ツール・ド・フランス2018 第14ステージ中央山塊の初日はフライレがカザフの英雄に捧げる勝利 総合上位3人はタイム差付かず

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ツール・ド・フランス2018は第14ステージ。7月21日に行われたレースは、序盤に形成された逃げグループが大きなリードを得て、そのままステージ優勝争いへ。最後はオマール・フライレ(スペイン、アスタナ プロチーム)が独走へと持ち込み勝利した。メイン集団でも終盤に個人総合上位陣による駆け引きが起こったが、首位のゲラント・トーマス、2位のクリストファー・フルーム(ともにイギリス、チーム スカイ)、3位のトム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ)は冷静に対処し、3人が一緒にフィニッシュラインを通過している。

ツール・ド・フランス2018第14ステージ。独走でツール初勝利を挙げたオマール・フライレ Photo: Yuzuru SUNADA

レース後半に急坂が集中

 アルプスを経て西へと針路をとるプロトン。前日はスプリントで勝負が決しただけでなく、大きなトラブルなく1日を終えたことで、総合を争う選手たちにとって恵みの「移動ステージ」となった。

 大会第2週の後半に入り、この日からは中央山塊へとプロトンは入っていく。サン=ポール=トロワ=シャトーからマンドまでの188kmには、2級から4級の山岳が4カ所。いずれも中盤から後半にかけて集中している。

スタート地のサン=ポール=トロワ=シャトーを出発するキャラバンカー。沿道の観客が大喜び Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 81km地点の4級コート・デュ・グラン・シャテーニェ(登坂距離1km、平均勾配7.4%)を皮切りに、おおよそ中間地点からは長い上り基調。その後、2級山岳コル・ド・ラ・クロワ・デ・ベルテル(登坂距離9.1km、平均勾配5.3%)、3級山岳コル・デュ・ポン・サン・ズー(登坂距離3.3%、平均勾配6.3%)と通過する。

 その後は、山岳にカテゴライズされない登坂もこなしながら、いったん下ってマンドの街へ。そして最後に立ちはだかるのは、2級山岳コート・ド・ラ・クロワ・ヌーヴ(登坂距離3km、平均勾配10.2%)。上りの後半が最も厳しいうえにフィニッシュに近いとあって、勝負どころとなるはず。激坂での争いを見るべく集まった大観衆と、この日のために整備された綺麗な舗装が選手たちを後押しする。上り終えると約1.5km先のマンド-ブルヌー飛行場の滑走路に敷かれたフィニッシュラインへ。頂上からのおおよそ1kmにわたるダウンヒルはラストスパートにもってこい。最近では、2010年の第12ステージでホアキン・ロドリゲス(スペイン、当時チーム カチューシャ)が、2015年の第14ステージではステファン・カミングス(イギリス、ディメンションデータ)が勝利を挙げている。

 レース終盤は激坂区間があるだけに、パンチ力に長けた選手こそ持ち味を発揮しやすいコース。ステージ優勝に向けて最後の上りで抜け出すことができるか、はたまた生き残った選手たちによるスプリント勝負となるのか。そして、個人総合争いに身を追う選手たちは、少しでもタイムを稼ぐべく攻撃に出るのかも見ものとなる。

 前夜、スタート地のサン=ポール=トロワ=シャトー周辺は大雨。朝を迎えて雨は上がったものの、強い風だけが残った。そして、この風がレース序盤の動きに変化を与えることになる。

最大で32人の先頭グループにアラフィリップ、サガンら

 現地時間午後1時5分に出発したプロトン。この日のファーストアタックは、山岳賞のマイヨアポワを着用するジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)。これを皮切りに、序盤から激しく展開していく。

 10km地点を前に、メイン集団は強風によっておおよそ4つに分断。トーマスやフルーム、ポイント賞のマイヨヴェールを着るペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)らは前方に位置するが、個人総合5位のロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)は第2グループ、同6位のミケル・ランダ(スペイン、モビスター チーム)は最後尾のグループと出遅れる。各グループとの間は数秒単位ではあるものの、一時は前方とランダグループまで45秒差となるなど、スタート直後から慌ただしい状況が続いた。

山岳へと入っていく逃げグループ Photo: Yuzuru SUNADA

 その頃、先頭ではアラフィリップら7人が、丘への上りでペースを上げて逃げグループを形成した。しばらくしてサガンら25人の追走グループが、アラフィリップグループに合流。20km地点に差し掛かったところで、32人の先頭グループが固まった。この中で個人総合最上位は、ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシングチーム)で、首位のトーマスから39分18秒差の25位となる。

 メイン集団も1つにまとまり、リーダーチームのチーム スカイがコントロール。大人数の逃げを完全に容認し、意識的にタイム差を広げていく姿勢を見せる。

 先頭では、この日最初の関門である81km地点の4級コート・デュ・グラン・シャテーニェへ。ここはマイヨアポワのアラフィリップが1位で通過。1点ながらも山岳ポイント加点に成功している。続いて、96km地点に設けられた中間スプリントポイントはサガンが1位通過。トマ・ブダ(フランス、ディレクトエネルジー)が競う姿勢を見せたが、サガンは先行を許さなかった。

