グッド・チャリズム宣言プロジェクトが開催「サイクリストが嫌われないために」 荒川の釘まき事件を受けた緊急セミナーで熱い議論

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 東京都内で8月1日、「サイクリストが嫌われないために」と銘打ったセミナーが開催されました。グッド・チャリズム宣言プロジェクト(以下、グッチャリ)が自転車活用推進研究会(以下、自活研)の場を借りて開いた、なんとも穏やかでないタイトルのセミナーに、危機感を感じ集まったサイクリストは40人。通称「荒川サイクリングロード」と呼ばれる荒川河川敷のあり方、社会とスポーツサイクリストとの関係などについて、熱くディスカッションを行いました。グッチャリ理事の坂田良平さんがリポートします。

当日は、現状を憂う40人のサイクリストが集まった Photo: Ryohei SAKATA

◇         ◇

サイクリストは嫌われ者?

 まず、今回セミナーを開催した経緯について説明したい。

 通称「荒川サイクリングロード」において、ここ数年、たびたび釘がまかれる事件が発生していることをご存知だろうか。ネット上の情報を集めてみると、ここ2年で公になったものだけでも約10回の釘撒き事件が発生しているらしい。

 直近では、2018年7月1日朝、新荒川橋右岸側(墨田区墨田5丁目付近)において、大量の釘がまかれた。釘は、通りかかったサイクリストによって回収されたものの、いずれの事件においても犯人は捕まっていない。

グッチャリの活動を説明するグッチャリ代表理事の韓祐志氏 Photo: Ryohei SAKATA

 7月の事件においては、サイクリストらがSNS上で発信したこと、そして荒川を管理管轄する国土交通省荒川下流河川事務所がTwitterで注意喚起を行ったことから、事件が広く世間に知られることとなった。

 一連の釘まき事件犯人の意図は不明である。しかし、「釘を撒く」という行為から、自転車乗り、とりわけスポーツサイクリストに対する嫌がらせではないかという推測が成り立つ。

 自活研、そしてグッチャリは、このような事態を憂慮し、緊急セミナーを開催した次第である。

「あらかわ問題」に取り組み続けたグッチャリ

 セミナーの前半では、これまでグッチャリが行ってきた活動を紹介した。

 活動の発端は、2010年に遡る。同年、自転車対歩行者の正面衝突事故が発生し、被害者となった歩行者の70代男性は死亡した。

 これを受け、グッチャリは翌年2011年に「あらかわミーティング」を開催した。岩淵水門横にある、荒川下流河川事務所倉庫前を借り、青空会議を行ったのである。当日は、グッチャリ・リーダーである片山右京氏、ラジオパーソナリティとして活躍する山田玲奈氏を始め、約60人のサイクリストがディスカッションを行った。

 以降グッチャリは、先のあらかわミーティング(青空会議)の他、荒川下流河川事務所と共催した「あらかわマナーアップミーティング」を始め、荒川を活動の基点としてさまざまな活動を行ってきた。特にマナーアップチラシ配布は、地味ではあるものの、グッチャリのベースとも言える活動であり、2011年以降、開催は22回を数える。

 通称「荒川サイクリングロード」の正式名称は、「荒川緊急用河川敷道路」である。つまり、自転車の優先道路ではないのである。この間違い(とあえて言おう)が、荒川問題の象徴であり、根源である。悲惨な交通事故の発生を防ぎたいという想い、スポーツサイクリストが荒川河川敷を走る楽しみを守りたいという想い、このふたつの想いを胸に、グッチャリが活動を続けてきた経緯を説明した。

グッチャリでは、「あらかわろう」をキャッチコピーとして、荒川下流河川事務所とともにさまざまな取り組みを行ってきた Photo: Ryohei SAKATA

自転車乗りだって自転車は怖い

 ここからは、ディスカッションパートでレポートをお届けしよう。ディスカッションは、「暴走サイクリスト」というキーワードから始まった。

 「自転車乗りなんだけど、自転車乗りに怖い思いをしたことがある」
 「歩行者の立場で言えば、自転車が時速20kmくらいで通り過ぎるととても怖い」

 これは、誰しもが経験したことがあるのではなかろうか。

 現在、各所で「思いやり1.5m運動」(自動車が自転車を追い越す際には、1.5m以上の安全マージンを取りましょうという啓蒙活動)が行われている。現在行われている「思いやり1.5m運動」は、自動車対自転車のものであるが、同様の安全マージンは、自転車対歩行者にも必要ではないか?、という発言があった。

「弱者とは、歩行者だけではなく、女性や遅いサイクリストなども含まれるのではないか。弱者に対し配慮をすることは、荒川だけでなく一般社会でも大事なことだと思う」と語ってくれた太田千晶さん Photo: Ryohei SAKATA

 別の参加者からは、「暴走とは、走行速度ではなく、コミュニケーションの問題ではないのか?」と発言があった。

 これらの発言は、とても興味深い。

 荒川においては、2010年の交通死亡事故を受け、「自転車はいつでも止まれる速度(時速20km目安)で」という周知活動が開始された。ところが、2014年に発表された「新・荒川下流河川敷利用ルール」では、「時速20km」という表現が「徐行」に変更された。

