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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<263>2018-19移籍市場「ストーブリーグ」が“開幕” グライペルらが新天地移籍を発表

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 8月に入り、来シーズンを見据えた移籍市場が解禁された。「ストーブリーグ」ともいわれ、現在進行中の2018年シーズンの各レースの結果もさることながら、ビッグネームを中心に他チームへの移籍や、現チームとの契約延長にまつわる話題がサイクルメディアをにぎわせる時期がやってきた。そして、早速注目されるトピックが続々と届いている。今回は、次々と明らかになるストーブリーグ情報をお届けしよう。

8月1日に解禁されたストーブリーグ。アンドレ・グライペルのフォルトゥネオ・サムシックの移籍が大きな驚きとして報じられた =ツアー・ダウンアンダー2018第6ステージ、2018年1月21日 Photo: Yuzuru SUNADA

グライペルがフォルトゥネオ・サムシックへ

 サイクルロードレースにおけるチーム移籍の正式契約・発表は、例年8月1日以降とすることがUCI(国際自転車競技連合)によって規定されている。したがって、当該チームや選手による、移籍の正式なアナウンスは8月に入ってから次々と行われるのが通例だ。

 ただ、実態としては翌シーズンの補強に向けた動きはそれ以前からなされており、獲得を目指す選手に対してチーム側が早くからオファーを出していたり、水面下で交渉が進んでいるケースが多いとされる。特にそうした動きが活発になるのが、7月に開催されるツール・ド・フランスと言われており、2回ある休息日で一気に進展した事例もある。

 今シーズンに入ってから、有力選手の移籍に関してあらゆる噂が流れていたが、いよいよ正式発表ができる時期がやってきた。これまで口をつぐんできた選手やチームにとっては、精神的にも解放されることになるだろう。

ツール・ド・フランスでは第12ステージでリタイアしたアンドレ・グライペル(写真は第5ステージ) Photo: Yuzuru SUNADA

 そんな今年のストーブリーグ。8月1日の解禁日からビッグサプライズが報じられた。アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・スーダル)のフォルトゥネオ・サムシック移籍である。

 先のツールでは第12ステージでリタイアしたグライペル。その後、8年間所属した現チームを今シーズン限りで退団することを7月22日に発表していた。

 ツール期間中に36歳となったグライペルは今シーズン、1月のツアー・ダウンアンダー(オーストラリア)で2勝と好スタートを切ったが、その後5月まで勝ち星なし。シーズン6勝を挙げているものの、年齢面も含め、チームの構想と本人の意思が合致しない状況となりつつあった。今年で契約最終年を迎えていたグライペルは、チームに2年の契約延長を望んだものの、チーム側は1年を提示。6月にグライペル側がチーム提示を受け入れたとの話題も挙がったが、最終的にフォルトゥネオ・サムシック移籍でまとまった。

アンドレ・グライペルが2019年に加入するフォルトゥネオ・サムシック。写真はツール・ド・フランス2018第3ステージ Photo: Yuzuru SUNADA

 フォルトゥネオ・サムシックは、フランス籍のUCIプロコンチネンタルチーム。同国北西部のブルターニュ地域を拠点とし、今年のツールでも同地でのステージで積極的な走りを見せた。ツールではすでにワイルドカード(主催者推薦)での常連チームとなっており、来シーズン以降も選出の可能性は高い。総合エースのワレン・バルギル(フランス)が今シーズンから加入するなど、ここ数年での積極的な補強が目立っている。

 チームは、昨年までエーススプリンターを務めたダニエル・マクレー(イギリス)がEFエデュケーションファースト・ドラパックにステップアップしたことで、スプリント路線が補強ポイントになっていたが、グライペルの加入で一気に解決する。勝利量産はもとより、21歳のオランダ人スプリンター、ブラム・ウェルテンの教育係としても期待されており、来年からは経験豊富なベテランの味をより一層目にすることになりそうだ。

 グライペル自身も「フランス語が課題」としながらも、「個人的な目標を追い求めながら、若くて才能ある選手たちがそろうチームのために尽力する」とコメントしている。

ディメンションデータ、バーレーン・メリダも補強が進行中

 解禁から1週間、実力者の移籍発表が相次いでいる。

 ここまで積極的な選手獲得をアピールしているのが、ディメンションデータ。3日に、今シーズンブレイク中のミケル・ヴァルグレン(デンマーク、アスタナ プロチーム)を、6日にはベテランのダニーロ・ウィス(スイス、BMCレーシングチーム)の加入を発表した。ともに契約は2年。