 長い上り基調の区間を経て本格的な登坂が始まる2級山岳コル・ド・ラ・クロワ・デ・ベルテル(登坂距離9.1km、平均勾配5.3%)で、先頭グループにアクションが起こった。頂上まで約3kmとなったところで、ゴルカ・イサギレ(スペイン、バーレーン・メリダ)が抜け出す。他のメンバーはすぐには追随せず、しばらくしてトムイェルト・スラフテル(オランダ、チーム ディメンションデータ)が追走を開始した。その流れのまま頂上を迎えて、イサギレが1位通過。2位のスラフテルのあと、大きなグループからアラフィリップが3位で通過した。

 その後の下りで、イサギレにスラフテルと後ろからやってきたジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)が追いつくことに成功。この3人が先頭グループとなり、アラフィリップやサガンが待機するグループは第2集団に変化。形勢はそのままに、3級山岳コル・デュ・ポン・サン・ズーをストゥイヴェンが1位通過。少し置いてやってきた第2グループは、クイックステップフロアーズ勢の牽引によってアラフィリップを4位通過させている。

 その第2グループに変化が生まれたのは、残り40kmを切ったあたりから。山岳にカテゴライズされない急坂でばらけ始める。11人が追走グループを形成し、先頭を走る3人を目指す。一方の先頭では、残り35kmでストゥイヴェンがアタック。イサギレやスラフテルは付いていくことができず、ここからストゥイヴェンの独走が始まった。

残り35kmから独走態勢に入ったジャスパー・ストゥイヴェン Photo: Yuzuru SUNADA

 ストゥイヴェンに離されたイサギレとスラフテルは、追走グループから飛び出したリリアン・カルメジャーヌ(フランス、ディレクトエネルジー)、トマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)とともに先頭復帰を目指したが、後続も迫る。テンポで上りをこなしたサガンらがアラフィリップらに下りで追いつくと、さらにこのグループがイサギレらに合流。再び大きなグループとなり、19人でストゥイヴェンを追う構えとなった。残り10kmを切ったところで、ストゥイヴェンと追走グループとの差は1分40秒。この頃には、チーム スカイがコントロールするメイン集団とは20分近い開きとなり、ステージ優勝争いは前方を走る選手たちによって展開されることが明白となっていた。

上りで強さを見せたフライレが逆転勝利

 追走グループとのリードを保って終盤を走るストゥイヴェン。約1分30秒のアドバンテージを持って、最後の上りである2級山岳コート・ド・ラ・クロワ・ヌーヴへと入った。

 苦しそうな表情ながらも懸命に上るストゥイヴェンに対し、追走グループでは登坂に入ってすぐにデヘントがアタック。これをチェックしたのはフライレ。19人の脚の差が顕著となり、アタックに対応できない選手たちが1人、また1人と遅れていく。

沿道の大声援を受けて進むオマール・フライレ Photo: Yuzuru SUNADA

 フライレがデヘントを突き放すと、その後ろからダニエル・マルティネス(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック)やシモン・ゲシュケ(ドイツ、チーム サンウェブ)が追撃を試みるが、好ペースを刻むフライレには届かない。さらに、残り2kmのアーチを目前に、アラフィリップが満を持してアタック。激坂に詰めかけたファンの大声援を後押しに、ストゥイヴェンとフライレを追う。

 やがてストゥイヴェン、フライレ、アラフィリップの3人に絞られたステージ優勝争いに決着がついたのは、コート・ド・ラ・クロワ・ヌーヴの頂上を目前としたタイミングだった。力強い走りを見せるフライレが、失速気味のストゥイヴェンをかわし、ついに先頭に立った。そのまま後ろとの差を広げて頂上を通過。フィニッシュまでの約1.5kmを急いだ。

猛追したアラフィリップだったが、わずかに先頭へは届かず Photo: Yuzuru SUNADA

 1kmほど下り、残り500mの最終コーナーをトップでクリアしたフライレ。最後のストレートは応援と祝福とが入り混じる中での「ウイニングライド」。逃げ切りでうれしいツール初勝利の瞬間を迎えた。

 フライレには届かなかったものの、アラフィリップが2位争いを制し、終盤まで独走したストゥイヴェンが3位。その後ろではサガンが抜け出しており、上りのステージながら4位を確保して、マイヨヴェールのポイントを大きく加算した。

ステージ優勝の喜びに頭を抱えるオマール・フライレ Photo: Yuzuru SUNADA

天国のデニス・テン選手に捧げる勝利

 2015年と2016年のブエルタ・ア・エスパーニャでは山岳賞、2017年のジロ・デ・イタリアではステージ1勝と、山岳逃げを持ち味ととするフライレ。現チームに加入した今シーズン、初のツール出場で初勝利を挙げた。

