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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<264>ロードレースのトップシーン最新情報 ビッグレースやストーブリーグまとめ

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 後半戦を迎えているサイクルロードレースシーズン。ツール・ド・フランスが終わってひと段落…といきたいところだが、ツールで活躍した選手たちはその勢いのまま、続くレースでも元気なところを見せている。また、前回お届けした移籍市場“ストーブリーグ”も着々と進行中。そこで、今回は直近のレース結果や移籍をめぐる各チーム・選手の動向をピックアップ。トップシーンの最新情報をまとめていく。

ツール・ド・フランス閉幕後も熱いレースが続くUCIワールドツアー。8月4日のクラシカ・サンセバスティアンではジュリアン・アラフィリップ(左)が優勝した Photo: Yuzuru SUNADA

アッカーマンがライドロンドン・サリークラシックで優勝

 Cyclist内ですでに結果をお届けしているツール・ド・ポローニュや、現在開催中のビンクバンク・ツアーとならび、UCIワールドツアーの1つに数えられるプルデンシャル・ライドロンドン・サリークラシック。ツール最終ステージと同じ7月29日に行われたが、「裏スケジュール」であることを感じさせない熱いレースとなった。

7月29日に行われたプルデンシャル・ライドロンドン・サリークラシックはパスカル・アッカーマン(左)が優勝した © BORA - hansgrohe / Bettiniphoto

 イギリスで開催される唯一の同カテゴリーのレースであり、歴史こそ浅いが現在に至るまでの経緯は大きな意味を持っている。初開催されたのは2011年。このときは翌年に控えたロンドン五輪ロードレースのプレレースとして行われた。初代王者はマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、当時HTC・ハイロード)。当時のレースカテゴリーは、国際大会としては最も低いUCI1.2だった。ロンドン五輪本番をはさんで、2013年にUCI1.1に昇格するとともに大会が再開され、2014年から3年間はUCI1.HC、そして昨年からワールドツアーのレースとなった。

 スプリンターによる優勝争いとなることが多い大会だが、今年も同様にスプリント勝負となった。ツールを途中リタイアしたカヴェンディッシュやアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・スーダル)も顔をそろえたレースは、ボーラ・ハンスグローエを中心にメイン集団が終始主導権を握る展開。逃げを射程圏にとらえると、終盤まであえて先行させ、スプリント態勢を整えた残り5km手前でついに吸収。集団は勢いを増して、フィニッシュを目指した。

スプリント勝負となったプルデンシャル・ライドロンドン・サリークラシック。ボーラ・ハンスグローエが主導権を握った © BORA - hansgrohe / Bettiniphoto

 迎えた最終局面。ここでも強さを発揮したのがボーラ・ハンスグローエ。このレースで勝負を託されたのはパスカル・アッカーマン(ドイツ)。万全の態勢から前方へと送り出されると、あとはフィニッシュラインを通過するだけに。2位のエリア・ヴィヴィアーニ(クイックステップフロアーズ)、3位のジャコモ・ニッツォーロ(トレック・セガフレード)といったイタリアンスプリンターを圧倒するスピードで完勝した。

 ペテル・サガン(スロバキア)やサム・ベネット(アイルランド)といった、プロトン屈指のスピードスターを擁する“スプリント王国”のチームにあって、チーム本拠のドイツから台頭した次なるエーススプリンターのアッカーマン。今年はドイツ選手権で初優勝し、ドイツチャンピオンジャージをまとうが、その強さはとどまることを知らない。ロンドンでの勝利を経て参戦したツール・ド・ポローニュでも、開幕からステージ2連勝を挙げた。

“山岳王”アラフィリップがクラシカ・サンセバスティアン初制覇

 スペインはバスク地方を舞台に開催される真夏のワンデーレース、クラシカ・サンセバスティアン。今年は8月4日に行われ、多くの有力選手が参戦した。

有力選手がそろったクラシカ・サンセバスティアン。チーム スカイがメイン集団をコントロールした Photo: Yuzuru SUNADA

 開催は今年で38回目と、春のクラシックレースなどと比べると新興の部類とされるが、コースセッティングはクラシックに匹敵する難易度。この地方特有の丘陵地帯をめぐるルートは、獲得標高が約4000mにも上り、例年クラシックハンターやクライマーが主役となる。昨年はワンデーレースに強いミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チーム スカイ)が、一昨年はグランツールレーサーのバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)が優勝している。そして、今年は新たな王者が誕生した。