 確かに、荒川のさまざまな利用者とのコミュニケーションを考えれば、走行速度というひとつの物差しだけで、良好かつ安全な関係を築くことなど不可能であろう。

「荒川を走らない」という選択も

 複数の参加者から、「多摩川サイクリングロードを走らなくなった」という発言がでたことも興味深い。

 多摩川では、散歩する人、ジョギングする人など、多くの人々が自由に多摩川を楽しんでいる。しかし道幅が狭いことから、そもそも自転車は走りにくい。加えて、マナーの悪いサイクリストもいて、「楽しめないんだったら、わざわざ無理して多摩川サイクリングロードで自転車に乗らなくてもいいじゃん」ということだ。

参加者から積極的な発言が行われ、とても刺激的であった Photo: Ryohei SAKATA

 荒川は、多摩川よりもはるかに川幅が広く、特に笹目橋(板橋および戸田付近)より下流においては、2車線の幅員が河口付近まで続く。

自転車にとって、そしてスポーツサイクリストにとって、一見走りやすく思える環境だからこそ、自転車乗りと他河川敷利用者との軋轢が生じ問題となるわけだが、ある参加者の直球発言が、筆者を含めた他参加者に衝撃を与えた。

「ここまでの議論を聞いていて思ったんですが。なぜわざわざ荒川を走りたがるんですか?もっと楽しい場所で走ればいいじゃないですか?」

「スポーツサイクリストは荒川を走らない、という選択をすべきではないか?」

「これは、自転車が社会権を勝ち取るためにどうすればいいのか?、とは違うのではないだろうか?」

異論反論はあるだろうが、確かにひとつの考え方としては見過ごせない考えであろう。

譲り合いの精神が不可欠

 「自転車乗りだけが痛みを求められるというのもおかしなことなのだが…」

 セミナーに参加してくださった、国土交通省 自転車活用推進本部 事務局の山田拓徳氏は、このように前置きをした上で、こう続けた。

 「でも、歩行者がいるところで、時速20km、30kmで走りますか??」

 ご存知のとおり、2016年12月に自転車活用推進法が公布された。これは、自転車の活用を総合的・計画的に推進することを基本理念に掲げた法律である。

 「健康に良く、環境にも優しい自転車は、先進国が抱える諸問題を解決するツールとなり得る」

 山田氏はこう語る。

 「限られた場所、限られた道路の中で、自転車乗りだけの空間を確保することは、現実的には難しい。ただし、自転車を快適に乗ることができる空間を検討する必要はある。高速で走る人、低速で楽しむ人、さまざまなニーズを把握した上で、例えば競輪場を開放するなど、環境の整備を行っていきたい」

 「ただし…」

 山田氏は続ける。

 「そのためには、譲り合いの精神が不可欠です。また、子供から大人までを対象とした自転車教育と普及・啓蒙活動が必要です」

 自転車活用推進法を推進する立場にある山田氏が、本セミナーに参加してくださり、そして力強い発言をしてくださったことは、私ども自転車乗りにとって、とても心強い。

当日司会を務めた瀬戸圭祐氏(自活研およびグッチャリの理事、中央左)と、コメンテーターとして登壇したグッチャリ理事・黒木尊行氏(左端) Photo: Ryohei SAKATA

さいたま市が構想する「サイクルパーク」

 レーシングドライバーであった土屋圭市氏は、かつて自身がいわゆるローリング族であった反省から、D1グランプリを構想、立ち上げた。限られた敷地内でもクルマを操る楽しみを得ることのできるD1グランプリは、峠等の公道で危険走行を行ってきた「クルマで速く走る」ことを求める人々に対し、ある種のガス抜き効果を提供したのである。

 さいたま市 都市計画部 自転車まちづくり推進課の勝山修平氏は、スポーツサイクリストにとってのガス抜きとなる、「サイクルパーク」構想をさいたま市において検討していることを明らかにした。

 「さいたま市において、自転車を楽しむことができる場を提供することができないか、検討しています。『自転車で走りたいな!』というサイクリストの皆さんが、集まることができる場を提供したいです。例えば、伊豆修善寺のサイクルスポーツセンターまで行くのは遠いですよね。東京近郊にこういう場があることに意義があると考えています。『今の日本において、何が求められているのか?』を考えつつ、皆さまにはいろいろなアイディアを出してもらい、また盛り上げていただければと考えています」

 なんともワクワクする話ではないか!!

 ぜひ、さいたま市には頑張って欲しい。

グッチャリが目指すもの

 自転車ツーキニスト:疋田智氏は、「文化は後からついてくる」と発言した。

 「自転車が楽しくて便利なものであれば、自転車文化は勝手に創り上げられるはずだ」

 近年、グッチャリの活動も、マナーアップチラシ配布だけを行うのではなく、「自転車を楽しむ」ことを意識している。

 今年3月には、荒川のゴミ拾いと野菜収穫を組み合わせたサイクリングを実施した。また、2月には西武秩父駅をスタートし、追い風に乗って荒川を下るサイクリングを実施した。

 現在、自転車、とりわけスポーツサイクルをめぐる問題は、自転車文化が醸成されることで解決するものも少なからずあるのではなかろうか。

忙しい中、時間を割いて参加してくださった皆さま、そしてYoutubeでのライブ配信をご覧いただいた皆さますべてに感謝を申し上げます Photo: Ryohei SAKATA

 セミナーの締めでは、グッチャリ代表理事である韓祐志より、グッチャリが目指すものを説明した。

・マナーアップチラシ配布活動など、「サイクリストへの働きかけ」
・「行政への働きかけ」
・「メディアへの働きかけ」

 これらの活動を通じ、「自転車文化の社会認知拡大に向けた貢献」をグッチャリは目指していく。

 私どもに興味を持った方は、ぜひグッチャリの活動に参加していただきたい。皆さま、よろしくお願いいたします。

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