ステージ優勝に向かって力走するオマール・フライレ。フィギュアスケートのスターだったデニス・テン選手の死を悼み、左袖には喪章がつけられていた Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 フィニッシュ直後には喜びを爆発させたフライレは、レース後の記者会見で「勝つなんて思いもよらなかった。ツールのメンバーに選ばれただけで幸運だと思っていたくらいで、役目もアシストであることを理解していた」と話した。勝因を問われると、「コースプロフィールが私向きだった」といい、逆転の瞬間については「(先行していた)ストゥイヴェンが疲れているように見えたので、追いつけるのではないかと思っていた。そしてアタックを試みた」と説明。

 チームはこの日、19日に強盗に遭い不慮の死を遂げたカザフスタンのフィギュアスケート選手、デニス・テン選手に哀悼の意を示し、左袖に喪章をつけてこのステージに臨んでいた。カザフスタン籍のチームとして、同国の英雄であるテン選手に捧げる勝利ともなった。

総合上位陣ではログリッチェが先着

 完全に「別のレース」と化したメイン集団だったが、コート・ド・ラ・クロワ・ヌーヴで総合上位陣による駆け引きがあった。

 残り3km手前でピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)のアタックをきっかけに、ランダやステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNL・ユンボ)がカウンターアタック。これはチーム スカイのペーシングに阻まれるが、次に仕掛けたプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNL・ユンボ)が抜け出すことに成功した。

メイン集団では最後の上りで、激しい攻防が繰り広げられた Photo: Yuzuru SUNADA

 残り2kmではデュムランがアタック。これにはすかさずトーマスがチェックに入り、フルームやナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)も合流した。これらの動きによって人数が絞り込まれ、ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール)らが遅れてしまった。

 結局、個人総合4位のログリッチェがリードを守って、総合上位陣では一番となるステージ29位でフィニッシュ。8秒差でトップ3が1つになってやってきた。最後はフルームが前に出て、デュムラン、トーマスの順。同タイムでステージを終えたことで、この3人に総合タイム差の変動は起きていない。

 個人総合首位のトーマスはレース後、「アルプスでのステージを終えて以降、ストレスなく走ることができている」とコメント。続くステージも、マイヨジョーヌを着用して走る。

個人総合上位3選手が一緒にフィニッシュ。マイヨジョーヌのゲラント・トーマス(右)は後方に視線を送りライバルとの差を確かめる Photo: Yuzuru SUNADA

 大会第2週の最終日、22日に行われる第15ステージは、ミヨーからカルカソンヌまでの181.5km。中盤までは、3級と2級の山岳ポイントを含む大小さまざまなアップダウンこなしていく。そして最後に待つのは1級山岳ピック・ド・ノール。ツール初登場、登坂距離12.3km、平均勾配6.3%でレースは大きく動くか。さらには、頂上からカルカソンヌを目指しての長いダウンヒルも待っている。下りでのアタックを試みる選手が現れることも想定される。

 そして、第15ステージを終えると、大会は2回目の休息日を迎える。

第14ステージ結果
1 オマール・フライレ(スペイン、アスタナ プロチーム) 4時間41分57秒
2 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) +6秒
3 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)
4 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) +12秒
5 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシングチーム) +17秒
6 シモン・ゲシュケ(ドイツ、チーム サンウェブ) +19秒
7 ニコラ・エデ(フランス、コフィディス ソリュシオンクレディ)
8 リリアン・カルメジャーヌ(フランス、ディレクトエネルジー) +23秒
9 ダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット) +30秒
10 トマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル) +37秒

個人総合(マイヨジョーヌ)
1 ゲラント・トーマス(イギリス、チーム スカイ) 58時間10分44秒
2 クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ) +1分39秒
3 トム・デュムラン(オランダ、チーム サンウェブ) +1分50秒
4 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNL・ユンボ) +2分38秒
5 ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール) +3分21秒
6 ミケル・ランダ(スペイン、モビスター チーム) +3分42秒
7 ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNL・ユンボ) +3分57秒
8 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) +4分23秒
9 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム) +6分14秒
10 ダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチーム・エミレーツ) +6分54秒

ポイント賞(マイヨヴェール)
1 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 437 pts
2 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチーム・エミレーツ) 170 pts
3 アルノー・デマール(フランス、グルパマ・エフデジ) 133 pts

山岳賞(マイヨアポワ)
1 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) 90 pts
2 ワレン・バルギル(フランス、フォルトゥネオ・サムシック) 70 pts
3 セルジュ・パウェルス(ベルギー、チーム ディメンションデータ) 63 pts

新人賞(マイヨブラン)
1 ピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール ラモンディアール) 58時間28分12秒
2 ギヨーム・マルタン(フランス、ワンティ・グループゴベール) +2分27秒
3 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム スカイ) +6分16秒

チーム総合
1 モビスター チーム 175時間13分5秒
2 バーレーン・メリダ +10分16秒
3 チーム スカイ +19分40秒

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