Cyclist編集部・松尾記者の現地リポート関係者が持つ“ツール攻略本”とは 情報を現地から発信するメディアの動きを追う

by 松尾修作 / Shusaku MATSUO
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 世界最大のロードレースであるツール・ド・フランスは、観客数もさることながら現地のメディアの数も計り知れません。その数は約2000人にも上るメディア関係者が選手を追うわけですが、渋滞や混乱はほとんどありません。今回は、メディアの動きと働きについてリポートします。

ロードブックには導線の全てが記されている Photo: Shusaku MATSUO

 まず、ツール・ド・フランスを取材するためには数か月前からメディアの申請を行い、許可が下りなければ選手から距離がある場所にしか入ることができず仕事ができません。オンライン上で申請の許可が下りると、現地の受付で顔写真付きのタグを受け取り、ようやく大会内部を自由に動くことが可能になります。

筆者のタグ。内部にはICチップも入っており、厳重なセキュリティ体制 Photo: Shusaku MATSUO

 前述の通り、観客数がとても多い大会のため、現地のセキュリティはとても厳重。スタート地点では、チームバスや選手のエリア前に柵が設けられ、選手と観客の必要以上の接触を防いでいます。スター選手が集まる大会ならではの光景かもしれません。もちろん、テロや事件、事故を防止する策でもあります。タグがあればこのエリアに入ることが許可され、取材活動を比較的自由に行えます。

 スタート時間の30分前になると選手もサインを終え、出発の準備を始めます。メディア関係者もフィニッシュ地点へと大移動するわけですが、ここでツール・ド・フランスならではのシステムが用意されています。メディアの車に対してもパスが発行されており、フロントウィンドウとリアウィンドウに色分けされたステッカーを張り、コース上を走ることが可能になります。このパスはメディアだけでなく、チーム関係者のステッカー、スポンサー、主催者などに分類されています。

筆者に割り当てられたオレンジのステッカー Photo: Shusaku MATSUO
割り当てられたステッカーのカラーによって許可された導線が異なる Photo: Shusaku MATSUO

 メディア関係者はキャラバン隊の隊列内およびレース通過前のコース上を走行可能なブルー/ピンク、ブルーはレース通過前のコースを、オレンジは関係者エリアへの入場といった色分けです。

フォトグラファーとライターで異なる仕事場

Jスポーツの中継でもおなじみのフォトグラファー、辻啓さん Photo: Shusaku MATSUO

 現地ではJスポーツで中継で登場するお馴染みのフォトグラファー、辻啓さんにお話を聞くことができました。この日、辻さんはスタート地点で機材関係の撮影を行い、コース上へと移動するとのことでした。選手から先回りしなければならないため、辻さんに与えられたステッカーはブルー/ピンク。このステッカーは基本的にUCI(国際自転車競技連合)公認のドライビングライセンスがないと許可されませんが、辻さんは取得済みとのこと。

 「1カ月無制限の通信容量で使える『Free』(ちょっと不安定な回線)と、通信会社大手の『オランジュ』のsimカードを使い分けて仕事をしています。Jスポーツに出演する際はどちらかが4Gであればskypeで動画のライブ中継ができるのですが、田舎だとどうしても速い回線の電波がないので、時折音声だけの登場になってしまいます」と苦労を明かしてくれた。

 さて、いよいよレースがスタートすると筆者もフィニッシュ地点へ移動を始めます。今回、筆者に渡されたのはオレンジのステッカーだったため、コース上を移動することはできません。ここで役立つのは関係者向けのロードブック。コースをショートカットするう回路が詳細に書かれており、スタート/フィニッシュ地点の詳細な地図など、全238にも及ぶページ数となっています。

豊富に設置された標識はいつも正確で迷うことはない Photo: Shusaku MATSUO

 この地図に沿って迂回すると、路上には進路変更するポイントで必ずオレンジ色のボードが貼り付けらえており、矢印で行く方角を示しています。「こんな田舎の細い道なはずがない…」と心配になった時や、高速道路上でも、進路変更する場合は必ずボードが登場。最短ルートでフィニッシュ地点へとたどり着くことができます。辻さんは「ここまで物事がきちっと決まっているのはツールだけ。ルールに沿うだけなので、ルールを理解してしまえば想定通りに移動できますね」と教えてくれました。規制されてない道を通るのですが、間違いなく最も早く到着できます。

 一方、スタート地点の取材をせずに、フィニッシュ地点のサルドプレス(プレスセンター)に足早に向かうメディアの姿もあります。サイクリストの「週刊サイクルワールド」で連載している福光俊介さんもその一人で、今大会ではレースに帯同しつつも、フィニッシュエリアに設営されているプレスセンターで主に仕事をしています。

 福光さんは誰がどんな動きをしたかを記すレースの詳報記事を担当しており、俯瞰してレースを観る作業を必要とします。プレスセンターではレースのライブ映像のほか、フィニッシュ後の各選手のインタビューが次々に流れているため、レース状況がすぐ把握できます。また、メディア同士の情報交換の場となっています。

第18ステージ、ポーのプレスセンターは広々としたホールを使用 Photo: Shusaku MATSUO

 「実際にコースの状況を知りたいので、自ら運転してプレスセンターへと向かいます。レースが始まる数時間前にはスタート地点を出発しなければなりませんが、コースや街の雰囲気を知るためにほぼ欠かさず順路をなぞります。レースが残り100km以上残す地点ではプレスセンターへと到着し、詳報の準備を始めます」と説明してくれました。ちなみにプレスセンターのWi-Fiはオランジュが有料で販売しており、1日約30ユーロと割高。周りを見渡すと福光さんをはじめ、辻さん同様にsimカードを独自に用意して仕事をしているようでした。

 この日、第18ステージはフィニッシュ地点とプレスセンターが約1.5kmも離れています。フィニッシュシーンを撮るフォトグラファーや選手に話を聞くジャーナリストはフィニッシュエリアに、レース詳報を書くライターはプレスセンターにと、役割に応じた動きが忙しく繰り広げられています。世界中のファンがすぐに情報を得られる裏側には、メディアがスムーズに取材ができるノウハウと環境が現場にはありました。

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