旅せよ!『Cyclist』<1>世界最高峰のアマチュアレース「オートルート」に挑戦 ノルウェー・フィヨルドを駆ける3日間の旅

by 後藤恭子 / Kyoko GOTO
  • 一覧

 ツール・ド・フランスなどの山岳コースを舞台に繰り広げられるアマチュアステージレース「HAUTE ROUTE」(オートルート)。難関コースを7日間かけて走破する“世界で最も過酷な市民レース”として知られるが、最近は観光要素を取り入れた3日間のコースも各地で登場しており、単なるレースにとどまらない「旅と挑戦」の要素が魅力となって世界中のサイクリストを惹きつけている。『Cyclist』編集部は、このうち8月3~5日の3日間にわたって開催された「オートルート ノルウェー」に参戦。その様子を準備からレース最終日までの5回連載でお伝えします。

8月3~5日の3日間のステージで開催された「オートルート ノルウェー」 ©HAUTEROUTE

挑戦する自転車の旅

 フランス語で「高い道」を意味する「HAUTE ROUTE」という言葉は従来、ヨーロッパのアルプス等の山々を縦走する山岳ルートの通称として使われていた。その名を冠した同大会が発足したのは2011年。ツール・ド・フランスの山岳ステージを切り取った1週間のアマチュアステージレースとしてスタートした。名だたる峠が連なる厳しくも雄大な世界。平均3000m超級の山を毎日越え続けるというアマチュアのスケールを超えた挑戦は、ヨーロッパを中心とする“剛脚”サイクリストたちの心を惹きつけた。

オートルートアルプス2017 ©HAUTEROUTE
オートルートドロミテ2017 ©HAUTEROUTE

 憧れの舞台が走れるだけでなく、プロフェッショナルなサポートチームによってプロライダーさながらのレース体験を味わえるのも同大会の醍醐味。レース中の先導バイクやサポートカー、メカニック、マッサーといったサポート体制がとられるのはもちろん、食事、荷物の運搬、さらにオプションを希望すれば宿泊などもサポートしてくれるなど、選手たちはパフォーマンスに集中できる環境が提供される。

トラブルのフォローはもちろん、選手たちに声をかけながら走るマヴィックカーのスタッフ ©HAUTEROUTE

 人気の高まりを裏付けるように、発足当初はアルプスのみだった大会が次第にピレネー、ドロミテと開催地を拡大し、開催7年目となった昨年は海を越えて米国コロラド州のロッキーが加わった。さらにラルプデュエズやモンバントゥといった名だたる山岳コースをスポット的に走る3日間コースも新設された。ただ、日程的に参加しやすくなっただけで、レベルはしっかりオートルート。それぞれ特色ある難易度で、1日に走る距離や標高、制限時間に遜色はない。

「自転車を通じて各国の人たちとつながりがもてるのも魅力」というアンバサダーの対馬伸也さん(中央) ©HAUTE ROUTE

 オートルートに魅了され、ピレネー、アルプス、ドロミテという難関山岳エリアで開催される3つの大会を日本人で初めて完走し、アンバサダーとなった対馬伸也さん(44)は、「景色の美しさや達成感に加えて、サポート体制があれほど充実しているアマチュアイベントは他になく、海外のレースイベント、あるいは海外ライドのきっかけとして最適なステージ。海外のサイクリストたちとの交流も楽しく、ぜひ一度は体験してみてほしい」とその魅力を語る。

 全部で12大会ある中から、今回『Cyclist』編集部が選んだのは初開催となる3日間コースの「オートルート ノルウェー」。自分の脚力では難しいと思っていたステージに登場した「3日間」という手が届きそうなレベル感と、何よりもかねてからの憧れの地だったフィヨルドがコースとして設定されていたことが、筆者の心を掴んだ。

フィヨルドを横目にトレインを組む参加者たち ©HAUTEROUTE
フィヨルドの内陸部を走るルート ©HAUTEROUTE

 オートルートノルウェーの1日あたりの走行距離は約125~160kmで、獲得標高はそれぞれ2500m前後。それにタイムトライアルを加えた3日間コースなら、いまの自分の体力、脚力で完走できるかもしれない。スタート地点までのアプローチはフェリーに乗ってフィヨルド、到着した先でライドを開始するというコース。地元サイクリストが作り上げた、厳しくも美しい絶景コースは、独自の旅では踏み入り難いルートだ。憧れの地を自分の脚でダイレクトに踏み、さらに奥へと入り込める術はサイクリストならではの“特権”。乗り続けてきた自転車が、訪れたかった旅とつながった瞬間だった。

