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つれづれイタリア〜ノ<119>五輪で勝つために、レースを増やそう! イタリアでレースが盛んな理由

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 8月9日に2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックの自転車競技ロードレースコースが発表されました。海外からも驚きの声が出ています。自転車のことをよく知らない組織委員会の森喜朗会長が「オールラウンダー向けのコースだ」と海外メディアが伝えていますが、走った人ならこのコースのタフさがわかると思います。

イタリアでレースの先頭を引く警備隊(Scorta Tecnica) © G.S. Progetti Scorta

東京五輪に日本人は何人出られる?

 さて、日本人選手は勝ち目があるのか。開催国として国内選手の実力を考慮したと期待していますが、日本人選手がどれくらい出場できるのか。UCI(国際自転車競技連合)の国別ランキングをみてみると、かなり厳しい状況です。

UCIが発表している国別ランキング(2018年8月10日現在)

ロード(男子)
1 イタリア (14866.79点)
2 ベルギー (13662.81点)
3 フランス (12102.12点)
33 日本 (1358.55点)

ロード(女子)
1 オランダ (7059.34点)
2 オーストラリア (3659点)
3 イタリア (3420点)
27 日本 (357.2点)

トラック競技(男子)
1 英国 (5295点)
2 オランダ (5181点)
3 ニュージーランド (4673点)
8 日本 (3257点)

トラック競技(女子)
1 ドイツ (7035点)
2 オランダ (5490点)
3 ロシア (5371点)
14 日本 (2842点)

 なぜUCIランキングが重要かと言いますと、その位置によってオリンピックに出場できる選手の数が決まるからです。開催国に2人という特別枠がなければ、現在時点で日本は1人しか出場することができません(もちろん、今年のランキングではなく、来年のランキングが適応されますが)。

東京オリンピック出場基準

ロード(男子)
1〜6位:5人
7〜13位:4人
14〜21位:3人
22〜32位:2人
33〜50位:1人
※アジア連盟、アメリカ連盟、アフリカ連盟で出場権がない国の場合、1位になった国から1人
※出場権がないが、個人ランキングで200位以内に入った国の選手は1人

ロード(女子)
1〜5位:4人
6〜13位:3人
14〜22位:2人
※アジア連盟、アメリカ連盟、アフリカ連盟で出場権がない国の場合、1位になった国から1名
※出場権がないが、個人ランキングで100位以内に入った国の選手は1人

 日本人が弱いから仕方ないと嘆く人がいるかもしれませんが、私は違うと思います。水泳、柔道、野球、サッカー、マラソン、テニスなどの例をみてみると、世界と対等に戦える選手が多く活躍しています。自転車トラック競技でも現在世界ランキング8位につけています。とても強いです。

イタリアではプロ・アマ問わず、盛んに公道でロードレースが行われている Photo: Marco FAVARO

 そもそも上で述べたスポーツの競技人口と自転車競技人口の数はまったく違います。当然ながらベースが広ければ広いほど、ペテル・サガンやクリストファー・フルームのような逸材が、日本からも生まれてもおかしくないです。そのために野球もサッカーも一生懸命に若者を育てようとしています。

 さて、どうすれば強い選手が生まれるのか。

 答えは簡単です。戦いの場を増やすしかありません。レースがなければ、強い選手が生まれません。現在はロードレーサーを目指す若者たちが、海外に行かないと強くなれない現状が続いています。自転車競技人口を増やしたいのであれば、好ましくないことです。

マルコ・パンターニが愛した山で開催される人気の市民レース、グランフォンド・ノヴェコッリ。1万人以上が参加する © Nove Colli

イタリアでの道路使用許可申請

 なぜヨーロッパと比べて、日本でロードレースの数が少ないか。それは、立ちはだかる警察の壁が原因のようです。

 ロードレースを行おうとすると、道路使用許可を申請しなければなりません。これは他の国と変わりません。しかし、日本の場合、各自治体の警察庁に書類を提出し、警察の審査を待ちます。聞いた話によると、大体帰ってくる答えは「ノー」です。

