※後にドーピング陽性が発覚し、成績抹消
 3位 ピーター・ベリトス(スロバキア、チームHTC・コロンビア)+3分4秒

 ●2011年
 1位 ファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)
 2位 クリストファー・フルーム(イギリス、スカイプロサイクリング)+13秒
 3位 ブラッドリー・ウィギンス(イギリス、スカイプロサイクリング)+1分39秒

当時はまだ無名選手だったクリストファー・フルーム(右)との歴史的な接戦を制したファンホセ・コーボ(中央) Photo: Yuzuru SUNADA

 ●2012年
 1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・ティンコフバンク)
 2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスターチーム)+1分16秒
 3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、チーム カチューシャ)+1分37秒

 ●2013年
 1位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)
 2位 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナプロチーム)+37秒
 3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスターチーム)+1分36秒

ブエルタ・ア・エスパーニャ2013 第19ステージにて、マイヨロホを着るヴィンチェンツォ・ニバリに対して攻撃を仕掛けるクリストファー・ホーナー Photo : Yuzuru SUNADA

 ●2014年
 1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
 2位 クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)+1分10秒
 3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスターチーム)+1分50秒

 ●2015年
 1位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナプロチーム)
 2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、チーム カチューシャ)+57秒
 3位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)+1分9秒

 ●2016年
 1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスターチーム)
 2位 クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)+1分23秒
 3位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・バイクエクスチェンジ)+4分8秒

 ●2017年
 1位 クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)
 2位 ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)+2分15秒
 3位 イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)+2分51秒

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017で総合優勝を果たし、ダブルツールを達成したクリストファー・フルーム Photo : Yuzuru SUNADA

 最終的に総合優勝者と総合2位のタイム差が1分以内となったケースが6回もある。ただし、2008年のコンタドールとライプハイマーはお互いにチームメートだった。同様に過去10大会を振り返った場合、ジロは5回、ツールは2回だった。

 また、同じようにタイム差が2分以内だったケースはブエルタが9回、ジロが7回、ツールが4回。1位と2位のタイム差が最も大きかった年は、ブエルタが2分15秒(2017年)、ジロが4分43秒(2013年)、ツールが7分37秒(2014年)だった。

 少なくとも直近10年のブエルタに関してはぶっちぎりで総合優勝というパターンがなく、3大グランツールと比較しても、最も接戦が多いグランツールだといえるだろう。

終盤での逆転劇が多いブエルタ

 さらに接戦だけでなく、逆転も多い。

 今度は過去10年間の総合優勝者が、どのタイミングで総合1位に浮上して総合優勝を飾ったのか振り返ってみた。

 ●2008年:コンタドール
 アングリルの山頂へフィニッシュする第12ステージで勝利し総合首位に浮上。以降危なげなくジャージを守り抜いた。

黄金のジャージを意味する「マイヨ・オロ」を身にまとうアルベルト・コンタドール Photo : Yuzuru SUNADA

 ●2009年:バルベルデ
 ステージ3位に入った第8ステージで総合首位に浮上。ステージ優勝はなかったものの安定した走りで総合優勝を果たす。

 ●2010年:ニバリ
 第14ステージでリーダージャージを獲得するも、第16ステージの山頂フィニッシュでホアキン・ロドリゲスに37秒遅れて総合2位に。第17ステージの個人タイムトライアルでロドリゲスに4分18秒の大差をつけて逆転。第20ステージは総合2位のモスケラから1秒遅れにまとめて総合優勝を決めた。

 ●2011年:コーボ
 アングリルの山頂へフィニッシュする第14ステージで勝利し総合首位に浮上。第16ステージでフルームに7秒詰め寄られるも、13秒差で総合優勝。

 ●2012年:コンタドール
 第17ステージの山頂フィニッシュで勝利し総合首位に浮上。第19、20ステージでバルベルデに詰め寄られるも、1分12秒差で総合優勝。

 ●2013年:ホーナー
 第19ステージでステージ5位に入り、2位のニバリと3秒差で総合首位に浮上。第20ステージはアングリルの死闘を制し、ニバリを突き放して総合優勝。

 ●2014年:コンタドール
 第10ステージの個人タイムトライアルで4位に入り、総合首位に。以降、ステージ2勝を飾り総合優勝。

 ●2015年:アル
 第20ステージ、マイヨロホを着るトム・デュムランに総攻撃を仕掛け、土壇場で逆転総合優勝を飾る。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2015 第20ステージ、鮮やかなチームプレーが決まり総合優勝を決めたファビオ・アル(右)。チームメートのルイスレオン・サンチェス(左)をねぎらいながらフィニッシュ Photo : Yuzuru SUNADA

 ●2016年:キンタナ
 第10ステージで勝利し、総合首位に浮上。第16ステージでフルームに奇襲を仕掛け、2分37秒のリードを奪い、最終的に1分23秒差で総合優勝。

 ●2017年:フルーム
 第3ステージで総合首位に浮上。以降、ステージ2勝をあげて、ダブルツールを達成。

 2010、2012、2013、2015年は最終週で決着がついた。大会終盤での逆転劇が多いことが、ブエルタの特徴の一つだろう。

 総合争いの最終決戦となる第20ステージ時点での総合1位と2位のタイム差が、2011年は13秒、2013年は3秒、2015年は6秒と本当に最後の最後まで勝負の行方がわからなかった。

 ちなみに同様の傾向はジロでも見られ、大会最終週(第16〜21ステージ)での逆転劇が起きたケースは、直近10年で6回ある。特に2016年からは3年連続で終盤ステージで決着がついており、ブエルタと同様にスペクタクルなレース展開になりやすくなっている。一方でツールは最終週での逆転は2011年の1回のみだった。

 だからといって、ツールの魅力がジロやブエルタに劣るとは思わない。ツールの魅力は逆転劇ではなく、サイクルロードレースの頂点ともいえる「マイヨジョーヌ」を巡るヒューマンドラマが醍醐味の一つだろう。

 しかしスポーツ観戦という見方をすれば、手に汗握るような接戦と派手な逆転劇が起こりやすいブエルタこそ、特にサイクルロードレース観戦初心者にこそおすすめのレースだといえるのではないだろうか。

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