ディメンションデータ移籍を発表したミケル・ヴァルグレン =アムステル・ゴールド・レース2018、2018年4月15日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ヴァルグレンは、2月のオムループ・ヘット・ニュースブラッド(ベルギー)、4月のアムステル・ゴールド・レースでそれぞれ優勝。パヴェ、そしてアルデンヌと、ワンデーレースをメインにコースレイアウトを問わず戦える適応力を見せてきた。ツールでも第15ステージでの好アシストにより、同国の後輩であるマグナス・コルトニールセンの優勝に貢献するなど、レース巧者としての一面も見せた。チームはここまで、UCIワールドツアーのチームランキングで最下位。来シーズンに向けてはクラシック強化を打ち出しており、得意のクラシックレースを主戦場とできる環境を探していたヴァルグレンとニーズが合致したといえる。

ディメンションデータ入りが決まったダニーロ・ウィス =ツアー・ダウンアンダー2018チームプレゼンテーション、2018年1月13日 Photo: Yuzuru SUNADA

 2008年以来、BMCレーシングチーム一筋でプロキャリアを歩んできたウィスは、チーム新体制の構築により、新たな環境へと移る。もっとも、ディメンションデータは来シーズンからBMC社がバイクサプライヤーとなることが決定しており、ウィスにとっては慣れ親しんだメーカーのバイクに引き続き跨ることになる。スイスに拠点を置くBMC社としても、経験豊富なウィスにアンバサダー的な役割を期待しているものとみられる。

 ウィスと同様に、BMCレーシングチームを退団することとなったのが、ディラン・トゥーンス(ベルギー)とアルベルト・ベッティオール(イタリア)。クラシックハンターとして有望視される2人は、それぞれバーレーン・メリダとEFエデュケーションファースト・ドラパックへと移る。

 トゥーンスは、昨年のラ・フレーシュ・ワロンヌで3位になり観る者を驚かせると、ツール・ド・ポローニュで個人総合優勝。今シーズンはビッグタイトル獲得には至っていないものの、3月にはパリ~ニースで個人総合6位に入っており、その能力は高く評価されている。移籍に関しては、早い時期からバーレーン・メリダとの接触が報じられるなど、相思相愛の関係にあったと見られる。チームを指揮するブレント・コープランド氏は、「登坂力だけでなく、将来的には総合系ライダーとしての可能性があると見ている」とコメント。この先、トゥーンスの活躍の場はグランツールへも広がっていくかもしれない。

 今年BMCレーシングチームに加入したばかりだったベッティオールは、出戻りの形に。キャノンデール・ドラパック(当時)だった昨年はチーム存続が危ぶまれていたこともあり、早くにチーム離脱を表明し現チームへの移籍を決意したが、チーム首脳陣との関係は良好だったといい、EFエデュケーションファースト・ドラパックのゼネラルマネージャーであるジョナサン・ヴォーターズ氏もウェルカムの姿勢を見せている。ベッティオールも「所属するほとんどの選手は知り合いだし、新たな選手とも友人になれることがうれしい」とコメント。今シーズンはここまで、リエージュ~バストーニュ~リエージュでの落車負傷が尾を引いている状態だが、環境を戻して復活を目指すことになる。

 そして、この記事をお届けする直前でティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)もEFエデュケーションファースト・ドラパック入りすることが、同チームのリリースによって明らかになった。ヴァンガーデレンは現在、自国のステージレースであるツアー・オブ・ユタに参戦中。ステージ優勝を挙げた、6日のプロローグ終了後に移籍について質問を受け、「近々発表できると思う」と答えていたが、晴れて新天地が決定。ヴォーターズ氏のプロジェクトでジュニア時代を送った経緯があり、12年ぶりの“帰還”となる。

 なお、前述のバーレーン・メリダは7日にマルセル・ジーベルグ(ロット・スーダル)とフィル・バウハウス(チーム サンウェブ)のドイツ人スピードマンの獲得を発表。ジーベルグは長年グライペルのリードアウトマンを務めてきたベテラン。バウハウスは昨年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでステージ1勝を挙げた24歳の有望株。ともにスプリント路線の構築や北のクラシックで主力として計算ができそうだ。

ツール・ド・フランス2018第4ステージで敢闘賞を受賞したギヨーム・ヴァンケイスブルクはグレッグ・ヴァンアーヴェルマートの指名を受けてBMCレーシングチーム後継の新チームへ Photo: Yuzuru SUNADA

 その一方で、BMCレーシングチームからCCC社のメインスポンサーのもと新体制へと移行するチームでは、ギヨーム・ヴァンケイスブルク(ベルギー、ワンティ・グループゴベール)が移籍加入第1号として発表された。27歳のヴァンケイスブルクは、オメガファルマ・クイックステップ(現クイックステップフロアーズ)を経て、現チームで走るプロ8年目の選手。1963年の世界王者、ブノニ・ブエイを祖父に持ち、自身も大器として早くから注目されてきた。このツールでは逃げで再三存在をアピールし、第4ステージでは敢闘賞を獲得。今回の移籍にあたっては、“チームの顔”となるグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー)から、北のクラシックでのアシストとして直々の指名があったことが明らかになっている。

