山口和幸の「ツールに乾杯! 2018」<6>マンドの頂上で勝利をさらわれたバルデとピノ 長く暗いフランス勢のトンネル

  • 一覧

 フランス第3の山岳地帯、中央山塊にある街マンドは岩山の頂上に小さな飛行場があり、そこにいたる激坂が西暦で5の倍数の年にコースとなってきた。初めて採用されたのは1995年。フランス革命記念日に開催された第12ステージで、ローラン・ジャラベールが独走を果たした。以来この激坂は「ジャラベールの坂」と呼ばれる。フランス勢にとっては勝たなければいけない伝説の地である。

マンドのゴール地点は滑走路だ Photo: PRESSPORTS

イノー以来の総合優勝なるか

 マンドにゴールするのは5回目。これまでは2005年、2010年、2015年と定期的にゴール地点となったが、「5の倍数」の法則が2018年は崩れたのがちょっと残念だ。2005年はマルコス・セラノが優勝。2010年はホアキン・ロドリゲスがアルベルト・コンタドールを制して優勝した。

1995年のフランス革命記念日、マンドの頂上を制したのはフランス人のローラン・ジャラベールだった Photo: Yuzuru SUNADA

 2015年は地元フランス勢に総合優勝の期待が集まっていた。最後にフランス選手が総合優勝したのは1985年のベルナール・イノー。すでに30年の歳月が流れていた。それはかなり危機的状況で、沿道の観衆は「強いフランス人の出現」を待ち望んでいた。

 その急先鋒が若手のロマン・バルデとティボー・ピノだ。前年の2014年は総合優勝には絡めなかったが、新人賞争いを展開し、ピノがバルデを抑えて獲得した。開幕前はこの2人にフランス国民の関心が集まった。しかしこの年はバルデもピノも序盤でタイムを失い、大会後半は区間勝利をねらっていく走りに切り替えざるをえなかった。

 第14ステージは「ジャラベールの坂」にゴールする注目の区間だった。マイヨジョーヌは第7ステージで首位に躍り出た英国のクリストファー・フルームが着用していた。8km地点でバルデとピノを含む19人が第1集団を形成。総合成績の上位選手がいなかったため、スカイ勢はこの逃げを容認。第1集団は区間勝利を、後続のメイン集団は総合成績をにらみながらゴールを目指した。

優勝をかけてにらみ合った2人

 話が前後してしまうが総合成績の上位争いは、最後の坂で総合3位のナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)がアタックする。フルームがこれを逃がさず首位のマイヨジョーヌを守った。キンタナは総合2位に浮上し、その日の結果がパリ・シャンゼリゼまで維持された。フルームが2年ぶり2度目の総合優勝を達成することになる。

急勾配でアタックして総合2位に浮上したキンタナと、首位をキープしたフルーム Photo: Yuzuru SUNADA

 話を戻して「ジャラベールの坂」を上り始めた先頭集団。マンドの市街地を外れるといきなりクルマでも1速にシフトダウンしないと上れないような激坂になり、ここで仕掛けたのがバルデだ。それをピノが追いかけ、2人になった。総合優勝はもはや望めないが、「ジャラベールの坂」は制したい。テレビでフランスじゅうの人たちがバルデ対ピノの戦いを見守った。

 互いをにらみながらのけん制。ところがこの隙に第1集団に加わっていたMTN・クベカのスティーブン・カミングス(イギリス)が猛スピードで追い抜いていった。あわてたバルデとピノ。後続の動きに無警戒すぎた。3人によるもがき合いによりピノが2位でバルデが3位になった。カミングスは自身の初優勝と同時にアフリカチームとしての初優勝を飾る。

フランス期待の2人を振り切ってカミングスが勝利した2015年 Photo: Yuzuru SUNADA

「勝ちにこだわりすぎ」で勝利を逃す

 バルデはゴール後に戦略が失敗したことを認めている。

 「ピノとのゴール勝負になると思って、彼だけをマークしていた。カミングスが追いついてきたのはまったく見ていなかったんだ。まったく最悪の展開になってしまった」

 ピノも肩を落とした。

 「こんな恥ずかしいことはない。ボクたちフランス人は勝ちにこだわってしまいすぎたんだ」

 フランス勢の暗いトンネルはどこまで続くのか?

2018年のマンドは、スペイン人のオマール・フライレが、ジロ・デ・イタリアに続くグランツール優勝を果たした © ASO
山口和幸山口和幸(やまぐち・かずゆき)

ツール・ド・フランスをはじめ、卓球・陸上・ボート競技などを追い続け、日刊スポーツ、東京中日スポーツ、ナンバー、ターザン、YAHOO!などで執筆。国内で行われる自転車の国際大会では広報を担当。著書に「ツール・ド・フランス」(講談社現代新書)、「もっと知りたいツール・ド・フランス」(八重洲出版)など。

関連記事

この記事のタグ

ツール・ド・フランス2018 ツール2018・コラム 山口和幸の「ツールに乾杯!」

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

ショップナビ

スペシャル

自転車協会バナー
CyclistポケットTシャツ

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載