 228.7kmで争われた今大会。レース前半からしばし地元スペイン勢が先行したが、フィニッシュまで残り37kmで吸収。その後はメイン集団からアタックが散発したが、いずれも決定打に欠け、抜け出すところまでは至らない。

バスク地方の丘陵地帯をゆくプロトン Photo: Yuzuru SUNADA

 集団のペースアップやポジション争いの激化によって、数回の集団落車が発生。この影響で優勝争いの人数が絞られていき、やがて最終登坂のアルト・デ・ムルギルへ。距離2.8km、平均勾配7.6%の上りは集団を崩壊させるのには十分な難易度。アントワン・トルホーク(オランダ、ロットNL・ユンボ)のアタックをきっかけに、強力な動きを見せたのがジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)とモレマ。頂上を目前に後続を引き離した2人は、サンセバスティアンの街へ向かうダウンヒルでも快調に飛ばした。

 そのまま優勝をかけた駆け引きへと移ったアラフィリップとモレマ。残り1kmを切るまで協調を続けた2人だったが、最後はスプリント力に勝るアラフィリップに軍配。この大会初優勝を決めた。

 先のツールではステージ2勝のほか、山岳逃げで魅せ、結果的に山岳賞のマイヨアポワを獲得。今年はラ・フレーシュ・ワロンヌを制するなど、勝負強さに加えてレース運びの巧みさも光る。ツール以降はクリテリウム興行が続き、疲れが残っていたというが、好調そのままに新たなタイトルを獲得。ツールからの流れで今大会へ乗り込んだ選手が多い大会にあって、価値ある勝利となった。

ツール・ド・フランス山岳賞に続き、クラシカ・サンセバスティアンを制したジュリアン・アラフィリップマッチスプリントを制してのタイトル獲得となった Photo: Yuzuru SUNADA

 2位にはモレマ、3位にはアントニー・ルー(フランス、グルパマ・エフデジ)が入賞。なお、レース後半でたびたび発生した集団落車によって、ミケル・ランダ(スペイン、モビスター チーム)、エガン・ベルナル(コロンビア、チーム スカイ)、ゴルカ・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)らが負傷。けがの度合いが大きいランダとベルナルは戦線離脱を余儀なくされ、出場を予定していた8月25日からのブエルタ・ア・エスパーニャは断念する見通しとなっている。

ヨーロッパ選手権はトレンティンが劇的勝利

 2018年の大陸王者を決めるヨーロッパ選手権のロードレースは、イギリスはスコットランド・グラスゴーで8月12日に行われた。激しい雨により随所で波乱が起きた230.4kmの戦いは、マッテーオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)が優勝。最後は数的優位と持ち前のスピードを生かしてのタイトル奪取となった。

雨中のレースとなったヨーロッパ選手権ロードレース ©︎UEC

 ヨーロッパ選手権は自転車競技のほか、陸上競技や水泳、体操など7競技185種目が実施された総合スポーツ大会。自転車競技は大陸選手権を兼ねて実施され、各種目の覇者にはヨーロッパチャンピオンジャージが贈られる。ヨーロッパにおける大陸王者を決めるレースは、かつてはアンダー23カテゴリーまでだったが、2年前からエリート部門でも競技が設けられている。世界選手権やアジア選手権などと同様に国別の対抗戦として行われており、2016年はサガンが“初代”の王座に就き、昨年はアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチーム・エミレーツ)が制している。

 冷雨に見舞われた戦いは、横風を利用したペースアップがメイン集団に発生したことも関係し、逃げグループが早々に捕まる展開。フィニッシュまで100kmを切ってから新たな先頭グループが形成されると、結果的にそのメンバーによる優勝争いとなった。