海外渡航の第一難関、輪行箱選び

 海外の自転車イベントに参加するとなると、避けて通れないのが航空輪行の問題だ。形状、サイズ、強度、価格帯など多種多様な輪行ケースがあるが、国外航空会社の手荒な扱いから自転車を守るためには、基本的には高強度の素材のケースが必須となる。それをベースに、あとは現地での動き方、自転車を組むスキルなどの要素で選択肢は変わってくる。

 今回筆者が選んだのはハードケース並の強度をもつ、コーワの樹脂製輪行箱「BTB 輪行箱 プレミアム」。サイズ(外寸法)は123cm(横)×37.5cm(奥行)×79.5cm(高さ)、重量は7.8kgほど。フォークやサドルを抜き、よりコンパクトサイズに納まるタイプの輪行箱もあるが、今回利用した航空会社では箱のサイズを問わず一律の積載料金がかかるため、箱のサイズよりも自転車の収納しやすさに重きを置いた。

折りたためる樹脂製の「BTB 輪行箱 プレミアム」。筆者のサイズ(XS)ではハンドルを横に曲げるだけですっぽり収納可能。サドルもペダルもディレイラーも一切外す必要なし Photo: Kyoko GOTO
17cmほどの薄さまで折りたためるコンパクト設計で、非使用時に場所をとらない。箱の底部に取り付けるアルミキャスターは別売り Photo: Kyoko GOTO

 この「BTB 輪行箱 プレミアム」はベルクロテープを使って四方から固定し、箱の内部でバイクを“浮かせた状態”で収納するというユニークな構造。さらに薄さ17cmまで折りたたむことができるため、非使用時にはスペースをとらずに保管できる点もメリットだ。

預け荷物の手続きとX線検査を受けて出発! Photo: Kyoko GOTO

 空いたスペースはウェアやヘルメット、シューズなど自転車周りの荷物を収納して有効活用できる。ただし、規定の重量を超えると超過料金がかかる場合があるため、荷物の入れ過ぎには注意が必要だ。また、現地で公共交通機関を使っての移動を考えている場合は、箱が大きいとフットワークが重くなる場合も。バイクの組立てに自信がある人は、移動先での機動性などを優先してより箱の小型化を図るのも良いだろう。

海外ライドで留意すべき「衣」と「食」

 そしてもう一つ、海外渡航で重要なのはウェアアイテム選び。出発時の日本は夏まっただ中だが、向かう先はノルウェー。今年は欧州でも例年にない猛暑が話題となっていたが、北欧の夏は雨天の可能性が高く、ひとたび気温が下がれば北海道の秋を思わせる冷え込みも予想される微妙な季候だ。サイクルジャージ、アンダーウェア、グローブなどの小物ともに夏・秋用を持参し、天候の変動に応じて調整できるようにした。

自転車周りの持ち物一覧。季候を考え、夏用のウェアに加えて秋用の防寒ウェアアイテムを持参。数日に及ぶレースのため、使い慣れたリカバー系のサプリメントも完備 Photo: Kyoko GOTO

 さらに細かいことだが、意外と重要なのが補給用やリカバー用のサプリメント。時差や季候など、環境が大きく変わる海外のライドではコンディションづくりがカギとなる。さらにエイドステーションの補給食はあっても、食べ慣れていない食品や思いがけない疲労で固形物が摂れなくなる可能性もある。普段使用しているサプリメントは海外では入手困難となるため、イレギュラーな環境でも普段のパフォーマンスを発揮できるよう、味覚的にも慣れたサプリメント類を持参することをおすすめする。

オランダ・アムステルダム経由でノルウェーへ。機内のコーヒーカップに描かれた自転車の絵がうれしい Photo: Kyoko GOTO

 次回は、いよいよレースの拠点となるノルウェー・スタヴァンゲルに現地入り。大会前日の受付の様子とともに、レースの概要やコースプロファイル、会場の雰囲気をお伝えします。

<つづく>


この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

Cyclist for Woman オートルート・ノルウェー2018

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載