 「安全はどうやって確保するか」と警察が組織委員会に安全の確保を押し付ける形で、開催を難しくしているようです。

ゴールには数多くのファンが駆けつける Photo: Marco FAVARO
GPポッジャーナU23。大きな国際大会になると、スポンサーカーも出場 Photo: Marco FAVARO
大会によってはポディウムギャルも登場 Photo: Marco FAVARO

 イタリアでは、申請が驚くほど簡単です。その後押しとなっているのが、ラヴェンナという自治体が2012年に作成した「サイクリングイベントやロードレースの認可を発行するために必要な手続きを最適化するための手続き」(Procedure finalizzate all’ottimizzazione degli adempimenti necessari al rilascio delle autorizzazioni allo svolgimento di gare ciclistiche)が全国的に普及しているからです。

イタリアでのレースの様子 Photo: Marco FAVARO

 これを紹介します。

 2012年にラヴェンナ県地方管理局(Ufficio territoriale del Governo di Ravenna)が複雑すぎるロードレースの申請をスムーズに行うために、画期的な指針を作成しました。地方管理局が先頭に立って、県の道路管理局、警察庁、イタリアオリンピック競技連盟、イタリア自転車連盟と協議を行い、次のような方針を決めました。簡単にまとめましたのでぜひ日本でも参考してもらいたいものです。

ラヴェンナ県ロードレース申請に関する指針

1. 申請方法について
 レースが開催される30日前までに競技の組織委員会は、地方管理局及び通過する自治体(Comune)に道路使用許可の申請書を提出(道路管理局と警察庁にも参考として一部を提出)。

組織委員会は救急スタッフも用意する © Acsi

2. 許可について
 問題がなければ各自治体からの結果をまとめ、地方管理局は道路管理局に道路使用の正式な区間を伝え、必要に応じて交通規制を命令する。

3. 交通規制について
 道路管理局はレースが開催される5日前までに各自治体に交通規制の情報を伝達し、各自治体が道路沿いに設置されてある電子掲示板などを通して、市民にレースの実施を告知する。

4. 交通規制管理について
 レースの組織委員会は大会の規模に応じて援助隊(scorta tecnica)を用意しなければならない。
  a. 先頭を走るサポートバイク2名※(交通量の少ない地方道路を使用した場合)
  b. 先頭を走るサポートバイク4名(交通量の多い県道や国道を使用した場合)
  c. 警備隊やサポート車両、救急車の用意はイタリア自転車連盟の規定に従う

出発を待っている応援バイク隊 Photo: Marco FAVARO

5. 警察の出動について
 大規模なレースや国際レース、プロ選手のレース開催の場合、警察の出場が必要と判断した場合、地方管理局が警察に対し出動命令を下す。
 警察の出動を可能にするために、毎年2月までにイタリア自転車競技連盟が警察庁にレースカレンダーを提出しなければならない。カレンダーに応じて、警察が出動できるメンバーの予測をするためだ。
※サポートバイクは許可制で、訓練を受けた人でなければならない。引退した警察官や元レーサーが多い。

 イタリアでは、レースの窓口が地方管理局ですので、おそらく担当者によって温度差があるかもしれませんが、こうやって多くの大会の開催されます。そのスポーツを生かすか、死なせるかは、競技人口の確保にかかっています。エコでクリーンなスポーツである自転車競技、ぜひ日本でもメジャーになってほしいものです。

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

東京都在住のサイクリスト。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会や一般社団法人国際自転車交流協会の理事を務め、サイクルウエアブランド「カペルミュール」のモデルや、欧州プロチームの来日時は通訳も行う。日本国内でのサイクリングイベントも企画している。ウェブサイト「チクリスタインジャッポーネ

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