有力選手がそろった先頭グループ。そのまま優勝争いへと移った ©︎UEC

 先行した10人は、有力どころをそろえたイタリアやベルギー、オランダがそれぞれ2人を送り込み、レース全体の主導権を確保。イタリアは最終的に優勝するトレンティン、ベルギーはシクロクロスの世界王者であるワウト・ヴァンアールト(ヴェランダスウィレムス・クレラン)、オランダはロード、シクロクロス、マウンテンバイクで同国王者の“スーパーマン”マチュー・ファンデルポール(コレンドン・シルクス)が加わる。そのほか、ミヒャエル・アルバジーニ(スイス、ミッチェルトン・スコット)やピエールリュク・ペリション(フランス、フォルトゥネオ・サムシック)といった実力者も前方でレースを進めた。

 メイン集団を主に牽引したのはフランス。ペリションが先頭グループに入ったものの、複数選手を送り込んだ他国との分が悪いと見てか、懸命に追い上げを図る。しかし、先頭をゆくメンバーが強力であることや、雨脚が強まっていることが関係し、その差は縮まらない。結局、2分以上のタイム差は変わらず、先頭グループの選手たちで優勝を争うことになった。

マイヨアルカンシエルで参戦したペテル・サガンだったがツール・ド・フランスでの落車負傷の影響で途中リタイア ©︎UEC

 逃げ切りが濃厚になった残り8km、マウリス・ラメルティンク(オランダ、カチューシャ・アルペシン)がオーバースピードで鋭角の右コーナーへと突っ込んでしまい落車。これを避けようとした選手も含めて数人がタイヤをスリップさせてしまい、思わぬ形で優勝争いの人数が絞られる。足止めを強いられた中で、すぐに復帰できたのはダヴィデ・チモライ(イタリア、グルパマ・エフデジ)だけだった。

 そのチモライがフィニッシュにかけて好アシストを見せる。唯一複数メンバーを残したイタリア勢は、チモライがアタックしライバルの追走を呼び込むなど、有利な状況を作り出す。以降はチモライが牽引し、トレンティンはファンデルポールやヴァンアールトの動きに合わせる格好。残り1kmを切ってサンドロ・メウリーズ(ベルギー、ワンティ・グループゴベール)が先頭に合流したが、追い上げに脚を使ったためヴァンアールトのポジションを固めるので精いっぱい。

小集団スプリントとなった優勝争いはマッテーオ・トレンティンが制しヨーロッパ王者に輝いた ©︎UEC

 最後はチモライが発射台を務め、残り200mでトレンティンが飛び出すとそのままトップを譲らずにフィニッシュラインを通過。スプリント力のあるファンデルポールやヴァンアールトでも、ロード経験では上をゆくトレンティンのスピードには及ばなかった。

 トレンティンはプレシーズンのトレーニング中に、落車で肋骨を骨折。調整を急ぎ、1月下旬にはシーズンインを果たしたものの、4月のパリ~ルーベでまたも落車で鎖骨を骨折。北のクラシックのエース候補として現チームに合流した今シーズンだったが、不遇の時期が続いていた。それを乗り越え、復活ののろしを上げるビッグタイトル獲得。1年間着用が認められるヨーロッパチャンピオンジャージは、8月19日のユーロアイズ・サイクラシックス・ハンブルグ(ドイツ)でお披露目となることを自らの口で宣言した。

 また、このレースにはサガンも参戦していたが、ツール終盤での落車負傷の影響が残っていることもあり、途中リタイアに終わっている。

 なお、8日には個人タイムトライアルが45.7kmで争われ、ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、ロット・スーダル)が2連覇を達成。2年ぶりの王座返り咲きを狙ったヨナタン・カストロヴィエホ(スペイン、チーム スカイ)が2位だった。

ユアンのロット・スーダル移籍決定ほか移籍市場が活性化

 前回お伝えした、UCIワールドチーム、同プロコンチネンタルチームの移籍市場。この1週間で新たな情報が飛び込んできている。

活性化する移籍市場。動向が注目されていたカレブ・ユアン(右)はロット・スーダル入りが発表された Photo: Yuzuru SUNADA

 大きな注目を集めているのが、“小さな巨人”カレブ・ユアン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)のロット・スーダル移籍。契約は2年で、スプリントはもとより、ミラノ~サンレモなどのクラシックレースのタイトルも目指すとしている。

