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栗村修の“輪”生相談<133>30代女性「スピードを出すのが怖いのですが、友人にはもっと速くと言われます」

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 半年くらい前に友人がロードバイクを買ったので、クロスバイクをもらいました。楽しく乗っているのですが、先日友人にそろそろもっと速く走ってみたら?と言われました。

 私は運動が得意ではなく、どんくさいので、何かあったらすぐにブレーキをかけられるか、こけないかと不安で、なるべくゆっくり走っています。

 今まで乗っていた自転車よりはスピードが出ている気がして、まだちょっと怖いと思っているのですが、友人からすると遅いようです。慣れたら大丈夫だからと言われても怖いです。

 スピードを出しても怖くないと思えるようになるために何をすればいいのでしょうか?

(30代女性)

 脚力不足によってスピードが出せないのではなく、怖くてスピードが出せない。これは、初心者による事故が問題になっている昨今にあって、きわめて重要な問題です。初心者の事故の大半は、自転車を扱う技量の不足によって引き起こされているからです。

 ロードバイクやクロスバイクは、非常にスピードが出しやすい自転車なのですが、質問者さんはスピードが怖いので困っている。僕の答えを先に言いますと、「怖いならスピードを出さないで」というものです。脚力的に出せるスピードでも、怖いと感じるなら出すべきではありません。なぜなら、「怖いと感じる」速度域というのは、あなたが自転車をコントロールできる臨界点を超えている可能性があるからです。

 路面や周囲の状況を的確に判断できるか?急ブレーキや急ハンドルを切るような事態に陥っても自転車をしっかりとコントロールできるか?

 自動車に置き換えて考えてみましょう。道路にはそれぞれ制限速度がありますよね。住宅地の細い道路の制限速度が時速120kmではなく時速30kmくらいに抑えられているのは、住宅地で時速120kmを出すと、今の自動車の性能と普通の人の能力では十分な危険回避コントロールできないからです。それでも、今の自動車にはABSやエアバッグ、自動ブレーキといった安全設備が数多く搭載されています。万が一の際のダメージを減らすためですね。

 一方、同じく車道を走る自転車の制限速度は基本的に自動車に準じることになっているにもかかわらず、自転車にはABSもエアバッグも、シートベルトすらありません。自分を守る装備はヘルメットくらいです。

 こんな状態で自転車の性能に任せて十分なスキルを持っていない初心者がスピードを出したら、危険であるのは説明するまでもありません。乗り手がリスクをマネジメントできない状態が放置されているのですから。

スピードを出すには、それを乗りこなす技量が必要 Photo: Yuzuru SUNADA

 技量が上がるにつれ、乗り手がマネジメントできる速度の上限は上がっていきます。でも、プロだって時速100kmで下るダウンヒルは怖い。「怖い」という反応は、マネジメントできるスピードを超えてしまったことを意味していますから、要するにどんなに上手な人であっても、コントロールできないスピードがあるというわけですね。

 ならば、スピードを出しすぎないように注意するしかありません。もちろん、それでも下りなどで瞬間的にスピードが出てしまうこともありますから、ヘルメットをして、身を守るべきです。

 あと、意外と見過ごされているんですが、その自転車の癖というか、限界を知ることも大事です。例えプロ選手であっても、はじめて乗るバイクは怖い。それは、どのくらいブレーキレバーを握るとタイヤがロックするのか、どのくらいバイクを倒すとスリップするのか…といった限界や癖がわからないからですね。

 ですから、理想的には、クローズされた環境で各種プロテクターをつけ、急ブレーキやコーナーリングの練習を十分に積んでターゲットスピードに慣れてから公道に出たいものです。自分と自分のバイクにできること、できないことを知る必要があるのです。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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