旅せよ!『Cyclist』<2>「日本人?ウェルカム!」 各国の屈強サイクリストが続々集結「オートルート ノルウェー」前夜

by 後藤恭子 / Kyoko GOTO
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 世界の山岳コースを舞台とするアマチュアステージレース「HAUTE ROUTE」(オートルート)のノルウェー大会が8月3~5日の3日間にわたって開催された。大会前日の2日、拠点となる都市スタヴァンゲルの受付会場には、世界各国から訪れた参加者たちが集結。今年で開催8年目を迎えるオートルートでノルウェー大会はこれが初開催とあって、参加者数も230人と、500人規模を超える他大会と比べるとやや少なめな印象だが、それでも欧州の近隣諸国以外にアメリカ、カナダ、ブラジル、メキシコ、オーストラリア、そして日本(我々)など、遠方から続々と北欧の地に参加者たちが集まっていた。

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スタヴァンゲルに設けられた「オートルート ノルウェー」の会場に到着 Photo: Kyoko GOTO

『アナ雪』の舞台にもなったスタヴァンゲル

北海油田に近く、石油産業で栄えたスタヴァンゲル Photo: Kyoko GOTO

 大会の拠点となるスタヴァンゲルは北海油田からほど近く、石油産業によって栄えた港湾都市。人口11万人ほどの小さな街だが、オスロ、ベルゲンに継ぐノルウェー第3の都市で、最近では映画『アナと雪の女王』の舞台となったことで、観光地としても一躍脚光を浴びているエリアだ。狭い湾内ながら巨大な豪華客船がひっきりなしに往来し、停泊している様子にフィヨルドエリアの想像以上の水深を感じずにはいられない。

大型客船がひっきりなしに往来し、停泊する Photo: Kyoko GOTO

 オートルートの舞台となるのは、スタヴァンゲルを拠点とするこのフィヨルドエリア。初日と2日目はフェリーでそれぞれのスタート地点へとアクセスし、フィヨルド沿いの道や、内陸の隆起した地形を走る。最終日はタイムトライアルでスタヴァンゲルの市街地を走る、3日間で通算301km、獲得標高5380mで競うレースだ。

続々とホテルに集まってきた参加者たち Photo: Kyoko GOTO

 7日間のイベントでは宿泊先を転々と移動しながらレースを進めるが、今回のノルウェーでは3日間の拠点をスタヴァンゲルに置くため、日々荷物をまとめて移動する必要もない。

 宿泊先は自力で手配しても良いが、土地勘がない我々はオプションで宿泊先を手配してくれるサービスを利用した。このオプションサービスを利用している参加者は多いようで、大会前日は参加者と思われる自転車ケースを持参した人々が続々と同じホテルに集まっていた。

サイクリストとわかれば互いに笑顔で挨拶 Photo: Kyoko GOTO
会場で目立ったコンパクトなハードケース Photo: Kyoko GOTO

ノルウェーでの自転車乗車に必要な「ライセンス」

ヴィレッジのゲートには冠スポンサーの「マセラティ」が鎮座 Photo: Kyoko GOTO

 受付会場となる「ヴィレッジ」で最初に目に入ってきたのは、同大会のメインスポンサーである高級スポーツカーメーカー「マセラティ」の展示車。トライアスロンの大会スポンサーとなっているのは見かけていたが、自転車レースのメインスポンサーとなっているのは筆者の知る限りでは初めての光景。オートルートでも今回のノルウェー大会が初の冠スポンサーとなったそうで、同イベントの発展に対する注目度の高まりを感じさせる。

受付を終えた参加者たちでにぎわう会場 Photo: Kyoko GOTO
全オートルートのスポンサーを務めるマヴィック Photo: Kyoko GOTO
会場でエスプレッソを振る舞っていたチーム。手にしているのはドロミテ、アルプス、ピレネーのオートルート3大コースのオリジナルカップ Photo: Kyoko GOTO

 エントリー時に興味深かったのは、ノルウェーのサイクリング連盟が発行する「ライセンス」の購入が求められたことだ。ノルウェーではレース、サイクリング問わずいかなる目的であっても自転車の乗車にはライセンスの購入が必要で、事故の際の医療費が一部負担されるなど傷害保険の機能も含まれている。年間ライセンスと、ワンタイムライセンスがあり、今回我々は大会期間中のみをカバーするワンタイムライセンス(600NOK=約8400円)を購入した。エントリーフィーとは別の費用を支払う習慣がない日本人としては痛い出費だったが、一方で日本にはない「自転車税」のようなシステムに興味をおぼえた。