 今シーズンはツールデビューが約束されていたユアンだったが、大会直前に発表された出場メンバーにその名はなく、その時期から移籍報道が過熱していた。なかでも、ロット・スーダルとの関係が深まっていると言われていたが、どうやらその噂は本当だったよう。ツールデビューがお預けになった理由も、ユアンが移籍交渉を進めていたことが大きいと言われている。晴れて新天地へと移るユアンは、フォルトゥネオ・サムシックへ移籍するグライペルの後任として、チームのエーススプリンターを担うこととなる。

ローハン・デニスはバーレーン・メリダへと移籍する Photo: Yuzuru SUNADA

 バーレーン・メリダは、BMCレーシングチームからローハン・デニス(オーストラリア)とダミアーノ・カルーゾ(イタリア)、2人の総合系ライダーを獲得。ともに2年契約で、デニスはグランツールの総合エースを、カルーゾはヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)のアシストとして期待されている。

 一方、BMCレーシングチームからCCC社がメインスポンサーとなる後継チームでは、アレッサンドロ・デマルキ(イタリア)が契約を更新して事実上の残留が決定。さらには、セルジュ・パウェルス(ベルギー、ディメンションデータ)の移籍加入も発表。クラシックで絶対エースとなるグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー)のアシスト役が見込まれている。

 クラシック路線を見据えた積極補強が進むディメンションデータは、ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ミッチェルトン・スコット)が移籍する。今年はアムステル・ゴールド・レースでの2位のほか、アルデンヌクラシック3レースすべてトップ10フィニッシュを果たした32歳は、新たな環境でタイトル獲得を目指す。新チームとの契約は2年。

 同じミッチェルトン・スコットのカルロス・ベロナ(スペイン)はモビスター チームへ、逃げや個人タイムトライアルを得意とするマヌエーレ・ボアーロ(イタリア、バーレーン・メリダ)はアスタナ プロチームへの移籍もそれぞれチームから発表されている。

今週の爆走ライダー−セップ・クス(アメリカ、ロットNL・ユンボ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 8月6日から12日まで開催されたアメリカ屈指のステージレース、ツアー・オブ・ユタ(UCI2.HC)。UCIワールドチームや、アメリカ大陸を主戦場とする実力派チームがそろったレースにあって、ステージ3勝を挙げて文句なしの総合制覇を果たしたのが、プロ1年目、23歳のクスである。

ツアー・オブ・ユタで大活躍。オールラウンダーとして注目を集めることとなったセップ・クス。写真は第2ステージ Photo: Jonathan Devich/epicimages.us

 この勝利で一躍脚光を浴びることになったが、今まであまり知られていなかったのも無理はない。昨年までは自国をメインに走っていただけでなく、学業優先の生活を送っていたのだという。

 とはいっても、マウンテンバイクでアメリカ学生王者に輝くこと3度。ロードキャリアは約3年と短いが、ライダーとしての素地はマウンテンバイクで培っていたといえそうだ。

 実質ロード本格参戦となる今シーズンは、ヨーロッパへと渡って苦労の連続だった。活躍を期した5月のツアー・オブ・カリフォルニアでも“惨敗”。だが、そんな流れが変わったのが、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネだった。きっかけをつかむと、体調も上向いた。戦い方を知れば、あとはこちらのものとばかりに、ユタでの躍動。チームからの大きな期待を受けて、ブエルタに参戦することも決まった。

 そのブエルタでは、ジョージ・ベネット(ニュージーランド)から山岳アシストに任命された。「ジョージは素晴らしいライダー。レースをコントロールできる選手とともに走ることで、自らのレベルも引き上げることができそうだ」と、スペインでの3週間を待ちわびる。そして、「自信はある」とも。

 ここ数年、計算できるグランツールレーサーがそろうロットNL・ユンボにまた1人、将来有望なオールラウンダーが誕生した。ちなみに、学業では名門のコロラド大学を卒業。日本的に言えば、「文武両道」を地で行く生活を送っていたといえそうだ。

ツアー・オブ・ユタ個人総合優勝を決めた直後のセップ・クス。グランツールレーサーがひしめくロットNL・ユンボに新たな有望株が誕生した瞬間となった Photo: Jonathan Devich/epicimages.us
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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