 そのほか、来年のツールデビューを目指すフランスの新興チーム、ヴィタルコンセプトは、アージェードゥーゼール ラモンディアールからクライマーのシリル・ゴティエ(フランス)、コフィディス ソリュシオンクレディからワンデーレースに強いジミー・テュルジス(フランス)の獲得を発表している。

トーマスの契約延長、ポートらの去就も決定間近か

 今シーズンが所属チームとの契約最終年を迎えている選手に、ツール制覇が記憶に新しいゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ)やリッチー・ポート(オーストラリア、BMCレーシングチーム)らの名が挙がる。

ツール・ド・フランス2018制覇が記憶に新しいゲラント・トーマスは噂された移籍はせずチームとの契約延長が近づいている =2018年7月29日 Photo: Yuzuru SUNADA

 トーマスはグランツールにおけるチーム内での扱いによっては、移籍を希望する可能性があるとしていたが、ツールでの活躍があったように、総合エースとして存在を確立。チームの首脳陣もリーダーとしての立場を確約するとしており、契約延長には支障がなさそうだ。ただ、ここ数年スーパーエースとしてチームを、そして自らをトップに押し上げたクリストファー・フルーム(イギリス)ほどの待遇にはならない見通しで、契約はもとより、その後のレースなどの棲み分けも注視されることになる。

移籍決定間近と言われているのがリッチー・ポート =ツール・ド・フランス2018第7ステージ、2018年7月13日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そのツールでは、“鬼門”の第9ステージで落車負傷。無念のリタイアとなったポート。その後に行われたチームの新体制記者発表には同席できず、今後の動向についてさらなる憶測を呼ぶこととなった。かねてからトレック・セガフレードとの関係が取り沙汰されているが、実際は果たして。現チームの新体制には参加しないことは濃厚とされ、グランツールをメインとした総合系ライダーの獲得を目指すチームへ移籍するものとみられている。

 同様にBMC勢では、今年のジロ・デ・イタリアでマリアローザを4日間着用したローハン・デニス(オーストラリア)の動きも気になるところ。デニスも新チームとの契約間近と報道されており、どのチームと合意に至るかが見ものだ。

 移籍や契約延長については情報が入り次第、このコーナーで注目トピックとしてお届けしていきたい。

今週の爆走ライダー−パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 “スプリント王国”ボーラ・ハンスグローエが目下売り出し中のスーパースプリンター。7月1日のドイツ選手権で初制覇を果たすと、以降の出場レースで4連勝と破竹の勢い。連勝街道こそ終着点を迎えたが、いま最も乗りに乗っているスプリンターといえそうだ。

今シーズン絶好調のパスカル・アッカーマン。ツール・ド・ポローニュではステージ2連勝と破竹の勢い Photo: YSP

 とにかく今シーズンの活躍が目覚ましい。8月4日に開幕したツール・ド・ポローニュにではエーススプリンターの大役を担い、第1ステージから2連勝。ドイツチャンピオンジャージが圧倒的なスピードで躍動した。

 同国の先輩にあたるマルセル・キッテル(カチューシャ・アルペシン)やジョン・デゲンコルプ(トレック・セガフレード)と同様に、アッカーマンもジュニア時代はトラック競技で鍛えた。当時は1kmタイムトライアルやチームスプリントといった短距離種目に注力していたといい、その頃に培ったスプリント力が現在につながっているのだとか。少しずつ距離を伸ばしていき、2016年のロード世界選手権ではアンダー23で銀メダル。2017年から、自国のワールドチームで走りを磨いている。

 ペテル・サガン(スロバキア)やサム・ベネット(アイルランド)といったトップスプリンターがいることや、チーム方針などもあってグランツール経験はないが、本人に焦りはない。いまはチームに貢献することを最重視する。ポローニュでは第4ステージから山岳に入るため、自らの“出番”がなくなるが、上位進出を目指す総合系ライダーのアシストに回る心積もりだ。

 生まれ育ったドイツ南西部の街・ミンフェルトでは、知らない人がいないというほどの街のヒーロー。2017年には、「パスカル・アッカーマン・ヴィーグ(道路)」と名付けられた通りまで作られたのだとか。

ツール・ド・ポローニュ第2ステージを制してポディウムに上がるパスカル・アッカーマン。スプリント王国のボーラ・ハンスグローエきってのスピードマンとして期待が膨らむ Photo: YSP
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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