 受付を済ますと、参加者全員に「オートルートキット」が配られた。エントリー時に伝えたサイズをもとに用意されていたマヴィック製のサイクルジャージとレーパン、ノルウェーの国旗の色をイメージしたキャップなどウェアアイテムのほか、レース中の預け荷物を入れるためのナンバー入りバックパックなどがセットになっている。ちなみにジャージのデザインは各大会によって異なり、記念のアイテムとしてもうれしい。

受付ではオートルートキットが渡される Photo: Kyoko GOTO
キットの内容。サイクリングジャージ、レーパンの他、キャップ、アームカバー、蛍光ベスト、預け荷物用のバックパック Photo: Kyoko GOTO

「日本人女性が参加してくれて嬉しい!」

 エントリー会場に集まる各国の参加者たちの中でも日本人はまだ珍しいようで、「どこから来たの?」と声をかけられることもしばしば。とくに日本人女性としては初参戦ということもあり、受付や事務局のスタッフも、カメラマンもとてもフレンドリー(というか興味津々)だった。

受付終了後、参加者1人ずつ記念の写真撮影が行われる Photo: Kyoko GOTO
大会オフィシャルカメラマンと。日本人参加者はめずらしいようで、頻繁に撮影してくれた Photo: Kyoko GOTO
「よろしく!」と声をかけてきた地元ノルウェーの参加者、キャロライン。レースでは彼女のすごさを思い知ることに… Photo: Kyoko GOTO

 そんななか突然、地元ノルウェーの女性参加者に高いテンションで話しかけられた。話を聞くと「ゼッケン番号が1番違い!よろしく!」とのこと。「日本から、しかも女性が参加してくれて嬉しい!」と、その後彼女は自身のチームを紹介し、海外のレース初参戦で不慣れな筆者を一気にイベントの雰囲気に引き込んでくれた。思いがけない切れ込み方に一瞬とまどったが、こうした一期一会もオートルートのおもしろさ。コミュニケーションのきっかけはなんでも良いのだ。

エンジョイ!「パスタパーティー」

 その後、夜には翌日のコースについてミーティングが開催された。

大会前夜のミーティング。大会の挨拶に、会場の緊張感が高まる Photo: Kyoko GOTO

 一堂に会した参加者を見渡すと、およそ230人とはいえ世界各国から集まった“坂バカ”230人はなかなかの“厳選”感。より過酷な7日間のイベントには倍以上の参加者が集うというのだから、世界の屈強さに思わず苦笑いがこぼれる。

 ホテルのパーティールームに設けられたバイク置き場には所狭しと選手たちのバイクが翌日の出番を待つ。名だたるハイブランドのバイクや数々の歴戦を物語る傷だらけのバイク、「アイアンマン」のステッカーが貼られたバイクなどが並ぶ光景を前に、観光気分で参戦する自分の甘さに少し冷や汗をかいたのは内緒だ。

ソロ、デュオの参加者を含め総勢約230人の参加者が集合 Photo: Kyoko GOTO
宿泊先のホテルの会場にずらりと並べられた選手たちのバイク Photo: Kyoko GOTO

 ミーティング後に用意されていたのが、参加者たちをもてなす「パスタパーティー」。翌日のエネルギーを作るための、いわゆる“カーボローディングパーティー”だ。とはいえ、他にも色々なパーティーメニューがあるだろうと意気揚々として向かうと、期待むなしく見事にパスタのみ! それでもトマト、クリーム、ペペロンチーノ、ジェノベーゼと味が分かれているのが少しうれしい。海外の選手たちは大会前夜のパスタディナーはさも当たり前というように、味違いのパスタを皿にてんこ盛りに盛っていた。

ミーティング後に開催されたカーボローティングのための「パスタパーティー」 Photo: Kyoko GOTO
本当に、パスタしかない(笑) Photo: Kyoko GOTO
夜の10時を過ぎてもまだ明るい白夜 Photo: Kyoko GOTO

 明日のグリコーゲンの素をたっぷり貯めこんだら、レース初日に向けて就寝。しかし、夜の10時を回ってもまだ空が明るい「白夜」になかなか眠りにつくことができない。それとも、憧れていたフィヨルドと、初めて経験する世界のレースと、初めてづくしから来る高揚感なのか。

 明日のフェリー乗り場への集合時間は朝6時。そこから逆算すると、朝食を摂ってコンディションを整えるためには起床は朝4時半…。高鳴る胸と時差ボケが残る頭、そしてパスタでふくれたおなかを抱え、無理矢理布団をかぶったのだった。

⇒<3>158km、2700m超のフィヨルドに挑む第1ステージ

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